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《Kaffeepause ☆カフェブレイク☆Cafépause》
【番外編】《塔の王子達を殺したのは誰なのか》その4
しおりを挟む※エリザベス・ウッドヴィルとマーガレット・ボーフォートの肖像画。
ところでその頃、前王エドワード4世の妻で、前女王だったエリザベス・ウッドヴィルはどうしていたのでしょうか。
彼女は「塔の王子達」の母親であり、また同時にヘンリー7世の妃となるエリザベス・オブ・ヨークの母でもありました。
エリザベス・ウッドヴィルの幼い息子であったエドワード が王に即位し、リチャードが守護卿を務めようとした際、権力を独占しようとするウッドヴィル家の企みが発覚し、リチャードはすぐに、エドワード 5 世の叔父のアンソニー・リバーズ(エリザベス・ウッドヴィルの弟)と異母兄弟のリチャード・グレイ(エリザベスの最初の結婚の時の息子である)を処刑しました。
エドワード4世が遺言に記したのは、自分の弟であるリチャードが幼い息子の摂政となり共に国を支えるというものでした。しかし彼らウッドヴィル家のその頃の行動は、ウッドヴィル家がエドワード5世の背後から国を支配し、王権を操りたいという魂胆が丸見えだったからです。この背信行為をリチャードは許すことはできなかったのです。長年にわたりエドワード4世の威信の影でウッドヴィル家は栄華をほしいままにしてきました。しかしそれ以上に長い年月エドワード4世を支えてきたのはリチャードでした。
キングメーカーと呼ばれた彼らの従兄弟のウォリック伯がヘンリー6世側に付き、エドワードから政権を奪った1470年10月から1471年の4月も、兄ジョージとは違って一度とすらエドワードから離れず、2人で身を寄せ合うようにして姉マーガレットの嫁ぎ先のブルージュの港へ辿り着いたこともありました。冬の寒さが始まる欧州の浜辺に着の身着のまま、数人の従者と濡れ鼠のように惨めな様子で辿り着きいた時も、側にいたのはいつもリチャードだったわけで、エドワードが彼に絶対の信頼を置いたのも当然のことでした。
リチャードは尊敬し続けた兄の元を離れずに、兄を支え続けます。裏切ったジョージを説得し、再び兄弟3人で力を合わせ、エドワード4世が王位に返り咲きましたが、この時の王位を追われた明日もわからない絶望の日々はエドワードとリチャード兄弟にとって終生忘れられない出来事だったことでしょう。
リチャードにとって兄エドワードは子供時代から全身全霊を込めて崇拝し、忠誠を誓った絶対の存在でした。リチャード自身は
「Loyauté me lie(我が忠誠心が我を縛る)」と自分の旗印に書いているくらい、彼にとって兄王に対する「忠誠心」は深く強いものでした。
再びエリザベス・ウッドヴィルの話に戻りますが、バース・アンド・ウェルズ司教ロバート・スティリントンによる驚きの告発の展開で、エドワード4世との結婚は合法ではなく子供達は非嫡子であると議会から言い渡され、エリザベス・ウッドヴィルの子供達の王位継承権も剥奪されたわけですが、1484年にリチャード3世と和解したエリザベス・ウッドヴィルは娘達とウェストミンスター寺院を出て、リチャード3世の宮廷に戻りました。エリザベス・ウッドヴィルはリチャード3世の治世では多額の年金を与えられ、娘達は舞踏会にも参加するという普通で平和な生活を送っていました。
しかし、ここで疑問が生じます。もしその1484年の時点で息子2人がリチャードに殺害されたと知っていたら、エリザベス・ウッドヴィル達はリチャードの庇護下へ戻ろうとしたでしょうか?
そして幼い息子2人を殺した男の元で、年金を受け取る安穏とした生活を送っていたのでしょうか?
