本編開始前に悪役令嬢を断罪したらうちでバイト始めた

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第二章 悪役令嬢視点 断罪は終わらない

7.そして半年が過ぎた

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秋が去り、冬が終わって春が来る頃。
いつも通り、私はクラスで置物として過ごしていたけれど、ちょっとした楽しみはできた。

図書室で本を読むことだ。

本は貴重だから、日本みたいに貸し出しはしてくれない。だから本を読むために図書室にいるのは、普通のこと。

教室にいなくてもいいんだ。

私はその日、国を立て直した英雄譚を読むのが楽しみで、朝の早い時間から教会に来ていた。


この頃には、バイトだけでへばることは少なくなって来ていた。少しずつ、会計や注文取りもリーナが教えてくれるようになった。

相変わらず、皮肉たっぷりだけどな!!


どっちが悪役かわから……いやいや違う。私が悪い。そう。しょうがない。冷静になれ。

口にぐっと力を込めて我慢する。

あははっ、うめぼし!と、リーナは最近直接笑ってくるようになった。
なるほど、顎にできるシワを、うめぼしに似てるって思って笑ってたのね。


くぬ、今に見てろ。この私が立派な障害となって立ちふさがり、貴様を幸せへと導いてやるんだから!!


……あなた腹黒いから躊躇ってるけどな!
私で壁になれるかわかんないわほんとに!


ううう、私が大好きだった純粋なヒロインが、黒いよぅ。腹黒いよぅ。10才なのに嫁いびりみたいなことしてくるよぅ。

泣いていいですか。ダメですかそうですか。


もういいかもね、そうだな、そろそろやるか、という声が、カウンターから聞こえてきた。リーナも呼んでひそひそ話している。

なんだろう。新メニューかな?味見したい。


そんなことを思い出しながら、ぺらぺらと英雄譚を読み続けた。

この国の英雄は、国の危機を救ったことで、国王にならないかと言われ断ったらしい。
そしてそれから国王は、玉座の間に座らなくなったそうだ。

民を守る真の王は、市井の人々だ。それが彼の言葉だったそうだ。
今も国王はその言葉を守り、玉座に座っていない。
真の王たる英雄が、心を決めることを待ちわびているとか。

それで、隠された王国なのね。隠しルートまで行けなかったからな、私。そこまで進めたら、英雄にも会えたのかな。
隠しキャラって、その、英雄だったのかな。
うわあ、きっとものすごくカッコいい人のはず!!

どきどきしてきた。
これから出てくる攻略キャラ達は、かっこいいんだけど癖のある人たちばっかり。それがリアルでよかったんだけど、現実になると、ちょっとね。
私がもし、没落しなかったら。修道院送りにならなかったり、不敬罪で監獄送りにならなかったら。

もし、誰かと添い遂げる、未来があったとしたら。
権力なんかより、優しさや正義を重んじる、こんな人がいいなぁ。

かっこいいなぁ。うん、ファンタジー。
いや、まあでもさ。
普通の世界なら、王の座を譲るなんてことにならないよ。権力争いで消されるよ英雄。
でも、ここはファンタジーの世界なんだ。
うん、ありえるありえる。

ああ、素敵だなあ。


ふと、足音が聞こえた。そうっと忍んで歩く、小さな足音。

こんな時間に、なんだろう。ここにくる人って、めったにいないはずなのに。
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