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第8話
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「ノインの投げナイフが刺さったのを見ても、毛皮に覆われてない場所はダメージが通る。じゃあ、そう考えると口内なら大ダメージが狙いやすいのか? でも、それだとこっちもかなりHP持っていかれそうだな……最悪、一発で瀕死まで持っていかれそうだ。そうなると、やっぱり相手の攻撃をかわしつつ、属性攻撃と魔法攻撃で毛皮の薄い部分を狙っていくって感じかぁ……はははっ、いいじゃないか。かなり楽しめそうだ!」
いやぁ、いいねいいね!
こういう緊張感のある、一撃くらったら即ゲームオーバーになっちゃう戦闘システムって、大好きなんだよね!
それにしても、初戦闘でこんなに質の高いバトルが楽しめるとは予想外だ。
てっきりチュートリアルな戦闘だし、そこまで難しいものではないだろうと思っていたのに、これは嬉しい驚きである。
しかし、MMORPGに死にゲー要素まであり、なおかつこのNPCの自由度の高さ……!
このゲームが本格的に発売されたら、世界を席巻するレベルになるんじゃないかな?
本当、先行体験でこのゲームができた幸運に感謝しないとな!
「さてと……まずは、属性攻撃が本当に通るかどうかの実証か」
わくわくした気持ちを抑えきれない。
はやる心を抑えて、おれは地面から立ち上がった。
ふと、人の気配を感じて横を見ると、隣にはいつの間にか、ノインが立っていた。
し、しまったな。先ほど、テンションがあがりまくってブツブツと独り言を呟いてしまった気がするが……まぁ、相手はNPCだしいいか。ノインがPCじゃなくて本当に良かった。
「カナトちゃん、マジでアイツとヤる気?」
「ああ、もちろんだ」
おれをじっと見つめてくるノインに頷き返す。
すると、ノインがにやりとした笑みを浮かべた。
「じゃあいいよ、俺も付き合ったげる。一応、さっきの調子なら何か打つ手はあるんでしょ?」
「いいのか?」
「うん。俺、カナトちゃんに俄然興味が湧いてきたしぃ。でもさー、もしも勝てたら、俺にご褒美ちょうだいよ」
「ご褒美?」
おれが首を傾げると、ノインがこくりと頷いた。
「うん! 俺、この戦闘が終わったら正式にカナトちゃんとパーティー組みたいなって! 最初はカナトちゃんの目がきれいだから、ここまで一緒に来たんだけどさぁ……でも、カナトちゃんめちゃくちゃ面白ェから、もっと一緒にいたいなーって。ダメ?」
「まぁ、その程度ならかまわないが。おれもノインがパーティーを組んでくれるなら助かるしな」
「ホント!? やったぁ!」
ニコニコと、まるで子どものような笑顔ではしゃぐノイン。
ノインの言葉はところどころ意味が理解できないことがあるが、おれなんかとパーティーを組むのに、こんなに喜んでくれるとは……もしかすると、おれが思ってるよりも、純粋でいい奴なのかもしれない。
何より、串焼き奢ってくれたし。
「GUGUGU……!」
しかし、ノインとの交流を楽しんでいる暇はあまりないらしい。
見れば、黒狼がおれたちをギラギラとした目で睨みつけていた。そして――こちらに向かって走ってくる!
