68 / 75
《Kaffeepause ☆カフェブレイク☆Cafépause》
【番外編】《血まみれ一族・チューダー家》
※1833年にポール・ドラローシュによって描かれた美しくも哀しい『ジェイン・グレイの処刑』の絵。
前回「チューダー朝ヘンリー7世の家系図」について書いた際に、プランタジネット朝からチューダー朝までの国王の名前を書き並べましたが、この中の何人かは「悲劇的に殺害あるいは処刑された」あるい「非道に殺害あるいは処刑した」という、この王達に殺害された人物の名前がどうしても後ろから這い出してくるような、なんとも血にまみれた記憶が呼び覚まされる見覚えのある名前ばかりでした。
整理すると、前回のリストの中で自然死した国王は、プランタジネット家のエドワード1世、エドワード2世、エドワード3世、ランカスター家のヘンリー4世とヘンリー5世。そしてヨーク家のエドワード4世と、チューダー家ではヘンリー7世、ヘンリー8世、エドワード6世とメアリー1世とエリザベス1世であり、なので普通に亡くなった王の方が多いのですが、ヘンリー6世はヨーク家から暗殺されたという説が濃厚ですし、リチャード3世はヘンリー7世に戦争で負けて殺害されました。 ただ、「非道に殺害あるいは処刑した」王として筆頭に上がるのは、皆様ご存知のように、ヘンリー8世で、彼の治世では2人もの王妃が処刑されていたためか、そもそも陰惨な雰囲気が背後に漂い、その後ジェーン・グレイはたった9日間王位に就いた後に、メアリー1世に首を刎ねられましたし(彼女のその瞬間の美しい絵画があるので、この絵画をご存じの方も多いことでしょう)、一方、メアリー1世と同様に、やはりヘンリー8世の娘だったエリザベス1世もやはりスコットランドの女王だったメアリー・ステュアートを処刑していますよね。
この当時の処刑法は、ギロチンではなくて死刑執行人が手に持った斧で首を斬るというもので、処刑場はなかなかに残虐な光景に満ちていました。
しかもまた、エリザベス女王は父ヘンリー8世によって処刑された2度目の妻アン・ブーリンの娘であり、またメアリー1世の母はそのアン・ブーリンによって離婚させられ王妃の地位も剥奪されたキャサリン・オブ・アラゴンという、とにかく最初から陰湿な空気漂う、登場人物の全員が仄暗い因縁の中から這い上がってきたような、そんな雰囲気が充満しています。
そういう理由もあり、チューダー朝からは特になんだか特におどろおどろしい空気が流れているように思えてならないのです。
また、これは私の私見でしかありませんが、ヘンリー8世の父、ヘンリー7世も考えてみれば実はあの狂気のフランス王シャルル6世の血が流れていますよね。シャルル6世の娘キャサリン・オブ・ヴァロワが祖母だったわけで、例えば彼女の愛息子であったヘンリー6世はその遺伝によって精神を病んでいたため、そういうわけでヘンリー6世は国王にふさわしくない大きな理由があるとヨーク家から付け込まれ、最終的にランカスター家はヨーク家から王位を奪われる原因となったわけですが、そう考えれば、彼女の狂気の血がヘンリー8世に流れていて、それが理由で彼は非常に残虐な性質になったのだとは考えられないでしょうか?
男児欲しさに次々に妻を変え、気に入らないことがあれば追い払い、王妃の地位を剥奪し、場合によっては首を刎ねて殺すことも厭わないだなんて、どこかで精神を病んでいたからこそ、あれほど残酷になれたのだとは言えないでしょうか。
彼の娘であるメアリー1世にしてもエリザベス1世にしても、共に自分の母親の無念さを考えれば、心から父を尊敬し慕うというような気持ちは皆無だったことでしょう。
しかしそのメアリー1世にしても超カトリック大国スペイン・ハプスブルグ家のフェリペ2世と結婚したこともあり、もちろん彼女自身も母キャサリンによって生粋のカトリック教徒とは言え、異常なほどプロテスタントに対する過酷な弾圧を行い、彼女は「Bloody Mary(血まみれのメアリー)」という異名までついた人でした。このプロテスタントへの異常なまでの激しい弾圧には、父ヘンリー8世へ対する恨みや憎しみも込められていたのだろうとは想像できますが、この彼女の残酷さも父譲りの、何か精神疾患から来るものだったという可能性はないのでしょうか?
さて、このヘンリー8世が政敵によって牢獄へ入れられることもなく、また殺害されることもなく、肥満による健康の問題でというむしろ幸せな病気で天寿を全うできたことは、それだけでも彼は有り難く思うべきだと思いますが、しかし、その後王位を継いだエドワード6世、メアリー1世、エリザベス1世という彼の3人の子供達は誰一人子供を生むことなく、エリザベス女王の治世でチューダー家は終わってしまったわけで、これも彼の血を引いてしまった子供達を通して、彼自身に天誅が下った結果かもしれませんね。
しかし、これ程にも陰惨なチューダー朝の王のリストの中で、私自身がもっとも拒否反応が出てしまうのは、どういうわけか実は初代ヘンリー7世なのです。
彼は凡庸そうな顔をした人で、悪人なのかと言われると顔立ちからはそれははっきりとはわかりませんし、特に何か残虐な事をしたというような記録も残ってはいないようです。
しかし私がヘンリー7世にひっかかりを感じる大きな理由というのは、それはエドワード4世の息子で少年王だったエドワード5世とその弟リチャードが、叔父であるリチャード3世に殺されたと言われている事件において、本当の真犯人というのが、実は彼なのではないだろうかと思ってしまったからなのでした。
次回はこの件について、色々聞いたり読んだりしたことから、私なりの考察を書かせていただこうと思います。
Copyright@2023-kaorukyara
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』
月神世一
SF
【あらすじ】
「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」
坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。
かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。
背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。
目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。
鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。
しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。
部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。
(……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?)
現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。
すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。
精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。
これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
