聖女さま、御降臨~元ガチムチ騎士団長は美少女聖女さまにTS中♡

喜楽直人

文字の大きさ
27 / 47
教会の手

2.強引で傲慢な招待

しおりを挟む



「さて、どうしたものか」

 教会は、大きい。
 あの魔族との戦いでの行ないすら、結局信者たちは受け入れてしまった。

『教会の祈りが通じたお陰で、聖女さまの御降臨が叶った』
 そう信じている者はこの国の貴族にもいる。
 主に、戦場から遠くあった者たちだ。

 剣をとることが不得手でも、事務仕事や折衝を得意とする者たちがいなければ、国は成り立たない。
 だから戦場に立っていなかろうが、王として不遇に処することはない。

 しかし、ゴルドが神の御業を宿したことにより架せられた災いすら理解することなく、その忠義を尊ぶこともなく、アレクサンドルの忠臣を都合よく扱おうという性根だけは見逃す訳にはいかない。

「ぶっ潰すか。真正面から』

 ぶっ潰した後、他国からの抗議を受ける可能性は高い。いや、間違いなく受けるだろう。

 しかし、とりあえずぶっ潰してしまえば、アレクサンドルの忠義者へちょっかいを出そうとする者は消せる。以降のちょっかいも減るだろう。
 教会も、頭となる教皇を潰してしまえばあとは烏合の衆だ。どうとでもできる。

「これから行って、殴ってくるかな。いや、一思いに殺っちまうのも」

 そこまで考えたところで、窓の外が騒がしいことに気が付いた。
 廊下を駆け寄ってくる音もする。
 アレクサンドルは窓に駆け寄ると、顔を出さずに目だけで外を確認した。

 城門の方に、兵たちが集まっている。
 眉間にしわを寄せて目を凝らすと、やたらとギラギラした装飾だらけの馬車が止まっていた。
 どうやら強引に城内に入り込もうとしているようだ。
 馬車の行く手を阻む門番が、白い服を着た男たちとなにやら言い合いになっているようだった。
 ひとりの男が手にした棒で門番を威嚇しているのが見えて、怒りがわく。

「俺の居城でなにしてやがる。ふざけやがって」

 アレクサンドルは、置いてあった愛用の剣を腰に刷いた。


 バンと派手な音を立てて、執務室の扉が大きく開かれた。
 ラザルはノックすることもしなかったが、中から誰何する声も上がらないことも気づかないまま、叫んだ。

「アレクサンドル様、大変です。教会が、ゴルド様を直接連れていこうとやってきました!」

 階段を三段ぬかして駆けあがってきて、はあはあと上がる息を何とか抑えて報告する。

 しかし、アレクサンドルが詰めているはずの執務室は、もぬけの殻だった。
 その窓が大きく開けられている。

「アレクサンドルさま?! うええぇぇぇ!!!」

 まさかと思って窓の外を確認したラザルは悲鳴を上げた。

 大王が、窓から落ちていた。

「いや、飛んで……跳んでる?!」
 アレクサンドルは、城の屋根の魔除けの飾りやら落雪防止鋲を器用に蹴っては、勢いを殺しながら空中移動していた。

「そもそもその魔除けの壁面彫刻は侵入者防止のためのはずなのに。あーもう、ホントにあの人ってば規格外だなぁ。えっと行先は……城門、か? まさか窓からあの騒動を見つけられたのか?! 嘘だろう」

 嘘というなら、三階の窓から飛び降りて急勾配な屋根と外壁沿いに移動していく姿自体がまるで嘘のようだった。

「マジかよ。こんなことができる身体能力の持ち主とやり合って、勝てる訳がない」

 ははは、と乾いた笑いが出てくる。
 窓枠の下を覗き見ると、足場と呼べそうなものは何も見つけられない。
 基本的にすべてが尖っているのだから当たり前だ。そんな盗賊や異国の間者がモノは試しだと思わないようにそれはもう念入りに設計されているのだから。

「はぁ。ホント、人外だな」

 ラザルがアレクサンドルと剣を交えることになったのはつい3カ月ほど前のことだ。
 かなりの手加減をして貰っていただろうに、瞬殺された。
 一対一ならば魔族相手に互角で戦えるという噂は伊達ではないのだ。

「アレクサンドル大王様が教会の相手に行って下さったなら大丈夫だろう。では、俺はもうひとりの御方のところへ行って、説得を試みるとしよう」

 ラザルの敬愛する上司はまっすぐな方だ。
 隠れていて欲しいと頼んだとしても受け入れてくれるかは分からない。いや受け入れて貰える可能性は極めて低い。

「それでも、諦める訳にもいかないし、あの御方を教会に差し出すなんて冗談じゃない」

 絶対に、禄でもないことになる。

 ラザルは足早に、城の裏手にある訓練場へ向かった。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

【完結】政略婚約された令嬢ですが、記録と魔法で頑張って、現世と違って人生好転させます

なみゆき
ファンタジー
典子、アラフィフ独身女性。 結婚も恋愛も経験せず、気づけば父の介護と職場の理不尽に追われる日々。 兄姉からは、都合よく扱われ、父からは暴言を浴びせられ、職場では責任を押しつけられる。 人生のほとんどを“搾取される側”として生きてきた。 過労で倒れた彼女が目を覚ますと、そこは異世界。 7歳の伯爵令嬢セレナとして転生していた。 前世の記憶を持つ彼女は、今度こそ“誰かの犠牲”ではなく、“誰かの支え”として生きることを決意する。 魔法と貴族社会が息づくこの世界で、セレナは前世の知識を活かし、友人達と交流を深める。 そこに割り込む怪しい聖女ー語彙力もなく、ワンパターンの行動なのに攻略対象ぽい人たちは次々と籠絡されていく。 これはシナリオなのかバグなのか? その原因を突き止めるため、全ての証拠を記録し始めた。 【☆応援やブクマありがとうございます☆大変励みになりますm(_ _)m】

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

ある日、私は聖女召喚で呼び出され悪魔と間違われた。〜引き取ってくれた冷血無慈悲公爵にペットとして可愛がられる〜

楠ノ木雫
恋愛
 気が付いた時には見知らぬ場所にいた。周りには複数の女性達。そう、私達は《聖女》としてここに呼び出されたのだ。だけど、そこでいきなり私を悪魔だと剣を向ける者達がいて。殺されはしなかったけれど、聖女ではないと認識され、冷血公爵に押し付けられることになった。  私は断じて悪魔じゃありません! 見た目は真っ黒で丸い角もあるけれど、悪魔ではなく…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

王女様は温かいごはんが食べたい ~冷えた王宮料理を変えたら、オープンキッチンと政略婚約がついてきました~

しおしお
恋愛
異世界の王女リリアーヌは、前世の記憶を持つ転生者。 豪華絢爛な王宮で暮らし始めた彼女だったが、ひとつだけどうしても耐えられないことがあった。 ――食事が、冷めているのだ。 どれほど立派な料理でも、ぬるいスープや冷めた肉ではホッとできない。 「温かいごはんが食べたい」 そのささやかな願いを口にしたことから、王宮ではなぜか大騒動が巻き起こる。 地下厨房からの高速搬送。 専用レーンを爆走するカートメイド。 扉の開閉に命をかけるオープナー。 ついには食堂に火を持ち込むオープンキッチンまで誕生して――!? 温かさは、ホッとさせてくれる。 それは料理だけではなく、人との距離まで少しずつ変えていくものだった。 冷えた王宮に湯気と笑顔を取り戻す、 食と温かさをめぐる宮廷日常コメディ! -

処理中です...