竜神様に見初められまして~虐げられ令嬢は精霊王国にて三食もふもふ溺愛付きの生活を送り幸せになる~

青季 ふゆ

文字の大きさ
50 / 65

第50話 心配

しおりを挟む
「むしろ君は頑張りすぎだ。訓練中、一度も休憩を取らなかったそうじゃないか」
「え……それが普通では?」
 
 ソフィアの返答は決して他意のあるものでは無かった。

 エルメルの実家では休憩など与えられず、常に働かされる事が日常だった。
 なのでアランの指摘にピンと来なかったのだ。

 今日の訓練中、モーリスやクラリスから何度も休憩を勧められた。
 だが、ソフィアは全て断り訓練に精を出している。

 それはソフィアの体力と集中力が無限で、休憩なんかしなくてもまだまだいける状態だったからではない。

 “休憩なんて取らずに頑張り続けるべきだ”という固定観念が、ソフィアにそうさせていた。

 なんとなく……ソフィアのバックグランドから、彼女が休憩をしなかった理由を察したアランは、諭すように言う。

「集中力と体力は無限ではない。適度に休憩を入れなければ効率も悪いし……最悪、身体に負荷がかかって体調を崩してしまう事もある」
「それは、確かに……そうですね」

 実家にいた頃も、休みなしの無理な働きがたたって何度も体調を崩した事があった。
 
 その都度両親に『お前は貧弱すぎる』『魔力も無い上に体力も無くてどうするんだ』と罵声を浴びせられたため、『自分が悪いんだ、もっと頑張らないと』と喝を入れ気合いで動いていた。

 無理に無理を重ねてベッドから起き上がれなくなるくらいになってようやく、休む事を許されたものだ。

(よく死ななかったな、私……)

 改めて思い返して、ソフィアはそんな事を思ってしまう。
 
 エルメルに来て三日目だが、少しずつソフィアは勘づき始めていた。
 自分がいた、実家がおかしかったのではという事実に。

「今日も、俺が訓練場に来た際にふらついていただろう。あの時は何も言わなかったが……相当、無理をしたのだろう?」
「そう、ですね……」

 いかなる誤魔化しも聞かないであろう問いかけに、ソフィアは目を伏せ観念したように言う。

「確かに、予想以上に疲れはありました……ご心配をおかけして申し訳ございません」
「謝らなくていい。ただ、これからは気をつけてくれ」

 その声はどこか切実で、強い思いが篭っているように聞こえた。

「俺は、ソフィアの身に何かある方が心配だ」

 ソフィアの瞳を真っ直ぐ見つめて、アランは言う。
 
 端正な顔立ちをしてらっしゃる旦那様の真面目な表情に、ソフィアは思わずどきりとする。

 しかしそれよりも何よりも……。

(私……心配、されてるんだ……)

 そっちの方に、胸が温かくなった。

 誰かが自分のことを気にかけてくれる。
 健やかでいてほしいと思ってくれる。

 今まで生きてきて受けた事のない他者からの思いに、ソフィアの瞳の奥が思わず熱くなった。

 気を抜いたら、目尻から何かが溢れて来てしまいそうになるのを、頑張って押し込める。

 何はともあれ、アラン様を不安にさせたくない。
 ソフィアは強くそう思った。


「わかりました、これからは適度に休憩を取るように致します」
「それでいい」

 ふ、と満足げに笑うアラン。
 また、心臓がドキドキとダンスを始める。

 今度は単純に、アランの笑顔の破壊力が高すぎたせい。

 同時に、ソフィアの胸の中でこんな気持ちが芽生えた。

(アラン様の期待に応えたい……)

 嫌われたくない、失望されたくない。
 そういったネガティブな欲求よりもプラス向きのそれは、ソフィアのやる気に火をつけた。

(明日からも訓練、頑張ろう)

 胸の前で両拳をぎゅっと握って、ソフィアは改めて決意するのであった。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

