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第11話
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「――申し訳ありませんが、保証人がいない方は冒険者登録をお断りさせて頂いております」
「えっ?」
意気揚々と冒険者ギルドを訪れたおれ。
だが、カウンターの受付嬢に言われた言葉は、まったく予想外のものだった。
ほ、保証人?
えっ、冒険者登録に、保証人が必要なの!?
「冒険者が問題を起こした場合、または、請け負った依頼を失敗した場合……当人や、そのパーティーだけではその責任が負いきれない場合があります」
コホンと咳ばらいをした後に、受付嬢さんは淡々とした口調で説明を続けた。
なお、おれがいるのは冒険者ギルドのカウンターである。広々としたカウンターにゆとりはあるものの、対面や隣がパーテーションで仕切られているということはない。
『God's Garden』にログインしたおれは、ノインと合流した後に、冒険者ギルドの場所を教えてもらい、ここに来た。
そして、冒険者登録をさっさと終わらせて、モンスターとの戦いに行くつもりだったのだが……
「――たとえば、過去に実際にあった事例ですと、あるパーティーがモンスターとの戦闘中に、彼らの放った魔法が近くにいた他の冒険者グループにあたってしまった、という事故がありました。運悪く、それで利き手に重傷を負った冒険者の方は、と引退をすることになったのです」
流れ矢ならぬ、流れ魔法か。
「また、モンスターの群れに追われて、逃げていた冒険者たちが街道に出たところで、ちょうどそこを通っていた商隊がモンスタートレインに巻き込まれてしまい……冒険者の皆さんも、商隊の方々も命は助かったものの、商隊の方たちは積み荷をすべて失ってしまった……ということもありました」
「……ふむ」
「今お話をした事例の場合、どちらも冒険者資格をはく奪されるのは勿論ですが、冒険者の方たちには賠償金が発生いたします。そのため、基本的に、冒険者となるには保証人を立てて頂く必要があります」
「冒険者自身が賠償金や慰謝料を支払いきれない場合、保証人が補填する、ということか」
「おっしゃる通りです」
にっこりと微笑む受付嬢さん。
だが、その笑顔とは正反対に、非常な現実がおれの目の前に立ちふさがっている。
「保証人は誰でもいいのか?」
「この町の住民であれば、住民票を提出頂き、まずは照会をさせていただきます。その際、当冒険者ギルドの設ける一定の基準をクリアしていれば、ご友人や知人の方でも登録できますよ。もちろん、当人の同意があることは前提ですが」
「保証人はこの町の人間じゃないと駄目なのか?」
「いえ、大丈夫です。この町の住民でなくとも、身元保証書と紹介状、保証人承諾書の書類をご用意頂ければ問題ありません」
「ふむ……保証人が立てられない場合はどうなるんだ? 代行なんかがあるのか?」
「ございますよ。冒険者ギルドの設けている『保証人代行』という制度がございます。ただし、こちらは有償となっておりまして……月額利用料が以下となります」
そう言って、受付嬢さんは一枚の紙をおれに渡してきた。
そのチラシには『あんしん! しんらい! 冒険者ギルドの保証人代行サービス!』という文句が、大きな文字で書かれている。
なお、文章自体はこの世界の文字で書かれているのだが、その上に日本語に翻訳されている文章が出ているのだ。本当にこういう細かい部分までめちゃくちゃ凝ってるよなー、このゲーム……
まぁ、そこらへんはさておき……問題は、その謳い文句の下に書かれている、有償の保証人制度の月額料金だ。
……け、けっこう高いな!?
冒険者ランクによって変わるようだが、一番下のFランクの料金でも、月に1000金貨……!
おれの手持ちの三分の一がなくなっちゃうんだけど!?
料金表とにらめっこしていたおれは、ふと、この冒険者ギルドの建物前で別れたノインの言葉を思い出していた。
『冒険者登録は俺は無理だからいいよー。カナトちゃんだけ登録すれば、いいんじゃない? パーティーメンバー一人が登録してれば、問題ないしさ』
あれはてっきり、NPCだから冒険者登録はできないという意味だと思ったが……まさか、こういうことだったのか?
