公爵令嬢ジュスティーヌ・アフレは美しいモノが好き

喜楽直人

文字の大きさ
12 / 12

12.

しおりを挟む
「これで、あなたの婚約は無くなりましたね」
「えぇ。これから新しく婚約者を探さねばなりません」
「……大変ですね」
「そうですね。でも、レイナード様ほどでは無いと思いますわ」
「私が? 何故です」
「……この国の次代は女王陛下が治めることになったからです。王配候補の筆頭に挙げられるのではありませんか」
 王妃が産んだ王女は現在5歳。レイナードとは13歳違いということになるが、貴族の結婚としてはギリギリではあるが許容範囲内である。
「無理ですね。私には、幼い頃からずっと心を捧げる方がいる。侯爵家の三男として生まれただけの私は何も持っておらず、将来の約束を申し出る資格すら持っていなかったが」
「……」
「いつか特級魔法師になってその人の手を取りたいという願いを口に出せるようになるのだと修練を積んでいたのです。ただその人は、私が資格を得る前に、この国の未来の王妃となるべく選ばれて、婚約してしまったのですがね」
「レイナード様」
「神に、その人が治める国を守ると誓いを捧げました。だが未来が変わって、あなたが誰のものでもなくなり、この国を治めることもなくなったというのなら。私は、……私の誓いを違えても、神は許してくれるだろうか」

 紫水晶のような瞳が、不安に揺れている。
 緊張で強く引き結ばれた薄い唇が、ジュスティーヌの名前を、呼ぶ。

 かすれた声が、どんな天上の音楽よりも美しく、ジュスティーヌの耳へ響いた。

「神が許さなくとも、わたくしは許します」

「もう誰にも、あなたを渡したくない。ジュスティーヌ、愛してる。結婚してくれ」




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あなたをずっと、愛していたのに 〜氷の公爵令嬢は、王子の言葉では溶かされない~

柴野
恋愛
「アナベル・メリーエ。君との婚約を破棄するッ!」  王子を一途に想い続けていた公爵令嬢アナベルは、冤罪による婚約破棄宣言を受けて、全てを諦めた。  ――だってあなたといられない世界だなんて、私には必要ありませんから。  愛していた人に裏切られ、氷に身を閉ざした公爵令嬢。  王子が深く後悔し、泣いて謝罪したところで止まった彼女の時が再び動き出すことはない。  アナベルの氷はいかにして溶けるのか。王子の贖罪の物語。 ※オールハッピーエンドというわけではありませんが、作者的にはハピエンです。 ※小説家になろうにも重複投稿しています。

断罪される令嬢は、悪魔の顔を持った天使だった

Blue
恋愛
 王立学園で行われる学園舞踏会。そこで意気揚々と舞台に上がり、この国の王子が声を張り上げた。 「私はここで宣言する!アリアンナ・ヴォルテーラ公爵令嬢との婚約を、この場を持って破棄する!!」 シンと静まる会場。しかし次の瞬間、予期せぬ反応が返ってきた。 アリアンナの周辺の目線で話しは進みます。

本の通りに悪役をこなしてみようと思います

Blue
恋愛
ある朝。目覚めるとサイドテーブルの上に見知らぬ本が置かれていた。 本の通りに自分自身を演じなければ死ぬ、ですって? こんな怪しげな本、全く信用ならないけれど、やってやろうじゃないの。 悪役上等。 なのに、何だか様子がおかしいような?

悪役令嬢、冤罪で一度命を落とすも今度はモフモフと一緒に幸せをつかむ

Blue
恋愛
 作り上げられた偽りの罪で国外追放をされてしまったエリーザ・オリヴィエーロ侯爵令嬢。しかも隣国に向かっている途中、無残にも盗賊たちの手によって儚くなってしまう。  しかし、次に目覚めるとそこは、婚約者であった第二王子と初めて会うお茶会の日に戻っていたのだった。  夢の中で会ったモフモフたちを探して、せっかく戻った命。今回は、モフモフと幸せになるために頑張るのだった。 『小説家になろう』の方にも別名ですが出させて頂いております。

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

婚約破棄イベントが壊れた!

秋月一花
恋愛
 学園の卒業パーティー。たった一人で姿を現した私、カリスタ。会場内はざわつき、私へと一斉に視線が集まる。  ――卒業パーティーで、私は婚約破棄を宣言される。長かった。とっても長かった。ヒロイン、頑張って王子様と一緒に国を持ち上げてね!  ……って思ったら、これ私の知っている婚約破棄イベントじゃない! 「カリスタ、どうして先に行ってしまったんだい?」  おかしい、おかしい。絶対におかしい!  国外追放されて平民として生きるつもりだったのに! このままだと私が王妃になってしまう! どうしてそうなった、ヒロイン王太子狙いだったじゃん! 2021/07/04 カクヨム様にも投稿しました。

〘完結〛わたし悪役令嬢じゃありませんけど?

桜井ことり
恋愛
伯爵令嬢ソフィアは優しく穏やかな性格で婚約者である公爵家の次男ライネルと順風満帆のはず?だった。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

処理中です...