キズモノ転生令嬢は趣味を活かして幸せともふもふを手に入れる

藤 ゆみ子
恋愛
セレーナ・カーソンは前世、心臓が弱く手術と入退院を繰り返していた。 将来は好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたい。そんな夢を持っていたが、胸元に大きな手術痕のある自分には無理だと諦めていた。 入院中、暇潰しのために始めた刺繍が唯一の楽しみだったが、その後十八歳で亡くなってしまう。 セレーナが八歳で前世の記憶を思い出したのは、前世と同じように胸元に大きな傷ができたときだった。 家族から虐げられ、キズモノになり、全てを諦めかけていたが、十八歳を過ぎた時家を出ることを決意する。 得意な裁縫を活かし、仕事をみつけるが、そこは秘密を抱えたもふもふたちの住みかだった。

聖女の力は「美味しいご飯」です!~追放されたお人好し令嬢、辺境でイケメン騎士団長ともふもふ達の胃袋掴み(物理)スローライフ始めます~

夏見ナイ
恋愛
侯爵令嬢リリアーナは、王太子に「地味で役立たず」と婚約破棄され、食糧難と魔物に脅かされる最果ての辺境へ追放される。しかし彼女には秘密があった。それは前世日本の記憶と、食べた者を癒し強化する【奇跡の料理】を作る力! 絶望的な状況でもお人好しなリリアーナは、得意の料理で人々を助け始める。温かいスープは病人を癒し、栄養満点のシチューは騎士を強くする。その噂は「氷の辺境伯」兼騎士団長アレクシスの耳にも届き…。 最初は警戒していた彼も、彼女の料理とひたむきな人柄に胃袋も心も掴まれ、不器用ながらも溺愛するように!? さらに、美味しい匂いに誘われたもふもふ聖獣たちも仲間入り! 追放令嬢が料理で辺境を豊かにし、冷徹騎士団長にもふもふ達にも愛され幸せを掴む、異世界クッキング&溺愛スローライフ! 王都への爽快ざまぁも?

皇帝陛下の愛娘は今日も無邪気に笑う

下菊みこと
恋愛
愛娘にしか興味ない冷血の皇帝のお話。 小説家になろう様でも掲載しております。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

転生先が意地悪な王妃でした。うちの子が可愛いので今日から優しいママになります! ~陛下、もしかして一緒に遊びたいのですか?

朱音ゆうひ@11/5受賞作が発売されます
恋愛
転生したら、我が子に冷たくする酷い王妃になってしまった!  「お母様、謝るわ。お母様、今日から変わる。あなたを一生懸命愛して、優しくして、幸せにするからね……っ」 王子を抱きしめて誓った私は、その日から愛情をたっぷりと注ぐ。 不仲だった夫(国王)は、そんな私と息子にそわそわと近づいてくる。 もしかして一緒に遊びたいのですか、あなた? 他サイトにも掲載しています( https://ncode.syosetu.com/n5296ig/)

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

【完結】勤労令嬢、街へ行く〜令嬢なのに下働きさせられていた私を養女にしてくれた侯爵様が溺愛してくれるので、国いちばんのレディを目指します〜

鈴木 桜
恋愛
貧乏男爵の妾の子である8歳のジリアンは、使用人ゼロの家で勤労の日々を送っていた。 誰よりも早く起きて畑を耕し、家族の食事を準備し、屋敷を隅々まで掃除し……。 幸いジリアンは【魔法】が使えたので、一人でも仕事をこなすことができていた。 ある夏の日、彼女の運命を大きく変える出来事が起こる。 一人の客人をもてなしたのだ。 その客人は戦争の英雄クリフォード・マクリーン侯爵の使いであり、ジリアンが【魔法の天才】であることに気づくのだった。 【魔法】が『武器』ではなく『生活』のために使われるようになる時代の転換期に、ジリアンは戦争の英雄の養女として迎えられることになる。 彼女は「働かせてください」と訴え続けた。そうしなければ、追い出されると思ったから。 そんな彼女に、周囲の大人たちは目一杯の愛情を注ぎ続けた。 そして、ジリアンは少しずつ子供らしさを取り戻していく。 やがてジリアンは17歳に成長し、新しく設立された王立魔法学院に入学することに。 ところが、マクリーン侯爵は渋い顔で、 「男子生徒と目を合わせるな。微笑みかけるな」と言うのだった。 学院には幼馴染の謎の少年アレンや、かつてジリアンをこき使っていた腹違いの姉もいて──。 ☆第2部完結しました☆

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...