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コミケに行こう
第15話
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どうしてこうなった。
寝室に通されると、優雨は目の前の光景に思わず言葉を失った。愕然とした表情を顔に張り付けたまま、この部屋まで案内してくれた深雪の祖母の方へと振り返る。彼女は柔和な笑みを崩さずに一言「ごゆっくり」とだけ彼に告げると、優雨を残してその場を後にした。
目の前にあったのは、客間の中央に敷かれた一組の布団にぴったりと寄せて置かれた二人分の枕だった。どう見てもカップルのために用意された距離感。これも深雪の言動のせいで起きた行き違いのせいに違いなかった。
「ベッドじゃないの久しぶりっす」
「うおっ」
いつの間にか隣に立っていたパジャマ姿の深雪の存在に思わず驚かされる。茫然としていたせいかまるで気がつかなかった。
「なんすかそれ。ウケる」
「ウケるじゃないが」
後になって知ったことだが、優雨の意識が定かでなかった車中でどういうわけか深雪は「彼は自分の恋人だ」と祖父に主張したらしい。二人の世話になった際も、思えばそのような扱いを受けていた気もするし、それならば合点もいく。
意識が曖昧だったせいできっぱりと否定することができなかった自分のせいではあるのだが―――そう思う一方で、悪い気がしないのも確かだった。相手は校内でも唯一と言ってもいい異性の友人で、しかもとびきり可愛いときてる。どうしてバイト先にメイド喫茶を選んでくれなかったのか、それだけが悔やまれた。
「どういうことだよ、これ」
「見たまんまじゃないっすかね」
深雪がしれっとした顔で言い切った。
「お前がややこしくしたんだろ」
「なんのことっすか」
今度はそっぽを向いて言う。どこまで白を切るつもりなのか。
「ご夫婦に何を吹き込んだんだ」
「いや何って、話せば長くなるんすけど」
「長いのかよ」
「先に布団入らないっすか」
そう言うなり、深雪はさっさと布団の中に潜り込んでしまった。布団が一組しかないことに何の疑問も感じていないようだ。
「秋山さーん」
我先にと入った布団の中から、優雨も来るようにと彼女が手招きする。思わず夢でも見ているのかと疑ってしまうような光景だ。
「いや無理でしょ流石に」
「いえいえ、自分弟いるんでこういうのけっこー得意なんすよ。寝かしつけ?」
そういう問題じゃないだろう。
眉間を指で押さえながら、優雨はこの事態にどう対処するか頭を悩ませた。その半面で彼女が実の弟を引き合いに出してきたことに対し、まるで自分だけが相手を意識しているみたいに思えて、悩んでいるのが馬鹿らしくなってくる。
「さっきスマホ貸してあげたじゃないっすか」
「あれで恩に着せたつもりかよ」
風呂上がりに夕食を馳走になった後、自宅に連絡するために深雪からスマホを借りたのだ。どうやら、自分の荷物は道端に放り出されたままになっているらしく、スマホもその中には含まれていた。
経緯をぼかして「友人の家に泊まる」とだけ電話に出た妹に伝えると、それを聞いた深雪が「なぜ『彼女の家に泊まる』と言わないのか」と憤慨しだしたので慌てて通話を切っていた。妹に聞こえてないといいのだが。
「誰のおかげで美味しいごはんとあったかいおふとんにありつけたと思ってるんすかね」
深雪がしたり顔で客間の外で立ち尽くす優雨に言った。それを言われてしまうと流石に返す言葉がない。山中で死を覚悟したことを思うと、この奇跡的なめぐり合わせに感謝こそすれ迷惑に思うことは何一つなかった。
「わかったから、少し離れろ」
優雨が観念すると、深雪はにやにやしながら「しょうがないっすね」とどこか満足げな様子で優雨が入れるだけのスペースを隣に作った。サイズの合っていない借り物の寝間着の襟を正すと、優雨は意を決して深雪のいる寝室に踏み込む。
「あっ、電気消すっす」
「お、おう」
天井灯のスイッチ紐を引いてから、暗くなった室内に目が慣れるのを待つ。その間に手探りで掛布団の端を掴むと、ゆっくりとそれをめくった。夏場用の薄手のものだ。
目と鼻の先には、横になった深雪がいる。
優雨がその光景に思わず生唾を飲んだ。しかし、まるで性的な緊張感を持っていない彼女に手を出すわけにはいかないだろう。何はともあれ、本人の言う通り命の恩人といっても過言ではない相手なのだから―――恋人扱いした思惑はどうあれ、今日だけは彼女に大人しく従うことにしよう。
「どうかしたんすか」
いつまでも布団の外で座り込んでいる優雨に、深雪がじれったそうに声を掛けた。
「いや、暗くてさ」
