【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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聖女暗殺編

第62話 聖女暗殺計画

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 王都の外で魔獣の襲撃がある一方で。

 俺は外の異様な空気を感じ取り、目を覚ました。
 王都が騒がしいのはいつものことだが、今日に限ってはいつもと違った騒がしさだ。
 どちらかといえば、動揺に近い感じがする。

 俺は部屋の窓から外を眺める。
 通りには多くの人が居るが、そのほとんどがいつもとは違う。
 中心街に向かって流れが出来ているのだ。
 普段であれば中心街など、用事はないはずだが。

 何が起きているのか。

 それを理解するのに、そう時間はかからなかった。

「皆さん!落ち着いてください!!」

 その一声は、俺に状況を理解させるに至った。
 そこでふと、<支配ドミネイト>していた騎士の死亡を確認する。
 戦士長ではなく、ただの騎士に過ぎない。
 だが、彼が死んだということ。
 それは、騎士団が今、戦に赴いているということを示す。

 加えて、桃原愛美モモハラアミの登場。
 聖女服を着て、凛とした声を上げる彼女の姿。
 つまり、魔王軍が進撃してきたのだろう。
 騎士団はそれと応戦している。
 その雰囲気を汲み取り、民は不安を覚え始めた。
 そして、それを抑えるための桃原愛美モモハラアミだ。

「ご安心ください!今から全てをお話します!!広場まで集まっていただけますか!!」

 声を張り上げる桃原愛美モモハラアミ
 妙に声が響くと思ったが、魔道具を使っているのか。マイクのようなものが存在していてもおかしくない。

 彼女の声を聞き、中心街へ向かっていた人々は広場へと踵を返す。
 そういった人々を既のところで止めていた衛兵たちは、あからさまにホッとした表情を見せた。
 絶大な信頼を持っている聖女だからこそ、成し得る技なのだろう。

 桃原愛美モモハラアミのスピーチを聞くのも良い。
 だが、始まりの獣ラストビーストの際に一度聞いている上、俺自身はそれに興味は無い。

───そういえば……

 駿河屋光輝スルガヤコウキから奪った魔道具にも、マイクのような効果を持つものがあった気がする。
 勇者全員に与えられたものなのだろうか。

 確かに勇者の発言力は凄いものだし、納得はできる。
 女神のことだし、自分ではなく、勇者に色々と代弁させるつもりなのかもしれない。

───というか…なんで今のタイミングで魔王は侵攻を始めるんだ?

 そこで、素朴な疑問を抱いた。
 ここで女神を一気に叩く作戦なら分かる。
 だが、タクトの口振りから、まだ女神への決定打には足りていない印象を受けた。
 今はまだ、女神を殺すことはできないと思っていたのだ。

「他の目的がある?」

 そう考えるのが普通だ。
 陽動で、王都にあるアイテムでも回収しに来たと言われたほうが納得できる。
 なんにせよ、女神を殺すことは目的ではないのだろう。

 さておき、この時期に桃原愛美モモハラアミを殺しておくに越したことはない。
 国内の戦力が外に行ってるうちに、潰しておくべきだ。

 狙うならスピーチ中だろう。
 それ以外に会うことは困難だろうし、教会内という向こうのテリトリーで戦う気はない。

 スピーチ中に殺すためには、問題点がいくつかある。

 1つ目は、多くの人の目に付くこと。
 これは、黒フードとしての名を広める分には問題がないため、良しとする。

 2つ目は、護衛がいる問題。
 どのレベルかにもよるが、多分、駿河屋光輝スルガヤコウキの時よりも厳しいことは間違いない。
 駿河屋光輝スルガヤコウキが殺された以上、前以上の警戒をするのも当たり前だからだ。それに、あの時はあまりにも無警戒過ぎた。

 3つ目は、殺したあとの問題。
 スピーチ中の暗殺は地球でも聞いたことはあるが、その全てが逃走には失敗している。
 すぐに逮捕されてしまうのだ。
 一番の問題はこれだろう。離脱方法は考えておかなくてはならない。
 尤も、最悪これを、願いの結晶によって解決するという手はある。