「っ、ノイン! 悪いが、お前はターゲット取りを頼む。だが、まずいと感じたら距離をとって逃げてくれ」
「オッケー、それなら楽勝ぉ~。カナトちゃんこそ死なないでね? あんなヤツに殺されるなんて、思ってないけどさぁ」
「ああ、分かった」
ノインに向かって頷く。
しかし、あまり会話をしている余裕はないようだ。
「GUGUGGG!」
おれたちを目がけて突っ込んできた黒狼を、地面を蹴って横に飛ぶことでかわす。
おれとは逆方向に避けたノインは、足を止めないまま、投げナイフを再び黒狼に向かって放った。
「GUGUG!」
顔を大きく横に振って、投げナイフを弾き落とす黒狼。
そして、黒狼は身をひねると、ノインに向かって体当たりをしかけた。だが、ノインは軽い身のこなしで、ひらりひらりと黒狼をかわしていく。
「GUGUGU……!」
「あははっ、どこ見てんのぉ?」
べーっと舌を出して、黒狼にニヤニヤとした笑みを向けるノイン。
その余裕綽々な態度にプライドを傷つけられたのか、黒狼は完全に注意をノイン一人に向けた。
軽傷しか与えていないおれよりも、自分の片目を奪ったノインの方を危険視しているのもあるだろう。
「――よし。なら、今のうちだな」
おれは懐から一つのアイテム――細身の銀色の指輪を取り出した。
それを左手の薬指に嵌める。
これは、クラスに『騎士』を選んだ際に貰える初期装備の一つだ。この指輪をつけていれば、自身の持っている武器に三分間のみ、属性攻撃を付与することができる。
なお、選んだ騎士装備によって、属性攻撃の種類も変わる。おれが選んだこのフードローブつきの装備では、『炎』の属性を付与することができる。
「……もしも、属性攻撃がNGで、完全に魔法攻撃じゃないと通らないっていうんなら大変なことになるが……そこまで鬼畜じゃないと信じたいな」
とはいえ、これだけでは役不足だ。
この指輪で属性攻撃を付与できる回数は、一度だけだ。
つまり、一回の攻撃で致命傷に近い傷を負わせる必要がある。
「となると、さっきの攻撃をもう一回やるしかないか」
そのためには、黒狼が再びノインに完全に意識を集中させていること――つまり、ノインにヘイトを稼いでもらう必要がある。
そして、位置取り。
先ほどのように、黒狼の背中に乗り上げて、脳天に一撃を食らわせるためには、ノインが壁際に追い詰められているのがベストだが……それは、おれの動きが遅れれば、ノインが絶体絶命のピンチに陥るということ。
……まぁ、普通に考えればノインはNPCだ。
ここでもしも彼が死んだとしても、リスポーン機能が用意されているのかもしれないし、ゲームのキャラクターに対してそこまで深く考えなくてもいいのかもしれないけれど――
「でも、嫌だよなぁ」
作りこみがリアルなせいか、この世界もノインのことも、なんだかゲームの中とは思えないのだ。
まるで、自分が異世界にそのままログインしているような錯覚すら覚える。
だから、ノインが死んでしまったら、おれはめちゃくちゃ落ち込むだろう。
初めこそ、なんだかちょっと変な奴だと思ったけれど……ここまでおれに付き合ってくれて、あんな風に無邪気に笑いかけてきたノインのことを、けっこう好きになっている。
だから願わくば、彼とこのままパーティーを組みたい。
そのためには――なんとしても、まずはあの黒狼に勝たないとな!
いやぁ、いいねいいね!
こういう緊張感のある、一撃くらったら即ゲームオーバーになっちゃう戦闘システムって、大好きなんだよね!
それにしても、初戦闘でこんなに質の高いバトルが楽しめるとは予想外だ。
てっきりチュートリアルな戦闘だし、そこまで難しいものではないだろうと思っていたのに、これは嬉しい驚きである。
しかし、MMORPGに死にゲー要素まであり、なおかつこのNPCの自由度の高さ……!
このゲームが本格的に発売されたら、世界を席巻するレベルになるんじゃないかな?
本当、先行体験でこのゲームができた幸運に感謝しないとな!
「さてと……まずは、属性攻撃が本当に通るかどうかの実証か」
わくわくした気持ちを抑えきれない。
はやる心を抑えて、おれは地面から立ち上がった。
ふと、人の気配を感じて横を見ると、隣にはいつの間にか、ノインが立っていた。
し、しまったな。先ほど、テンションがあがりまくってブツブツと独り言を呟いてしまった気がするが……まぁ、相手はNPCだしいいか。ノインがPCじゃなくて本当に良かった。
「カナトちゃん、マジでアイツとヤる気?」
「ああ、もちろんだ」
おれをじっと見つめてくるノインに頷き返す。
すると、ノインがにやりとした笑みを浮かべた。
「じゃあいいよ、俺も付き合ったげる。一応、さっきの調子なら何か打つ手はあるんでしょ?」
「いいのか?」
「うん。俺、カナトちゃんに俄然興味が湧いてきたしぃ。でもさー、もしも勝てたら、俺にご褒美ちょうだいよ」
「ご褒美?」
おれが首を傾げると、ノインがこくりと頷いた。
「うん! 俺、この戦闘が終わったら正式にカナトちゃんとパーティー組みたいなって! 最初はカナトちゃんの目がきれいだから、ここまで一緒に来たんだけどさぁ……でも、カナトちゃんめちゃくちゃ面白ェから、もっと一緒にいたいなーって。ダメ?」
「まぁ、その程度ならかまわないが。おれもノインがパーティーを組んでくれるなら助かるしな」
「ホント!? やったぁ!」
ニコニコと、まるで子どものような笑顔ではしゃぐノイン。
ノインの言葉はところどころ意味が理解できないことがあるが、おれなんかとパーティーを組むのに、こんなに喜んでくれるとは……もしかすると、おれが思ってるよりも、純粋でいい奴なのかもしれない。
何より、串焼き奢ってくれたし。
「GUGUGU……!」
しかし、ノインとの交流を楽しんでいる暇はあまりないらしい。
見れば、黒狼がおれたちをギラギラとした目で睨みつけていた。そして――こちらに向かって走ってくる!
