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日菜の戦闘・華の一族・No.23《銃装レティス》

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『三人脱落!残り35人』


「あら?もう、そんなに減ってしまったのね」


 日菜は、魔道具である《姫神きしん》を軽く振り回しながら、正面に目を向ける。


「それで?少しは体力戻ったかしら?」


 日菜の目線の先には、至る所から血を流し肩で息をしている男女が、各々の武器を杖にしながら立ち上がろうとしていた。


「はぁはぁ、なんだこいつ化けもんかよ」


「ぜぇぜぇ、私達の攻撃が軽々かわされる…」


 日菜は顎に指を置きながら、二人が立ち上がるのを黙って見つめる。


「ふぅ、まだ時間かかりそうですわね。なら、先に……」


 後ろから振られた大剣を姫神でいなしながら、軽やかな足取りで距離を取る。


「チッ!完璧に不意打ちしたと思ったんだがな」


「殺気がダダ漏れでしたわよ?」


 大剣を担いだ男が、唾を吐き日菜を睨みつける。


「さあ、これで四体一だ。今なら、見逃してやる」


 大剣を持った男の後ろに全身から銃口が出ているフルプレートを着込んだ男が降り立ち、口の部分からフシューっと煙を吐き出す。

 倒れていた二人もなんとか立ち上がり日菜を囲むように展開する。


「残念ですが、あたくし達《華の一族》に撤退の文字は無いんですのよ」


 と、日菜が言うと少し、間を空けてから大剣の男が笑い出す。


「がっはっはっは!華の一族だと?面白い事言うじゃねーか!」


 男の笑いにつられるように回りも笑い出す。


「あら?そんな可笑しな事言ってないわよ?」


「くっくっく!教えてやるよ!華の一族って言うのは400年前にこの世界を滅ぼしかけた災厄の魔女、ローズ・アリアハートが作ったギルドの事だよ!
 災厄の魔女が死んで、ギルドも解散そして、その仲間達は全員処刑されたんだよ!
 もう、今は華の一族なんて物は存在しない!」


 大剣の男が腹を抱え大笑いをしながらバカにしたような表情で日菜を指差す。


「……少し、認識が違いますわね…」


「あ?」


 男が一瞬、瞬きをした瞬間に男の視界が赤色に染まり男の腕が吹き飛ぶ。


「教えてあげますわ。華の一族はギルドでは無いですわ。お姉様が、身寄りの無い生き物を家族として迎えた者達が集まって出来た…そうですわね…チームって所ですわ」


 日菜は振り上げていた姫神をゆっくりと下ろし、全員に殺気を放つ。


「ガンドーさん!」


 腕を切られ苦しんでいる男に駆け寄ろうとした男に向かって姫神を振ると男の上顎と下顎を綺麗に分断され、少し歩いた後に男が地面に倒れる。


「それと、もう一つ。生き残りはいるわよ…みんな、お姉様が殺された後散り散りになってるだけ」


 姫神に付いた血を振い落しながら、残りの人達を睨みつけ殺気を高めて行く。


 殺気に当てられた女が膝をつき両手で腕を抱きながら身を震わせる。


「残念だったわね…あたくしの前でお姉様を笑わなければ、まだ生きれたものを…」


 姫神の柄の部分で俯いている女の顔を殴りあげ、力一杯振り下ろす。


 女の頭が血の花を咲かせ、周りの民家に血が飛び散る。


「残りは貴方だけですわね」


 鎧の男が、首をゴキゴキと鳴らし赤く光る目で日菜を捉える。


「我、貴様を殺し更に強くなる」


「戯言を…貴方が着ているそれはNo.23《銃装レティス》お姉様が作った魔道具ですわ。貴方を殺し返して貰う」


 レティスの銃口が全て日菜に向け放たれると、弾が炎を帯び日菜に向かって行く。


 日菜は姫神で弾いたり身を捻り避けたりするが、次々と放たれる弾により徐々に傷が付いていく。


「やっぱり、レティスの固有能力が厄介ですわね…」


 日菜は、姫神を力一杯地面に突き刺し自分の周りを地面の壁で覆い尽くす。


「愚かな…そんな物我が力には無力!」


 レティスの銃口が更に増え先程の銃弾より威力の高い銃弾が、日菜を囲ってる地面を抉り取って行く。


「お姉様の魔道具を…私欲の為に使うな!!」


 自分の身体が傷つくのも厭わず姫神を振りかぶり男を睨みつけた後に横に振り抜く。


「な!?これは!?」


「【天叢雲剣】」


 周りの民家、出場者を切り裂きながら空に昇った斬撃は空を割り消えていく。


『10人脱落!残り25人』


「魔道具は返してもらうわよ」


 男からレティスを剥ぎ取り、男を睨みつけた後にその場を後にする。


「ふむ、次はあいつにするとするか」


「た、助けてくれ」


男は腕を切られ苦しんでいる男の顔を踏み潰し冷ややかな目で見下ろした後、日菜の後を追うように足を進める。
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