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異世界転生編
第9話 一方、勇者(1)
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時は遡り、枷月葵が女神の手によりどこかへ転送されたところまで戻る。
俺たち勇者8人は女神に案内されて屋敷を見て回っていた。
女神は枷月葵を転送した後、まるで何も無かったかのように俺たちに着いてくるように指示を出した。
もちろん俺たちに異論があるはずなく、黙って指示に従うだけだった。
駿河屋光輝や桃原愛美から見れば、ただ無能を処理しただけに見えただろう。だが、女神の実際の目的は違うように思えて仕方がない。
デモンストレーション──役に立たないと分かれば簡単に切り捨てるぞ、という。
ついさっきまで地球で生きてきた俺たちに、死への危機感を簡単に植え付けるための。
それに気づいていない幾人かの勇者も、無意識中には必ず恐怖がある。この女神は本当に俺たちを殺し得る存在だと。
それだけでなく、精神平衡の為にかけたという魔法も胡散臭い。その魔法をかけたことは間違いないだろうが、この世界に無理に適正するように精神を弄られている感覚を覚える。それは同郷の仲間に死のリスクが迫っても誰も言葉を発しなかったことから明らかだ。
「皆様にはこれから魔獣や魔族と戦っていただくことになります」
大方屋敷の案内も終わり、最後に連れて行くべき場所があるということで女神の後ろを着いていた時、女神は本題と言わんばかりに話を始めた。
「基礎ステータスが高いとはいえ、戦闘経験が皆無な皆様がいきなり戦うのは厳しいでしょう」
「それは戦闘の稽古をつけてくれるとお聞きしていましたが…」
「はい、そのとおりです。ですがその前に武器を選んでほしいのです」
武器なんて、俺たちが今まで生きてきて触れる機会などあるはずがない。そんな物騒なものを現代日本は決して許さない。
ただ、妙にその言葉が腑に落ちるのは何故だろうか。まるで武器を持つことが当たり前かのような感覚に陥っていた。
「では今から行くところは…武器庫のようなところですかね?」
察しの良い駿河屋光輝の発言に、女神は機嫌の良い声で答えた。
「そのとおりです。流石は光輝様、理解が早くて助かります」
理解させるように意識を弄ったのはお前だろうと、俺は内心で突っ込む。
「紫怨様、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
思っていたことがバレたか、それとも顔に出ていたか、俺は咄嗟に表情を繕うことで誤魔化した。
女神も特に深堀りしたいわけでは無いのか、すぐに前へ向き直った。
「あ、着きました。ここが武器庫です」
てっきり”庫”というから外にあるのかと思ったが、武器庫は屋敷の中にあるようだった。
入り口は5メートルはありそうな大きな扉で、中に入るのにも一苦労しそうだ。
「開きなさい」
入るのが大変そうと思ったが、どうやらそうでは無いらしい。女神が右腕を前に突き出し扉に向かって何か呟いた時、自動ドアかのように扉は開いた。
自動ドアというよりは、タクシーのドアに近い。あれよりはゆっくりとした動きだが、両開きの扉がゆっくりと自動で開いていく様子はそっくりだ。
5秒ほどで扉は完全に開き切る。
中を見ると───そこは黄金の採掘場のようだった。
中には無造作に投げられた一級品と思われる武具。剣は長いものから短いナイフのようなもの、そして細いレイピアのようなものまである。それだけでなく、弓、斧、槍と数多くの武器が揃えられていた。
部屋の大きさは想像もつかない。ただ、そこに投げ込まれている武器の量は優に100を超えるだろう。
武器庫の中はシャンデリアで照らされていて、その光が武器に当たって反射する様子は神々の世界に迷い込んだようだ。嗜好品の知識は全くと言って良いほどないが、もしもこれが地球で売られていたら、一本数百万円はするのだろう。
「この中からご自由にお選びください……と言いたいところなのですが、その前に説明だけさせてください」