街中では深夜でも多少の光はあるものだ。しかし、ここにはそれがまったくない。まれに車道から届く騒音もなければ、かすかに聞こえるのは虫が鳴く涼やかな音だけだ。
「田舎っすからね」
深雪に聞いたところ、ここは優雨の自宅から車で容易に二、三時間は掛かりそうな距離にある場所だった。彼女も気を落ち着けたいときはここに来るのが一番だと言う。
ここには深雪の母方の祖父母がお住いのようだが、諸事情により今年のお盆休みは彼女だけが訪れていたようだ。迎えにきた祖父からお小遣いを貰った深雪が買い物を済ませてから、その帰り道で偶然にも優雨を拾ったというわけか。
「いいところだな」
平静を装いながら、足から布団の中に入っていく。ゆっくりと敷き布団に身を横たえると、すぐそばに深雪の体温を感じた。人一倍大きな図体のせいで、今夜は布団の端にいても寝返りをうつ余裕すらなさそうだ。こうして身じろぎ一つできないでいると、蘭子と一つの傘に収まろうとしていたときのことを思い出す。
懐かしい気分に浸っていたのも束の間、間近で深雪の息遣いを感じると、優雨に再び緊張の波が押し寄せた。思わず彼女に背を向けると、そのままやり過ごそうとする。
「秋山さん」
深雪が彼の背中にそっと手を触れさせた。安心感を覚える温もり。彼女が肩甲骨のある辺りまでその手を這わせる。
「痛くないっすか」
首筋を焼かれた赤い傷跡が、深雪の目にも入っていたのだろう。彼女の祖父に手当てしてもらい、今は包帯を巻いている。
「平気だよ」
深雪に背を向けたまま、優雨は答えた。傷を負った経緯については、やはり口にしないでおく。
「もう聞かないっす」
そんな彼に短くため息を漏らすと、深雪が囁くように言った。
「だからこっち向くっす」
緊張に身を強張らせていた優雨だったが、深雪の我が子をあやすような声音に誘われては抗うことができなかった。ゆっくり身体の向きを変えようとすると、頭と枕の間に深雪の腕が差し込まれる。彼女が腕枕をしようとしているのだと察するより前に、優雨の顔が何かに沈み込んでいった。今までの人生で一度も感じたことのない柔らかな感触。
「今日だけ特別っす」
深雪の声が頭の上から聞こえてきた。それはつまり、
「っ、」
腕枕どころの騒ぎではない。思わず何事かと口を開こうとしたら、深雪がそれを制するように優雨の後頭部をまさぐった。
「くすぐったいんで、あんまり喋らないでほしいっす」
枕の位置を直しながら、深雪が小声で囁きかけた。
「こうすると弟もすぐ寝るっす」
優雨の髪を愛おしそうに撫でながら、深雪は目を瞑って自然と眠気が訪れるのを待っている。その一方で、優雨にとっては気が気でない状況が続いた。
肌触りのいいパジャマの柔らかな生地越しに感じるふくよかな乳房の感触。今や肺の中身が一杯になるまで吸い込んだ石鹸の香り。彼女の心音が触感で伝わる距離。興奮のボルテージは風呂場での一件に次ぐピークを迎えようとしていた。
一時は呼吸の仕方を忘れそうになるほど動揺してしまったものの、深雪の呼吸に合わせた規則的な息継ぎを設けることで、優雨はその場をなんとか凌ぐことができた。そうして、どれだけの時間が経っただろうか―――次第に優雨の気が静まってくると、目の前にいる深雪の寝息が彼の耳に届いた。
よくもまあ、眠れるもんだ。
彼氏でもない男を抱き枕にして寝れるとは。それだけ自分が異性として意識されていないのかと思うと、悲しくなってきた優雨はそれ以上考えることをやめた。
深雪が既に眠っていることを祈りながら、彼女の細い腰に腕を回す。そうこうしているうちに、優雨の瞼もだんだんと重くなってきた。悩むのはやめて、後のことは明日の自分に任せることにしよう。
*
翌朝、深雪の目が覚めると隣にいたはずの優雨の姿はなかった―――もしかすると、寝苦しくなってどこかに行ってしまったのだろうか。しかし、優雨の頭を乗せていた腕に痺れが残っているのを感じると、彼が起き出してからそう時間が経っていないようにも思える。
優雨の身に何が起きたのか真相を聞き出すつもりが、彼の顔を見た途端にこちらの心が挫けてしまった。今の彼に必要なのは休息だ―――そう思うと甘やかさずにはいられなかった。これが母性というものなのだろうか。しかし、そうやって年の離れた弟をあやしていたのは何年も前のことだ。今や彼も恥ずかしがって添い寝すらしてくれない。昔は一緒にお風呂も入っていたのに。
持て余した母性を発散した朝は、実に目覚めのいいものだった。いいようにされた優雨が自分のことをどう思っているのか考えると少し怖いが―――こちらとしては、純粋な好意を示す方法があれしか思い浮かばなかっただけのことだ。
