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魔王からの招待編
第69話 魔族
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目の前に現れた2人の魔族と対峙しながら、俺は懐からスクロールを出そうとしていた。
魔族の狙いは分からない。
だが、今にも襲いかかってきそうなほど、殺意をこちらに向けていた。
「そこに倒れている魔獣。それはお前がやったのか?」
「なぜ、そんなことを聞く?」
「答えろ。お前に許されている答えは2択だ」
あからさまな敵意と、高圧的な態度。
体毛は逆立っている。
これは、怒りだ。
俺に対して、怒りの感情を向けてきている。
理由は分からない。
嘘をつくべきか、正直に答えるべきか。
タクトのように、嘘を見抜く存在がいることも考えれば、本当のことを話すべきなのだろう。
だが、彼らはどうもあの魔獣が殺されたことに怒っているようにも見えた。
「早く答えろ」
「兄さん、多分、こいつですよ。答えないってことはそういうことですよ」
小さい方も口を開く。
やはり、兄弟だったようだ。
「俺がやったとしたら、どうする?」
嘘をついてもバレるだろう。
そんな思いで、俺は正直に話すことにした。
あくまでも保身的にだが。
会話の切り口として、疑問を投げかけるように話し始める。
それがどのように映ったのかは、分からない。
ただ、彼らが放っていた敵意は、綺麗さっぱり消え去った。
「そうか。知りたかっただけだ。変なことを聞いて悪かった」
「いえいえ、お気にせず────ッ!?」
確かに、怒りの感情は消えていたはずだった。
敵意も、殺意も。
その全てが彼らからは消失していたはずだった。
にも関わらず、兄魔族が手に持っていた槍を、音もなく、俺に向かって投擲した。
凄まじい速度だ。
とはいえ、避けられないほどではない。
戦闘経験も、能力も乏しい俺だが、ギリギリ身を倒すことで槍を回避した。
だが、それで終わりではなかった。
倒れた先には、いつの間に移動したのか、弟魔族が居た。
拳を構え、いつでも俺を殴るぞと言わんばかりの状態で。
右頬に衝撃が走ったかと思うと、俺は意識を手放していた。
・ ・ ・
目が覚めた時、手と足が縛り付けられ、口は塞がれていた。
誰の仕業かなど、言う必要は無いだろう。
案の定、狼を殺したことが彼らの怒りに触れたようだ。
敵意が消えたと思ったのはフェイントか。
急に槍を投げられたものだから、驚いた。
まず、この状況はまずい。
目の前には、魔族兄弟が居た。
なぜ俺を殺していないのかは謎だが、殺意を剥き出しにしている。
今にでも殺してやらんとの勢いで、槍を持っていた。
「ようやく目が覚めたか。覚えているか?」
声をかけてきたのは、兄の方だ。
覚えているか、というのは気絶するまでの経緯だろうか。
槍を投げられたあと、回避して。
その先で弟に思い切り殴られたのだった。
思い出すと、右頬にまだズキズキとした痛みがあるように感じる。
「何が何だか、という顔だな。まぁ、これから死ぬわけだ。話すだけ話してやろう」
「んんーーーーーーーーっ!!!」
兄魔族が何やら言っているが、そんなことは関係ない。
これから死ぬと言われれば、この状況の切迫さは誰にでも分かるだろう。
薄々そんな気はしていたが、まさか本当だとは、というところ。
布で押さえつけられている口では、まともに言葉は話せない。
だが、声を上げることはできる。
こんな森で誰かが助けに来てくれるとは思わないが、とりあえず叫んだ。
「うるさい、黙れ」
「んーーーーーーっ!!!」
もしかしたら、誰かが助けてくれるかもしれない。
この状況、誰がどう見ても俺は被害者だ。
通りかかった人が俺に気づき、救出してくれる可能性もある。
そんなことを考えていると、右足に鋭い痛みが走った。
兄魔族が俺の足を斬りつけたのだ。
傷は浅く、痛みも大したことはないが。
不愉快そうな顔で俺の足を斬りつけるその姿に、恐怖を覚えた。
「次叫んだら指を落とす。いいな?」
こう脅されてはどうしようもなかった。
泣き叫びたい気持ちが押し寄せるが、我慢してコクコクと頷く。
兄魔族の後ろには、弟魔族の姿も見えた。
兄同様、槍を持っている。
暴れれば、その瞬間に俺の首は飛ぶだろう。
「お前も、何が起きたか分からぬまま死ぬのは嫌だろう。そう思っての説明だ。
まず、お前が殺した魔獣だが、あれは俺たちの相棒だ。俺たちの種族では、生まれた時に1匹の魔獣を授かる。
その魔獣と共に成長していくのだ」
一生涯のパートナーというやつか。
生まれながらとなると、二十歳でもニ十年は添い慕ってきたことになる。
その思い入れの深さは、深いものだろう。
俺たち人間だって、ペットを飼う。数年の付き合いだというのに、ペットが死ねば悲しみに暮れる。
それが、生まれた時からずっと一緒にいた存在だったらどうだ。
その死は、人生のほとんどを喪失したと言っても過言ではない。
