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過去と今
第20話
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「空爆を要請する」
大佐の駆る重量級の『ルナティック』に搭載されたAIの『メイプル』が、上空の爆撃機にナパーム弾の投下を指示する。これで狙いをつけた地点の周囲一帯は火の海だ。
爆撃の要請から着弾まではタイムラグが存在するため、流石に百発百中とまではいかないものの、それで遮蔽物に身を隠した敵を炙り出すくらいのことはできる。直撃を避けることはできても、着弾点のそばに留まるだけで機体は熱波によるスリップダメージを受けるからだ。膠着した戦況を打開するため、対人戦慣れした流歌が下した判断だった。彼は二人から一歩引いた位置で今も冷静な判断力を発揮している。
空爆を察知した敵チームが動き出したタイミングで、優雨と大佐が同時に発砲を開始した。更に、それをカバーできる位置に流歌が配置する。残る敵は正面の一チームのみ。『バトルロイヤル』3on3モードでの最終局面だった。
大佐の『マドンナリリー』重機関砲が火を噴いたが、不規則な軌道で弾丸の群れを掻い潜る敵機を彼は仕留め切れずにいた。そのまま岩陰に飛び込もうとする相手を、流歌の『スノーホワイト』狙撃ライフルが空中で難なく射止める。
「詰めましょう」
これで三対二。ここで勝機を見出した優雨が『エイプリル』の索敵能力をフルに活用し、『ヴァンパイア』の耐久力に任せて強引に敵との距離を一気に縮めた。爆撃と強襲。それによって僅かに生じた隙が、優雨の一点突破を可能にする。しかし、追い込まれたとはいえ、敵チームも一筋縄ではいかなかった。一人が優雨の『ホットキス』散弾砲の直撃を受けながらも反撃し、刺し違えることに成功したのだ。
内心で舌打ちしながらも、優雨が仕留め損なった敵機の位置を二人に知らせる。生き残った最後の一人に、対人戦に不慣れな大佐が翻弄された。被ダメージの増加と引き換えに運動能力を引き上げる『ルナティック』の特性を生かして逃げ回るも、あっという間に追い詰められてしまう。
「助けてくれっ」
大佐が情けない悲鳴を上げたのと同時、流歌の『マジシャン』が颯爽と彼の元に駆けつけた。岩塊に打ち込んだアンカーのワイヤーを巻き取った勢いで空中に躍り出ると、懐から抜いた『シザーハンズ』二丁拳銃の弾丸を敵の頭上から叩き込んだ。
*
「やった、勝ったぞっ」
初勝利の興奮に大佐が大はしゃぎしているのをよそに、優雨と流歌が二人して苦笑する。ここまで大佐を引っ張ってくるのはなかなかに骨が折れたものの、なんとか勝利にこぎつけることができた。
食事を終えてからというもの、帰宅してからも各々のテンションは冷めやらず、三人は今後の配信のためにも『アースバウンド』の特訓を(主に大佐が)行うことになっていた。明日も仕事があるはずなのに、大佐は「あと一戦だけ」と何度も口にしながら、こんな夜更けまで対戦に挑み続けている。その甲斐あっての勝利だったが、
「てか大佐さー、『ルナティック』使うのまだ早いんじゃないの?」
「上級者向けなのはわかるが・・・・・・スーパーロボットみたいでかっこいいじゃないか」
散々足を引っ張ってきた大佐に、流歌は容赦なく苦言を呈した。
「まあ、勝てたからいいじゃないですか。ランクマは無理だと思いますけど」
最低限のフォローはしておくが、流歌の意見には概ね同意だった。エンタメとして成立するかはともかく、二人が配信で足並みを揃えて真剣勝負に臨むのは時期尚早だろう。
