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「これで、あなたの婚約は無くなりましたね」
「えぇ。これから新しく婚約者を探さねばなりません」
「……大変ですね」
「そうですね。でも、レイナード様ほどでは無いと思いますわ」
「私が? 何故です」
「……この国の次代は女王陛下が治めることになったからです。王配候補の筆頭に挙げられるのではありませんか」
王妃が産んだ王女は現在5歳。レイナードとは13歳違いということになるが、貴族の結婚としてはギリギリではあるが許容範囲内である。
「無理ですね。私には、幼い頃からずっと心を捧げる方がいる。侯爵家の三男として生まれただけの私は何も持っておらず、将来の約束を申し出る資格すら持っていなかったが」
「……」
「いつか特級魔法師になってその人の手を取りたいという願いを口に出せるようになるのだと修練を積んでいたのです。ただその人は、私が資格を得る前に、この国の未来の王妃となるべく選ばれて、婚約してしまったのですがね」
「レイナード様」
「神に、その人が治める国を守ると誓いを捧げました。だが未来が変わって、あなたが誰のものでもなくなり、この国を治めることもなくなったというのなら。私は、……私の誓いを違えても、神は許してくれるだろうか」
紫水晶のような瞳が、不安に揺れている。
緊張で強く引き結ばれた薄い唇が、ジュスティーヌの名前を、呼ぶ。
かすれた声が、どんな天上の音楽よりも美しく、ジュスティーヌの耳へ響いた。
「神が許さなくとも、わたくしは許します」
「もう誰にも、あなたを渡したくない。ジュスティーヌ、愛してる。結婚してくれ」
「えぇ。これから新しく婚約者を探さねばなりません」
「……大変ですね」
「そうですね。でも、レイナード様ほどでは無いと思いますわ」
「私が? 何故です」
「……この国の次代は女王陛下が治めることになったからです。王配候補の筆頭に挙げられるのではありませんか」
王妃が産んだ王女は現在5歳。レイナードとは13歳違いということになるが、貴族の結婚としてはギリギリではあるが許容範囲内である。
「無理ですね。私には、幼い頃からずっと心を捧げる方がいる。侯爵家の三男として生まれただけの私は何も持っておらず、将来の約束を申し出る資格すら持っていなかったが」
「……」
「いつか特級魔法師になってその人の手を取りたいという願いを口に出せるようになるのだと修練を積んでいたのです。ただその人は、私が資格を得る前に、この国の未来の王妃となるべく選ばれて、婚約してしまったのですがね」
「レイナード様」
「神に、その人が治める国を守ると誓いを捧げました。だが未来が変わって、あなたが誰のものでもなくなり、この国を治めることもなくなったというのなら。私は、……私の誓いを違えても、神は許してくれるだろうか」
紫水晶のような瞳が、不安に揺れている。
緊張で強く引き結ばれた薄い唇が、ジュスティーヌの名前を、呼ぶ。
かすれた声が、どんな天上の音楽よりも美しく、ジュスティーヌの耳へ響いた。
「神が許さなくとも、わたくしは許します」
「もう誰にも、あなたを渡したくない。ジュスティーヌ、愛してる。結婚してくれ」
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