パジャマ姿のまま祖父母の家の中をうろうろし、優雨の姿を探した。しかし、どこを探しても彼の姿は見当たらない。朝食の支度をしていた祖母に聞くと、どうやら祖父と連れ立っていずこかに出掛けたらしい。
深雪の胸の内がにわかにざわついた。
*
深雪のお祖父さんに頼み込んで、危うく自分の棺桶になるところだった乗用車が不法投棄されたゴミ捨て場まで連れてきてもらった。
殺害現場になり得た場所を―――朝日のもとに晒された車体をとくと見る。すると、外側のドアハンドルは壊れていないことに気がついた。優雨はそれに手を掛けると、一呼吸置いてから思い切って開けてみる。途端に車内から放たれた炭の焦げた臭いと、腐食したシートのじめっとしたかび臭さが鼻についた。
思わず顔をしかめながら、優雨は車内を改めることにした。密室において凶悪な一酸化炭素を放出していた七輪だが、もう火はついていない。そして、自分が座らされていたと思しき場所には錠剤の入った小瓶が転がっていた。
見覚えのあるラベル。睡眠薬だ。
それを見て、思わず嘆息する。しかし、かつては忌々しいとさえ思っていた自分の体質に、まさか感謝の念を抱く日が来るとは。
かけがえのない友人。蘭子の義理の妹。彼女を失ってからというもの、優雨は過去になかなか寝つけない日々が続いていた。現場にあったものと同じラベルの睡眠薬―――過去に父が大怪我を負い、ストレスに過敏になっていた頃に処方されたものが自宅の洗面所には僅かに残っていた。それに隠れて頼ってみるも、まるで効果なし。そのことに気づかない父ではないと思うのだが、結局お咎めはなかった。
中学生だった当時から大人顔負けの大柄な体格をしていたせいか、一般的な目安では薬の効果が期待できなかった。それを戒めとして受け取った当時の自分は、苦悩の日々が継続することを甘んじて受け入れた。
犯人にどれだけの量の錠剤を飲まされたのかはわからないが、自殺に見せかけるための密室からなんとか起き出して脱出することができたのは僥倖だった。一晩ぐっすりと休んで、記憶を整理するだけの心の余裕が優雨にはできている。ゆっくりと目を閉じると、忘れようとしていた恐怖の記憶と向き合った。
路地裏で目にした憎悪に燃えた目―――恐らくは、流歌のストーカーに違いない男の目を。そのときに味わった恐怖と痛みを思い出し、火傷の残った首筋に触れる。恐らくはスタンガンか何かを押し付けられた跡なのだろう。これだけはっきりとした傷跡を残しておきながら、それでも自殺に見せかけようとするのは犯人も冷静さを欠いていたとしか思えない。
全てを思い出した後、優雨はぶるっと身震いした。自分が生きていると犯人が知ったら、次はどんな手を使ってくるのか。想像したくもなかった。こんな厄介ごとに深雪を巻き込みたくはない―――その一心で口を噤んでいたが、他の誰に相談すべきかも優雨は決めあぐねていた。
警察に相談するのが一番だろうが、現場にほど近い場所に住まいがある老夫婦、そして孫の深雪に偶然とはいえ事件との関りを与えてしまった。調査が及べば、そう遠くないうちに彼らも事情を知ることになるだろう。ならばいっそのこと、全てを今すぐ打ち明けてしまおうか。そう思いながらも、結局は行動に移せなかった。深雪の悲痛な面持ちなど見たくもない。
気の済むまで誘拐の現場を見回った後、深雪の祖父が待つ車へと戻る。結局、探していた手荷物やスマホは見つからなかった。攫われた際に置き去りになったか、道中で犯人に棄てられてしまったか。
夫婦宅の客間に戻ると、深雪はまだ布団の中で丸くなっていた。彼女が起き出す前に、これ幸いと脱衣所に行く手間を省いて洗濯してもらった自前の衣服にその場で袖を通す。朝食の支度が出来ていることを教えてもらっていたので、着替えを済ませた後に深雪を起こすことにした。
「おい、朝だぞ」
しかし、再三の呼びかけにも反応がない。彼女がすっぽりと頭まで被った布団を、思い切ってめくってみると、そこには胎児のような姿勢で背中を丸めて眠る深雪がいた。そこでふと、自分は試されているのだろうかと思う。風呂場に入ってきたことも、同じ布団で寝たことも。それらが彼女の天然な性格が成したことではなく、計算された行動だったなら。
さながら、眠り姫を前にしたかのような誘惑―――しかし、自分には目覚めのキスを与える王子としての器がないという自覚もあった。
深雪のふっくらとした形のいい唇を目の当たりにしながら、流歌と交わした指越しのキスの感触を思い出す。今になってそんなことを考える自分はどうにかしている。異常事態が続いたせいで、本能的な部分に抑えが利かなくなってきているのか。深雪の寝姿に引き寄せられるように、その顔にそっと近づこうとした。すると、うっすらと目を開いた彼女と不意に視線が交わった。
