1 / 2
悲しみの詩
しおりを挟むどーも。佐々木航と申します。僕は彼女いない歴=年齢のどこにでもいる高校二年生。趣味はゲームと人助け。…嘘じゃないよ。誰かを助けた後は気分がいいからね。
今日は困っている人いないかな。いない方がいいんだが。学校は休みだし友達は予定があって遊べないって言うしで暇で暇で仕方がない。彼女がいたらなあ。…悲しくなってきた。考えるのやめよ。
今いるのはこの辺で一番大きな公園。夕方で遊んでいた子供たちが帰り始めたので人は少ない方だった。…あ、いた。大きな荷物を背負い、重そうに上半身の項垂れている女の子。中学生くらいだろうか。
「お嬢さん。お荷物、お持ちしますよ。」
…ちょっとキモかったかな。ついついお嬢さんとか言っちゃった。
いきなり声をかけられた女の子は、めちゃくちゃ困ってた。申し訳ない。
「それ重いでしょう?全部は持てないすけど。」
「え…あの…私…」
「だいじょぶだいじょぶ。僕手ぶらなんで。」
戸惑う女の子をガン無視して喋り続ける。彼女は何か(多分俺)に恐れているかのように告げる。
「わ、私…荷物なんてな、何も持ってないですよ!」
…彼女は何も持っていない。まあ確かに。何も背負っていない。…はたから見れば、だが。
「?何言ってんの。しっかり持ってんでしょ。かなり重そうなやつ。ご家庭のこと?それともお友達のこと?さあさ、話してご覧なさい。」
彼女の顔色が変わる。恐れから困惑の色へ。微笑みを浮かべて詩乃ちゃん(女の子の名前。後ほど判明。)の言葉を待つ。
彼女はゆっくりと、何かを踏みしめるように語り出す。
小さいときから音が、歌が好きだった。友達の蓮の家にあったギターを弾いたとき、なんかもう、やばかった。音の振動が身体に響くたびに興奮と喜びが押し寄せた。このために生きていたんじゃないかとすら思えた。
それからは必死だった。親に頼み込んでギターを買ってもらって蓮のうちに行ってひたすら練習して。蓮の親は音楽が好きだったから家には楽器がたくさんあった。
「うた、ずっと一緒に楽器弾いたり歌歌ったりしようね。」
『ずっと』…そう、言ってたのに。蓮は、中学に上がる前に、消えた。私が行くことのできないところに。
死んだ。
蓮が、死んだ。よくある交通事故で。私を庇って。
後悔した。あのとき私が走らなければ。辛くて死んでしまいたかった。
でも、私は弾いた。弾き続けた。蓮を忘れることがないように。ここまでならまだよかった。大事なものを失った私の傷を抉るように、何かが始まった。
まず、私の教科書がビリビリになった。次に体操服に針が入っていた。五本。気づかずに着て首が傷だらけになったこともあった。そして、今日。音楽室に置いておいた私のギターが割れていた。
もう、どうしたらいいかわからなかった。私のギターが、蓮との思い出が、壊れた。なんで、なんで。私ばっかり失うものが多すぎる。
詩乃の口から絞り出すように紡がれた話は重く、苦かった。中学生の少女の人生とは思えないもの。
…これを背負ってきたのか。
「どーも、話してくれてありがとう。…ずっと、泣けてないんすね。」
優しく。少しづつ、少しづつ、詩乃ちゃんの背中から荷物を下ろす。
驚いたような顔をしてから困ったように顔歪めると、みるみると彼女の目に涙が浮かぶ。
「ああ…ううあああああっあああっああああ…」
彼女が泣いている間、航は何も言わずにただより添っていた。
散々泣いた後詩乃ちゃんは頼りない笑顔を浮かべて
「ありがとうございました。」
と頭を下げてからすっと立ち上がり帰っていった。彼女の背中にはもうほとんど荷物は乗っていない。あるのは失ったものを慈しむための少しの重さのみ。
…ま、あれくらいの苦しみはあってもいいか。蓮君を忘れないための重りだから。
「…詩乃ちゃん(中学生)は蓮君と付き合ってたんかなあ。彼女欲しい。おおおお…帰るか…」
0
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる