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わざとエッチなことを言って面白がっている、蓮君め。
「ていうか、早く引っ越したほうがいいですよ。俺のところでもいいし、新居を探してもいい」
「え?」
「まあ、茜さんの中には神力を込めた聖水が循環しているから、しばらく霊的なものからの干渉は無いんですけどね」
たじろぐほど甘い視線を投げてくる蓮君。私は赤くなったことを悟られないよう、窓の方に顔を向けた。
「でも、一緒に住んだら蓮君、毎日のように求めてきそうだもん」
「いいじゃないですか。男も寄ってこない。しかもお互い霊力を補強できるし、一石二鳥ですよ。とにかく、防犯上、あんなボロアパートにいつまでも置いておけません」
蓮君が前を見たまま、ひょいと片手で小箱を渡してくる。
「俺たちの結婚式も、どこでやるか決めないとね。白訪大社の神職らには神前式を推されてるけど、茜さんはそういうしがらみを気にしなくていいし。あ、でも親族は呼ばないとうるさそうだな」
「私の祖母が、柳楽家と縁があったなんて、よく調べたわね」
実はご先祖が同じだったことが判明し、柳楽家的には歓迎状態らしい。
「神事で大蛇が降りた時点で怪しむべきでした。茜さんのお祖母ちゃんこそが、うちの爺さんの許嫁だったなんて」
蓮君は嬉しそうに言う。
「ジジイめ、あと茜さんのババアめ──あ、ごめんなさい──二人とも好き勝手やりやがって。お互い本当に好きな人と結婚したみたいですけど、当時の旧家は圧力が強いから、なかなかできないことですよ」
笑いが込み上げてくる。お祖母ちゃんを思うと、結婚を重く考える柳楽家も、そして自分も、全部バカらしい。
今好きなこの人が、真剣に私のことを考えてくれている。それだけで十分だわ。
それに、もし神様が本当にいるなら──この日の私たちのために、蓮君の祖父と私の祖母の結婚をダメにしたのかもしれない。
下手したら、姉弟に生まれていたかもしれないんだから。
蓮君が助手席に一瞬だけ目をやり、前の車が動き出すとアクセルを踏んだ。
「俺ね、しばらくはにかみ党の呪禁師を探るため、内偵に入るんですよ。会えなくなるから、できれば早く結婚したいんですよね」
そう言ってから、少し照れたように付け足す。
「あ、こうやってプロポーズは何回でも続けるけど、茜さんが結婚していいと思うまで、俺は待てるからね」
いつも強引だったくせに、と吹き出してしまう。
「じゃあ、私から言っていい?」
いただいた指輪を薬指に嵌め、蓮君に見せた。
「結婚してくれますか?」
ぐらん、と車が揺れ、ハンドル操作が怪しくなる。
運転中に言うんじゃなかった、と少し後悔した瞬間──
「なんだよ、嘘だろ!?」
蓮君の動揺の呟きにつられ、私の方が不安になる。
あ……もしかして、雰囲気だけで言ってた?
魔除けの指輪を渡しただけで、また私の勘違いだった!? あの頃と同じじゃない、私。
はっず! だめよ、アラサーに「結婚」なんて軽々しく言っちゃ……!
羞恥が一気に込み上げ、顔がカーッと熱くなる。
しかし蓮君は、自分の前髪をクシャリと掴んだ。
「また車の中でプロポーズ! こんなことなら、その婚約指輪、ちゃんとした場所で渡すんだった!」
ほっとした途端、涙がこぼれた。
蓮君はそれに気づかず、デレデレに目を細めて声を弾ませる。
「とりあえず今日の魔除けは、ペロペロ&スペシャルコースですね!」
……その言葉で、ふと気づいた。
あれ? 真奈美ちゃんの彼に渡していた破魔矢。
「ねえ蓮君……依頼人全員に、ペロペロしてるの?」
ハッ、と蓮君が言葉を詰まらせる。
そりゃそうだよね!
男女問わずやっていたら、ドン引き……つまり、あの日のペロペロは──。
「こ、こ、この詐欺師~っ!」
私の絶叫に、蓮君は片耳を塞いだ。
完
ご愛読ありがとうございました!
