時間を戻して異世界最凶ハーレムライフ

葛葉レイ

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賄賂

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 メルロスから連絡が入り、急ぎ城へ戻った。

 城に配属していた女性から、メルロスへ連絡が入ったらしい。

 到着してみると、領民数名が俺に謁見する為、長時間待っているとの事。

 申し訳なく思い、その領民達を待たせている部屋へ行こうとすると、ラウールがおもむろに止めた。

「お待ちください、テツオ様。
 領主自ら彼らの控え室へ行くのは、好ましくありません」

 貴族には、威厳や礼節が大事だと言う。
 俺にはどうでもいい事だが、舐められても困るし、ラウールの言う事を聞いておこう。
 貴族社会なんて何にも分からない。

 謁見の間に場を移し、椅子に座って待っていると、ギルド支部長、宿屋組合長、商工会会長、新聞社所長など、この街のトップと言われる面々が入ってきた。
 十人はいるだろうか。
 全員、俺より倍以上は年の離れたおっさんだ。
 一人ずつ俺の前に来て、恭しく挨拶をする。
 その全員が何か小包らしきものをラウールに渡していた。
 それは何かと尋ねると、挨拶料だと言う。
 …………挨拶料?
 おいおい、賄賂じゃないの?それ。

「これは受け取るものなんですか?」

 ラウールに小声で確認を取る。

「慣例ですね。
 誰もがそういうものだと分かっております」

 贈収賄は、この世界では罪じゃ無いのか?
 でも、なんか俺の領地ではそんなの要らないな。

「金はお返しします。
 これからこの領地では賄賂を禁ずる事に決めました」

 その場にいた全員が驚いた。
 隣にいる者と顔を見合わせ、怪訝そうにしている。

 金を受け取らなくても、いい仕事をすれば評価するし、困っていれば援助もする。
 そう言って細かく説明したつもりだが、彼らはいまいち理解していないのか、釈然としないまま退出していった。

 常識だと思っている事が覆された時、人は理解が追いつかないのかもしれない。
 前にクランでも話したが、この世界の法律はあるようで無い。
 王や領主がいるので君主制ではあるが、割と民意が反映される節がある。

 みんなが暮らしやすいように、法の整備が必要だな。

 直ちにアデリッサを呼びつけ、ラウールと三人で法律関係を見直す事にしよう。

 おや?
 悪魔に人間の法律を考えさせるってどうなんだろうか?
 とはいえ、貴族の娘だけあってその道に詳しいのも事実だしな。

 ラウールが現行の法律を示し、俺が率直な感想を言い、アデリッサが補足する流れでサクサクと法律が改正されていく。

 俺は一体何をやっているんだ?
 こんなことをする為に冒険者になった訳じゃないんだが。

 七時を過ぎた辺りで来客があったらしく、ラウールがエントランスに向かっていく。
 しばらくすると、血相変えたラウールが息を切らしながら戻ってきた。

 「テツオ様、すぐに来ていただけませんか!」

 何事かとエントランスに行くと、先程挨拶に来ていた街のお偉方が、それぞれ美女を連れ戻ってきている。
 全員で十人か。
 入城するとあって、どの美女もかなりドレスアップしていた。

「こ、これは?」

「先程は配慮が足りず、大変失礼致しました。
 どうか、こちらをお納めください」

 全員がお辞儀をし、美女達が歩み寄ってくる。
 こいつら全然分かってない。
 これは完全にエリックのせいだな。
 あの阿保が、この街に良くない文化を根付かせたんだ。

「あー、皆さん勘違いしてるようだが、この街ではもうジョンテ家のやり方は通用しない。
 法律を改正するから、えっと貴方、新聞社の方?
 完成したら持っていくから、なるべく早く配布するように。
 それと、この城は労働力が足りないから彼女達はここで働かせる。
 いいかな?」

 反応を見ると、全員が受け取って貰えて助かったというような顔をしている。
 やっぱり、分かってなさそうだ。
 安心したのかお偉方はお辞儀をしていそいそと帰っていった。

 贈呈された美女達に、一旦家へ帰るよう伝えたが、城に来た以上もう帰る事が出来ないという。
 怖い怖い。
 それどんなルール?

 帰れないと言うのであれば仕方がないので、アデリッサに面倒事を押し付けて部屋へと案内させる。
 明日からメイドとして頑張ってもらおう。
 メイド服なら大量にあるから問題ない。

 帰りたければいつでも帰ってもらって結構だが、帰る際にはせっかくだから先っちょだけお願いしたいかな。


 ————————



 やっぱり事務作業なんて向いてない。
 そもそも国全体の法律があるので、領地の法律を細かく弄るには、その都度、国へ申請しなくてはいけないらしい。
 なんか面倒だし、疲れたし、そろそろお腹も空いてきた。
 とりあえず、現状そこまで細かい法律がある訳でも無いし、領主の権力は絶対なので、ここでは賄賂は認めない。
 グレーな部分はいかようにでもできるのだから。
 色々決まったから、いずれまとめて申請する事にして、そろそろご飯にしよう。
 
 城とテツオリゾート間は、俺が許可した者限定ではあるが転移可能なので、レストランから料理を運ばせ、今夜は城で食べる事にしよう。
 城はやたら広いので、ここで食事をするなら人数は多い方がいい。

