15 / 20
藤村朝陽の正体
しおりを挟む
数日後、とうとう各部門の部門賞が出揃った。
その日のうちに満を持してホームページに発表される。
仕事から帰り着いた俺は、ゆったりとした部屋着に着替えて、パソコンを開く。
俺はコンテストのホームページで各部門賞をなめるように確認した。
俺の選評も載っているがそれはどうでもいい。
嘘、実はだいぶ熱い選評だったので、恥ずかしい。目に入れないように素早くスクロール。
BL部門の受賞作は満場一致で『いもしない悪魔にすがりつく』。作者は、藤村朝陽。
他の部門賞もなかなか粒ぞろいで面白そうだ。個人的に現代ラブコメ部門が気になるな。
(でも、俺が一番気になるのは大賞確実と噂されている、ファンタジー部門受賞作……っと、見つけた!)
下までホームページをスクロールするとようやくファンタジー部門賞受賞作に辿り着いた。
タイトルと名前とあらすじ、選評が載っている。俺はわくわくとタイトルに目を通して、……そして衝撃に口をあんぐりと開けた。
ファンタジー部門受賞作、『晩夏の戦争』。作者は、藤村朝陽。
(まさかの二部門同時受賞!!!???)
BL部門とファンタジー部門、求められる作風が全く違う賞を二つとも受賞できるのかよ!?
二度見、三度見しても結果は変わらない。どちらの受賞作の作者も藤村朝陽だ。
あまりの驚愕にぞわぞわと鳥肌が立って、背筋まで泡立ってきた。
恐るべき才能だった。器用なんてものじゃない。執筆する頭脳が二つあるとしか思えなかった。
脱力して椅子にガクンと体を預ける。
ショックと共に、じわじわと湧いてきた感情があった。
嫉妬だ。
(俺はファンタジーが書けないからBLに流れたのに! こいつはファンタジーもBLもどっちも書ける! ずるーーーーーい!!!!)
クッションがあったらバフバフと叩いてたくらいは悔しい!
(誰だ、藤村朝陽と友達になりたいって思ってたやつは! ……俺だよ!)
授賞式で会ったらいぢめてやるううううううう!!
作品に惚れた事実を棚上げして、俺はサイテーなことを考えていた。
下手をすればBL編集部に宣言した『公正に判断します!』ってことすら無かったことにしそうだ。
(いや、でも! 流石にそれはマズい!!! 俺は無責任な大人にはなりたくなーい!!)
何度か深呼吸して、やっと正気に戻った俺は再びホームページにかじりついた。
『晩夏の戦争』のあらすじを頭に叩き込んで、思考を強制的に冷やそうと思ったのだ。
選評に影響されるとマズいので、それはなるべく目に入らないようにした。
興奮しそうな頭をなだめながら、あらすじを頭から読んでいく。
ふんふんと、読み進めていくが、……だんだん思考が冷えるどころが凍りついてきた。
(待って、まって……俺、この作品を知ってる……)
竜の群れに両親を貪むさぼり食われ、竜を憎む少年。そして竜に育てられた少女。
戦いながらも、お互いの正体を知らない二人は淡い恋を育んでいく。
しかしある日、少年は少女の育ての親の竜を殺してしまいーーーー。
少女の名前は、ジーナ。少年の名前は、ーーレオン。
そこまで読んだ時、反射的にパソコンを閉じてしまった。混乱し切っていて頭が回らない。
(知ってるなんてもんじゃない、これ、俺、この話を楽しみにしてて……ずっと追ってて……)
役立たずになった頭を何度も働かせようとして、部屋を何周もうろつく。