「うわっ」
思わずその場から後退った優雨が、「起きてたのか」と胸に手を当てながら言った。布団から這い出してきた深雪がそれを見て不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふーん、残念でした」
何かに勝ち誇ったかのような彼女の態度に、自らの欲に屈してしまったことへの恥ずかしさに、優雨は思わず頬が熱くなるのを感じた。
「何がだよ」
最低限の抵抗を試みるも、赤くなった顔までは隠せなかった。咄嗟のことで口に出してしまった言葉だったが、誤魔化しきれていないことに気がつくとすぐに後悔する。
「さっ、朝ごはんにしましょう」
布団から抜け出した深雪にそう言われると、一晩ですっかり手綱を握られた気分になった。優雨は釈然としないまま、深雪の後に続いて食卓に向かう。
*
朝食を平らげた後は、二人して自宅に戻ることとなった。深雪の祖父に近くの駅かバス停まで送ってもらえないかと頼んでいると、彼女もそれについていくと言い出したのだ。深雪の帰宅するタイミングが少々早まったようだが、それでも優雨を一人にはしておけないという配慮が彼女の中で働いたらしい。
しかし、それには一つ問題があった。お祖父さんの軽トラックには後部座席がないのだ。その為、優雨は昨夜と同様に再びトラックの荷台に収まる羽目になった。当然、そんな状態で堂々と公道を走り回るわけにもいかない。近くのバス停まで送ってもらった後は深雪も降車して、二人で帰り道を調べることになった。
「よ、っと」
優雨が軽トラの荷台に上がると、深雪までその後に続いてやってきた。彼女に手を貸しながら、優雨は答えのわかりきった質問を投げかける。深雪はとことんまで自分の目が届くところに彼を置きたいらしかった。
「おい、助手席はどうした」
「いやー、折角なんで自分も荷台に揺られてみようかと。じいちゃんにはゆっくり走るようにお願いしてるんで大丈夫っす」
荷台の上で肩をぴったりと寄せ合うと、隣にいる優雨に向けて彼女が無邪気に笑いかけた。
「落ちるなよ」
「あいー」
優雨の言葉に気の抜けた返事を寄越すと、彼にもたれかかりながら深雪は見送りにきた祖母に手を振る。軽トラが動き出すと、その姿もやがて小さくなって見えなくなった。
*
祖父にバス停まで送ってもらった後、それを利用して近くの駅に向かった。両親や祖父の車で移動するのが常だったものだから、電車を使うにしても行き先を調べて乗り継ぎを繰り返す必要がある。そこで電車賃すら手元にないことを思い出した優雨に交通費を貸し出すと、
「倍にして返してくださいね」
悪戯にそう口にすると、「ホワイトデーかよ」と返された。そんなことを言う彼には、次の年に本物のチョコを贈ってみるのもいいかもしれない。
思えばバスにしろ電車にしろ、彼の隣に座るのは今日が初めてのことだった。優雨と肩が触れ合うだけで、それを強く意識する。昨晩は添い寝までしたというのに、これしきのことで自分が漫画で見知ったような「恋する乙女」みたいに胸を高鳴らせてしまうのも、なんだかあべこべに感じた。
「いい天気っすね」
昨晩、優雨が山道にいた真相は未だに彼の口から語られる気配はない。あまりしつこく聞いて彼の機嫌を損ねるのも避けたいところだが、他に話題も見つからなかった。すると、
「・・・・・・ちょっと面倒なことになった」
少し思い悩むような素振りを見せた後、優雨がぽつりと言った。
「事情は、近いうちに話せると思う。その前にはっきりさせなきゃならないことがあるんだ」
今度はしっかりと深雪の目を見ながら話す。そんな彼の口ぶりに、深雪は胸の内でつかえていたものがすっかり溶け出していった気がした。
「期待しないで待ってるっす」
それだけ言うと、車窓の外に流れる風景に目を向ける。そんな深雪の様子に肩を透かされた優雨は、無言で目を閉じると背もたれに身体を預けた。
そこには普段の二人の間に流れる、不思議と居心地のいい雰囲気が戻ってきていた。
「あっ、今度一緒にお洋服見に行きましょうよ」
「え、まあ、いいけど」
「前から思ってたんすよね。秋山さんっていつも代わり映えしないっていうか、似た感じの服着てるじゃないっすか」
「いや、いいだろ別に」
「よくないっす」
「あー、そう」
「まあ、そんなことはどうでもよくって」
「いいのかよ」
「折角水着買ったんで、プールとか行きたいんすよね」
「いや、服の話は、」
「オシャレくらい自分で考えてくださいよ」
「お前から言い出したんだろ」
「もう、怒んないでくださあい」
「別に怒ってねえよ」
「恐い顔っすねー・・・・・・そんなんじゃ彼女できないっすよ」