「ここまで話せば分かるか? それを殺されたから、俺たちはお前に怒りを抱いている。
至極当然だろう? お前ら人間だって仲間が死ねば仇討ちをするではないか」
俺にはその感覚は分からないが。
生まれてからの付き合いともなれば、親の死と似た感覚だろうか。
「先程殺さなかったのは、ただ殺すのは勿体無いと思ったからだ。だが、こうしてお前を見てると気が変わった。
大切なものを失った俺たちの悲しみがお前に分かるか? 分からないだろう」
魔族とは、人を殺すのを目的として生きる、邪悪な存在だというのが一般的だが。
こう見ると、理性的で、人間味がある。
ただ殺したくて殺すのではなく、俺が仕掛けたから殺すのだ。
「とはいえ、お前も生きるために殺したのだろう。それは決して悪いことではない。だが、それはお前の都合でしかない。
お前の命のために、お前は俺たちの大切なものを奪った。
俺たちの復讐のために、お前は命を奪われる。
それだけだ」
魔族は、何も間違ったことを言っていない。
俺だって、親の死体の側に人が立っていたら、そしてその人が俺の親を殺した犯人だと分かったら、怒りに任せたそいつを殺すだろう。
悪いことだとは思わない。
たとえ、そいつにも事情があったとしても、それを聞く耳は持たないだろう。
殺したやつが悪いのだ。
先に何かをされた、とかではなく。
人の大切なものを奪うというのは、許されない行為だ。
「話すことは話した。では、死ね」
兄魔族の槍が、俺に向かって突き出される。
それは俺の胸を貫き、確実な死をもたらすだろう。
仕方のないことではないか。
よく考えれば、俺が悪い。
ここで逆上して彼らを攻めるのも、お門違いだ。
ならば、おとなしく死を受け入れよう。
そんな考えを、受け入れた瞬間だった。
「<天魔破断>」
突如、男が現れ。
兄魔族を殺した。
「は?」
それは、誰の声だったのか。
弟魔族か、俺か。
その男の登場に、誰もが困惑を示していた。
だが、それはすぐに破られた。
「に、兄さん!! お前、何者────ぐはっ!?」
続けて、男は剣の先を弟魔族に向ける。
それだけで、弟魔族の胸に大きな穴が空いた。
弟魔族は大きく吐血し、そのまま後ろへと倒れていく。
死んだのだ。
2人とも、仲間の仇を取ろうとしただけの罪なき魔族が。
一瞬で、その命までもを奪われたのだ。
男は、俺に振り返る。
そして、悠々と言葉を発した。
「葵、大丈夫か?」
と。
手足、口に施されている拘束を解く男を睨みつけながら、俺は言う。
「魔夜中紫怨……」
魔族を殺した、男の名を。
魔族の狙いは分からない。
だが、今にも襲いかかってきそうなほど、殺意をこちらに向けていた。
「そこに倒れている魔獣。それはお前がやったのか?」
「なぜ、そんなことを聞く?」
「答えろ。お前に許されている答えは2択だ」
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体毛は逆立っている。
これは、怒りだ。
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理由は分からない。
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だが、彼らはどうもあの魔獣が殺されたことに怒っているようにも見えた。
「早く答えろ」
「兄さん、多分、こいつですよ。答えないってことはそういうことですよ」
小さい方も口を開く。
やはり、兄弟だったようだ。
「俺がやったとしたら、どうする?」
嘘をついてもバレるだろう。
そんな思いで、俺は正直に話すことにした。
あくまでも保身的にだが。
会話の切り口として、疑問を投げかけるように話し始める。
それがどのように映ったのかは、分からない。
ただ、彼らが放っていた敵意は、綺麗さっぱり消え去った。
「そうか。知りたかっただけだ。変なことを聞いて悪かった」
「いえいえ、お気にせず────ッ!?」
確かに、怒りの感情は消えていたはずだった。
敵意も、殺意も。
その全てが彼らからは消失していたはずだった。
にも関わらず、兄魔族が手に持っていた槍を、音もなく、俺に向かって投擲した。
凄まじい速度だ。
とはいえ、避けられないほどではない。
戦闘経験も、能力も乏しい俺だが、ギリギリ身を倒すことで槍を回避した。
だが、それで終わりではなかった。
倒れた先には、いつの間に移動したのか、弟魔族が居た。
拳を構え、いつでも俺を殴るぞと言わんばかりの状態で。
右頬に衝撃が走ったかと思うと、俺は意識を手放していた。
・ ・ ・
目が覚めた時、手と足が縛り付けられ、口は塞がれていた。
誰の仕業かなど、言う必要は無いだろう。
案の定、狼を殺したことが彼らの怒りに触れたようだ。
敵意が消えたと思ったのはフェイントか。
急に槍を投げられたものだから、驚いた。
まず、この状況はまずい。
目の前には、魔族兄弟が居た。