一時間経っても正気に戻れないので、今度は冷たい水で顔を何度も洗う。……まだ頭が覚めない。
最終手段で着衣のままシャワーで水を頭からかぶった。
ザーザーという水音だけが俺を慰めてくれるような気がした。
まさかという思いと、どうしてという思いが頭の中でぶつかり合って火花を散らす。
答えなんかもうとっくに知っているのに……。
唇が紫になり始めたころ、ようやく受け入れ難い事実を受け入れる。
冷え切った体を風呂の中に横たえて、風呂を沸かすボタンを押す。
お湯が浴槽をゆっくりと満していく様子をぼんやりと眺めながら、俺はぽつりと呟いた。
「藤村朝陽って、純くんか……」
俺がD大賞のBL部門の特別審査員であること、大賞の審査員も兼任することはコンテストのホームページでかなり前から告知していた。
それを知って、純くんは応募してきたのだろう。
だからつまり、これは純くんの挑戦状だった。
『おれはBL作品もファンタジー作品もどちらも書けます! だから特別審査員の大輝さんが判断してください。おれがBL作家とファンタジー作家、どちらの道を進むべきなのかを! おれの想いを知り、今までおれを見てきたあなたに全てを託します』
信頼がこれほどまでに重くて想いものだと、初めて知った。
その日のうちに満を持してホームページに発表される。
仕事から帰り着いた俺は、ゆったりとした部屋着に着替えて、パソコンを開く。
俺はコンテストのホームページで各部門賞をなめるように確認した。
俺の選評も載っているがそれはどうでもいい。
嘘、実はだいぶ熱い選評だったので、恥ずかしい。目に入れないように素早くスクロール。
BL部門の受賞作は満場一致で『いもしない悪魔にすがりつく』。作者は、藤村朝陽。
他の部門賞もなかなか粒ぞろいで面白そうだ。個人的に現代ラブコメ部門が気になるな。
(でも、俺が一番気になるのは大賞確実と噂されている、ファンタジー部門受賞作……っと、見つけた!)
下までホームページをスクロールするとようやくファンタジー部門賞受賞作に辿り着いた。
タイトルと名前とあらすじ、選評が載っている。俺はわくわくとタイトルに目を通して、……そして衝撃に口をあんぐりと開けた。
ファンタジー部門受賞作、『晩夏の戦争』。作者は、藤村朝陽。
(まさかの二部門同時受賞!!!???)
BL部門とファンタジー部門、求められる作風が全く違う賞を二つとも受賞できるのかよ!?
二度見、三度見しても結果は変わらない。どちらの受賞作の作者も藤村朝陽だ。
あまりの驚愕にぞわぞわと鳥肌が立って、背筋まで泡立ってきた。
恐るべき才能だった。器用なんてものじゃない。執筆する頭脳が二つあるとしか思えなかった。
脱力して椅子にガクンと体を預ける。
ショックと共に、じわじわと湧いてきた感情があった。
嫉妬だ。
(俺はファンタジーが書けないからBLに流れたのに! こいつはファンタジーもBLもどっちも書ける! ずるーーーーーい!!!!)
クッションがあったらバフバフと叩いてたくらいは悔しい!
(誰だ、藤村朝陽と友達になりたいって思ってたやつは! ……俺だよ!)
授賞式で会ったらいぢめてやるううううううう!!
作品に惚れた事実を棚上げして、俺はサイテーなことを考えていた。
下手をすればBL編集部に宣言した『公正に判断します!』ってことすら無かったことにしそうだ。
(いや、でも! 流石にそれはマズい!!! 俺は無責任な大人にはなりたくなーい!!)