それからもああだこうだと『バトルロイヤル』に関する講釈を優雨と流歌から受けていた大佐だったが、そのうち思い出したように「そろそろ寝ないと」とだけ言い残すと逃げるように通話を打ち切った。
「明日は自己紹介の動画撮って、配信は次の土日辺りかな」
「そうですね」
こうして二人だけで通話をするのも、随分と久しい気がした。実際はオフ会以前に遊んで以来なので、大して日も経ってないはずなのだが。それに、ここしばらくは直接顔を合わせることの方が多かったくらいだ。
「あのさ、お稲荷」
「はい」
なんでしょう、と優雨が聞き返す。すると、
「ユウ、って。呼んでもいいかな」
思いがけない返答に優雨の心がまたしてもぐらついた。
「もも、もちろん。構いませんけど」
相手は男なんだぞ、と。自分に強く言い聞かせながら彼は答えた。
「よかった」
ふふ、と笑みをこぼす流歌の顔を想像して、優雨も思わず口角を上げた。流歌の嬉しそうな声音を聞けて、すっかり満足してしまう。
それからもとりとめのない話に興じてから、優雨が大きな欠伸をしたのを契機に「おやすみ」と挨拶を交わし合った。以前は何の感慨もなく発していた言葉だったが、今夜は少し甘い響きを伴っていた気がしたのは考えすぎだろうか。
ゲームに使わせてもらった仕事部屋を出ると、リビングのテーブルに蘭子が突っ伏しているのが視界に入った。目と鼻の先には空き缶がいくつか並んでいる。
「ララさん、こんなとこで寝てると風邪ひきますよ」
その隣に腰掛けた優雨が、彼女の背中をゆすって起こそうとした。このまま強引に抱え上げてベッドまで運んでもいいのだが、その前に体調を確認しておきたい。布団の上で吐かれでもしたら後始末が大変だ。
「おきてるし」
「いや寝てたでしょ」
まだ寝ぼけている様子の蘭子がテーブルからほっぺたを引きはがすと、口の端から涎が糸を引いていた。
「ああ、もう」
優雨にウエットティッシュで口元を拭われている間も、蘭子は薄っすらと目を開いたままぼーっとしていた。まるで警戒心のない室内飼いの犬や猫のように、されるがままになっている。そのまま顎の下でもさすってやったら喜ぶんじゃないだろうか。
それから彼女が大きく伸びをしたのを見届けて、優雨がテーブルの上を片付け始める。すると、
「なあ、優雨」
蘭子が唐突に声を掛けてきた。
「なんですか」
空き缶を端っこに避けてから、ウェットティッシュでテーブルの表面を綺麗にしていく。
「今、楽しいか」
優雨は作業の手を止めると、蘭子の方を振り返った。彼女はソファーに背中を預けたまま、天井を見つめている。
「はい。もちろん」
聞かれるまでもない。
「これもララさんのお陰ですね」
そう。すべてはこの人との出会いから始まったのだ。
「そっか」
彼女がいなければ、今の自分はないといっても過言ではなかった。
「ならいいんだけどさ」
他にも何か言いたげな様子だったが、それ以上の言葉を蘭子は口にしなかった。
「やっぱり、不安・・・・・・ですか」
優雨の問いに、彼の方に向き直った蘭子が不安気に言葉を作る。
「そんなの、当たり前だろ」
「ですよね」
そう言われてしまうと、返す言葉がない。警察にも行かず、危険な状況を作り上げてしまったのは自分の我儘のせいだ。にも関わらず、今日まで彼女は協力的な態度であり続けてくれた。
「いつまでもこのままってわけにもいかねーだろ、実際」
そんな彼女が、焦燥感を露わにしていた。今までは見ないようにしていた問題の大きさに、不安で胸が押し潰されそうになる。二人の間で、気まずい沈黙が続いた。こんなにも重苦しい空気は未だかつて感じたことがない。握りしめた拳に落とした視線が、なかなか持ち上がらなかった。
*
「明日、オジョさんに、俺の身に何が起こったか正直に話そうと思います」