だからノインはおれを冒険者ギルドに案内だけして、入り口で別れたのか。
でも、保証人を立てる必要があるなら教えておいてくれてもよくないか?
あー、でも、この受付嬢さんの反応的に、冒険者になるには保証人が必要ってのはこの世界の常識みたいだもんな……つまりノインは、おれが保証人のツテを持っていると思っていた、ってことか?
うーん……メニュー画面を開いても、どうすればいいのかは書いてないなぁ。
もしかして、状況から察するに、ゲームのストーリー的にまだ冒険者登録はできないってことか?
冒険者登録をするには、まだ何かこなさなければならないイベントがあるとか……?
えー、でも、保証人になってくれそうな人を探すイベントなんて、どうすればいいのかさっぱりなんだけど! クエストの指示も、特に出てないし!
っていうかさ、冒険者になるのに保証人が必要とか、そんなことRPGであるかよ!?
冒険者ギルドに登録できないんじゃ、依頼が受けられないじゃん!
いや、保証人が必要だって話自体は納得がいくものだったけどさ……昨日の屋台の時も思ったけど、こんな細部までリアル路線でいかなくともいいんじゃないのか?
うう、おれは早く戦いに行きたいのに……まさか、冒険者登録ができないなんて……
……ん、待てよ?
おれは『モンスターと戦うには、冒険者ギルドへの登録が必須』だと思ってここに来ているけれど……もしかして、そもそもおれの考えている前提が違うとか?
「聞いてもいいか? 冒険者登録はしなくとも、モンスターのドロップアイテムを売ることは可能だろうか?」
「ドロップアイテム、ですか……?」
おれの質問に、受付嬢さんはいぶかしげな顔をした。どうやら、おれの言った「ドロップアイテム」という言葉に聞き馴染みがなかったようである。
あれー? 昨日、黒狼を倒した時に、おれが黒狼に触れたら死体が消えて、引き換えに黒狼の素材がドロップしていたから、「ドロップアイテム」って言ったんだけど……
「ええ、素材の買取は冒険者ギルドに登録されていない方も可能です。ただ、冒険者登録をされていない方がモンスターを倒したとしても、たとえ討伐依頼が出されているモンスターであっても、討伐しても依頼達成金は入りません」
少し戸惑ったような顔になりつつも、説明を続ける受付嬢さん。
「また、冒険者ギルドに登録されていない方が素材を持ち込まれた場合、鑑定料や手数料、モンスターの解体費用は持ち込みされた方の負担となっております。ギルドに正式登録していただいた冒険者の方でしたら、そういった費用は無料です」
ふむふむ。
それを聞くと、さっきの保証人代行の月額料金も、そこまで高いものじゃないかもしれないと思えるな。
毎回、手数料諸々をギルドに払うよりは、正式に冒険者ギルドに登録した方がいいかもしれない。
でも、残念ながら、今のおれには保証人も、その代行のお金を払うアテもないんだよなー。
ひとまず、昨日の黒狼の素材を買取に出してみるか。
「では、冒険者ギルドへの登録とは別に、売りたいものがあるんだが」
「分かりました、拝見させていただきます」
えっ? こ、ここで見るの?
……昨日、黒狼からドロップされたのは、黒狼の毛皮、目玉、心臓、爪、魔力塊の四つだった。
このカウンターに、心臓やら目玉やらをポンッと置いてしまって、いいのだろうか……?
いや、でもゲームの中なんだし、そこまで気にしなくていいのかな?
と、とりあえず魔力塊だけ出すか。
「これだ」
おれはインベントリにしまってあった、黒狼の魔力塊を出した。
なお、この『魔力塊』というのは、モンスターを倒した後に低確率でドロップされるアイテムらしい。メニュー画面から見れる、アイテム説明欄にそう書いてあった。
また、この魔力塊はこの世界でとても重要なものだそうだ。町のインフラ整備を司るエネルギー源となることもあれば、非常に強力な魔術を使用するための触媒にもなるという。
それ以外にも、この魔力塊を自身で使用することで、レベルアップのための経験値を得ることもできるようだ。
おれは今回、この魔力塊は経験値化せず、冒険者ギルドに買取をすることに決めた。
これがいい値で売れれば、保証人代行サービス料金がまかなえるかもしれない。
「こ、これは……!」
おれがカウンターに置いた『魔力塊』を見て、目を丸く見開いている受付嬢さん。
すると、周囲にいた通りがかりの冒険者たちまでが足を止めて、ざわざわと騒ぎ出した。
「――なんだあれ!? あんなデケェ魔力塊、初めて見たぞ!」
「大きさもさることながら、あの色もかなり濃いぜ。一体、どんなモンスターの魔力塊なんだ?」
「あの兄ちゃん、このへんじゃ見ねぇ顔だな」
「どうやら一人きりみたいだぞ。装備的に、なんだかイイところの騎士様みてぇだが……」
おれはあっという間にざわつく冒険者たちに囲まれてしまった。
えっ、なにこれ?
困惑しながら、正面にいる受付嬢さんを見る。
すると、受付嬢さんは顔を青ざめさせて、椅子から立ち上がった。
「す、少しお待ちください……!」
えっ、ちょっ、ちょっと!?
受付嬢さんも止める間もなく、慌てたように走っていってしまった。カウンターの向こう側はギルドの職員たちがせわしなく働いていたが、その奥にあるドアを開けて、その先へと行ってしまう。
か、完全に置き去りにされたーー!?
「あんな大きい魔力塊、最低でもBランク以上のモンスターのもんだよな?」
「いや、Aランクだろ」
「さっき話を聞いてたんだが、まだ冒険者登録はしてないみたいだぜ」
「マジかよ! じゃあ、うちのパーティーへ勧誘してみるか」
「おいおい、抜け駆けすんじゃねぇよ」
周囲を取り巻く冒険者たちが解散する気配もない。
と、とりあえず、このまま待っていていいんだよな?
っていうか、カウンターから立ち上がった瞬間、周囲にいる冒険者たちから一斉に話しかけられそうな雰囲気がビンビンしてるから、座ったままでいるしかないんだけど……
なんとか表情を取り繕いつつ、おれは椅子に座ったまま、先ほどの受付嬢さんを待ち続ける。
幸いなことに、受付嬢さんはそう長くはない時間で戻ってきた。だが、彼女一人ではない。壮年の男性が一緒にいる。
「えっ?」
意気揚々と冒険者ギルドを訪れたおれ。
だが、カウンターの受付嬢に言われた言葉は、まったく予想外のものだった。
ほ、保証人?
えっ、冒険者登録に、保証人が必要なの!?
「冒険者が問題を起こした場合、または、請け負った依頼を失敗した場合……当人や、そのパーティーだけではその責任が負いきれない場合があります」
コホンと咳ばらいをした後に、受付嬢さんは淡々とした口調で説明を続けた。
なお、おれがいるのは冒険者ギルドのカウンターである。広々としたカウンターにゆとりはあるものの、対面や隣がパーテーションで仕切られているということはない。
『God's Garden』にログインしたおれは、ノインと合流した後に、冒険者ギルドの場所を教えてもらい、ここに来た。
そして、冒険者登録をさっさと終わらせて、モンスターとの戦いに行くつもりだったのだが……
「――たとえば、過去に実際にあった事例ですと、あるパーティーがモンスターとの戦闘中に、彼らの放った魔法が近くにいた他の冒険者グループにあたってしまった、という事故がありました。運悪く、それで利き手に重傷を負った冒険者の方は、と引退をすることになったのです」
流れ矢ならぬ、流れ魔法か。
「また、モンスターの群れに追われて、逃げていた冒険者たちが街道に出たところで、ちょうどそこを通っていた商隊がモンスタートレインに巻き込まれてしまい……冒険者の皆さんも、商隊の方々も命は助かったものの、商隊の方たちは積み荷をすべて失ってしまった……ということもありました」
「……ふむ」
「今お話をした事例の場合、どちらも冒険者資格をはく奪されるのは勿論ですが、冒険者の方たちには賠償金が発生いたします。そのため、基本的に、冒険者となるには保証人を立てて頂く必要があります」
「冒険者自身が賠償金や慰謝料を支払いきれない場合、保証人が補填する、ということか」
「おっしゃる通りです」
にっこりと微笑む受付嬢さん。
だが、その笑顔とは正反対に、非常な現実がおれの目の前に立ちふさがっている。
「保証人は誰でもいいのか?」
「この町の住民であれば、住民票を提出頂き、まずは照会をさせていただきます。その際、当冒険者ギルドの設ける一定の基準をクリアしていれば、ご友人や知人の方でも登録できますよ。もちろん、当人の同意があることは前提ですが」
「保証人はこの町の人間じゃないと駄目なのか?」
「いえ、大丈夫です。この町の住民でなくとも、身元保証書と紹介状、保証人承諾書の書類をご用意頂ければ問題ありません」
「ふむ……保証人が立てられない場合はどうなるんだ? 代行なんかがあるのか?」
「ございますよ。冒険者ギルドの設けている『保証人代行』という制度がございます。ただし、こちらは有償となっておりまして……月額利用料が以下となります」
そう言って、受付嬢さんは一枚の紙をおれに渡してきた。
そのチラシには『あんしん! しんらい! 冒険者ギルドの保証人代行サービス!』という文句が、大きな文字で書かれている。
なお、文章自体はこの世界の文字で書かれているのだが、その上に日本語に翻訳されている文章が出ているのだ。本当にこういう細かい部分までめちゃくちゃ凝ってるよなー、このゲーム……
まぁ、そこらへんはさておき……問題は、その謳い文句の下に書かれている、有償の保証人制度の月額料金だ。
……け、けっこう高いな!?
冒険者ランクによって変わるようだが、一番下のFランクの料金でも、月に1000金貨……!
おれの手持ちの三分の一がなくなっちゃうんだけど!?
料金表とにらめっこしていたおれは、ふと、この冒険者ギルドの建物前で別れたノインの言葉を思い出していた。
『冒険者登録は俺は無理だからいいよー。カナトちゃんだけ登録すれば、いいんじゃない? パーティーメンバー一人が登録してれば、問題ないしさ』
あれはてっきり、NPCだから冒険者登録はできないという意味だと思ったが……まさか、こういうことだったのか?
だからノインはおれを冒険者ギルドに案内だけして、入り口で別れたのか。
でも、保証人を立てる必要があるなら教えておいてくれてもよくないか?
あー、でも、この受付嬢さんの反応的に、冒険者になるには保証人が必要ってのはこの世界の常識みたいだもんな……つまりノインは、おれが保証人のツテを持っていると思っていた、ってことか?
うーん……メニュー画面を開いても、どうすればいいのかは書いてないなぁ。
もしかして、状況から察するに、ゲームのストーリー的にまだ冒険者登録はできないってことか?
冒険者登録をするには、まだ何かこなさなければならないイベントがあるとか……?
えー、でも、保証人になってくれそうな人を探すイベントなんて、どうすればいいのかさっぱりなんだけど! クエストの指示も、特に出てないし!
っていうかさ、冒険者になるのに保証人が必要とか、そんなことRPGであるかよ!?
冒険者ギルドに登録できないんじゃ、依頼が受けられないじゃん!
いや、保証人が必要だって話自体は納得がいくものだったけどさ……昨日の屋台の時も思ったけど、こんな細部までリアル路線でいかなくともいいんじゃないのか?
うう、おれは早く戦いに行きたいのに……まさか、冒険者登録ができないなんて……
……ん、待てよ?
おれは『モンスターと戦うには、冒険者ギルドへの登録が必須』だと思ってここに来ているけれど……もしかして、そもそもおれの考えている前提が違うとか?
