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第一章 仁義無き闘いが始まるの・・・か?

first contact (未知との遭遇) ②

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葵は何がおきたのか分らなかった 初対面の自分そっくりのイケオジに抱き締められて身動きが出来なかった。
(やっ、嫌だ くっ、苦しいーー)
会長おやっさん お嬢さんが窒息します!!手を緩めてください!」
ガタイの良い大男が慌てて二人を引き離そうとする それでも京極は腕の力を緩めようとはしなかった。

大の男三人でやっと身体を引き離して京極を羽交い絞めにする この騒ぎでラウンジで注目の的になってしまってた。 葵は息も絶え絶えだ。
マネージャーらしき男が慌てて此方の方にやってきた。
「お客様、何かトラブルでも?」傍から見たら男が女性に乱暴を働いているようにしか見えない。
「ああ、感動の親子対面で少しばかり興奮したみたいです 騒がせてすみません」
と小早川が頭を下げた。ここで悠長にお茶を飲むわけには行かなくなっていた

会長おやじ上に部屋取ってありますので移動しましょう?」若い方の男が声を掛ける
「離せってんだ。初めて娘を抱きしめて何が悪い!!」今度は強く手を握ったまま離さない
生まれて初めての生物学上の父親?らしき男と会ってから僅か5分の間である
彼女の思考回路は停止したままだった。

「分りました 分りました。此処では人目が有り過ぎます。さっさと移動しましょう?」
四人をラウンジから出て行くのを見計らって
小早川がスーツの胸ポケットから財布を取り出す
4~5枚の万札をマネージャーに握らせ 静かにこう言った

「感動の親子対面は本当ですが、他のお客様にご迷惑をお掛けしました。ドリンクか何か差し上げてください。マネージャーさん もしも何か足りないようでしたら此方にご連絡下さい。」
と一枚の名詞を差し出した

【京極興産(株)顧問弁護士 小早川幸雄】

ホテル暦が長いマネージャーは瞬時に騒いだ男の正体が分かった。
しかしあそこの会長は独身では無かったか?如何見ても一回り位しか離れていないような女性だったが・・・
と葵が聞いたら怒って暴れそうな事を考えていた がそこは曲がりなりにもプロのホテルマンである
何事も無かったかのように頭を下げた。


********************

4005号室
スイートルームに葵は連行されていた
(何、この豪華な部屋 落ち着かない~)
生物学上の父親らしき人はその間も葵の手を離さなかった。
いい加減鬱陶しくなってくる
室内は不思議な静寂に包まれていた。其れを破ったのが小早川が部屋に来たチャイム音だった

「何ですか この空気は? 陰気臭い。会長いい加減、手を離したらどうですか?」
と言いながら葵の方へ向き合い話を切り出した。

「神谷葵さん いきなりでびっくりしたでしょう?此処にいる貴女の手を握って離さない残念な男が貴女の実の父親と思われます。神谷彬穂様から書類一式をお預かりしております。念のため親子鑑定もして頂きますが まあ、誰が如何見ても・・ねえ」と複雑な顔をした。

ここに来て漸く葵も色々考えるようになってきた
「はあ そうですか私としても認知していただけるのなら幸いです。私生児のままだと就職試験の時不利になるんで。後は学費と月々の生活費多少、融通して頂けたならバイトする時間を勉強に回せるので嬉しいです。」

「えっ、それだけですか?」と小早川は不思議そうな顔をした
後の三人も同じ様な表情をしている。 これ以上何があると言うのだろう?

「えっと、それだけです。母が駆け落ち(?)して学費や生活費が足らなくなるのが心配だったので・・・ああ、勿論、母は犯罪に巻き込まれていないか心配ですが 他に何があると言うんですか?」
「此方は貴女の血を分けたお父様ですよ?」
「はあ、其れが何か?今までも居・食・住は母に面倒見てもらいましたが基本、
一人で何でもやってきましたしぶっちゃけ面倒臭いです。
15年もお互いに存在も知らない同士ですし 
今更、其方様にもご迷惑でしょう?
でも如何にか認知していただけるんで有ればなりたい
職業も夢じゃ無くなりそうで嬉しいです」

15歳の少女にしては(かなりの老け顔だが)違う意味で夢が無かった
「葵さんはどんな職業におつきになりたいのですか?」
「私、警察官になりたかったんです。
婦警さんでは無くてキャリア官僚目指したかったんです。
後は弁護士とかも考えたんですけど 出来たらやっぱり警察官が良いですね」
とやっと少女らしい夢を語りだした

「無理だな」
そのささやかで壮大な夢も細身の男の一言でいきなり叩き落された
「どうしてですか?まだ分からないじゃないですか?まあトップレベルの大学にまず受かんなきゃですが」
自分一人の力で生きていくんだからどうせなら幹部になりたい

「だからお前じゃ無理だって!お前がDNA検査を受けて否定されれば学費、
その他は援助されない。それで詰んでる。たまにいるんだ会長おやじの子供って騙る奴。
もし正式に親子と認められれば警察試験はまず通らない どの道駄目だろう?お前には無理なんだよ!」
と事も無げに言った 周りの男達は何やら複雑な顔をしている

「もういいですか?別にどうしても援助して貰わなきゃいけない訳じゃないんですから。唯、この先未成年だと色々と面倒臭いから名前だけでも保護者がいたら便利ってだけですから。会って30分もしない人に人生設計狂わされたくありませんし 人格も否定してもらいたくありません。それから京極さん?でしたっけ?」
自分の父親とされている男に向き合った
何時までも手を離さないし碌な言葉も掛けないイケ親父にイラつきもあった。

「いい加減、手離して貰えます?初めて会った訳の分からないおっさんに身体触っていてもらいたくないんです。それからあんた、そう、そこのだよ?良く知りもしない癖に駄目だししてんな!私は別に集ろうとしてるんじゃないんだから。そっちもいきなり得体の知れない娘が出てきて困るんだろうけど私だって今日の今日で母親?蒸発してるし、存在も知らなかった父親?にいきなり引き合わせられてるんだよ?こっちが可哀想だわ」
とゲンナリした顔で言った。

葵の剣幕に暫し、唖然としていた男達だったが彼女が立ち上がり帰ろうとした時 急に我に返った。
「悪かった 機嫌直してくれ。お前は絶対に俺と彬穂の娘だ 間違い無い。最初からお前を疑っていた訳じゃないんだ。遺伝子レベルならお前は俺の親父にもそっくりだ。これからの事を話し合いたい。健吾あいつの事なら俺からも詫び入れる。あいつからも頭下げさせる」
とだいの男が頭を下げた。嫌、この人に謝ってもらっても仕方が無い

「はあー、別にもう良いですよ。DNA検査早くやって頂いて認められたら認知をお願いします。強請り、集りと思われたくないんで。後は学費とかを少しでも援助して頂けたら有り難いです。先程も同じ様な事言いましたが。
それだけなんで・・・じゃあ失礼します」と今度こそ帰宅しようとした葵だったが

「それは無理だ」とまた抱き締められてしまった。遺伝子上の父かも知れないが葵にとっては赤の他人だ 抱き締められると非情に居心地が悪い。オマケにさっき自分を馬鹿にした男が此方を睨んでいる。

「広域指定暴力団 海生会 京極組って聞いた事有るだろう?」
細いいけ好かない男が口を開いた 
(広域指定暴力団・・・?ヤクザ?京極組って!!)
「そこの会長がそこでお前を抱いている親父だよ」

「噓????」 



                 ーー  to be continuedーー


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