「っ、ノイン! 悪いが、お前はターゲット取りを頼む。だが、まずいと感じたら距離をとって逃げてくれ」
「オッケー、それなら楽勝ぉ~。カナトちゃんこそ死なないでね? あんなヤツに殺されるなんて、思ってないけどさぁ」
「ああ、分かった」
ノインに向かって頷く。
しかし、あまり会話をしている余裕はないようだ。
「GUGUGGG!」
おれたちを目がけて突っ込んできた黒狼を、地面を蹴って横に飛ぶことでかわす。
おれとは逆方向に避けたノインは、足を止めないまま、投げナイフを再び黒狼に向かって放った。
「GUGUG!」
顔を大きく横に振って、投げナイフを弾き落とす黒狼。
そして、黒狼は身をひねると、ノインに向かって体当たりをしかけた。だが、ノインは軽い身のこなしで、ひらりひらりと黒狼をかわしていく。
「GUGUGU……!」
「あははっ、どこ見てんのぉ?」
べーっと舌を出して、黒狼にニヤニヤとした笑みを向けるノイン。
その余裕綽々な態度にプライドを傷つけられたのか、黒狼は完全に注意をノイン一人に向けた。
軽傷しか与えていないおれよりも、自分の片目を奪ったノインの方を危険視しているのもあるだろう。
「――よし。なら、今のうちだな」
おれは懐から一つのアイテム――細身の銀色の指輪を取り出した。
それを左手の薬指に嵌める。
これは、クラスに『騎士』を選んだ際に貰える初期装備の一つだ。この指輪をつけていれば、自身の持っている武器に三分間のみ、属性攻撃を付与することができる。
なお、選んだ騎士装備によって、属性攻撃の種類も変わる。おれが選んだこのフードローブつきの装備では、『炎』の属性を付与することができる。
「……もしも、属性攻撃がNGで、完全に魔法攻撃じゃないと通らないっていうんなら大変なことになるが……そこまで鬼畜じゃないと信じたいな」
とはいえ、これだけでは役不足だ。
この指輪で属性攻撃を付与できる回数は、一度だけだ。
つまり、一回の攻撃で致命傷に近い傷を負わせる必要がある。
「となると、さっきの攻撃をもう一回やるしかないか」
そのためには、黒狼が再びノインに完全に意識を集中させていること――つまり、ノインにヘイトを稼いでもらう必要がある。
そして、位置取り。
先ほどのように、黒狼の背中に乗り上げて、脳天に一撃を食らわせるためには、ノインが壁際に追い詰められているのがベストだが……それは、おれの動きが遅れれば、ノインが絶体絶命のピンチに陥るということ。
……まぁ、普通に考えればノインはNPCだ。
ここでもしも彼が死んだとしても、リスポーン機能が用意されているのかもしれないし、ゲームのキャラクターに対してそこまで深く考えなくてもいいのかもしれないけれど――
「でも、嫌だよなぁ」
作りこみがリアルなせいか、この世界もノインのことも、なんだかゲームの中とは思えないのだ。
まるで、自分が異世界にそのままログインしているような錯覚すら覚える。
だから、ノインが死んでしまったら、おれはめちゃくちゃ落ち込むだろう。
初めこそ、なんだかちょっと変な奴だと思ったけれど……ここまでおれに付き合ってくれて、あんな風に無邪気に笑いかけてきたノインのことを、けっこう好きになっている。
だから願わくば、彼とこのままパーティーを組みたい。
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