アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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納得いかない

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 実家から届いたばかりのどら焼きをひとつ差し出したら、サーヤは箱ごと奪って、どら焼きと引き換えに芦屋家の裏事情を全部ぶちまけてきた。

「……政治家が呪殺依頼って、しかもあの実直が売りのダースーが……」
「ダースーっていうか、官邸の危機管理判断よ。内調が首相暗殺計画を掴んで──」
「首相暗殺!?」

 思わず声が裏返る私に、サーヤはどら焼きを頬張りながら平然と返す。

「うまっ! これ何処のどら焼き?」

 スケールがでっかい話をしてるのに、緊張感ゼロ。神使って、こういうの慣れてるの?

「珍味堂の塩辛どら焼きよ」

 もぐもぐしているサーヤに、お茶のお代わりを注いであげる。唇をすぼめてチュルチュル飲むところは、本来の姿──鶴を彷彿とさせた。

「呪禁師を使った霊的テロ。ただ証拠がなくて、黒幕の『はにかみ党』は立件できないのよ」
「でも、内調が動いたってことは、何かあったんじゃ──」
「総理、毎晩バッタの大軍に襲われる悪夢を見て、体調崩してたらしいわ。はにかみ党の呪禁師が、藁人形とか総理の名前を書いたノートでも持っていればねぇ」

 ……それ、証拠になるの?

「なるのよ~。でも芦屋の前当主の遺体に呪詛返しの痕が残っていたから、こちらから先に仕掛けたって状況証拠はばっちりなの」

 うっ……リアルに想像したら吐きそう。

「ダースーは独断で依頼したってことにしたけど、実際は官邸の尻ぬぐい。ダースーから芦屋家に依頼が回ってきたのは、検察との落としどころってわけ」
「でも……その時圭太のお父さんが無くなったのに、また芦屋家に依頼するなんて……」
「バカね。芦屋の当主は二代続けて、危険を承知で引き受けたのよ。現政権に実力を示すチャンスだったんだから」

『──せやけど僕は、芦屋家の取り潰しだけは、防がなあかんねん──』

 あの言葉が胸に刺さる。私は、彼らの覚悟も背負うものも、何も知らなかった。

 ……まあ、圭太が全部話してくれても、信じたかどうかは怪しいけど。

「考えてもごらん茜ちゅわん。失敗した芦屋家に、名誉挽回のチャンスよ? 芦屋の坊ちゃんが成功すれば、内閣府お抱え術師だったの……まあ、失敗したけどね」

 そうよ、結局圭太は今ICUじゃない……。やっぱり柳楽家か一度断ったということは、ただの案件じゃなかったんだわ。

 サーヤは三つ目のどら焼きを丸呑みして、目が潰れそうなほどデコられたスマホを取り出す。

「どんな霊的案件だったか知りたい? ネットじゃちょっと話題になってたわよ」

 画面には「白訪市の怪異」のスレッド。

──森の枝に鳥とかリスが刺さってた  

──庭の木にアライグマ、今日はウサギ  

──俺んちの近くは鹿。鹿だよ?  

──ばあちゃん曰く、白訪には生贄信仰があったらしい ……
 
──これ……そのうち人も刺さるんじゃ……

「………………」

私はスマホから顔を上げて、サーヤを凝視した。

「これ、本当のことなの?」
「動物が刺さってたのは本当よ。通報も何件もあったし。百舌の早贄にしてはサイズがね……」

 ゾワッと鳥肌が立つ。

「顔、真っ青じゃなーい。大丈夫よ。古の神々じゃないし、土着神も国津神もちゃんと祀られてる。祟り神化してないわ」
「国津神って、日本神話の……?」
「そう。白訪大明神ね。でも最近は冬の『女神渡り』にも出てこないし、基本寝てるのよ」

 寝てるって……神様よね?

「最後に話したの百年前かしら。『最近、息するのも面倒』って言ってたわ」

 神様って息するの!?

「今も元気なのは、うちの憑神、オロチンくらいね。未だにビンビンよ!」

 ……得意げに言われても。

 でも、頭から離れない。

──そのうち人も突き刺さるんじゃないの?

「心配なのは分かるわ。物理的に作用する悪霊って、もう霊じゃない。鬼や妖、あるいは神の類だから」
「だから蓮くんのお爺ちゃんは断ったの? 大蛇じゃ勝てないって?」
「違うわ。ウチの憑神も神よ? 問題はそこじゃない」

 サーヤの目が、遠くを見透かすように細められる。

「過去にも白訪では、奇妙な事件があったの。湖に、逆さに突き刺さった身元不明の遺体が、何体も見つかった。始まりは、森の木々に動物が串刺しになる現象だったわ」

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