目前に広がる黄金に、皆駆け出したい気持ちが昂ぶる。だが、一応は高校生なのだ。その気持ちを理性で抑え込み、女神の方に振り返った。
「まず、この武器庫にあるものはすべてマジックアイテムです」
聞き慣れない言葉だが、その思いを駿河屋光輝が代弁する。
「マジックアイテム?」
「はい。マジックアイテムとは魔法が込められた道具のこと。例えば───」
女神は置いてある黄金の剣を一本拾い上げる。
「───この剣は刃こぼれしません」
刃こぼれは、刃がついているものであれば確実に起こる。ハサミでも、包丁でも、剣でも。それが物質でできている限り使っていけば欠けるのだから、刃こぼれがしにくくなることはあっても、しなくなるということは不可能だ。
だが、それはあくまで科学技術の話。
この剣には魔法が込められている。だからこそマジックアイテムなのであり、その魔法の力が”刃こぼれしなくなる”ことなのだろう。
「つまり、何らかの特殊な力が宿っている道具をマジックアイテムと呼ぶ、ということで合っていますか?」
「はい、そのとおりです。ですが注意してほしいのは、中には効果の発動に魔力を必要とする物もあります」
魔力については屋敷の案内中に女神から説明されていた。
魔力とは魔法の元。通俗的な言葉で言えばMPといったところだ。
そもそも魔法自体、魔力を他のものに変換することで起こす。
例えば火を起こす魔法であれば、魔力を魔法陣を仲介し、火に変換することで発動するのだ。魔法陣は魔力を変換するケーブルのような役割を担っている。
魔力は魔素という形で大気中に存在しているが、魔法発動に使用する魔力は基本己の体内にある魔力だ。体内に貯まった魔力が魔法陣を通すことで魔法を使うということになる。
そして貯められる魔力にはもちろん、個人差がある。それもその優劣はかなり大きい。元々のポテンシャルや本人の努力によって魔力量は決定されるのだとか。
消費した魔力は一定時間で回復する。これは大気中の魔素を体で吸収することが出来るからだと言う。
これが魔力という概念と魔法発動までのプロセスである。効果の発動に魔力が必要なのは、魔法と同じような扱いだということだろう。
「常時効果を発動するものは大気中の魔素を利用していますが、効果の発動には己の魔力を利用する必要があるものもあるのです。これだけ聞くと前者の方が優秀ですが、己の魔力を使うということは自分で効力を調整できるということであり、周りの環境に頼らないということです。優劣をつけることはできません」
「なるほど」
武器庫にあるのは何も武器だけではなかった。防具のようなものからアクセサリーまである。指輪やネックレスのようなものもマジックアイテムなのだろう。
「ここにあるものは頂いてもいいのですか?」
「はい、好きなだけ取っていって頂いて構いませんよ」
流石は女神というところだ。懐が広いというよりは、この程度では気にしないという余裕を感じられる態度だ。
俺たちは女神の説明が終わったと判断し、武器庫に足を踏み入れていく。
やはり黄金の世界だ。無造作に積み重ねられた黄金がそれを形作っている。
他の7人が武器を選び始めているのを見て、俺も武器を選ぶ。
選ぶ武器ははじめから決まっていた。レイピアだ。元々フェンシングを習っていたとかではなく、単純に使いやすいだろうという理由からだ。
弓や斧などの武器も面白そうだが、最も直感的に使用できるのは剣だろう。俺はSTRがそこまで高くないから細くて軽いやつが良い。
こうして考えると最も合っているのがレイピアなのだ。
俺は白銀で出来た一本のレイピアを手に取り───そしてその隣にある白銀のショートソードも手に取る。
近くに転がっている指輪やネックレスも幾つか貰い受けておく。あまり多く貰うのも不自然なので、アクセサリーは合わせて5個程度だ。
「言い忘れてましたが、込められている魔法はあそこで───」
女神は武器庫入り口付近にある鑑定盤と酷似したものを指差す。
「───確かめることができます」
他の勇者はまだ武器を迷っているようなので、俺は一足早く武器の鑑定をしに行く。