なぜ俺を殺していないのかは謎だが、殺意を剥き出しにしている。
今にでも殺してやらんとの勢いで、槍を持っていた。
「ようやく目が覚めたか。覚えているか?」
声をかけてきたのは、兄の方だ。
覚えているか、というのは気絶するまでの経緯だろうか。
槍を投げられたあと、回避して。
その先で弟に思い切り殴られたのだった。
思い出すと、右頬にまだズキズキとした痛みがあるように感じる。
「何が何だか、という顔だな。まぁ、これから死ぬわけだ。話すだけ話してやろう」
「んんーーーーーーーーっ!!!」
兄魔族が何やら言っているが、そんなことは関係ない。
これから死ぬと言われれば、この状況の切迫さは誰にでも分かるだろう。
薄々そんな気はしていたが、まさか本当だとは、というところ。
布で押さえつけられている口では、まともに言葉は話せない。
だが、声を上げることはできる。
こんな森で誰かが助けに来てくれるとは思わないが、とりあえず叫んだ。
「うるさい、黙れ」
「んーーーーーーっ!!!」
もしかしたら、誰かが助けてくれるかもしれない。
この状況、誰がどう見ても俺は被害者だ。
通りかかった人が俺に気づき、救出してくれる可能性もある。
そんなことを考えていると、右足に鋭い痛みが走った。
兄魔族が俺の足を斬りつけたのだ。
傷は浅く、痛みも大したことはないが。
不愉快そうな顔で俺の足を斬りつけるその姿に、恐怖を覚えた。
「次叫んだら指を落とす。いいな?」
こう脅されてはどうしようもなかった。
泣き叫びたい気持ちが押し寄せるが、我慢してコクコクと頷く。
兄魔族の後ろには、弟魔族の姿も見えた。
兄同様、槍を持っている。
暴れれば、その瞬間に俺の首は飛ぶだろう。
「お前も、何が起きたか分からぬまま死ぬのは嫌だろう。そう思っての説明だ。
まず、お前が殺した魔獣だが、あれは俺たちの相棒だ。俺たちの種族では、生まれた時に1匹の魔獣を授かる。
その魔獣と共に成長していくのだ」
一生涯のパートナーというやつか。
生まれながらとなると、二十歳でもニ十年は添い慕ってきたことになる。
その思い入れの深さは、深いものだろう。
俺たち人間だって、ペットを飼う。数年の付き合いだというのに、ペットが死ねば悲しみに暮れる。
それが、生まれた時からずっと一緒にいた存在だったらどうだ。
その死は、人生のほとんどを喪失したと言っても過言ではない。
「ここまで話せば分かるか? それを殺されたから、俺たちはお前に怒りを抱いている。
至極当然だろう? お前ら人間だって仲間が死ねば仇討ちをするではないか」
俺にはその感覚は分からないが。
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「先程殺さなかったのは、ただ殺すのは勿体無いと思ったからだ。だが、こうしてお前を見てると気が変わった。
大切なものを失った俺たちの悲しみがお前に分かるか? 分からないだろう」
魔族とは、人を殺すのを目的として生きる、邪悪な存在だというのが一般的だが。
こう見ると、理性的で、人間味がある。
ただ殺したくて殺すのではなく、俺が仕掛けたから殺すのだ。
「とはいえ、お前も生きるために殺したのだろう。それは決して悪いことではない。だが、それはお前の都合でしかない。
お前の命のために、お前は俺たちの大切なものを奪った。
俺たちの復讐のために、お前は命を奪われる。
それだけだ」
魔族は、何も間違ったことを言っていない。
俺だって、親の死体の側に人が立っていたら、そしてその人が俺の親を殺した犯人だと分かったら、怒りに任せたそいつを殺すだろう。
悪いことだとは思わない。
たとえ、そいつにも事情があったとしても、それを聞く耳は持たないだろう。
殺したやつが悪いのだ。
先に何かをされた、とかではなく。
人の大切なものを奪うというのは、許されない行為だ。
「話すことは話した。では、死ね」
兄魔族の槍が、俺に向かって突き出される。
それは俺の胸を貫き、確実な死をもたらすだろう。
仕方のないことではないか。
よく考えれば、俺が悪い。
ここで逆上して彼らを攻めるのも、お門違いだ。
ならば、おとなしく死を受け入れよう。
そんな考えを、受け入れた瞬間だった。
「<天魔破断>」
突如、男が現れ。
兄魔族を殺した。
「は?」
それは、誰の声だったのか。
弟魔族か、俺か。
その男の登場に、誰もが困惑を示していた。
だが、それはすぐに破られた。
「に、兄さん!! お前、何者────ぐはっ!?」
続けて、男は剣の先を弟魔族に向ける。
それだけで、弟魔族の胸に大きな穴が空いた。
弟魔族は大きく吐血し、そのまま後ろへと倒れていく。
死んだのだ。
2人とも、仲間の仇を取ろうとしただけの罪なき魔族が。
一瞬で、その命までもを奪われたのだ。
男は、俺に振り返る。
そして、悠々と言葉を発した。
「葵、大丈夫か?」
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