もちろん、息子を殺された母親がその犯人の男がくれる年金欲しさにその男の宮殿へ決して行くわけがないとは言えませんが、現実的に考えて彼女にそこまでする必要はあったでしょうか。
しかもこれはお金だけの問題ではありません。
自分の幼い息子達を殺した王の元へ、娘達を連れて行くということは大変大きなリスクがあったはずです。信じて行ったリチャードの宮殿で、自分だけではなく娘達全員が皆殺しにならないなどとどうやって信じろと言うのでしょうか。
12歳と9歳というなんの罪もない息子達がリチャードによって殺されたという事実を、あるいはエリザベス・ウッドヴィルは知らなかったということなのでしょうか?
1472年、リチャードはウォリック伯の次女アン・ネヴィルと結婚し、ミドルハムに家を構え、徐々に北部の領地を発展させ、ダラム州のバーナード城、ウェストライディングのクレイヴンにあるスカボロー、スキプトン、マートンの城と領主、さらにリッチモンド城を含むヨークシャーの領地を獲得しましたが、この地域の人々の、リチャードこの地域への献身と正義と公正な取引に対する彼の評判は非常に高いものでした。
北部において地元民から絶大な評価を受け、また兄から絶対の信頼を受けていたリチャードが、幼い甥を殺すような冷血漢ではないとは言えませんが、「忠誠心」を自ら座右の銘としていた彼と、尊敬していた兄の子供達を殺すという行為はどうも繋がりません。
それに前回も説明した通り、王になったリチャードにとって、議会で非嫡子と証明された甥達はもはや王位継承者になれるはずもなく……彼が王位を継いだのは他に適切な後継者がいないことが判明したためで、王子達が行きていようが死んでいようが、その件は彼の王権には何の邪魔にもなりませんでした。
また、もしもその甥達を利用して政権転覆を図る輩が出てこないために、というのであれば、甥達は病気かなにかで死んだことにして、亡骸を公表するという手も使えたはずです。封建制度の中での国王という地位の彼にとっては、そうしたところで何のデメリットも生じなかったことでしょう。
ではなぜリチャードは王子達の死を公表しなかったのか、またなぜ王子達の母であるエリザベス・ウッドヴィルは恐れもなくリチャードの宮廷へ戻ってきたのか……この答えとして最も納得できるのは、その時にはまだ王子達は行方不明になっていなかったか、あるいはもし既に王子達死亡の噂が流れていたというのであれば、エリザベス・ウッドヴィルはリチャード3世が犯人ではないと確信していたか、このどちらかしか考えられないのではないでしょうか。
あるいはこれは考えすぎかも知れませんが、もしかしたら本当の犯人に気が付き、その連中の元にいるのが嫌でリチャードの元へ戻ったということはないのでしょうか。
エリザベス・ウッドヴィルは、ランカスター党の中で王位に最も近い権利を主張した後のヘンリー 7 世、そのヘンリーの母であるマーガレット・ボーフォートと密かに同盟を結んだことがありました。
しかしエリザベス・ウッドヴィルがリチャードの宮廷へ戻り、娘のエリザベス(後のヘンリー7世の妃)がリチャード宅へ頻繁へ通い、リチャードの病弱な妻アンの世話をすることを許したのは、エリザベス・ウッドヴィルがマーガレット・ボーフォートと親密な関係を持った後でした。
なので、もしやリチャードの宮廷に戻り、娘エリザベスをリチャードの側へ仕えさせること、これはエリザベス・ウッドヴィルとマーガレット・ボーフォートのその頃の計画の1つだったとでも言うのでしょうか。
しかし、そのようなことはあり得るでしょうか。なんの為に?
息子達を殺されたと確信している母親が、大切な自分の娘がそのままその男の屋敷へ頻繁に出入りすることを許せるものなのでしょうか。
なので、エリザベス・ウッドヴィルの行動を見る限りでは、リチャードの甥殺しはなかったのではないかと思わずにいられないのです。
では王子達を殺したのは、誰なのか。
それは王子達を殺して最も得をする人物は誰なのか、ということを見ていく必要があります。
少年王たちがいなくなれば実際に得をする一番の人物はヘンリー7世でした。そしてそのヘンリーを王位に就けたいと思う気持ちが強かった母マーガレット・ボーフォート、そしてもう一人怪しいのがバッキンガム公ヘンリー・スタッフォードですが、次回はこの3人についてもう少し、考えてみたいと思います。
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