───何をワクワクしてるんだか…。
他の勇者たちの子供のように輝く目を見て、俺は馬鹿なものだと侮蔑の念を心の内に浮かべた。
───まぁ、鑑定するか。
努めてその感情は外に出さないようにし、俺は鑑定盤に武器を1つずつ置いていく。
俺たち勇者8人は女神に案内されて屋敷を見て回っていた。
女神は枷月葵を転送した後、まるで何も無かったかのように俺たちに着いてくるように指示を出した。
もちろん俺たちに異論があるはずなく、黙って指示に従うだけだった。
駿河屋光輝や桃原愛美から見れば、ただ無能を処理しただけに見えただろう。だが、女神の実際の目的は違うように思えて仕方がない。
デモンストレーション──役に立たないと分かれば簡単に切り捨てるぞ、という。
ついさっきまで地球で生きてきた俺たちに、死への危機感を簡単に植え付けるための。
それに気づいていない幾人かの勇者も、無意識中には必ず恐怖がある。この女神は本当に俺たちを殺し得る存在だと。
それだけでなく、精神平衡の為にかけたという魔法も胡散臭い。その魔法をかけたことは間違いないだろうが、この世界に無理に適正するように精神を弄られている感覚を覚える。それは同郷の仲間に死のリスクが迫っても誰も言葉を発しなかったことから明らかだ。
「皆様にはこれから魔獣や魔族と戦っていただくことになります」
大方屋敷の案内も終わり、最後に連れて行くべき場所があるということで女神の後ろを着いていた時、女神は本題と言わんばかりに話を始めた。
「基礎ステータスが高いとはいえ、戦闘経験が皆無な皆様がいきなり戦うのは厳しいでしょう」
「それは戦闘の稽古をつけてくれるとお聞きしていましたが…」
「はい、そのとおりです。ですがその前に武器を選んでほしいのです」
武器なんて、俺たちが今まで生きてきて触れる機会などあるはずがない。そんな物騒なものを現代日本は決して許さない。
ただ、妙にその言葉が腑に落ちるのは何故だろうか。まるで武器を持つことが当たり前かのような感覚に陥っていた。
「では今から行くところは…武器庫のようなところですかね?」
察しの良い駿河屋光輝の発言に、女神は機嫌の良い声で答えた。
「そのとおりです。流石は光輝様、理解が早くて助かります」
理解させるように意識を弄ったのはお前だろうと、俺は内心で突っ込む。
「紫怨様、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない」
思っていたことがバレたか、それとも顔に出ていたか、俺は咄嗟に表情を繕うことで誤魔化した。
女神も特に深堀りしたいわけでは無いのか、すぐに前へ向き直った。
「あ、着きました。ここが武器庫です」
てっきり”庫”というから外にあるのかと思ったが、武器庫は屋敷の中にあるようだった。
入り口は5メートルはありそうな大きな扉で、中に入るのにも一苦労しそうだ。
「開きなさい」
入るのが大変そうと思ったが、どうやらそうでは無いらしい。女神が右腕を前に突き出し扉に向かって何か呟いた時、自動ドアかのように扉は開いた。
自動ドアというよりは、タクシーのドアに近い。あれよりはゆっくりとした動きだが、両開きの扉がゆっくりと自動で開いていく様子はそっくりだ。
5秒ほどで扉は完全に開き切る。
中を見ると───そこは黄金の採掘場のようだった。
中には無造作に投げられた一級品と思われる武具。剣は長いものから短いナイフのようなもの、そして細いレイピアのようなものまである。それだけでなく、弓、斧、槍と数多くの武器が揃えられていた。
部屋の大きさは想像もつかない。ただ、そこに投げ込まれている武器の量は優に100を超えるだろう。
武器庫の中はシャンデリアで照らされていて、その光が武器に当たって反射する様子は神々の世界に迷い込んだようだ。嗜好品の知識は全くと言って良いほどないが、もしもこれが地球で売られていたら、一本数百万円はするのだろう。
「この中からご自由にお選びください……と言いたいところなのですが、その前に説明だけさせてください」
目前に広がる黄金に、皆駆け出したい気持ちが昂ぶる。だが、一応は高校生なのだ。その気持ちを理性で抑え込み、女神の方に振り返った。
