【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

文字の大きさ
22 / 76
異世界転生編

第22話 魔術師ギルド(4)

しおりを挟む
 部屋は一階にあったのか、窓の外はすぐに外に繋がっていた。

 路地裏に出るかと思ったが、どうやら大通りのようだ。

 目的地から直接魔術師ギルドまでやって来たので、位置は特定できていた。

 窓から出てきた俺を訝しむ目もある。
 それは、手枷と足枷を着けているのも相まってだろう。

 ただ、奴隷の持ち込みが可能なことからか、そこまで不審がる様子はないようだ。

 本当は足の指を治療してもらいたかったが、どうやらは回復魔法を習得していないようだったので諦めた。

 おかげで、走った道に血痕が残る。

 俺は騎士の拠点に向かい、人を極力避けながら走り始めた。




◆     ◆     ◆




 ガーベラは、拷問を受けてもなお冷静でいる目の前の少年に、恐怖を覚えていた。

 鉄球を足に落として、足を潰す。数秒痛みを感じさせたら、それに慣れるまでに治してしまう。
 これを繰り返し、徐々に精神を追い込んでいくのだ。

 それなのに、目の前の少年の心はいつまで経っても折れなかった。
 それどころか、冷静に状況を分析しているように見えた。

───恐ろしい。

 それが率直な感想だ。

 まるで何者かに精神を無理に弄られているような印象も受けた。年齢の割に精神が落ち着き過ぎている。相当な訓練を受けているか、もしくは精神を安定させるような魔法を施されている。

 どちらにせよ、只者では無いことは確かだった。

───顔立ちからして…アマツハラの大陸出身か?

 アマツハラ出身の人間が他の大陸に行くことは珍しい。

 鎖国なる体制を採っているアマツハラでは、基本的に外部からの人間、外部への人間を認めないのだ。

 最近でこそ旅行者等の受け入れは盛んになってきたが、依然として技術交換等は断っている。

 大陸内の住心地も良いらしく、大陸外へ出る人間は”修行者”と呼ばれる一部の人間のみ。”修行者”は力を追い求めて大陸から出る者のことだそう。

 私も以前、何度か”修行者”と出会った事があるが、彼らは強い。刀と呼ばれる細長い剣を使う者が多いのだが、その武器の扱いが格段に上手いのだ。
 単純な能力ではなく、戦闘技術が逸脱している。

 だから、あの少年も”修行者”の一人と考えていた私にとって、彼は驚異だったのだ。

 会って突然、支配系統の魔法を使ってきたことも考えると、余程自分の能力に自信がある様子でもあった。

 好戦的で危険な修行者など、拘束するに越したことはない。

 しかも彼が着ていた服。
 素材と質から考えるにあれは最上級品だ。

 そんな物を気楽に着ているということは、およそ大商人か貴族だろう。

 力があり、好戦的で、金もある。もしかしたらある程度の権力もある。

 野放しにしておくことは危険と判断しての行動なのだ。

 相手が反撃してくるわけでもないので、精神はゆっくりと追い詰めて行けば良い。女神様との面会の為に本部へと帰ってきたが、まだそれまで時間は多くあるのだから、焦る必要はない。


 と、思っていた。


 だが、彼の精神は私たちが想定していた以上に強固なものだった。

 それは常軌を逸するもので──とても彼が唯の人間とは思えなかった。

 何者かに精神を操られているかのような強靭さに、私たちは半ば拷問を諦めつつあった。

 何度彼の足を潰そうと、彼は決して口を割らない。何を考えているか分からないその目で、私を虎視眈々と射抜いていた。

───何を狙っている…?何故口を割らない?話せばすぐに釈放される、彼はそう思っているはずだろう?