 これを全て解決するにはどうすれば良いか。

 まず、単身で行うか、複数人で行うかを考える必要がある。
 残念ながら、一人で企てる暗殺というのは成功率が低い、気がする。体感だが。
 となれば、少数であれ、人は雇っておくべきだろう。

 誰を使うか問題だが、切り捨てやすい人間の方が良い。
 戦士長やガーベラは無しだ。
 次いで、騎士たちも止めておきたい。国お抱えの騎士が裏切ったとなれば、戦士長まで疑われる可能性がある。

「冒険者を使うか」

 ある程度の実力があり、且つ簡単に切れる存在。
 冒険者で決まりだ。

 次は、どのレベルの冒険者を使うか。
 冒険者ギルドにはランクがある。
 EからSだ。
 S、A、Bあたりは使いたくない。というのも、ガーベラの時のように抵抗される可能性があるからだ。
 安全面を考慮すると、必然的にある程度弱い冒険者を雇うことになる。

 ならば、と。
 人数は多めに20人くらい必要だろう。
 ここまで決まればリズム良く考えは広がる。

 手順は、こうだ。

 まず、冒険者ギルドで冒険者を雇い、スピーチを始めた桃原愛美モモハラアミの近くに潜ませる。
 タイミングを合わせ、一斉に行動を開始する。
 桃原愛美モモハラアミを狙いながらも、各自護衛を処理。
 俺はその隙を見て桃原愛美モモハラアミに近付き、<支配ドミネイト>を使う。
 それで、殺すという算段だ。
 その後は、願いの結晶によって逃亡。

 死亡を確認する時間が無いのが惜しいが、かなり良い作戦なのではないか?

 時期は、次のスピーチ時。
 戦が終わった後も行うだろうという予想だ。

「そうと決まれば…動くか」

 朝食を取り、冒険者ギルドへと向かった。




・     ・     ・




 冒険者ギルドは、魔術師ギルドと大した違いは見受けられなかった。
 というのも、重そうな扉を開ければ人がたくさんいて、奥にはカウンター。
 酒場のような場所で飲み食いする人もいれば、ボードのようなものに貼り付けてある依頼を見ている人もいる。

 違いをあげるならば、ローブを着ている人が少ないということくらいだ。
 とはいえ、居ないわけではない。
 パーティーに魔術師を入れている冒険者だって居る。

 それと、魔術師ギルドと比べて屈強な人が多い。
 ここらへんは職業柄だろう。

 扉から入ってきた俺を見る者は居ない。
 一瞥するような人はいるが、そんな人たちもすぐに興味を失っていく。

───想像よりも人が多いな……。

 冒険者だから、魔獣への耐性もあるのだろう。
 街の人々と比べ、焦っている様子は無かった。

 とにかく、仲間となる人材を探すしかない。

 俺は冒険者を見ただけでランクが分かるわけではない。
 だから、予想になる。

 数多の冒険者がいる中、俺は酒を飲んでいたあるパーティーに近付いた。
 男3人、女2人のパーティーだ。

 格好は、中級というイメージを受けた。
 リーダーらしき男を見れば、少し傷がある鎧に、ちょっとの魔道具。
 駆け出しではないが、上級者でもない。
 ゲームでも中盤装備みたいだ。