「余計なお世話だ」
「知らないっすからね、ほんと・・・・・・で、なんの話でしたっけ?」
どうしてこうなった。
寝室に通されると、優雨は目の前の光景に思わず言葉を失った。愕然とした表情を顔に張り付けたまま、この部屋まで案内してくれた深雪の祖母の方へと振り返る。彼女は柔和な笑みを崩さずに一言「ごゆっくり」とだけ彼に告げると、優雨を残してその場を後にした。
目の前にあったのは、客間の中央に敷かれた一組の布団にぴったりと寄せて置かれた二人分の枕だった。どう見てもカップルのために用意された距離感。これも深雪の言動のせいで起きた行き違いのせいに違いなかった。
「ベッドじゃないの久しぶりっす」
「うおっ」
いつの間にか隣に立っていたパジャマ姿の深雪の存在に思わず驚かされる。茫然としていたせいかまるで気がつかなかった。
「なんすかそれ。ウケる」
「ウケるじゃないが」
後になって知ったことだが、優雨の意識が定かでなかった車中でどういうわけか深雪は「彼は自分の恋人だ」と祖父に主張したらしい。二人の世話になった際も、思えばそのような扱いを受けていた気もするし、それならば合点もいく。
意識が曖昧だったせいできっぱりと否定することができなかった自分のせいではあるのだが―――そう思う一方で、悪い気がしないのも確かだった。相手は校内でも唯一と言ってもいい異性の友人で、しかもとびきり可愛いときてる。どうしてバイト先にメイド喫茶を選んでくれなかったのか、それだけが悔やまれた。
「どういうことだよ、これ」
「見たまんまじゃないっすかね」
深雪がしれっとした顔で言い切った。
「お前がややこしくしたんだろ」
「なんのことっすか」
今度はそっぽを向いて言う。どこまで白を切るつもりなのか。
「ご夫婦に何を吹き込んだんだ」
「いや何って、話せば長くなるんすけど」
「長いのかよ」
「先に布団入らないっすか」
そう言うなり、深雪はさっさと布団の中に潜り込んでしまった。布団が一組しかないことに何の疑問も感じていないようだ。
「秋山さーん」
我先にと入った布団の中から、優雨も来るようにと彼女が手招きする。思わず夢でも見ているのかと疑ってしまうような光景だ。
「いや無理でしょ流石に」
「いえいえ、自分弟いるんでこういうのけっこー得意なんすよ。寝かしつけ?」
そういう問題じゃないだろう。
眉間を指で押さえながら、優雨はこの事態にどう対処するか頭を悩ませた。その半面で彼女が実の弟を引き合いに出してきたことに対し、まるで自分だけが相手を意識しているみたいに思えて、悩んでいるのが馬鹿らしくなってくる。
「さっきスマホ貸してあげたじゃないっすか」
「あれで恩に着せたつもりかよ」
風呂上がりに夕食を馳走になった後、自宅に連絡するために深雪からスマホを借りたのだ。どうやら、自分の荷物は道端に放り出されたままになっているらしく、スマホもその中には含まれていた。
経緯をぼかして「友人の家に泊まる」とだけ電話に出た妹に伝えると、それを聞いた深雪が「なぜ『彼女の家に泊まる』と言わないのか」と憤慨しだしたので慌てて通話を切っていた。妹に聞こえてないといいのだが。
「誰のおかげで美味しいごはんとあったかいおふとんにありつけたと思ってるんすかね」
深雪がしたり顔で客間の外で立ち尽くす優雨に言った。それを言われてしまうと流石に返す言葉がない。山中で死を覚悟したことを思うと、この奇跡的なめぐり合わせに感謝こそすれ迷惑に思うことは何一つなかった。
「わかったから、少し離れろ」
優雨が観念すると、深雪はにやにやしながら「しょうがないっすね」とどこか満足げな様子で優雨が入れるだけのスペースを隣に作った。サイズの合っていない借り物の寝間着の襟を正すと、優雨は意を決して深雪のいる寝室に踏み込む。
「あっ、電気消すっす」
「お、おう」
天井灯のスイッチ紐を引いてから、暗くなった室内に目が慣れるのを待つ。その間に手探りで掛布団の端を掴むと、ゆっくりとそれをめくった。夏場用の薄手のものだ。
目と鼻の先には、横になった深雪がいる。
優雨がその光景に思わず生唾を飲んだ。しかし、まるで性的な緊張感を持っていない彼女に手を出すわけにはいかないだろう。何はともあれ、本人の言う通り命の恩人といっても過言ではない相手なのだから―――恋人扱いした思惑はどうあれ、今日だけは彼女に大人しく従うことにしよう。
「どうかしたんすか」
いつまでも布団の外で座り込んでいる優雨に、深雪がじれったそうに声を掛けた。
「いや、暗くてさ」
街中では深夜でも多少の光はあるものだ。しかし、ここにはそれがまったくない。まれに車道から届く騒音もなければ、かすかに聞こえるのは虫が鳴く涼やかな音だけだ。
