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のろいのはなし

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「死んだって、それじゃ呪いは一生解けないのか?」
「あいつは腕は確かな呪術師だったから難しいかもだけど、呪いを掛けた人よりも高ランクな呪術師であれば解呪が可能だし、呪いを解くアイテムもあるらしいわ。」

全く可能性が無いわけではないらしいが、話し方からするにそう簡単にできるわけでもないのだろう。

「ところで、腰のその袋?から変な魔力の流れを感じるんだけど何を持ってるの?」

彼女が指さしたのは腰につけていた卵。そう、ノワールから預かったあの卵だ。

「これか、これは飛ばされた先に居た魔物?に預けられたんだ、でっかくて真っ黒でふわふわな猫みたいなのに。自分の代わりに生を授けてやってくれって。なんでも周りから魔力を吸って羽化するらしい。」

「…ご主人様、そんな恐ろしいところに送ってしまったこと心からお詫びするわ。でも、え…リンクスの巣から生還しただけじゃなくて、卵を預かって…えっ、ええっ!?」
「生還というか、この世界の事とか色々教えてくれたしいいヤツだったよ?」
「っ!?」

どうやら信じられない事だったらしく、あーでもないこーでもないと一人問答をした挙げ句にオーバーヒートしたのか、頭から煙が出そうな様子で項垂れて頭を抱え込んでしまう。

「ごめんなさい、もう、寝てもいいかしら。色々ありすぎて考えつかれた。」
「構わないよ、そのままベッドに寝てくれていいから。」
「………」

そんなジト目で見ないでくれ。一台しかないベッドに一緒に寝るのはどうかと思うし、だからといって幼女(見た目)を床に眠らせるわけにも行かない。
俺はしょっちゅうPC前で寝落ちしてたから椅子とテーブルがあればそれでおっけーなんだ。

「あなたの世界ではどうなのかわからないけど、奴隷を宿の同じ部屋に泊めるだけでも破格の扱いなのよ…性奴隷だって終われば…追い出され……」

いろいろと限界が来たのだろう、瞼は半分ほど瞳を隠しうつらうつらと船を漕ぎ始めている。

「わかった、わかった。この世界の常識は追々学ぶとするから今日はそこで寝てくれ。」

更に文句を言いたげな見た目幼女の頭を乱暴気味に撫でるとその勢いでベッドに横たわらせ、口を開く前に頭まで布団をかけてしまう。
数秒もがくような抵抗を見せていたが、どこぞの猫型ロボットの持ち主よろしくほんの僅かな時で寝息が聞こえてくる。

「さて、こっちはどうしたものか…」

『壊れない』という言葉を信じ腰にくくりつけた袋に無造作に入れていたが、話の通り割れるどころかヒビの一つも入っていない。
ただ、ほんの少し受け取ったときよりも大きくなった気がするのは気のせいだろうかと、まじまじ見つめていると突然ピクリと卵が震える。

「えっ!? っっっ~!?」

割れるのかと両手でしっかり受け止めようとした次の瞬間、卵は手の上から跳ね上がりリンが寝ているベッドへと着地する。
俺は咄嗟のこととは言え寝付いたばかりのリンを起こす事もできず声にならぬ悲鳴をあげ椅子からたちあがるが、ベッドに落ち着いた卵に安堵の息を漏らす。

「ったく、いきなり何だ…動くなんて聞いてない…」

卵は自ら器用にリンの頭の近くに移動するとそこが気に入ったのか今まで通りピクリとも動かない卵へと戻る。
その事がキッカケだったのか定かではないが、ふいにめまいにも近い眠気を感じ、椅子へと力なく座る。

「はぁ…わけわかんね……」

そんな言葉を最後に俺はテーブルへと突っ伏し、泥の中に沈むように深い眠りへと落ちていった。
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