竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王国にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~

青季 ふゆ

文字の大きさ
28 / 65

第28話 一本角のモーリス

しおりを挟む
 
「おや、貴方は……」
 
 唐突に響いた中性的な声に振り向く。
 視線の先に、すらりと細い男性が立っていた。

 クラリスが軽く頭を下げる。
 その姿を見るに、べらぼうに地位の高い者ではなさそうだと考えた。
 
 歳はソフィアよりもひとまわり上くらいだろうか。
 どこか少年ぽさを残した整った顔立ちに、ソフィアよりも頭ひとつ分は高い背丈。

 青みがかかった濃い色の髪は長めで前髪を両サイドに分けている。
 目元には知性を感じさせる眼鏡がかけられており、執事服のような黒いスーツを着用していた。
 
 そして何よりも目を引くのが……。

「ツノ……しっぽ……」
「はい?」

 相手が誰なのか、よりも先に人族にはついていないオブジェクトが気になった。
 
 額の上らへんから伸びている鋭い一本ツノ。
 腰からは筆先のようふさふさな尻尾が伸びている。

「ユニコーン?」

 一本ツノに尻尾。
 この二つが満たす生き物は、ソフィアの中ではそれしか思い浮かばない。

「そうですね、モーリス様はユニコーン族でございます」
「やっぱり……!!」

 ということは。
 擬人化モードを解いたら、それはそれはもう立派なもふもふに変身するに違いない。
 ソフィアのボルテージがグイーンと上がった。

「あの、自己紹介をさせていただいても?」
「あ、はい! お願いします」

 ソフィアが言うと、モーリスは眉を顰めながらも言葉を並べる。

「初めまして、アラン様の秘書を務めさせていただいております、モーリスと申します。以後、お見知りおきを」
「秘書……」

 言われて、色々と納得がいく。

 アランは一国の軍務を統括する多忙の身だ。
 むしろ雑務をこなしてくれる者がいない方が不思議だろう。

「失礼ながら、貴女はアラン様の奥様となられたソフィア様とお見受けいたします。合っておりますでしょうか?」
「はい。昨日よりお邪魔させていただいておりますソフィア、と申します。これからどうぞよろ……」
「ソフィア様、敬語」
「……よろしく頼むわ」

(うう~慣れない……)
 
 意識しないとすぐに敬語に戻ってしまう。

「……なるほど。噂通りのお方ですね」

 どこか愉快そうにモーリスが言う

(一体、どんな噂だろう……)

 気になっていると、クラリスが口を開いた。

「モーリス様、ソフィア様のご昼食の準備がありますので、そろそろ」
「なるほど、失礼いたしました。教えてくれてありがとう、クラリス」

 モーリスが微笑みを浮かべて言うと。

「お気になさらず、仕事ですので」
 
 心なしか、クラリスの声色の温度が低くなったような感じがした。

「ではソフィア様、私はこれで。引き止めてしまい申し訳ございません」
「構わないわ。ちょうど時間が空いたところだったの。お仕事、がんばってね」

 ソフィアが言うと、モーリスは一瞬驚いたように目を丸めたが、すぐに表情を戻して。

「身に余るお言葉でございます」

 恭しく一礼して、その場を去っていった。

(なんだか……掴みどころのない人だなあ……)

 そんな印象を、ソフィアはモーリスに対して抱いた。
 隙がない、とも言うべきか。

 軍務大臣の秘書ということで仕事はバリバリに出来るのだろうけど……それ以外の印象は、こちらもとんでもない美青年ということと、ツノと尻尾しか残っていない。

 なんとなくだけど……彼とはこれからも、どこかで関わり合うような気がした。

 そんなことを考えるソフィアにクラリスが言う。

「そろそろお昼の時間です。参りましょう、ソフィア様」
「わかったわ」

 先導するクラリスの後ろを、ソフィアはひよこのように付いていった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!

りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。 食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。 だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。 食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。 パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。 そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。 王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。 そんなの自分でしろ!!!!!

正当な権利ですので。

しゃーりん
恋愛
歳の差43歳。  18歳の伯爵令嬢セレーネは老公爵オズワルドと結婚した。 2年半後、オズワルドは亡くなり、セレーネとセレーネが産んだ子供が爵位も財産も全て手に入れた。 遠い親戚は反発するが、セレーネは妻であっただけではなく公爵家の籍にも入っていたため正当な権利があった。 再婚したセレーネは穏やかな幸せを手に入れていたが、10年後に子供の出生とオズワルドとの本当の関係が噂になるというお話です。

王宮地味女官、只者じゃねぇ

宵森みなと
恋愛
地味で目立たず、ただ真面目に働く王宮の女官・エミリア。 しかし彼女の正体は――剣術・魔法・語学すべてに長けた首席卒業の才女にして、実はとんでもない美貌と魔性を秘めた、“自覚なしギャップ系”最強女官だった!? 王女付き女官に任命されたその日から、運命が少しずつ動き出す。 訛りだらけのマーレン語で王女に爆笑を起こし、夜会では仮面を外した瞬間、貴族たちを騒然とさせ―― さらには北方マーレン国から訪れた黒髪の第二王子をも、一瞬で虜にしてしまう。 「おら、案内させてもらいますけんの」 その一言が、国を揺らすとは、誰が想像しただろうか。 王女リリアは言う。「エミリアがいなければ、私は生きていけぬ」 副長カイルは焦る。「このまま、他国に連れて行かれてたまるか」 ジークは葛藤する。「自分だけを見てほしいのに、届かない」 そしてレオンハルト王子は心を決める。「妻に望むなら、彼女以外はいない」 けれど――当の本人は今日も地味眼鏡で事務作業中。 王族たちの心を翻弄するのは、無自覚最強の“訛り女官”。 訛って笑いを取り、仮面で魅了し、剣で守る―― これは、彼女の“本当の顔”が王宮を変えていく、壮麗な恋と成長の物語。 ★この物語は、「枯れ専モブ令嬢」の5年前のお話です。クラリスが活躍する前で、少し若いイザークとライナルトがちょっと出ます。

前世で孵した竜の卵~幼竜が竜王になって迎えに来ました~

高遠すばる
恋愛
エリナには前世の記憶がある。 先代竜王の「仮の伴侶」であり、人間貴族であった「エリスティナ」の記憶。 先代竜王に真の番が現れてからは虐げられる日々、その末に追放され、非業の死を遂げたエリスティナ。 普通の平民に生まれ変わったエリスティナ、改めエリナは強く心に決めている。 「もう二度と、竜種とかかわらないで生きていこう!」 たったひとつ、心残りは前世で捨てられていた卵から孵ったはちみつ色の髪をした竜種の雛のこと。クリスと名付け、かわいがっていたその少年のことだけが忘れられない。 そんなある日、エリナのもとへ、今代竜王の遣いがやってくる。 はちみつ色の髪をした竜王曰く。 「あなたが、僕の運命の番だからです。エリナ。愛しいひと」 番なんてもうこりごり、そんなエリナとエリナを一身に愛する竜王のラブロマンス・ファンタジー!

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...