重苦しい沈黙を破り、優雨の出した答えがそれだった。
「警察には、それから。オジョさんの今後のことも、」
「まずは自分の心配しろよっ」
思わず大きな声を出してしまった。そのせいで、優雨も驚き戸惑っているようだ。
「わり」
それを見た蘭子が口ごもると、俯いた優雨も思い悩む様子を見せる。再び気まずい沈黙が訪れると、今度は彼女の方から話を切り出した。
「そんなの、お前だってわかってるよな」
その上で、自分よりも他人を優先する。そういう人間なのだ、秋山優雨という男は。
「ララさんには、迷惑ばかり掛けて、」
「だから、あたしのことはいいんだって」
彼の言葉を遮ると、蘭子は続けた。
「どうせ真冬のときも、そうやって一人で抱え込んでたんだろ」
優雨の顔から表情が抜け落ちる。今の言葉が核心をついていたのか、それとも単純に過去の辛い記憶に浸っているのか。どちらにせよ、自身の言動を省みるきっかけになってくれることを願うばかりだ。
「あたしも、オジョも、もういい大人なんだからさ。自分の面倒くらい自分で見れるって」
真冬の名前を出したことに幾ばくかの罪悪感を覚えながらも、蘭子は老婆心からの忠告を続けることにした。
「お前、まだ子供なんだからさ」
普段は一端の大人扱いをしておきながら、肝心なときには子供扱いする。とんだ二枚舌だと自分でも思う。
「まあ、あたしが言っても説得力ないだろうけど」
だからといって、彼がむきになって言い返したりすることもなかった。優雨は口を閉ざしたまま、じっと俯いている。
「今は自分の身を守ることだけ考えてくれ。そのためなら、なんだってしてやる」
そこで言葉を切ると、立ち上がった蘭子がリビングを後にした。未だにテーブルの表面に視線を落としている優雨を尻目にしながら、深いため息をつく。彼には今まで散々世話になっておきながら、いざ立場が逆になるとしてやれることが何も見つからなかった。そんな自分が情けなくてしょうがない。
「空爆を要請する」
大佐の駆る重量級の『ルナティック』に搭載されたAIの『メイプル』が、上空の爆撃機にナパーム弾の投下を指示する。これで狙いをつけた地点の周囲一帯は火の海だ。
爆撃の要請から着弾まではタイムラグが存在するため、流石に百発百中とまではいかないものの、それで遮蔽物に身を隠した敵を炙り出すくらいのことはできる。直撃を避けることはできても、着弾点のそばに留まるだけで機体は熱波によるスリップダメージを受けるからだ。膠着した戦況を打開するため、対人戦慣れした流歌が下した判断だった。彼は二人から一歩引いた位置で今も冷静な判断力を発揮している。
空爆を察知した敵チームが動き出したタイミングで、優雨と大佐が同時に発砲を開始した。更に、それをカバーできる位置に流歌が配置する。残る敵は正面の一チームのみ。『バトルロイヤル』3on3モードでの最終局面だった。
大佐の『マドンナリリー』重機関砲が火を噴いたが、不規則な軌道で弾丸の群れを掻い潜る敵機を彼は仕留め切れずにいた。そのまま岩陰に飛び込もうとする相手を、流歌の『スノーホワイト』狙撃ライフルが空中で難なく射止める。
「詰めましょう」
これで三対二。ここで勝機を見出した優雨が『エイプリル』の索敵能力をフルに活用し、『ヴァンパイア』の耐久力に任せて強引に敵との距離を一気に縮めた。爆撃と強襲。それによって僅かに生じた隙が、優雨の一点突破を可能にする。しかし、追い込まれたとはいえ、敵チームも一筋縄ではいかなかった。一人が優雨の『ホットキス』散弾砲の直撃を受けながらも反撃し、刺し違えることに成功したのだ。
内心で舌打ちしながらも、優雨が仕留め損なった敵機の位置を二人に知らせる。生き残った最後の一人に、対人戦に不慣れな大佐が翻弄された。被ダメージの増加と引き換えに運動能力を引き上げる『ルナティック』の特性を生かして逃げ回るも、あっという間に追い詰められてしまう。
