竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王国にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~

青季 ふゆ

文字の大きさ
32 / 65

第32話 ソフィアの力

しおりを挟む
「それで、その……私の力は、どうでしたでしょうか?」

 クラリスにわっしゃわっしゃとバスタオルで身体を拭かれているソフィアがアランに尋ねる。

 自分で身体を拭きながら、アランは口を開く。

「想像の遥か上、と言って差し支えない」
「えと……ご期待には添えられた、という事でよろしいでしょうか?」
「期待以上の以上、そのまた上だ」

 まるで、後世に語り継がれるレベルの神童を前にしたように。
 その声には、興奮が宿っていた。

「昨晩、ソフィア様に水の精霊魔法をお見せいたしましたよね?」
「うん、水を入れてくれたやつよね」
「そうです。私にも平均的な精霊力を持っているのですが……それでも、一度に生じさせられる水は、あの量が限界なのです」
「……と、いうことは」
「そういう事だ」

 言いながら、アランがお腹周りの水気を拭うために服を脱いだ。
 綺麗に六つに割れた、鍛え抜かれた腹筋が露わになる。

 突如として姿を表した逞しい男の象徴に、ソフィアの思考は明後日の方向に吹っ飛んでいき代わりに視線が釘付けになった。

「単純な量で言うと、平均的な精霊力の何千倍……いや、何万倍もの力を保有している事になる。正直俺も、君がここまで強大な精霊力を持っているとは思っていな……聞いているのか?」
「はっ、ごめんなさい! 少しぼーっとしていました」

 頭を振って、ソフィアは思考を切り替える。

「……無理もない。今までフェルミでは、こういった力は使えなかっただろうから、突然……それも、桁違いのレベルの力を使えたとしても実感はないだろう」

 口が裂けても腹筋に見惚れていましたなんて言えまい。

「それも、イメージの強化に必要な詠唱もなし。本来、無詠唱で力を発現させるのは非常に困難な芸当なのだ。それを、一発目で成功させるとは……」
「あ、詠唱は単純に忘れていました……」
「……驚異的、とはまさにこの事だろう」

 想像の遥か上、期待以上の以上、そのまた上、驚異的。
 アランの評価をすぐに受けいられるほどの実感は、ソフィアにはなかった。

 今まで自分に投げつけられ続けた言葉は、それらとはまるで正反対だったから。

 でも……。

「何はともあれ、お役に立てそうで……良かったです」

 えへへと、ソフィアがはにかむ。
 
 アランの反応を見れば、少なくとも自分が全くの役立たずでない事はわかる。
 それが何よりも、身が震えるほど嬉しかった。
 この力を使って、誰かの役に立ちたい。
 アランの役に立ちたい。

 ソフィアはそう、強く強く思った。

「風の精霊よ……ウォーム・ドライウィンド」

 クラリスが唱えると、ぶわわわーっとソフィアを温かい風が包み込む。
 タオルである程度乾いた体の水気がさーっと引いていく感覚が心地よい。

 ものの数十秒ほどで、ソフィアの身体はすっかり乾いた。

「ありがとう、クラリス」
「どういたしまして」

 ほっこり落ち着いたソフィアに、アランは言う。

「あとは力の制御……どの場所にどのくらいの出力で、どのくらいの量の力を発現させるのか、その辺りを重点的に練習すれば、思った通りに力を使う事ができるだろう」
「ゔっ、そうですよね……今のままじゃ、使い勝手が悪いですよね……」

 今回は水の精霊魔法だったから良かった。
 だがもし火とかだったら……エラい事になっていただろう。

「心配しなくても、君には才能がある。力の制御も、そう時間もかからず出来る事だろう」

 才能がある。

 そう言われすんなりと受け入れるほど自信があるわけじゃない。

 だけど、アランに言われたら……出来る気がした。
 根拠はないけど、ソフィアのアランに対する信頼感がそうさせていた。

 何よりも、アランの期待に答えたい……褒められたい。
 そんな思いが、ソフィアにやる気をもたらした。

「よしっ」と、胸の前で拳をぎゅっと握って意気込むソフィア。

「では、今から練習をします!」
「……今からか?」

 アランが呆気に取られたように言う。

「はい! 一刻も早くアラン様のお役に立てるよう、迅速に力の制御をできるようになり……って、あら……?」

 急に、視界がぐらりと傾いた。
 ふっと全身から力が抜けていく感覚

「ソフィア様!?」

 クラリスのかけ声虚しく、ソフィアの身体は地面へと……。

 倒れる寸前、アランに優しく抱き止められた。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

追放聖女35歳、拾われ王妃になりました

真曽木トウル
恋愛
王女ルイーズは、両親と王太子だった兄を亡くした20歳から15年間、祖国を“聖女”として統治した。 自分は結婚も即位もすることなく、愛する兄の娘が女王として即位するまで国を守るために……。 ところが兄の娘メアリーと宰相たちの裏切りに遭い、自分が追放されることになってしまう。 とりあえず亡き母の母国に身を寄せようと考えたルイーズだったが、なぜか大学の学友だった他国の王ウィルフレッドが「うちに来い」と迎えに来る。 彼はルイーズが15年前に求婚を断った相手。 聖職者が必要なのかと思いきや、なぜかもう一回求婚されて?? 大人なようで素直じゃない2人の両片想い婚。 ●他作品とは特に世界観のつながりはありません。 ●『小説家になろう』に先行して掲載しております。

処理中です...