(ノ˶>ᗜ<˵)ノ楽しかったお
「ていうか、早く引っ越したほうがいいですよ。俺のところでもいいし、新居を探してもいい」
「え?」
「まあ、茜さんの中には神力を込めた聖水が循環しているから、しばらく霊的なものからの干渉は無いんですけどね」
たじろぐほど甘い視線を投げてくる蓮君。私は赤くなったことを悟られないよう、窓の方に顔を向けた。
「でも、一緒に住んだら蓮君、毎日のように求めてきそうだもん」
「いいじゃないですか。男も寄ってこない。しかもお互い霊力を補強できるし、一石二鳥ですよ。とにかく、防犯上、あんなボロアパートにいつまでも置いておけません」
蓮君が前を見たまま、ひょいと片手で小箱を渡してくる。
「俺たちの結婚式も、どこでやるか決めないとね。白訪大社の神職らには神前式を推されてるけど、茜さんはそういうしがらみを気にしなくていいし。あ、でも親族は呼ばないとうるさそうだな」
「私の祖母が、柳楽家と縁があったなんて、よく調べたわね」
実はご先祖が同じだったことが判明し、柳楽家的には歓迎状態らしい。
「神事で大蛇が降りた時点で怪しむべきでした。茜さんのお祖母ちゃんこそが、うちの爺さんの許嫁だったなんて」
蓮君は嬉しそうに言う。
「ジジイめ、あと茜さんのババアめ──あ、ごめんなさい──二人とも好き勝手やりやがって。お互い本当に好きな人と結婚したみたいですけど、当時の旧家は圧力が強いから、なかなかできないことですよ」
笑いが込み上げてくる。お祖母ちゃんを思うと、結婚を重く考える柳楽家も、そして自分も、全部バカらしい。
今好きなこの人が、真剣に私のことを考えてくれている。それだけで十分だわ。
それに、もし神様が本当にいるなら──この日の私たちのために、蓮君の祖父と私の祖母の結婚をダメにしたのかもしれない。
下手したら、姉弟に生まれていたかもしれないんだから。
蓮君が助手席に一瞬だけ目をやり、前の車が動き出すとアクセルを踏んだ。
「俺ね、しばらくはにかみ党の呪禁師を探るため、内偵に入るんですよ。会えなくなるから、できれば早く結婚したいんですよね」
そう言ってから、少し照れたように付け足す。
「あ、こうやってプロポーズは何回でも続けるけど、茜さんが結婚していいと思うまで、俺は待てるからね」
いつも強引だったくせに、と吹き出してしまう。
「じゃあ、私から言っていい?」
いただいた指輪を薬指に嵌め、蓮君に見せた。
「結婚してくれますか?」
ぐらん、と車が揺れ、ハンドル操作が怪しくなる。
運転中に言うんじゃなかった、と少し後悔した瞬間──
「なんだよ、嘘だろ!?」
蓮君の動揺の呟きにつられ、私の方が不安になる。
あ……もしかして、雰囲気だけで言ってた?
魔除けの指輪を渡しただけで、また私の勘違いだった!? あの頃と同じじゃない、私。
はっず! だめよ、アラサーに「結婚」なんて軽々しく言っちゃ……!
羞恥が一気に込み上げ、顔がカーッと熱くなる。
しかし蓮君は、自分の前髪をクシャリと掴んだ。
「また車の中でプロポーズ! こんなことなら、その婚約指輪、ちゃんとした場所で渡すんだった!」
ほっとした途端、涙がこぼれた。
蓮君はそれに気づかず、デレデレに目を細めて声を弾ませる。
「とりあえず今日の魔除けは、ペロペロ&スペシャルコースですね!」
……その言葉で、ふと気づいた。
あれ? 真奈美ちゃんの彼に渡していた破魔矢。
「ねえ蓮君……依頼人全員に、ペロペロしてるの?」
ハッ、と蓮君が言葉を詰まらせる。
そりゃそうだよね!
男女問わずやっていたら、ドン引き……つまり、あの日のペロペロは──。
「こ、こ、この詐欺師~っ!」
私の絶叫に、蓮君は片耳を塞いだ。
完
ご愛読ありがとうございました!
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