「助けてくれっ」
大佐が情けない悲鳴を上げたのと同時、流歌の『マジシャン』が颯爽と彼の元に駆けつけた。岩塊に打ち込んだアンカーのワイヤーを巻き取った勢いで空中に躍り出ると、懐から抜いた『シザーハンズ』二丁拳銃の弾丸を敵の頭上から叩き込んだ。
*
「やった、勝ったぞっ」
初勝利の興奮に大佐が大はしゃぎしているのをよそに、優雨と流歌が二人して苦笑する。ここまで大佐を引っ張ってくるのはなかなかに骨が折れたものの、なんとか勝利にこぎつけることができた。
食事を終えてからというもの、帰宅してからも各々のテンションは冷めやらず、三人は今後の配信のためにも『アースバウンド』の特訓を(主に大佐が)行うことになっていた。明日も仕事があるはずなのに、大佐は「あと一戦だけ」と何度も口にしながら、こんな夜更けまで対戦に挑み続けている。その甲斐あっての勝利だったが、
「てか大佐さー、『ルナティック』使うのまだ早いんじゃないの?」
「上級者向けなのはわかるが・・・・・・スーパーロボットみたいでかっこいいじゃないか」
散々足を引っ張ってきた大佐に、流歌は容赦なく苦言を呈した。
「まあ、勝てたからいいじゃないですか。ランクマは無理だと思いますけど」
最低限のフォローはしておくが、流歌の意見には概ね同意だった。エンタメとして成立するかはともかく、二人が配信で足並みを揃えて真剣勝負に臨むのは時期尚早だろう。
それからもああだこうだと『バトルロイヤル』に関する講釈を優雨と流歌から受けていた大佐だったが、そのうち思い出したように「そろそろ寝ないと」とだけ言い残すと逃げるように通話を打ち切った。
「明日は自己紹介の動画撮って、配信は次の土日辺りかな」
「そうですね」
こうして二人だけで通話をするのも、随分と久しい気がした。実際はオフ会以前に遊んで以来なので、大して日も経ってないはずなのだが。それに、ここしばらくは直接顔を合わせることの方が多かったくらいだ。
「あのさ、お稲荷」
「はい」
なんでしょう、と優雨が聞き返す。すると、
「ユウ、って。呼んでもいいかな」
思いがけない返答に優雨の心がまたしてもぐらついた。
「もも、もちろん。構いませんけど」
相手は男なんだぞ、と。自分に強く言い聞かせながら彼は答えた。
「よかった」
ふふ、と笑みをこぼす流歌の顔を想像して、優雨も思わず口角を上げた。流歌の嬉しそうな声音を聞けて、すっかり満足してしまう。
それからもとりとめのない話に興じてから、優雨が大きな欠伸をしたのを契機に「おやすみ」と挨拶を交わし合った。以前は何の感慨もなく発していた言葉だったが、今夜は少し甘い響きを伴っていた気がしたのは考えすぎだろうか。
ゲームに使わせてもらった仕事部屋を出ると、リビングのテーブルに蘭子が突っ伏しているのが視界に入った。目と鼻の先には空き缶がいくつか並んでいる。
「ララさん、こんなとこで寝てると風邪ひきますよ」
その隣に腰掛けた優雨が、彼女の背中をゆすって起こそうとした。このまま強引に抱え上げてベッドまで運んでもいいのだが、その前に体調を確認しておきたい。布団の上で吐かれでもしたら後始末が大変だ。
「おきてるし」
「いや寝てたでしょ」
まだ寝ぼけている様子の蘭子がテーブルからほっぺたを引きはがすと、口の端から涎が糸を引いていた。
「ああ、もう」
優雨にウエットティッシュで口元を拭われている間も、蘭子は薄っすらと目を開いたままぼーっとしていた。まるで警戒心のない室内飼いの犬や猫のように、されるがままになっている。そのまま顎の下でもさすってやったら喜ぶんじゃないだろうか。