 彼らが囲うテーブルの近くに行って、俺はさり気なく触れていく。

 まずは、倒れそうになったふりだ。

 近くで倒れるふりをして、盛大に彼らに触れる。
 ターゲットは男2人。
 何もないところで躓いて、彼らに触れつつ小声で<支配ドミネイト>する。

 これは、無事成功に終わった。

「坊や、大丈夫かい?」

 すると、パーティーの女──金髪で細身の弓を持ったエルフ──に話しかけられた。
 もちろん、他の冒険者たちは見向きもしていない。

「はい、ありがとうございます」

 これには素直に感謝をする。

 その後は、支配した2人を利用して会話に参加する。
 と言っても、冒険者として登録をしに来たという内容を聞き出させるのだ。

「坊主、一人で冒険者ギルドに来るなんて何の用なんだ?」

 聞くのは、<支配ドミネイト>した男。

 これに対し、

「冒険者の登録をしに来たんです」

 と、やや弱気に答える。

 次は、もう1人の<支配ドミネイト>した男だ。

「若いやつはすぐ命を落とすからな。まぁ、なんだ。お前の事情もあるのかもしれねぇが、困った時はいつでも頼ってくれ」
「はい、ありがとうございます」

 彼らが先輩である、というアピールをさせる。
 周りの仲間もうんうんと頷くようにしていることから、良い人たちなのかもしれない。

 この流れで、俺は握手を要求する。
 まるで、自分の大陸では初対面の人に握手をするのは当然ですよ、と言わんばかりに。

 もちろん、ここで率先して握手をしてくれるのも<支配ドミネイト>した男だ。
 ぎゅっと硬い握手を交わすと、それに気付いたのか、他の4人も握手に応じてくれた。

 あとはそれぞれに<支配ドミネイト>を使うだけだ。

 かなり簡略化された手順だが、怪しまれることはなく、同じようなことを何度か繰り返した。
 結局、対桃原愛美モモハラアミ戦力は20人ほど集まった。
 Cランクが多かったが、中にはBランクやDランクも数人混じっていた。パーティー毎にランクがあるのかと思ったが、どうやらランクは個人が持つもののようで、同じパーティー内にもBランクとCランクが混じっていることもあった。
 中級者を見分ける能力は、ゲーム知識の賜物だろう。

 <支配ドミネイト>した対象であれば、遠隔で指示を飛ばしたり、状況を確認することができる。
 なので、今は<支配ドミネイト>したという事実があれば問題ない。

 後は後ほど、桃原愛美モモハラアミに合わせて指示を出せば良いのだ。
 というわけで、戦力の問題は解決と言っても良いだろう。
 詳しい作戦も、脳内では考えている。

 冒険者登録をすると言っておいてなんだが、俺は何もせずに冒険者ギルドを後にした。
 それを1人の勇者が見ていたことに、気付かないまま。




◆     ◆     ◆




「むぅ...」

 ある少女が、自分宛ての手紙を読み、唸っていた。

 紫髪で、金眼を持ち。小さいながらも強大な存在感を放つ者。

 彼女こそ、ラストビーストと呼ばれる魔獣本人である。

 手に持つのは広げられた1枚の手紙。
 その内容は自分に対する指示であり、差出人は魔王だ。

 内容を要約すると、
『次の戦いでは適当に強そうな人を3人ほど足止めしていてください。殺さないでくれると助かります。』
 というもの。

 本来であれば「適当に」などと言わない魔王だが、そんな言い回しをしているのは自分を見下しているからだ。
 尤も、本気で見下しているわけではなく、からかってやろうという意思があるのは彼女とて分かっている。

 ただ、だからこそ。
 手紙を読んだ彼女は頬を膨らませていた。

「子供扱いされてる...魔王様の方が年下のくせに......」

 見た目が幼いという理由で子供扱いされるのには、どこか来るところがある。
 もちろん、魔王は彼女のその気持ちを知った上でからかっているのだが。

「...まぁ......頑張るけど...」

 それでも責務からは逃げず、成し遂げるのだから偉い。
 帰ったら頭を撫でて貰えること間違いナシだ。

 閑話休題。

 今回の目的は強者の足止め。
 どんな狙いがあるかは分からないが、どうやらまだ女神を落とすのには足りないらしい。

 とりあえずの実力示威行為だろうか。
 それにどんな意味があるのかは彼女に分からなかったが、頭がいい人の考えたことは凄いのだ。

「準備……特に要らないか……」

 魔獣である彼女の戦い方は基本、スキルと魔法と徒手格闘になる。武器は不慣れだ。

 魔道具を初めとする装備を着けても良いのだが、魔獣は装備を着けるとステータスにデバフがかかる。
 つまり、彼女が準備をすることはない。

「ふあぁ……」

 王都の襲撃や第一次侵攻の見守りなど、女神の近くで仕事を何度もやらされるのは疲れる。
 誰も見ていないところで欠伸をするが、それと同時に、自分の頬をぺちぺちと叩いた。

「頑張るか……」

 そして、勢いよく立ち上がり、次なる作戦へと向かった。
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