「田舎っすからね」
深雪に聞いたところ、ここは優雨の自宅から車で容易に二、三時間は掛かりそうな距離にある場所だった。彼女も気を落ち着けたいときはここに来るのが一番だと言う。
ここには深雪の母方の祖父母がお住いのようだが、諸事情により今年のお盆休みは彼女だけが訪れていたようだ。迎えにきた祖父からお小遣いを貰った深雪が買い物を済ませてから、その帰り道で偶然にも優雨を拾ったというわけか。
「いいところだな」
平静を装いながら、足から布団の中に入っていく。ゆっくりと敷き布団に身を横たえると、すぐそばに深雪の体温を感じた。人一倍大きな図体のせいで、今夜は布団の端にいても寝返りをうつ余裕すらなさそうだ。こうして身じろぎ一つできないでいると、蘭子と一つの傘に収まろうとしていたときのことを思い出す。
懐かしい気分に浸っていたのも束の間、間近で深雪の息遣いを感じると、優雨に再び緊張の波が押し寄せた。思わず彼女に背を向けると、そのままやり過ごそうとする。
「秋山さん」
深雪が彼の背中にそっと手を触れさせた。安心感を覚える温もり。彼女が肩甲骨のある辺りまでその手を這わせる。
「痛くないっすか」
首筋を焼かれた赤い傷跡が、深雪の目にも入っていたのだろう。彼女の祖父に手当てしてもらい、今は包帯を巻いている。
「平気だよ」
深雪に背を向けたまま、優雨は答えた。傷を負った経緯については、やはり口にしないでおく。
「もう聞かないっす」
そんな彼に短くため息を漏らすと、深雪が囁くように言った。
「だからこっち向くっす」
緊張に身を強張らせていた優雨だったが、深雪の我が子をあやすような声音に誘われては抗うことができなかった。ゆっくり身体の向きを変えようとすると、頭と枕の間に深雪の腕が差し込まれる。彼女が腕枕をしようとしているのだと察するより前に、優雨の顔が何かに沈み込んでいった。今までの人生で一度も感じたことのない柔らかな感触。
「今日だけ特別っす」
深雪の声が頭の上から聞こえてきた。それはつまり、
「っ、」
腕枕どころの騒ぎではない。思わず何事かと口を開こうとしたら、深雪がそれを制するように優雨の後頭部をまさぐった。
「くすぐったいんで、あんまり喋らないでほしいっす」
枕の位置を直しながら、深雪が小声で囁きかけた。
「こうすると弟もすぐ寝るっす」
優雨の髪を愛おしそうに撫でながら、深雪は目を瞑って自然と眠気が訪れるのを待っている。その一方で、優雨にとっては気が気でない状況が続いた。
肌触りのいいパジャマの柔らかな生地越しに感じるふくよかな乳房の感触。今や肺の中身が一杯になるまで吸い込んだ石鹸の香り。彼女の心音が触感で伝わる距離。興奮のボルテージは風呂場での一件に次ぐピークを迎えようとしていた。
一時は呼吸の仕方を忘れそうになるほど動揺してしまったものの、深雪の呼吸に合わせた規則的な息継ぎを設けることで、優雨はその場をなんとか凌ぐことができた。そうして、どれだけの時間が経っただろうか―――次第に優雨の気が静まってくると、目の前にいる深雪の寝息が彼の耳に届いた。
よくもまあ、眠れるもんだ。
彼氏でもない男を抱き枕にして寝れるとは。それだけ自分が異性として意識されていないのかと思うと、悲しくなってきた優雨はそれ以上考えることをやめた。
深雪が既に眠っていることを祈りながら、彼女の細い腰に腕を回す。そうこうしているうちに、優雨の瞼もだんだんと重くなってきた。悩むのはやめて、後のことは明日の自分に任せることにしよう。
*
翌朝、深雪の目が覚めると隣にいたはずの優雨の姿はなかった―――もしかすると、寝苦しくなってどこかに行ってしまったのだろうか。しかし、優雨の頭を乗せていた腕に痺れが残っているのを感じると、彼が起き出してからそう時間が経っていないようにも思える。
優雨の身に何が起きたのか真相を聞き出すつもりが、彼の顔を見た途端にこちらの心が挫けてしまった。今の彼に必要なのは休息だ―――そう思うと甘やかさずにはいられなかった。これが母性というものなのだろうか。しかし、そうやって年の離れた弟をあやしていたのは何年も前のことだ。今や彼も恥ずかしがって添い寝すらしてくれない。昔は一緒にお風呂も入っていたのに。
持て余した母性を発散した朝は、実に目覚めのいいものだった。いいようにされた優雨が自分のことをどう思っているのか考えると少し怖いが―――こちらとしては、純粋な好意を示す方法があれしか思い浮かばなかっただけのことだ。
パジャマ姿のまま祖父母の家の中をうろうろし、優雨の姿を探した。しかし、どこを探しても彼の姿は見当たらない。朝食の支度をしていた祖母に聞くと、どうやら祖父と連れ立っていずこかに出掛けたらしい。