 魔法使いにとって武器とは、杖や魔道具などだけを指す言葉ではない。本人が持つ知識や経験、それら全てを合わせて武器と呼ぶ。

 知識というのはそれほどまでに魔術師にとっては必要で、それは私にとっても変わらない。

 知識を探求し続け、多くの人間に触れた。そして、人間の感情や思考のパターン、それすらも概ね見い出せる領域にまで達していた。

 そのセオリーが通じない相手は、格上か、狂っているのか。
 目の前の少年はどうも、格上というよりは狂っているタイプに思えた。

 自分の知識の範疇にない相手。

 それは、彼への拷問を遂行する気持ちより、私の恐怖心を煽り立てた。

「ああああぁぁぁぁああ────ッ!!」

 だが、次の瞬間。

 さすがに痛みに耐えきれなくなってきたのか、少年は先程以上に悲痛な声を上げた。

 そして、その激痛に耐えられないかの如く、彼は暴れ回った。

「うああああぁぁぁぁ────ッ!」

 ガタンッ

 椅子が倒れる。それでもお構いなしに彼は暴れ続けている。

───厄介だ…。

 この事態も想定してはいた。拷問を続けられれば精神がおかしくなるのは普通だ。その際は、拘束して精神を安定させるか、気絶させてしばらく待つか、の2つの行動を用意していた。

 どちらにせよ、まずは拘束を試みる。魔法でするのが一番だが、消費を抑えておきたい今はサブギルドマスターに任せる。

「サブギルドマスター、拘束しなさい」

 私は努めて冷静に指示を出した。

 あくまで拘束さえしてしまえば解決なのだと、そう自分に言い聞かせて。

 サブギルドマスターは私の指示を受け、少年の元に近づくと、腕を使って締め付けるように拘束した。

 椅子ごとガタガタと暴れ回っている少年は、サブギルドマスターによって羽交い締めにされている。

 それでも、暴れることを辞める様子はなかった。

「ギルドマスター、こいつ、なかなか暴れるのを辞めませんよ」

 困った。

 だから、

「一旦気絶させても問題ない」

 そんな投げやりな指示を出した。

「えぇ、いいんですか?じゃあやっちゃいますね」

 サブギルドマスターは困惑しながらも、首を絞める力を強くしていく。

「ぐっ…………かはっ……!」

 少年はそれに抵抗するよう、手でサブギルドマスターの腕を解こうとするが、少年の細い腕ではとても、サブギルドマスターの屈強な腕には対抗できない。

 首の骨が折れるギリギリの強さで、サブギルドマスターは首を絞め続けていた。

「…………<支配ドミネイト>」

 その時、少年が何かを小さく呟いたように聞こえた。

 だが、椅子のガタガタと動き回る音に掻き消され、ガーベラは気にも留めなかった。


 そして、それは致命的な失敗となった。


「エドワード、ガーベラに向かって一発魔法を放ち、そのまま椅子を破壊しろ」

 サブギルドマスターがなぜか少年の指示に従い、炎の球を私に向かい発射した。

───支配系統のスキルッ!?まずいっ!

 呆気に取られて防御が遅れる。そのタイミングで少年は椅子を破壊し、自由の身となっていた。

「そのままガーベラを抑えていろ」

───クソッ!!逃げられる!

 彼が何を考えているか、どこへ逃げるのか、想像することもできなかった。

 理解できたのは逃げられるということだけ。そしてそれだけは避けねばならないという意思だけ。

 サブギルドマスターと戦う私をチラと見て、少年は部屋の窓から脱走した。


「……<追尾ホーミー>」

 私は一言、彼の行く先を調べる魔法を呟いた。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、車の衝突事故に巻き込まれそうになる。そんな彼を救い出そうと通りがかった4人の高校生が駆けつけるが、唐突に彼等の足元に「魔法陣」が誕生し、謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには5人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。老人達の話によると現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「4人」のはずであり、1人だけ他の人間と比べると能力が低かったレアは召喚に巻き込まれた一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追い出されたレアの持っていた能力こそが彼等を上回る性能を誇り、彼は自分の力を利用してステータスを改竄し、名前を変化させる事で物体を変化させ、空想上の武器や物語のキャラクターを作り出せる事に気付く。

S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました

白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。 そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。 王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。 しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。 突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。 スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。 王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。 そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。 Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。 スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが―― なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。 スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。 スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。 この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

処理中です...