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第62話 心配
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「おそらく、熱疲労だコン」
ソフィアの部屋。
お尻から大きい狐色の尻尾を生やし白衣を纏った女性──アランの屋敷に仕える医者のフレイルが、ベッドで眠るソフィアの診断をし終えて言う。
「熱疲労……つまり、ストレスか?」
そばに控えていたアランの言葉に、フレイルは頷く。
「ソフィアちゃんは急に環境が変わった事に加えて、連日、精霊魔法の練習をしていたコン。精霊魔法の課題をクリアした事で緊張が解けて、一気に疲労が来たのだと思うコン」
フレイルの言葉に、アランは押し黙る。
何か大きな病気じゃなかったという安心の一方、倒れるまで無理をしていたという事に気づけなかったという罪悪感が胸に芽生えていた。
「……命に別状はない、という事だな?」
「二日か三日くらいゆっくり休んだら治ると思うコン。回復の精霊魔法を使うほどでもないコン、そんなに心配しなくて良いコンよ」
穏やかな笑みを浮かべてからフレイルは、診療道具を鞄に入れて立ち上がる。
「ただ、くれぐれも安静にするコン。胃に優しいものを食べて、温かくして、ぐっする眠るコンよ」
最後にそう言って、フレイルは部屋を後にした。
入れ替わりで、クラリスがやってくる。
「アラン様」
ソフィアのベッドの傍に、クラリスが椅子を持ってきた。
「助かる」
腰を下ろしてから、アランはソフィアの様子を見遣った。
今はだいぶ落ち着いているが、ソフィアの顔色は芳しくない。
額に汗を滲ませて、浅い呼吸を繰り返していた。
「アラン様、後は私が」
多忙なアランを慮ってか、クラリスが声を掛ける。
「クラリス」
「はい」
「少し、二人にさせてもらえるか?」
クラリスは一瞬、逡巡する素振りを見せたが、すぐに頭を下げる。
「かしこまりました。外に控えておりますので、何かありましたらお呼びいただけると」
「助かる」
再度頭を下げて、クラリスは退室する。
部屋にはソフィアとアランだけとなった。
「ソフィア……」
その名を空気に落とすも、ソフィアが目を開ける様子はない。
フレイルは単なる疲労だと言っていたが、苦悶の表情を浮かべるソフィアを見ていると心配が拭えなかった。
人間は弱い。
強靭な肉体を持つ竜族のアランにとってその印象は強く、このまま目を覚まさないのではないか、という恐怖もあった。
ふと、アランは気づく。
(……こんな気持ちは、初めてだな)
病床に伏せる仲間を目にする事は今まで何度もあった。
その度に憂慮の念を抱いてはいたが、今、ソフィアに対して抱いている感情の強さはその比では無かった。
心臓が冷や汗をかいているかのようにドクドクと高鳴る。
表情を歪ませて苦しそうにするソフィアを見ていると、身が引き裂かれるような痛みを感じた。
何か自分にできることは無いかと黙考するも、今ソフィアにとって一番大事なことはベッドの上でゆっくり休む事。
ただソフィアを見つめるしか出来ない事が、妙に歯痒かった。
ベッドの端に両肘をつき、祈るように合わせた両拳に顔を近づける。
「どうか、また……」
元気な姿を見せてほしいと、願ったその時。
『大丈夫だよ、ソフィアは』
頭に直接響いてくるような声に顔を上げる。
いつの間にか、フェンリルのハナコがソフィアのそばに腰を下ろしていた。
ソフィアの部屋。
お尻から大きい狐色の尻尾を生やし白衣を纏った女性──アランの屋敷に仕える医者のフレイルが、ベッドで眠るソフィアの診断をし終えて言う。
「熱疲労……つまり、ストレスか?」
そばに控えていたアランの言葉に、フレイルは頷く。
「ソフィアちゃんは急に環境が変わった事に加えて、連日、精霊魔法の練習をしていたコン。精霊魔法の課題をクリアした事で緊張が解けて、一気に疲労が来たのだと思うコン」
フレイルの言葉に、アランは押し黙る。
何か大きな病気じゃなかったという安心の一方、倒れるまで無理をしていたという事に気づけなかったという罪悪感が胸に芽生えていた。
「……命に別状はない、という事だな?」
「二日か三日くらいゆっくり休んだら治ると思うコン。回復の精霊魔法を使うほどでもないコン、そんなに心配しなくて良いコンよ」
穏やかな笑みを浮かべてからフレイルは、診療道具を鞄に入れて立ち上がる。
「ただ、くれぐれも安静にするコン。胃に優しいものを食べて、温かくして、ぐっする眠るコンよ」
最後にそう言って、フレイルは部屋を後にした。
入れ替わりで、クラリスがやってくる。
「アラン様」
ソフィアのベッドの傍に、クラリスが椅子を持ってきた。
「助かる」
腰を下ろしてから、アランはソフィアの様子を見遣った。
今はだいぶ落ち着いているが、ソフィアの顔色は芳しくない。
額に汗を滲ませて、浅い呼吸を繰り返していた。
「アラン様、後は私が」
多忙なアランを慮ってか、クラリスが声を掛ける。
「クラリス」
「はい」
「少し、二人にさせてもらえるか?」
クラリスは一瞬、逡巡する素振りを見せたが、すぐに頭を下げる。
「かしこまりました。外に控えておりますので、何かありましたらお呼びいただけると」
「助かる」
再度頭を下げて、クラリスは退室する。
部屋にはソフィアとアランだけとなった。
「ソフィア……」
その名を空気に落とすも、ソフィアが目を開ける様子はない。
フレイルは単なる疲労だと言っていたが、苦悶の表情を浮かべるソフィアを見ていると心配が拭えなかった。
人間は弱い。
強靭な肉体を持つ竜族のアランにとってその印象は強く、このまま目を覚まさないのではないか、という恐怖もあった。
ふと、アランは気づく。
(……こんな気持ちは、初めてだな)
病床に伏せる仲間を目にする事は今まで何度もあった。
その度に憂慮の念を抱いてはいたが、今、ソフィアに対して抱いている感情の強さはその比では無かった。
心臓が冷や汗をかいているかのようにドクドクと高鳴る。
表情を歪ませて苦しそうにするソフィアを見ていると、身が引き裂かれるような痛みを感じた。
何か自分にできることは無いかと黙考するも、今ソフィアにとって一番大事なことはベッドの上でゆっくり休む事。
ただソフィアを見つめるしか出来ない事が、妙に歯痒かった。
ベッドの端に両肘をつき、祈るように合わせた両拳に顔を近づける。
「どうか、また……」
元気な姿を見せてほしいと、願ったその時。
『大丈夫だよ、ソフィアは』
頭に直接響いてくるような声に顔を上げる。
いつの間にか、フェンリルのハナコがソフィアのそばに腰を下ろしていた。
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