「聞いてもいいか? 冒険者登録はしなくとも、モンスターのドロップアイテムを売ることは可能だろうか?」
「ドロップアイテム、ですか……?」
おれの質問に、受付嬢さんはいぶかしげな顔をした。どうやら、おれの言った「ドロップアイテム」という言葉に聞き馴染みがなかったようである。
あれー? 昨日、黒狼を倒した時に、おれが黒狼に触れたら死体が消えて、引き換えに黒狼の素材がドロップしていたから、「ドロップアイテム」って言ったんだけど……
「ええ、素材の買取は冒険者ギルドに登録されていない方も可能です。ただ、冒険者登録をされていない方がモンスターを倒したとしても、たとえ討伐依頼が出されているモンスターであっても、討伐しても依頼達成金は入りません」
少し戸惑ったような顔になりつつも、説明を続ける受付嬢さん。
「また、冒険者ギルドに登録されていない方が素材を持ち込まれた場合、鑑定料や手数料、モンスターの解体費用は持ち込みされた方の負担となっております。ギルドに正式登録していただいた冒険者の方でしたら、そういった費用は無料です」
ふむふむ。
それを聞くと、さっきの保証人代行の月額料金も、そこまで高いものじゃないかもしれないと思えるな。
毎回、手数料諸々をギルドに払うよりは、正式に冒険者ギルドに登録した方がいいかもしれない。
でも、残念ながら、今のおれには保証人も、その代行のお金を払うアテもないんだよなー。
ひとまず、昨日の黒狼の素材を買取に出してみるか。
「では、冒険者ギルドへの登録とは別に、売りたいものがあるんだが」
「分かりました、拝見させていただきます」
えっ? こ、ここで見るの?
……昨日、黒狼からドロップされたのは、黒狼の毛皮、目玉、心臓、爪、魔力塊の四つだった。
このカウンターに、心臓やら目玉やらをポンッと置いてしまって、いいのだろうか……?
いや、でもゲームの中なんだし、そこまで気にしなくていいのかな?
と、とりあえず魔力塊だけ出すか。
「これだ」
おれはインベントリにしまってあった、黒狼の魔力塊を出した。
なお、この『魔力塊』というのは、モンスターを倒した後に低確率でドロップされるアイテムらしい。メニュー画面から見れる、アイテム説明欄にそう書いてあった。
また、この魔力塊はこの世界でとても重要なものだそうだ。町のインフラ整備を司るエネルギー源となることもあれば、非常に強力な魔術を使用するための触媒にもなるという。
それ以外にも、この魔力塊を自身で使用することで、レベルアップのための経験値を得ることもできるようだ。
おれは今回、この魔力塊は経験値化せず、冒険者ギルドに買取をすることに決めた。
これがいい値で売れれば、保証人代行サービス料金がまかなえるかもしれない。
「こ、これは……!」
おれがカウンターに置いた『魔力塊』を見て、目を丸く見開いている受付嬢さん。
すると、周囲にいた通りがかりの冒険者たちまでが足を止めて、ざわざわと騒ぎ出した。
「――なんだあれ!? あんなデケェ魔力塊、初めて見たぞ!」
「大きさもさることながら、あの色もかなり濃いぜ。一体、どんなモンスターの魔力塊なんだ?」
「あの兄ちゃん、このへんじゃ見ねぇ顔だな」
「どうやら一人きりみたいだぞ。装備的に、なんだかイイところの騎士様みてぇだが……」
おれはあっという間にざわつく冒険者たちに囲まれてしまった。
えっ、なにこれ?
困惑しながら、正面にいる受付嬢さんを見る。
すると、受付嬢さんは顔を青ざめさせて、椅子から立ち上がった。
「す、少しお待ちください……!」
えっ、ちょっ、ちょっと!?
受付嬢さんも止める間もなく、慌てたように走っていってしまった。カウンターの向こう側はギルドの職員たちがせわしなく働いていたが、その奥にあるドアを開けて、その先へと行ってしまう。
か、完全に置き去りにされたーー!?
「あんな大きい魔力塊、最低でもBランク以上のモンスターのもんだよな?」
「いや、Aランクだろ」
「さっき話を聞いてたんだが、まだ冒険者登録はしてないみたいだぜ」
「マジかよ! じゃあ、うちのパーティーへ勧誘してみるか」
「おいおい、抜け駆けすんじゃねぇよ」
周囲を取り巻く冒険者たちが解散する気配もない。
と、とりあえず、このまま待っていていいんだよな?
っていうか、カウンターから立ち上がった瞬間、周囲にいる冒険者たちから一斉に話しかけられそうな雰囲気がビンビンしてるから、座ったままでいるしかないんだけど……
なんとか表情を取り繕いつつ、おれは椅子に座ったまま、先ほどの受付嬢さんを待ち続ける。
幸いなことに、受付嬢さんはそう長くはない時間で戻ってきた。だが、彼女一人ではない。壮年の男性が一緒にいる。
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