深雪の胸の内がにわかにざわついた。
*
深雪のお祖父さんに頼み込んで、危うく自分の棺桶になるところだった乗用車が不法投棄されたゴミ捨て場まで連れてきてもらった。
殺害現場になり得た場所を―――朝日のもとに晒された車体をとくと見る。すると、外側のドアハンドルは壊れていないことに気がついた。優雨はそれに手を掛けると、一呼吸置いてから思い切って開けてみる。途端に車内から放たれた炭の焦げた臭いと、腐食したシートのじめっとしたかび臭さが鼻についた。
思わず顔をしかめながら、優雨は車内を改めることにした。密室において凶悪な一酸化炭素を放出していた七輪だが、もう火はついていない。そして、自分が座らされていたと思しき場所には錠剤の入った小瓶が転がっていた。
見覚えのあるラベル。睡眠薬だ。
それを見て、思わず嘆息する。しかし、かつては忌々しいとさえ思っていた自分の体質に、まさか感謝の念を抱く日が来るとは。
かけがえのない友人。蘭子の義理の妹。彼女を失ってからというもの、優雨は過去になかなか寝つけない日々が続いていた。現場にあったものと同じラベルの睡眠薬―――過去に父が大怪我を負い、ストレスに過敏になっていた頃に処方されたものが自宅の洗面所には僅かに残っていた。それに隠れて頼ってみるも、まるで効果なし。そのことに気づかない父ではないと思うのだが、結局お咎めはなかった。
中学生だった当時から大人顔負けの大柄な体格をしていたせいか、一般的な目安では薬の効果が期待できなかった。それを戒めとして受け取った当時の自分は、苦悩の日々が継続することを甘んじて受け入れた。
犯人にどれだけの量の錠剤を飲まされたのかはわからないが、自殺に見せかけるための密室からなんとか起き出して脱出することができたのは僥倖だった。一晩ぐっすりと休んで、記憶を整理するだけの心の余裕が優雨にはできている。ゆっくりと目を閉じると、忘れようとしていた恐怖の記憶と向き合った。
路地裏で目にした憎悪に燃えた目―――恐らくは、流歌のストーカーに違いない男の目を。そのときに味わった恐怖と痛みを思い出し、火傷の残った首筋に触れる。恐らくはスタンガンか何かを押し付けられた跡なのだろう。これだけはっきりとした傷跡を残しておきながら、それでも自殺に見せかけようとするのは犯人も冷静さを欠いていたとしか思えない。
全てを思い出した後、優雨はぶるっと身震いした。自分が生きていると犯人が知ったら、次はどんな手を使ってくるのか。想像したくもなかった。こんな厄介ごとに深雪を巻き込みたくはない―――その一心で口を噤んでいたが、他の誰に相談すべきかも優雨は決めあぐねていた。
警察に相談するのが一番だろうが、現場にほど近い場所に住まいがある老夫婦、そして孫の深雪に偶然とはいえ事件との関りを与えてしまった。調査が及べば、そう遠くないうちに彼らも事情を知ることになるだろう。ならばいっそのこと、全てを今すぐ打ち明けてしまおうか。そう思いながらも、結局は行動に移せなかった。深雪の悲痛な面持ちなど見たくもない。
気の済むまで誘拐の現場を見回った後、深雪の祖父が待つ車へと戻る。結局、探していた手荷物やスマホは見つからなかった。攫われた際に置き去りになったか、道中で犯人に棄てられてしまったか。
夫婦宅の客間に戻ると、深雪はまだ布団の中で丸くなっていた。彼女が起き出す前に、これ幸いと脱衣所に行く手間を省いて洗濯してもらった自前の衣服にその場で袖を通す。朝食の支度が出来ていることを教えてもらっていたので、着替えを済ませた後に深雪を起こすことにした。
「おい、朝だぞ」
しかし、再三の呼びかけにも反応がない。彼女がすっぽりと頭まで被った布団を、思い切ってめくってみると、そこには胎児のような姿勢で背中を丸めて眠る深雪がいた。そこでふと、自分は試されているのだろうかと思う。風呂場に入ってきたことも、同じ布団で寝たことも。それらが彼女の天然な性格が成したことではなく、計算された行動だったなら。
さながら、眠り姫を前にしたかのような誘惑―――しかし、自分には目覚めのキスを与える王子としての器がないという自覚もあった。
深雪のふっくらとした形のいい唇を目の当たりにしながら、流歌と交わした指越しのキスの感触を思い出す。今になってそんなことを考える自分はどうにかしている。異常事態が続いたせいで、本能的な部分に抑えが利かなくなってきているのか。深雪の寝姿に引き寄せられるように、その顔にそっと近づこうとした。すると、うっすらと目を開いた彼女と不意に視線が交わった。
「うわっ」
思わずその場から後退った優雨が、「起きてたのか」と胸に手を当てながら言った。布団から這い出してきた深雪がそれを見て不敵な笑みを浮かべる。
