【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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聖女暗殺編

第60話 この世界で、ボクにできること

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 あの後、女神と名乗る人物に連れられ、能力を鑑定すると言われた。

 その辺りのことはなんでも良い。

 重要なのは、俺の能力が魔法に関わる強力なものであったということと、
 俺が夢咲叶多ユメサキカナタになったのは、正解だったということだ。

 特に2つ目。

 同郷の仲間──枷月葵カサラギアオイというやつが女神に殺された。
 無能だったからだ。
 仲間はずれになれば簡単に殺されると知った。

 自分の判断にホッとした。


 その後は武器を与えられて、修行をさせられて。
 魔王とやらを倒すための準備をさせられた。

 不思議と戦うことへの抵抗はなく、魔法というものに俺はハマっていった。
 ゲームのように単純なものかと思えば、意外と奥深い事を知った。

 魔法には属性というものがある。
 基本となる属性は、炎、水、風、土。そして光と闇だ。
 そこから、氷や雷などの派生した魔法ができるらしい。
 氷は水を発展させ、雷は水と風の合わせ技のようなもの。それらを区別するために、また新たな魔法として扱うのだとか。

 聖や魔といった属性もあるのだが、それは少し特殊なので置いておく。

 また、魔法には階級と呼ばれるものがある。
 第1階級から第5階級まで。階級は上がれば上がるほど強い魔法となるが、その枠から外れた第0階級と呼ばれる魔法も存在していて、それは固有スキルのようなもの。
 第0階級については魔法体系から外れたものだったので、俺はひとまず考えないことにした。

 そんな階級がある魔法だが、第0から第5までの階級に当てはまらないものもある。
 原始魔法と呼ばれる代物で、現代では失われた魔法の1つらしい。

 幸運にも、俺の固有スキル<魔術大典>は、その原始魔法を扱えるようにする、というものだった。
 原始魔法には属性系統がなく、効果も単純なものが多い。
 だが、その代わりに魔術効率が凄まじく、低い魔力でも絶大な効果を発揮するのだ。
 更に驚くべきことに、込める魔力の調整が簡単。
 使用魔力量を増やせば簡単に効果を上げることができる。

 では、そんな強力な魔法がなぜ失われたのか。

 歴史書を読んでも、そもそも原始魔法について詳しく書いていない。
 書いてあっても一行や二行程度。
 つまり、理由さえも分からないのだ。

 およそ、何者かによって消されたと考えるのが適当だろう。

 俺が考えた理由はもう1つある。
 純粋に難しいからだ。
 扱いに慣れてしまえば強く、簡単な魔法なのだが、それまでがとても難しいのだ。

 更に、一般的な魔法で使える、魔法強化が原始魔法では不可能。
 これは第0階級の魔法も同じだが、実戦では多少不利になるものだ。

 閑話休題。

 そんなある日、俺たちを召喚した女神様にあるお願いをされた。

 魔獣が侵攻してきているから、そのうちの1万ほどを倒してくれないか、ということだった。

 二つ返事で了承した。

 自分が研究していた魔法──原始魔法<シエル>を試せると思ったからだ。

 弱いとは言え、魔獣1万を相手に。
 自分の魔力の8割ほどを使った原始魔法をぶっ放してやろうと思っていた。

 魔獣が攻めてくるのは久しぶりだったらしいが、元々そのために召喚されていた為、動揺することはない。

 女神様は俺を送りたかったようだが、転移の実験も兼ねて、俺は颯爽とその場を去った。




・     ・     ・




 転移した場所は王都を囲う壁の上。
 眼下には魔獣の群れが広がっていた。
 偵察している騎士の人たちに挨拶をして、俺はその場についた。

 書物で与えられていた魔獣の情報と同じだったということもあるが。
 そういう理由ではなく、俺が魔獣を見て恐れることはなかった。
 ゲームでゾンビを見慣れていても、実際にゾンビを見たら驚くはずだろう。
 だが、そんなことは一切なかった。

 なぜか、一度対峙したことがある気がしたのだ。
 それがなぜかは分からない。
 だが、魔獣に対してテンパることがなかったのは、良いことだろう。

 騎士の人たちは、口々に、
「勇者様が来られた!これで安心だ!!」
 などと宣っている。

 騎士は実戦経験を積んでいるはずだが、やはりあの数には怖気づいているのだろう。

 と、そういう無駄な考えは努めて排除する。

「俺は今からあそこに──」
 200メートルは先にいるだろう、魔獣の群れを指差す。
「──一発魔法を撃ちます。巻き込まれることはないと思いますが、一応、離れていてもらえますか?」

 一応、注意はしておく。
 自分がミスをするのは想像ができなかったが、
 了承した騎士たちはそそくさと側を離れていった。
 これはこれで悲しかったが、それでいいのだ。

 俺は魔法を発動する座標を意識する。
 <シエル>は、発動したあとに狙うタイプではなく、発動場所をそもそも対象の足元にするのだ。
 効能は名前にちなんでいて、濁流の渦を発生させるというもの。
 ダメージは少なそうに見えるが、そう言う諸君には津波から生還してみてほしいものだ。

 座標は、魔獣たちの中心。

 込める魔力は全部のうち、8割。

 精神を統一し、

「──<シエル>」

 魔法を放つ。


 魔獣の軍勢の足元に、巨大な魔法陣が描かれた。
 それは1万の魔獣を飲み込むほど大きい。

 それが青く淡い光るを放ち──、
 強大な水の渦が発生した。

 その勢いは凄まじく、オーク・ゾンビさえもその流れには逆らえない。
 全ての魔獣が飲み込まれ、渦の向きのままに流されていく。

 水は外に流れ出すことはなく、魔法陣を境としてその内部でのみ回り続ける。
 勢いの強い洗濯機のようだ。
 外に出ようとする魔獣も居る。
 だが、渦が内部に向かうように巻いていることもあり、その抵抗は虚しく散っていく。

 途中、魔獣同士がぶつかって弾けるような音を響かせながら。
 断末魔さえもなく。

 魔法が終了した時、そこには魔獣の死骸しか残っていなかった。
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