アラサー失恋女子、合コンで年下御曹司(25)にロックオンされる〜タワマン25階住みでも、怪しい壺なんて買いません!〜

世界のボボブラ汁(エロル)

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大蛇(オロチ)舞う

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 地下から膨大な力が迫って来た。

 神事の時の、あれだ。あれがくる。

 大蛇オロチが──。

 ものすごい質量を持ったそれは、私と蓮君の体を通り抜け天に昇っていく。

「くっ……ぁぁぁぁ!」

 体を乗っ取られそう………というより、こちらから明け渡したくなる。

 ──ああ、そうよこの感じ。

 神事の時に身体を満たした、あのエクスタシーが再び……。

 その絶頂に似たエネルギーは天空で大きくうねり、向きを変え引き返してくる。

 そして、黒い瘴気の前で口を大きく開けた。

 ──バクンッ!

大蛇オロチが、ゴンベエナマズを喰らった」

 唇を離して、蓮君はそう言った。

「今度は上から来ますよ」

 え……二回目!? 弛緩していた私の体が、フワリと浮いていた。彼が軽々と持ち上げたのだ。

「大丈夫。俺に、しっかりひっついてください」 

 言われた通り、私は彼の首に腕を回し、脚を持ち上げて胴体にしがみついた。

 冷たくなった私のお尻を、蓮君は温かい大きな手で支えてくれる。

 まるで木に止まるセミみたい。でも密着することで、蓮君の体温をより強く感じ、ほうっと息をついた。

 これほどの安心感はない。私は目を閉じて、次の衝撃に備えた。

「ごめんね、力を貸してください。もっと」

 耳元で囁かれた低い声に、胸が震える。その直後──膨大な熱量が体の芯を突き抜けた。

「────っ!?」

 全身が跳ね上がり、声が喉でつまる。

 蓮君は私を抱きしめたまま、蛇石を高く放り投げた。

 大蛇オロチはそれを合図に、龍のように火を噴きながら落下する。

「あっあっぁぁぁぁぁ──っ!」

 悲鳴を吸い取るように、今度は蓮君から唇が重ねられた。

 まるで落雷だった。先ほどの比ではない衝撃に、意識が真っ白になる。

 オロチの長い胴が、私たちの中を荒々しく通り抜けていく。

 頭から尾の先まで──体の奥がきしむように震えた。

 やがて大蛇は通り過ぎ、地下深くへ沈んでいった。

 蓮君は名残惜しそうに唇を離し、感極まった震える声で囁いた。

「また……ひとつになれましたね」

 そして静かに、長い長い祝詞を紡ぎだす。

 今までの昂りが嘘のような、落ち着いた、透き通るような声だった。

「今日の夕日の降の 大祓に祓へ給ひ清め給ふ事を 諸々聞食せと宣る」
 
 全て唱え終わると、周囲の空気が真冬のようにキンッと引き締まる。

 気づけば日の沈んだ白訪湖の景色は、銀色の月を映し、本来あるべき美しい姿に戻っていた。

 私は弛緩した身体で蓮君に寄りかかり、ただその景色を見つめるだけだった。

 蓮君はそんな私を抱えなおし、スマホを出してどこかに連絡する。

「大蛇が喰らった。あとのことは頼むね」

 次に蓮君は、離れて調伏を見ていたサーヤに命じた。

「俺たちを屋敷へ。茜さん、風邪ひいちゃうよ」

 サーヤがフンッと鼻を鳴らし、不機嫌な声で反抗する。

「ごめんだわねっ! 一日に何度もできないわよ、しかも二人でしょ」
「大丈夫、お前が一緒に飛ばなきゃいけるでしょ。それに、俺とあかねさんは今、二人で一人分だから」

 私はとろんとした目で、蓮君を見返した。まだ降臨の余韻が消えず、恍惚としていたからだ。

 蓮君は息を呑んで私を見つめ、痛々しいほど切羽詰まった声でサーヤに言う。

「マジで……早く、頼む」
「私も混ざりたい。夢の3ピ──」
「それはダメ。いいから早くしろ、憑神家の血において命じる」

 サーヤはカッカしながら、私たちに両手をかざした。

「何よ見せつけちゃって! 場所を間違えたって知らないんだからね!」

 バサッと鳥の羽のようなものに包まれ、ようやく私は我に返った。

 あ、これはテレポートの合図。

 サーヤのこれ、鶴の羽なのかしら。

 ぐるりんっと暗転して酔いそうになり、私は咄嗟に固く目を閉じていた。

 次に目を開けると、そこは柳楽家ではなく──ラブホだった。

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