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ミリアの知らないオレファンの過去編
宰相補佐オレファン・オリゴマーの日常・3
■
「お帰り、ミリィ。今日も一日お疲れ様」
笑顔でオレファンが呟く。
「それ、聞こえて無いと思いますよ」
「聞こえたら怖がると思いますけどね」
「大丈夫でしょ、きっと。ミリア嬢、俺らよりずっと慣れてますもん」
オレファンの側近A、B、Cもといケネス、ウォルター、カインが次々と突っ込みを入れていく。
彼等の主たるオレファン・オリゴマー第二王子が駆けつけた先は、貴族学園ではない。
オレファン最愛の婚約者ミリア・ファネス公爵令嬢の住む邸宅、その正門が辛うじて望遠鏡で見えるギリッギリの大通りの角である。
そこに停めた、王家の紋章もなにも入っていない地味な黒塗りの返って怪しいんじゃないかと思われるような箱馬車の中から、ミリア嬢がきちんと邸宅へ帰り着いたかを確認するのがオレファンの日課だった。
「ずっと学園の生徒会になんか入らないで欲しいって絶対に阻止しようと思ってたけどさ、生徒会の仕事があるから、補佐の仕事が終わってからでもミリィの帰宅時間に間に合うんだもん。受け入れて良かったよ。やっぱり毎日ひと目は逢いたいよねー」
ニコニコと気持ちの悪い言葉を悪い笑顔で告げる主に、ケネスがこめかみを揉んだ。
主はご満悦である。
しかし、あの箱馬車の中に必ず元気なミリア嬢がいるとは限らないのではないかと思うのだが、それを指摘すると更に面倒臭いことになりそうなので押し黙った。
黙っていれば、美形なのに。勿体ないと思う。
見目だけではない。学園を卒業してそろそろ一年。オレファンの仕事ぶりに関する評判は日々上がっていくばかりだ。
ただしその後には、就業時間内に限る、という言葉が付く。
「何故、天はこの方に見目も能力も与えておきながら、肝心の良識だけは育むことを阻まれたのか」
「本当に残念だ。理解に苦しむ」
「この人を主に戴くということが、天が俺達に与えた試練なんだろうなぁ」
すでにミリア嬢を乗せたと思わしき馬車は屋敷の門の奥へと消えている。
にも拘らず、微動だにせず望遠鏡を離さずその先でも妄想するかのように見つめている姿が残念すぎた。
オレファンが満足するまでの間こそこそと我が身を嘆き合った側近達を余所に、ようやく満足したのかオレファンがうっとりと長い息を吐いた。
「今日のミリィのリボン、見た? 三年前に僕が贈ったタティングレースのものだったよ。凄く似合ってた。うれしい」
極々細い金糸にオレファンの瞳の色のクリスタルビーズを編み込んで作られたリボンは、まさにオレファンの色であり独占欲そのものだ。
しかし、と側近たちは胡乱な顔をした。
「え、ミリア嬢、箱馬車から降りてこなかったよな」
「降りるどころか顔すら出してなかった」
「というか既に暗くて、馬車の家紋すら知らなかったら分からないレベル」
…………。
思わず三人揃って表情が消えた顔を見合わせる。
「はぁ、今日も可愛かったなぁ。僕のミリィ♡」
主の何気ないひと言に、側近たちが心の中で呟いた『キモッ』という感想が綺麗にハモっていた事は、天のみぞ知る。
「お帰り、ミリィ。今日も一日お疲れ様」
笑顔でオレファンが呟く。
「それ、聞こえて無いと思いますよ」
「聞こえたら怖がると思いますけどね」
「大丈夫でしょ、きっと。ミリア嬢、俺らよりずっと慣れてますもん」
オレファンの側近A、B、Cもといケネス、ウォルター、カインが次々と突っ込みを入れていく。
彼等の主たるオレファン・オリゴマー第二王子が駆けつけた先は、貴族学園ではない。
オレファン最愛の婚約者ミリア・ファネス公爵令嬢の住む邸宅、その正門が辛うじて望遠鏡で見えるギリッギリの大通りの角である。
そこに停めた、王家の紋章もなにも入っていない地味な黒塗りの返って怪しいんじゃないかと思われるような箱馬車の中から、ミリア嬢がきちんと邸宅へ帰り着いたかを確認するのがオレファンの日課だった。
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ニコニコと気持ちの悪い言葉を悪い笑顔で告げる主に、ケネスがこめかみを揉んだ。
主はご満悦である。
しかし、あの箱馬車の中に必ず元気なミリア嬢がいるとは限らないのではないかと思うのだが、それを指摘すると更に面倒臭いことになりそうなので押し黙った。
黙っていれば、美形なのに。勿体ないと思う。
見目だけではない。学園を卒業してそろそろ一年。オレファンの仕事ぶりに関する評判は日々上がっていくばかりだ。
ただしその後には、就業時間内に限る、という言葉が付く。
「何故、天はこの方に見目も能力も与えておきながら、肝心の良識だけは育むことを阻まれたのか」
「本当に残念だ。理解に苦しむ」
「この人を主に戴くということが、天が俺達に与えた試練なんだろうなぁ」
すでにミリア嬢を乗せたと思わしき馬車は屋敷の門の奥へと消えている。
にも拘らず、微動だにせず望遠鏡を離さずその先でも妄想するかのように見つめている姿が残念すぎた。
オレファンが満足するまでの間こそこそと我が身を嘆き合った側近達を余所に、ようやく満足したのかオレファンがうっとりと長い息を吐いた。
「今日のミリィのリボン、見た? 三年前に僕が贈ったタティングレースのものだったよ。凄く似合ってた。うれしい」
極々細い金糸にオレファンの瞳の色のクリスタルビーズを編み込んで作られたリボンは、まさにオレファンの色であり独占欲そのものだ。
しかし、と側近たちは胡乱な顔をした。
「え、ミリア嬢、箱馬車から降りてこなかったよな」
「降りるどころか顔すら出してなかった」
「というか既に暗くて、馬車の家紋すら知らなかったら分からないレベル」
…………。
思わず三人揃って表情が消えた顔を見合わせる。
「はぁ、今日も可愛かったなぁ。僕のミリィ♡」
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