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いよいよだ。
こんなにも日が昇るのを美しく思ったことがあっただろうか。
日が昇り、また新しい一日が始まる。いや、明日こそが本当に新しい一日の始まりになるのだろう。
何十億という長い時間をかけて、やっと辿り着いた、DNAの終着点。
何故、遥か彼方より飛来した微生物が、この星を選び、人間という生物に進化したのか。
その答えにやっと辿り着いたのだ。
我々科学者は、完璧を求める生き物ではあるが、完璧であってはならない。
何故ならば完璧であることは、終わりなのだ。追究にこそ、美を感じる。
しかし、私は遂に辿り着いた。
究極の研究美である、完璧に。
ヒトの時代は終わりを迎える。
明日、全てのヒトはそれを知ることとなる。
方舟はまだ完成していないが、それも時間の問題だ。計画どおり。
さあ、始めよう。
新しいヒトの時代の幕開けだ。
朝から外が騒がしい。
拡声器の声が頻繁に飛び交っている。
音が割れていて、何を喋っているのかは分からないが、とにかくうるさい。
まだ朝の8時くらいだろうに。勘弁してほしい。
昨日やっと事件が解決して、捜査本部が解散。調書作成やら書類整理やらで、十日ぶりに帰宅したのが午前4時過ぎ。
食事も摂らずシャワーだけ浴びて、ベッドに入ったのが5時頃。まだ三時間…。
今日は何も無ければ非番の日。
昼過ぎまで寝てやろうと思ったのに…。
あぁ…うるさい。
分かりました。起きます。起きればいいんでしょう。
いったい何の騒ぎなのか。
どこぞの議員が演説でもしているのだろうか。にしては、選挙の時期でもないはず。
そんなことを考えながら、身体を起こす。
全身が痛い感じがする。久しぶりに自宅のベッドで寝たせいか、疲れが一気にきたのかもしれない。
軋む身体を抑えながら、ゆっくりと窓に近づきカーテンを開ける。
…。
何これ…。
目の前に広がったのは眼下の通りを埋め尽くすほどの黒い塊が蠢いている。一瞬、先日テレビのドキュメンタリー番組で観た、虫の大群の行進を思い出した。
違う。虫じゃない。人だ。
人の群れが列を成し、ゆっくりと北に向かって進んでいる。
窓を開けてみると、拡声器の声がはっきりと聞き取れた。
不意に電話が鳴った。
窓を閉め、電話をとる。ディスプレイの表示を見て、一瞬戸惑った。上司からだ。
また事件か。いや、眼前の光景が最早事件だ。
電話に出る。
「おはようございます。日下部です。」
「おまえ、この状況でよく寝ていられるな。」
いきなり嫌味。
「何なんですか、この状況は。」
「それを今から、説明も兼ねて、9時から会議だ。すぐに来い。以上。」
切れた…。
9時?
時計に目をやる。
…。
8時半過ぎ。
…アウト。
すぐに支度をして、家を出る。化粧してるヒマなんてない。
この人混みで、交通機関は正常に動いているのだろうか、タクシーに乗るべきか。
どちらにしても間に合わない。
また課長に怒られる。
あの人に就いてからは、いつもこうだ。
ギリギリに電話してきては、すぐに来いだの、すぐに行けだの。
エレベーターでマンションを降りながら、そんなことを考えていたせいで、先ほど拡声器から聞こえてきたことは、すっかり忘れてしまっていた。
はっきりとは覚えていないが、確かにこう聞こえた。
「政府は全ての秘密を明らかにせよ」
こんなにも日が昇るのを美しく思ったことがあっただろうか。
日が昇り、また新しい一日が始まる。いや、明日こそが本当に新しい一日の始まりになるのだろう。
何十億という長い時間をかけて、やっと辿り着いた、DNAの終着点。
何故、遥か彼方より飛来した微生物が、この星を選び、人間という生物に進化したのか。
その答えにやっと辿り着いたのだ。
我々科学者は、完璧を求める生き物ではあるが、完璧であってはならない。
何故ならば完璧であることは、終わりなのだ。追究にこそ、美を感じる。
しかし、私は遂に辿り着いた。
究極の研究美である、完璧に。
ヒトの時代は終わりを迎える。
明日、全てのヒトはそれを知ることとなる。
方舟はまだ完成していないが、それも時間の問題だ。計画どおり。
さあ、始めよう。
新しいヒトの時代の幕開けだ。
朝から外が騒がしい。
拡声器の声が頻繁に飛び交っている。
音が割れていて、何を喋っているのかは分からないが、とにかくうるさい。
まだ朝の8時くらいだろうに。勘弁してほしい。
昨日やっと事件が解決して、捜査本部が解散。調書作成やら書類整理やらで、十日ぶりに帰宅したのが午前4時過ぎ。
食事も摂らずシャワーだけ浴びて、ベッドに入ったのが5時頃。まだ三時間…。
今日は何も無ければ非番の日。
昼過ぎまで寝てやろうと思ったのに…。
あぁ…うるさい。
分かりました。起きます。起きればいいんでしょう。
いったい何の騒ぎなのか。
どこぞの議員が演説でもしているのだろうか。にしては、選挙の時期でもないはず。
そんなことを考えながら、身体を起こす。
全身が痛い感じがする。久しぶりに自宅のベッドで寝たせいか、疲れが一気にきたのかもしれない。
軋む身体を抑えながら、ゆっくりと窓に近づきカーテンを開ける。
…。
何これ…。
目の前に広がったのは眼下の通りを埋め尽くすほどの黒い塊が蠢いている。一瞬、先日テレビのドキュメンタリー番組で観た、虫の大群の行進を思い出した。
違う。虫じゃない。人だ。
人の群れが列を成し、ゆっくりと北に向かって進んでいる。
窓を開けてみると、拡声器の声がはっきりと聞き取れた。
不意に電話が鳴った。
窓を閉め、電話をとる。ディスプレイの表示を見て、一瞬戸惑った。上司からだ。
また事件か。いや、眼前の光景が最早事件だ。
電話に出る。
「おはようございます。日下部です。」
「おまえ、この状況でよく寝ていられるな。」
いきなり嫌味。
「何なんですか、この状況は。」
「それを今から、説明も兼ねて、9時から会議だ。すぐに来い。以上。」
切れた…。
9時?
時計に目をやる。
…。
8時半過ぎ。
…アウト。
すぐに支度をして、家を出る。化粧してるヒマなんてない。
この人混みで、交通機関は正常に動いているのだろうか、タクシーに乗るべきか。
どちらにしても間に合わない。
また課長に怒られる。
あの人に就いてからは、いつもこうだ。
ギリギリに電話してきては、すぐに来いだの、すぐに行けだの。
エレベーターでマンションを降りながら、そんなことを考えていたせいで、先ほど拡声器から聞こえてきたことは、すっかり忘れてしまっていた。
はっきりとは覚えていないが、確かにこう聞こえた。
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