「まず、この武器庫にあるものはすべてマジックアイテムです」
聞き慣れない言葉だが、その思いを駿河屋光輝が代弁する。
「マジックアイテム?」
「はい。マジックアイテムとは魔法が込められた道具のこと。例えば───」
女神は置いてある黄金の剣を一本拾い上げる。
「───この剣は刃こぼれしません」
刃こぼれは、刃がついているものであれば確実に起こる。ハサミでも、包丁でも、剣でも。それが物質でできている限り使っていけば欠けるのだから、刃こぼれがしにくくなることはあっても、しなくなるということは不可能だ。
だが、それはあくまで科学技術の話。
この剣には魔法が込められている。だからこそマジックアイテムなのであり、その魔法の力が”刃こぼれしなくなる”ことなのだろう。
「つまり、何らかの特殊な力が宿っている道具をマジックアイテムと呼ぶ、ということで合っていますか?」
「はい、そのとおりです。ですが注意してほしいのは、中には効果の発動に魔力を必要とする物もあります」
魔力については屋敷の案内中に女神から説明されていた。
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そもそも魔法自体、魔力を他のものに変換することで起こす。
例えば火を起こす魔法であれば、魔力を魔法陣を仲介し、火に変換することで発動するのだ。魔法陣は魔力を変換するケーブルのような役割を担っている。
魔力は魔素という形で大気中に存在しているが、魔法発動に使用する魔力は基本己の体内にある魔力だ。体内に貯まった魔力が魔法陣を通すことで魔法を使うということになる。
そして貯められる魔力にはもちろん、個人差がある。それもその優劣はかなり大きい。元々のポテンシャルや本人の努力によって魔力量は決定されるのだとか。
消費した魔力は一定時間で回復する。これは大気中の魔素を体で吸収することが出来るからだと言う。
これが魔力という概念と魔法発動までのプロセスである。効果の発動に魔力が必要なのは、魔法と同じような扱いだということだろう。
「常時効果を発動するものは大気中の魔素を利用していますが、効果の発動には己の魔力を利用する必要があるものもあるのです。これだけ聞くと前者の方が優秀ですが、己の魔力を使うということは自分で効力を調整できるということであり、周りの環境に頼らないということです。優劣をつけることはできません」
「なるほど」
武器庫にあるのは何も武器だけではなかった。防具のようなものからアクセサリーまである。指輪やネックレスのようなものもマジックアイテムなのだろう。
「ここにあるものは頂いてもいいのですか?」
「はい、好きなだけ取っていって頂いて構いませんよ」
流石は女神というところだ。懐が広いというよりは、この程度では気にしないという余裕を感じられる態度だ。
俺たちは女神の説明が終わったと判断し、武器庫に足を踏み入れていく。
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弓や斧などの武器も面白そうだが、最も直感的に使用できるのは剣だろう。俺はSTRがそこまで高くないから細くて軽いやつが良い。
こうして考えると最も合っているのがレイピアなのだ。
俺は白銀で出来た一本のレイピアを手に取り───そしてその隣にある白銀のショートソードも手に取る。
近くに転がっている指輪やネックレスも幾つか貰い受けておく。あまり多く貰うのも不自然なので、アクセサリーは合わせて5個程度だ。
「言い忘れてましたが、込められている魔法はあそこで───」
女神は武器庫入り口付近にある鑑定盤と酷似したものを指差す。
「───確かめることができます」
他の勇者はまだ武器を迷っているようなので、俺は一足早く武器の鑑定をしに行く。
───何をワクワクしてるんだか…。
他の勇者たちの子供のように輝く目を見て、俺は馬鹿なものだと侮蔑の念を心の内に浮かべた。
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