それから彼女が大きく伸びをしたのを見届けて、優雨がテーブルの上を片付け始める。すると、
「なあ、優雨」
蘭子が唐突に声を掛けてきた。
「なんですか」
空き缶を端っこに避けてから、ウェットティッシュでテーブルの表面を綺麗にしていく。
「今、楽しいか」
優雨は作業の手を止めると、蘭子の方を振り返った。彼女はソファーに背中を預けたまま、天井を見つめている。
「はい。もちろん」
聞かれるまでもない。
「これもララさんのお陰ですね」
そう。すべてはこの人との出会いから始まったのだ。
「そっか」
彼女がいなければ、今の自分はないといっても過言ではなかった。
「ならいいんだけどさ」
他にも何か言いたげな様子だったが、それ以上の言葉を蘭子は口にしなかった。
「やっぱり、不安・・・・・・ですか」
優雨の問いに、彼の方に向き直った蘭子が不安気に言葉を作る。
「そんなの、当たり前だろ」
「ですよね」
そう言われてしまうと、返す言葉がない。警察にも行かず、危険な状況を作り上げてしまったのは自分の我儘のせいだ。にも関わらず、今日まで彼女は協力的な態度であり続けてくれた。
「いつまでもこのままってわけにもいかねーだろ、実際」
そんな彼女が、焦燥感を露わにしていた。今までは見ないようにしていた問題の大きさに、不安で胸が押し潰されそうになる。二人の間で、気まずい沈黙が続いた。こんなにも重苦しい空気は未だかつて感じたことがない。握りしめた拳に落とした視線が、なかなか持ち上がらなかった。
*
「明日、オジョさんに、俺の身に何が起こったか正直に話そうと思います」
重苦しい沈黙を破り、優雨の出した答えがそれだった。
「警察には、それから。オジョさんの今後のことも、」
「まずは自分の心配しろよっ」
思わず大きな声を出してしまった。そのせいで、優雨も驚き戸惑っているようだ。
「わり」
それを見た蘭子が口ごもると、俯いた優雨も思い悩む様子を見せる。再び気まずい沈黙が訪れると、今度は彼女の方から話を切り出した。
「そんなの、お前だってわかってるよな」
その上で、自分よりも他人を優先する。そういう人間なのだ、秋山優雨という男は。
「ララさんには、迷惑ばかり掛けて、」
「だから、あたしのことはいいんだって」
彼の言葉を遮ると、蘭子は続けた。
「どうせ真冬のときも、そうやって一人で抱え込んでたんだろ」
優雨の顔から表情が抜け落ちる。今の言葉が核心をついていたのか、それとも単純に過去の辛い記憶に浸っているのか。どちらにせよ、自身の言動を省みるきっかけになってくれることを願うばかりだ。
「あたしも、オジョも、もういい大人なんだからさ。自分の面倒くらい自分で見れるって」
真冬の名前を出したことに幾ばくかの罪悪感を覚えながらも、蘭子は老婆心からの忠告を続けることにした。
「お前、まだ子供なんだからさ」
普段は一端の大人扱いをしておきながら、肝心なときには子供扱いする。とんだ二枚舌だと自分でも思う。
「まあ、あたしが言っても説得力ないだろうけど」
だからといって、彼がむきになって言い返したりすることもなかった。優雨は口を閉ざしたまま、じっと俯いている。
「今は自分の身を守ることだけ考えてくれ。そのためなら、なんだってしてやる」
そこで言葉を切ると、立ち上がった蘭子がリビングを後にした。未だにテーブルの表面に視線を落としている優雨を尻目にしながら、深いため息をつく。彼には今まで散々世話になっておきながら、いざ立場が逆になるとしてやれることが何も見つからなかった。そんな自分が情けなくてしょうがない。
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