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第50話 心配
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「むしろ君は頑張りすぎだ。訓練中、一度も休憩を取らなかったそうじゃないか」
「え……それが普通では?」
ソフィアの返答は決して他意のあるものでは無かった。
エルメルの実家では休憩など与えられず、常に働かされる事が日常だった。
なのでアランの指摘にピンと来なかったのだ。
今日の訓練中、モーリスやクラリスから何度も休憩を勧められた。
だが、ソフィアは全て断り訓練に精を出している。
それはソフィアの体力と集中力が無限で、休憩なんかしなくてもまだまだいける状態だったからではない。
“休憩なんて取らずに頑張り続けるべきだ”という固定観念が、ソフィアにそうさせていた。
なんとなく……ソフィアのバックグランドから、彼女が休憩をしなかった理由を察したアランは、諭すように言う。
「集中力と体力は無限ではない。適度に休憩を入れなければ効率も悪いし……最悪、身体に負荷がかかって体調を崩してしまう事もある」
「それは、確かに……そうですね」
実家にいた頃も、休みなしの無理な働きがたたって何度も体調を崩した事があった。
その都度両親に『お前は貧弱すぎる』『魔力も無い上に体力も無くてどうするんだ』と罵声を浴びせられたため、『自分が悪いんだ、もっと頑張らないと』と喝を入れ気合いで動いていた。
無理に無理を重ねてベッドから起き上がれなくなるくらいになってようやく、休む事を許されたものだ。
(よく死ななかったな、私……)
改めて思い返して、ソフィアはそんな事を思ってしまう。
エルメルに来て三日目だが、少しずつソフィアは勘づき始めていた。
自分がいた、実家がおかしかったのではという事実に。
「今日も、俺が訓練場に来た際にふらついていただろう。あの時は何も言わなかったが……相当、無理をしたのだろう?」
「そう、ですね……」
いかなる誤魔化しも聞かないであろう問いかけに、ソフィアは目を伏せ観念したように言う。
「確かに、予想以上に疲れはありました……ご心配をおかけして申し訳ございません」
「謝らなくていい。ただ、これからは気をつけてくれ」
その声はどこか切実で、強い思いが篭っているように聞こえた。
「俺は、ソフィアの身に何かある方が心配だ」
ソフィアの瞳を真っ直ぐ見つめて、アランは言う。
端正な顔立ちをしてらっしゃる旦那様の真面目な表情に、ソフィアは思わずどきりとする。
しかしそれよりも何よりも……。
(私……心配、されてるんだ……)
そっちの方に、胸が温かくなった。
誰かが自分のことを気にかけてくれる。
健やかでいてほしいと思ってくれる。
今まで生きてきて受けた事のない他者からの思いに、ソフィアの瞳の奥が思わず熱くなった。
気を抜いたら、目尻から何かが溢れて来てしまいそうになるのを、頑張って押し込める。
何はともあれ、アラン様を不安にさせたくない。
ソフィアは強くそう思った。
「わかりました、これからは適度に休憩を取るように致します」
「それでいい」
ふ、と満足げに笑うアラン。
また、心臓がドキドキとダンスを始める。
今度は単純に、アランの笑顔の破壊力が高すぎたせい。
同時に、ソフィアの胸の中でこんな気持ちが芽生えた。
(アラン様の期待に応えたい……)
嫌われたくない、失望されたくない。
そういったネガティブな欲求よりもプラス向きのそれは、ソフィアのやる気に火をつけた。
(明日からも訓練、頑張ろう)
胸の前で両拳をぎゅっと握って、ソフィアは改めて決意するのであった。
「え……それが普通では?」
ソフィアの返答は決して他意のあるものでは無かった。
エルメルの実家では休憩など与えられず、常に働かされる事が日常だった。
なのでアランの指摘にピンと来なかったのだ。
今日の訓練中、モーリスやクラリスから何度も休憩を勧められた。
だが、ソフィアは全て断り訓練に精を出している。
それはソフィアの体力と集中力が無限で、休憩なんかしなくてもまだまだいける状態だったからではない。
“休憩なんて取らずに頑張り続けるべきだ”という固定観念が、ソフィアにそうさせていた。
なんとなく……ソフィアのバックグランドから、彼女が休憩をしなかった理由を察したアランは、諭すように言う。
「集中力と体力は無限ではない。適度に休憩を入れなければ効率も悪いし……最悪、身体に負荷がかかって体調を崩してしまう事もある」
「それは、確かに……そうですね」
実家にいた頃も、休みなしの無理な働きがたたって何度も体調を崩した事があった。
その都度両親に『お前は貧弱すぎる』『魔力も無い上に体力も無くてどうするんだ』と罵声を浴びせられたため、『自分が悪いんだ、もっと頑張らないと』と喝を入れ気合いで動いていた。
無理に無理を重ねてベッドから起き上がれなくなるくらいになってようやく、休む事を許されたものだ。
(よく死ななかったな、私……)
改めて思い返して、ソフィアはそんな事を思ってしまう。
エルメルに来て三日目だが、少しずつソフィアは勘づき始めていた。
自分がいた、実家がおかしかったのではという事実に。
「今日も、俺が訓練場に来た際にふらついていただろう。あの時は何も言わなかったが……相当、無理をしたのだろう?」
「そう、ですね……」
いかなる誤魔化しも聞かないであろう問いかけに、ソフィアは目を伏せ観念したように言う。
「確かに、予想以上に疲れはありました……ご心配をおかけして申し訳ございません」
「謝らなくていい。ただ、これからは気をつけてくれ」
その声はどこか切実で、強い思いが篭っているように聞こえた。
「俺は、ソフィアの身に何かある方が心配だ」
ソフィアの瞳を真っ直ぐ見つめて、アランは言う。
端正な顔立ちをしてらっしゃる旦那様の真面目な表情に、ソフィアは思わずどきりとする。
しかしそれよりも何よりも……。
(私……心配、されてるんだ……)
そっちの方に、胸が温かくなった。
誰かが自分のことを気にかけてくれる。
健やかでいてほしいと思ってくれる。
今まで生きてきて受けた事のない他者からの思いに、ソフィアの瞳の奥が思わず熱くなった。
気を抜いたら、目尻から何かが溢れて来てしまいそうになるのを、頑張って押し込める。
何はともあれ、アラン様を不安にさせたくない。
ソフィアは強くそう思った。
「わかりました、これからは適度に休憩を取るように致します」
「それでいい」
ふ、と満足げに笑うアラン。
また、心臓がドキドキとダンスを始める。
今度は単純に、アランの笑顔の破壊力が高すぎたせい。
同時に、ソフィアの胸の中でこんな気持ちが芽生えた。
(アラン様の期待に応えたい……)
嫌われたくない、失望されたくない。
そういったネガティブな欲求よりもプラス向きのそれは、ソフィアのやる気に火をつけた。
(明日からも訓練、頑張ろう)
胸の前で両拳をぎゅっと握って、ソフィアは改めて決意するのであった。
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