何度か深呼吸して、やっと正気に戻った俺は再びホームページにかじりついた。
『晩夏の戦争』のあらすじを頭に叩き込んで、思考を強制的に冷やそうと思ったのだ。
選評に影響されるとマズいので、それはなるべく目に入らないようにした。
興奮しそうな頭をなだめながら、あらすじを頭から読んでいく。
ふんふんと、読み進めていくが、……だんだん思考が冷えるどころが凍りついてきた。
(待って、まって……俺、この作品を知ってる……)
竜の群れに両親を貪むさぼり食われ、竜を憎む少年。そして竜に育てられた少女。
戦いながらも、お互いの正体を知らない二人は淡い恋を育んでいく。
しかしある日、少年は少女の育ての親の竜を殺してしまいーーーー。
少女の名前は、ジーナ。少年の名前は、ーーレオン。
そこまで読んだ時、反射的にパソコンを閉じてしまった。混乱し切っていて頭が回らない。
(知ってるなんてもんじゃない、これ、俺、この話を楽しみにしてて……ずっと追ってて……)
役立たずになった頭を何度も働かせようとして、部屋を何周もうろつく。
一時間経っても正気に戻れないので、今度は冷たい水で顔を何度も洗う。……まだ頭が覚めない。
最終手段で着衣のままシャワーで水を頭からかぶった。
ザーザーという水音だけが俺を慰めてくれるような気がした。
まさかという思いと、どうしてという思いが頭の中でぶつかり合って火花を散らす。
答えなんかもうとっくに知っているのに……。
唇が紫になり始めたころ、ようやく受け入れ難い事実を受け入れる。
冷え切った体を風呂の中に横たえて、風呂を沸かすボタンを押す。
お湯が浴槽をゆっくりと満していく様子をぼんやりと眺めながら、俺はぽつりと呟いた。
「藤村朝陽って、純くんか……」
俺がD大賞のBL部門の特別審査員であること、大賞の審査員も兼任することはコンテストのホームページでかなり前から告知していた。
それを知って、純くんは応募してきたのだろう。
だからつまり、これは純くんの挑戦状だった。
『おれはBL作品もファンタジー作品もどちらも書けます! だから特別審査員の大輝さんが判断してください。おれがBL作家とファンタジー作家、どちらの道を進むべきなのかを! おれの想いを知り、今までおれを見てきたあなたに全てを託します』
信頼がこれほどまでに重くて想いものだと、初めて知った。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】取り柄は顔が良い事だけです
pino
BL
昔から顔だけは良い夏川伊吹は、高級デートクラブでバイトをするフリーター。25歳で美しい顔だけを頼りに様々な女性と仕事でデートを繰り返して何とか生計を立てている伊吹はたまに同性からもデートを申し込まれていた。お小遣い欲しさにいつも年上だけを相手にしていたけど、たまには若い子と触れ合って、ターゲット層を広げようと20歳の大学生とデートをする事に。
そこで出会った男に気に入られ、高額なプレゼントをされていい気になる伊吹だったが、相手は年下だしまだ学生だしと罪悪感を抱く。
そんな中もう一人の20歳の大学生の男からもデートを申し込まれ、更に同業でただの同僚だと思っていた23歳の男からも言い寄られて?
ノンケの伊吹と伊吹を落とそうと奮闘する三人の若者が巻き起こすラブコメディ!
BLです。
性的表現有り。
伊吹視点のお話になります。
題名に※が付いてるお話は他の登場人物の視点になります。
表紙は伊吹です。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
旦那様と僕
三冬月マヨ
BL
旦那様と奉公人(の、つもり)の、のんびりとした話。
縁側で日向ぼっこしながらお茶を飲む感じで、のほほんとして頂けたら幸いです。
本編完結済。
『向日葵の庭で』は、残酷と云うか、覚悟が必要かな? と思いまして注意喚起の為『※』を付けています。
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
今日もBL営業カフェで働いています!?
卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ
※ 不定期更新です。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
雪色のラブレター
hamapito
BL
俺が遠くに行っても、圭は圭のまま、何も変わらないから。――それでよかった、のに。
そばにいられればいい。
想いは口にすることなく消えるはずだった。
高校卒業まであと三か月。
幼馴染である圭への気持ちを隠したまま、今日も変わらず隣を歩く翔。
そばにいられればいい。幼馴染のままでいい。
そう思っていたはずなのに、圭のひとことに抑えていた気持ちがこぼれてしまう。
翔は、圭の戸惑う声に、「忘れて」と逃げてしまい……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる