【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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聖女暗殺編

第46話 教会勢力(1)

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 天職とは、何か。

 固有スキルとは違い、天職は全ての人に与えられる。
 全ての人間にチャンスは与えられているのだ。

 では、天職とは何なのだろうか。

 魔術的な答えを取るか、哲学的な答えを取るか。見方によっては様々なように捉えられる。


 宗教的にはどうだろう。

 答えは単純なものだ。
 神により全人類に平等に与えられた機会、と。
 偉大なりし神に与えられた重要な使命、と。

 言い方こそ宗教味が強いが、内容は言い得ている部分がある。

 天職が与えられる仕組みは”神”を用いずには説明できない。天職というのは、その人間の向き不向きを直接示しているから、使命と言い換えることもできるだろう。

 ただ、宗教の問題はそういった点には無い。
 立場の上下を天職によって決めてしまう点にある。

 教会がその良い例だ。

 教会内では聖にまつわる天職の優劣で立場を決める。
 例えば、聖女。上から3番目の立ち位置であり、そもそも存在が希少な存在だ。
 最も上なのは教皇。現存する教皇は世界に4人しか居ない。それほどまでに希少なのだ。
 下には、司教、聖女、司祭、聖騎士、神官と続く。尤も、その他にも聖なる天職はいくつかあるのだが、そういった場合は実力によって立場が決定される。
 実力というのはもちろん、聖魔法が主となる。

 聖なる天職以外でも、信仰心を強く持つ者は多くいる。
 そういった場合も実力や信仰心で判断されることとなるのだが、残念ながら原則、聖女以上の立場になることはない。世知辛い話だ。

 また、この世界の宗教は基本的に1つだ。
 それは神が目に見える形で存在することに由来し、それゆえにその宗教も多神教である。

 一般的には”新天教”という名で呼ばれるが、”べヘアシャー”という呼び方もよく聞く。
 ”べヘアシャーの神”とは、新天教で信仰されている神の総称となるのであった。

 女神ベールの君臨する大陸はプラヴィーチリと言う大陸だ。
 隣の大陸であるリュボーフィとは海を挟むものの比較的近い距離にあり、毎日のように船が行き来しているところも見かけられる。
 活発な交流は見受けられるのだが、女神自身がリュボーフィに行くことはなかった。

 世界に4人しか居ない教皇の話をしよう。

 教皇は名の他に、自らを二つ名で呼ぶこともある。
 理由は”神に名を授けた以上、他人にむやみに名乗れない”とのことらしく、実生活で困ることもないゆえに問題は無いらしい。

 実は、プラヴィーチリとリュボーフィにはそれぞれ1名ずつ教皇が居るのだ。
 ”絶対たる統括ヘアシャー”の教皇、”神の親愛リーベ”の教皇と名乗っている。本名は不明。ヘアシャー、リーベと呼ばれることが多いようだ。

 教皇は強力な天職だ。
 勇者の中からさえ、聖女が最高だったことからそれが伺える。とはいえ、戦闘の性能では聖女の方が上だったりするのだが。

 教皇の天職に適していることは、基本的には治癒と強化支援になる。攻撃性能を捨てているがために、その効果は絶大なものだ。
 ペナルティがかなり少ない復活魔法を使用することも出来るらしく、

 通常復活魔法というのは失敗の確率が高く、それは被術者の生前の精神力や生命力に依存する。
 低かった場合、復活が出来ずに死体が消滅することがあるのだ。
 これを”復活のリスク”と呼ぶのだが、これは術者と魔法の階級により、低くすることが出来る。

 問題はもう一つ、復活後に被術者は生命力を消耗しきった状態で復活するということだ。
 これがかなり面倒な状態にあり、この生命力の消費を”復活のペナルティ”と呼ぶ。
 復活のペナルティは完全に使用する魔法やスキルに依存しており、術者の実力ではどうしようもない。復活のリスクを乗り越えたところで、復活のペナルティによって死してしまうこともあるのだ。

 この復活のペナルティをゼロにする魔法──<ディスデッドギフト>等がこれに当たる──は教皇でさえも使えない。
 ただし、限りなく低い魔法は使用できる。第0階級の聖魔法だ。

 これが教皇の強みだ。
 強いて弱点を述べるのであれば、聖魔法以外の魔法・スキルを習得できない点だろう。そのデメリットを打ち消すレベルで聖魔法に対する適正を手に入れられる為、大した問題にはならないのだが。

 そんな教皇は普段、人目のつかない場所に居ることが多い。
 その理由は単純、仕事が多いからだ。
 それも執務ばかり、教皇とは思えない。

 面会などもない。
 教会では傷を癒やす、懺悔するなどのことができるが、まず話を通すのは神官からだ。
 対処不能と思われた場合のみ、上に回すことになる。

 それを繰り返す為、教皇と顔を合わせられる人物は基本、司教のみとなる。もはや、幻の人物なのだ。

 ただ、今日は違う。

 聖女という立場でありながら、教皇と面会する権利を持っている女が居た。

 女の名は、桃原愛美モモハラアミ
 聖女であると同時に、勇者でもある彼女。

 司教と同程度か、それ以上の立場を持っていると言っても過言ではない彼女。そんな彼女と今日、”絶対たる統括ヘアシャー”の教皇は面会の予定があった。

「……」

 黙々と執務に向かいながら胃痛を感じる。

 執務は楽で良い。
 何も考えずに作業をこなせばよいだけなのだから、迷うことがない。

 それに比べて──

「はぁ………」

 勇者との面会など、これほど面倒なことは無い。面倒というより億劫。ついでに、僅かながらの緊張もあった。

「あー……帰りたいよ……」

 一人が仕事をするだけにしては余りにも広い部屋、ヘアシャーはがっくりと肩を落とす。
 民衆の前では決してできない、素の彼の姿だ。

 ステンドグラスから差し込む光が、彼の美しい青髪に反射してキラキラと輝く。
 両脇にある天使の像がそれを讃えるかのように見えるのも、どこか皮肉めいている。

 そもそも、彼とてこの仕事自体を引き受けたくて引き受けたわけではない。
 教皇が大陸に自分しか居ないことは確かだが、面会だったら司教でも問題ないだろう。

 だが、彼はこの仕事を自ら志願した。
 ヘアシャーと名乗る彼が最も信仰する女神、ベールからの依頼だったからである。

 女神ベールは貴族と勇者を面会させることは望まないが、教皇やギルドマスター、剣帝との面会は好んで行おうとする。

 理由は簡単に想像がつく。貴族は勇者を利用しようと考えるが、実力者は勇者を手助けしようと考えるからだ。
 それに加え、魔王戦において参戦する者たちとの顔合わせということもあるのだろう。

 ヘアシャーが魔王戦に参加する予定は無い。
 不測の事態が起これば参戦することになるだろうが、それは聖女や司教が皆殺しにされた時くらいだろう。
 そんなことはまず無いと言える。

 そういう意味では気が楽だ。

 戦闘を好まないヘアシャーにとって、魔王の心配をする必要が無いのは大きい。

「あ~……。でも面会かぁ………。嫌だなぁ、ほんとに…。勇者様、優しいと言いなぁ……」

 見た目から受け取る印象とは反して、情けない声を出すヘアシャー。
 折角の好青年という容姿が台無しだ。

 尤も、人前ではその印象通りの彼を演じるのだが。

「この服もなぁ………。ちょっと派手過ぎるよなぁー………」

 重厚感のある教皇の正装を纏い、彼は支度を始めたのであった。
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