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第2章

古い文献

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チャリバーがカタカタと振動している。

(この懐かしい感じ!あの時と同じだよー。ほら、リュートのタトゥーを初めて見た時!)
 
ジャニスさんを目の前にしたチャリバーが
興奮気味に話し掛けてきた。

リュートさんとまうちゃん、くるると一緒に、竜神の村に転移して来た私は、1番にジャニスさんのお見舞いに行った。
だって、ほら、私が気絶させたから…。

ジャニスさんは、顔色も良くなっていて元気そうだった。昨日のことは、サフィニアさんとカミュに会ったところまでは覚えているけれど、その後からは記憶があやふやで、よく覚えてないって言ってた。
悪の種子についても、いつ埋め込まれたのかわからないんだって。
誰か知らないけど、乙女の柔肌に勝手に何してくれてんのよっ!て言ったらジャニスさん笑ってくれた。
うなじを見せて貰ったけど、傷痕もなく綺麗に治ってる。良かった~。

そうしているとチャリバーが震えだしたの。

(なんだろう、この気持ち…。大好きだった幼なじみに大人になってから再会したみたいな…。)

チャリバーってば、何その例え。そういえば、ジャニスさんの首筋にもリュートさんのタトゥーと似たものがあるんだよね。
さっき、うなじを見せて貰おうとして、髪の毛を纏めたら見えたの。綺麗な青い竜のタトゥー。


(やっぱり!それじゃ、この村も青い竜と関係がある?)

そうだと思う。それを詳しく調べるために来たの。だから、何か思い出したり、気付いたことがあったらチャリバーも教えてね。

(わかったー。)

それから私達はジャニスさんにお願いしてこの村にある古い文献を見せて貰うことになった。

まうちゃんとくるるは湖の上を、じゃれつきながら飛んでいる。
念のため、チャリバーに力を借りて、湖の周りに結界を張った。魔力の強さが証明されたよね、これ。だって湖ぜーんぶをカバー出来る結界なのよ?
これで、悪い奴が来ても2匹には手出し出来ないよね。







『ある時、湖から突然青い竜が飛び出し湖の上をぐるぐると飛ぶと湖底から美しい城が浮上した。その城からは逞しい騎士、そして湖の妖精が現れた。』

1番古い文献にはそう書いてあった。
逞しい騎士と湖の妖精って神秘的~。


リュートさんが、王国のあの湖の畔の村にも同じ記述があったと驚いている。




「ここと向こうって、湖底で繋がってたりしてね。」

そう何気なく言った私の言葉に

「イオンさん!それ!そう考えると納得いきますね!」

と、ちょっと興奮気味のリュートさん。




(相棒…それ、マジでそうかも。)

え、マジ?

(うん。前に話したけど、その逞しい騎士って、アーサー王の騎士のランスロット君じゃないかな。湖の妖精エレインと結婚したんだよね。)

あ、なんか聞いたような記憶はある。

(話が長いって途中でやめたじゃん?)

あ~、そうでした。
でも、向こうにも同じように城が出現したとして、そんな2つも必要かな?

(2つ必要な理由…。)

文献にはこうも書いてある。

『その湖の妖精は、守護神として湖の畔に住む者達に赤竜の玉を授けた。』

玉…。うーん。

「これは、2つの卵のことかもしれないですね。」

そう考えると2つの玉は赤と白の卵。
もちろん、まうちゃんとくるるのことだよね。2つ一緒にしてはいけない理由があったのかな。

(相棒~忘れたの?ほら、2匹のドラゴンが戦った話だよー。)

お、そうだった。寝起きがものっ凄っ悪くてケンカしちゃったんだっけ。

(そうそう。それだから、2つの卵は同じところに置いては置けなかったんだと思うよ。)

なるほどねー。

「リュートさん、チャリバーが言うには…。」


ざっと説明をすると、リュートさんは
かなり驚いてた。
お伽噺のようなアーサー王伝説のなかに出てくるランスロットとエレイン、そして青い竜が実在していた証拠がこの村であり、チャリバーであり、そして、まうちゃんとくるるの存在なんだもんね。

「そして金色の勇者がここに居るわけだね。」

キラキラした目で、私の両手を握りしめるリュートさん。
ひゃぁー、なんかドキドキしちゃう。

「ありがとう!イオンさん。研究者としてこれほど嬉しいことは無いよ。」

母さんが言った通り、リュートさんの役に立てて良かった。

「この文献を全部読んじゃいますね。そしたら、ダンジョンに向かいましょう。」




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