「ふっふーん、残念でした」
何かに勝ち誇ったかのような彼女の態度に、自らの欲に屈してしまったことへの恥ずかしさに、優雨は思わず頬が熱くなるのを感じた。
「何がだよ」
最低限の抵抗を試みるも、赤くなった顔までは隠せなかった。咄嗟のことで口に出してしまった言葉だったが、誤魔化しきれていないことに気がつくとすぐに後悔する。
「さっ、朝ごはんにしましょう」
布団から抜け出した深雪にそう言われると、一晩ですっかり手綱を握られた気分になった。優雨は釈然としないまま、深雪の後に続いて食卓に向かう。
*
朝食を平らげた後は、二人して自宅に戻ることとなった。深雪の祖父に近くの駅かバス停まで送ってもらえないかと頼んでいると、彼女もそれについていくと言い出したのだ。深雪の帰宅するタイミングが少々早まったようだが、それでも優雨を一人にはしておけないという配慮が彼女の中で働いたらしい。
しかし、それには一つ問題があった。お祖父さんの軽トラックには後部座席がないのだ。その為、優雨は昨夜と同様に再びトラックの荷台に収まる羽目になった。当然、そんな状態で堂々と公道を走り回るわけにもいかない。近くのバス停まで送ってもらった後は深雪も降車して、二人で帰り道を調べることになった。
「よ、っと」
優雨が軽トラの荷台に上がると、深雪までその後に続いてやってきた。彼女に手を貸しながら、優雨は答えのわかりきった質問を投げかける。深雪はとことんまで自分の目が届くところに彼を置きたいらしかった。
「おい、助手席はどうした」
「いやー、折角なんで自分も荷台に揺られてみようかと。じいちゃんにはゆっくり走るようにお願いしてるんで大丈夫っす」
荷台の上で肩をぴったりと寄せ合うと、隣にいる優雨に向けて彼女が無邪気に笑いかけた。
「落ちるなよ」
「あいー」
優雨の言葉に気の抜けた返事を寄越すと、彼にもたれかかりながら深雪は見送りにきた祖母に手を振る。軽トラが動き出すと、その姿もやがて小さくなって見えなくなった。
*
祖父にバス停まで送ってもらった後、それを利用して近くの駅に向かった。両親や祖父の車で移動するのが常だったものだから、電車を使うにしても行き先を調べて乗り継ぎを繰り返す必要がある。そこで電車賃すら手元にないことを思い出した優雨に交通費を貸し出すと、
「倍にして返してくださいね」
悪戯にそう口にすると、「ホワイトデーかよ」と返された。そんなことを言う彼には、次の年に本物のチョコを贈ってみるのもいいかもしれない。
思えばバスにしろ電車にしろ、彼の隣に座るのは今日が初めてのことだった。優雨と肩が触れ合うだけで、それを強く意識する。昨晩は添い寝までしたというのに、これしきのことで自分が漫画で見知ったような「恋する乙女」みたいに胸を高鳴らせてしまうのも、なんだかあべこべに感じた。
「いい天気っすね」
昨晩、優雨が山道にいた真相は未だに彼の口から語られる気配はない。あまりしつこく聞いて彼の機嫌を損ねるのも避けたいところだが、他に話題も見つからなかった。すると、
「・・・・・・ちょっと面倒なことになった」
少し思い悩むような素振りを見せた後、優雨がぽつりと言った。
「事情は、近いうちに話せると思う。その前にはっきりさせなきゃならないことがあるんだ」
今度はしっかりと深雪の目を見ながら話す。そんな彼の口ぶりに、深雪は胸の内でつかえていたものがすっかり溶け出していった気がした。
「期待しないで待ってるっす」
それだけ言うと、車窓の外に流れる風景に目を向ける。そんな深雪の様子に肩を透かされた優雨は、無言で目を閉じると背もたれに身体を預けた。
そこには普段の二人の間に流れる、不思議と居心地のいい雰囲気が戻ってきていた。
「あっ、今度一緒にお洋服見に行きましょうよ」
「え、まあ、いいけど」
「前から思ってたんすよね。秋山さんっていつも代わり映えしないっていうか、似た感じの服着てるじゃないっすか」
「いや、いいだろ別に」
「よくないっす」
「あー、そう」
「まあ、そんなことはどうでもよくって」
「いいのかよ」
「折角水着買ったんで、プールとか行きたいんすよね」
「いや、服の話は、」
「オシャレくらい自分で考えてくださいよ」
「お前から言い出したんだろ」
「もう、怒んないでくださあい」
「別に怒ってねえよ」
「恐い顔っすねー・・・・・・そんなんじゃ彼女できないっすよ」
「余計なお世話だ」
「知らないっすからね、ほんと・・・・・・で、なんの話でしたっけ?」
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