 リリィに連絡し城へ転移させ、【北の盾ノールブークリエ】の方々を城に呼び、メルロスと手の空いた女性達、先程贈呈された女性達を食堂に集めた。

 クランホームの食堂なんかより遥かに広くて高い大部屋に、長いテーブルが三列並べられている。
 五百人程度なら楽に座れるキャパシティた。

 女性が増えたので、ここらで呼び方を決めた方がいいな。
 現在、テツオ邸にいる美女三十五人は、メルロス管轄下にあるので、呼び方は一先ずメリーズとしよう。
 先程贈呈された美女達は、城付きのメイドとして雇うので今のところは、そのままメイド呼びでいいか。

 ラウールはあまりの人数の多さにあたふたしているが、色んな食器類や酒類の保管場所が分からないので、サポートをお願いする。
 彼は仕事となれば、テキパキと動けるタイプなので、何か仕事を与えておけばいいようだ。

 メルロスの指示とラウールのサポート、そしてメリーズがメイドを指導しながら料理を準備していく。
 来たばっかりなのにいきなり働かされ、戸惑うだろうがこれからの為に頑張ってもらうしかないな。

 右側に座っているリリィが、城内を見渡しながら話しかけてきた。

「テツオ、とうとう貴族になっちゃったのね」

「押し付けられただけだよ」

 リリィは柔らかく笑って酒の入ったグラスに口を付けた。
 酔わないで欲しい。

「そんな事ないわ。
 テツオなら王にだってなれそう」

 ハーレム王に俺はなる!

「テツオ、なんか言った?」

 口に出してないのに。
 というか、こんな乱世で王になるとか、難易度ハード過ぎるから絶対なりたくない。

 リリィとは逆の左側に座るソニアが話しかけてきた。

「そちらのお方は、もしかすると西国の姫君か?」

「ええ、そうよ」

 ソニアの問いにリリィが即答すると周囲が騒ついた。
 やっぱりこいつ有名人なんだな。

「え?じゃあ、あん時拐われムグッ!」

「申し訳ない」

 ヴァーディの独り言を、速攻でリヤドが封じるファインプレー。
 グルサム金鉱山での事は、どうか忘れてやってほしい。

 カンテばかりでなく、何十人の団員が食事を中断してぞろぞろと集まってきた。
 なんなんだ、こいつらは。
 質問が矢継ぎ早に飛んでくる。

 なんでテツオと一緒にいるのか?
 勇者を探しているのではないのか?
 この北の国ボルストンで何をしているのか?
 手合わせさせてくれないか?

 最後のヴァーディの台詞は、質問ですら無い。

「二人はスーレの村で会ったんだ。
 それから、二人は戦い、意気投合したんだ!」

 知らないおっさんが突然発言しだして、周囲が静まり返る。

「え?あ、いや、俺はスーレの村で防衛任務に就いてたんだが……」

 あー、スーレにいた三馬鹿の戦士か。
 リリィが一息付いて口を開く。

「確かに私は勇者を探す為に、スーレの村まで行ったのだけど……
 そこで、テツオと運命的に出会い、テツオの強さに惚れて一緒にいる事したの。
 私の英雄としての力は、テツオの為にしか使わないわ!」

 清々しいまでの断言。

 配膳するメルロスの手がぴたりと止まった。
 アデリッサは俺とリリィを何度も交互に見る。
 ソニアは笑みをたたえたまま果実酒の入ったグラスを揺らしている。

 なにやら不穏な空気が流れているような……

「おお!
 英雄がテツオの仲間になるとは、なんと素晴らしい事であろうか!
 この領地は安泰だな!」

 果たして天然なのか、助け船なのか、三馬鹿の魔法使いが、両手を広げ感極まっている。
 シーンとする間を打ち破るように、リヤドが叫んだ。

「全くその通りだ!
 英雄に、そして領主に乾杯といこう!」

 皆が、おおーっ!と大声で叫び、酒杯を掲げた。
 流石空気の読める男、リヤド。
 流れを逃さず宴会モードに持っていった。
 このクランの連携力は半端ないのだ。


「リリィ、明日は俺と一緒に冒険だ」

 発言の影響力を気にする事もなく、涼しい顔をして食事をしているリリィに話を振ると、えっ?と途端に嬉しい顔になって食い付いてきた。

「何処に行くの?
 次の悪魔が見つかったの?」

「悪魔じゃない、恐竜退治だ。
 知ってるか?恐竜」

 悪魔と戦いたかったのか、露骨にがっかりした顔をするリリィ。

「もちろんよ。
 戦った事無いけど。
 それより、テツオとどこか行ける方が嬉しいかな」

「え?なんて?」

 気がつくと、隣の声も聞こえないくらいのどんちゃん騒ぎに発展していた。
 上半身裸で踊っている阿保も多い。

 女性達が戸惑った顔をしている。
 慣れていないのだろうか。
 メリーズは教育が行き届いている為、誰にでも優しく対応している。

 見兼ねたソニアの指示で、裸になった団員が次々と城から追い出される様子を眺めながら、皆で笑っていた。

 正直、ノリは嫌いじゃないんだよね。

「よし!俺も飲もう!」

 平和だ。
 酒が美味い。
 美女に囲まれ、酒を嗜む幸せ。
 これこそ正に貴族。
 とても気分がいい。


 ふぅ……
 どれだけ飲んだのか……

 眠くなってきた。
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