異世界にログインしたらヤンデレ暗殺者に執着された

秋山龍央

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第21話

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 ――どうやらノインは、本物の『暗殺者』だったらしい。

 しかも、闇ギルドに所属する暗殺者というのだから、俺の予想以上に危険な類の人間だった。
 てっきり町のギャングの一員ぐらいかと思っていたのに……!

 しかし、そんな彼が、どうしておれに声をかけて、パーティーを組んだのかは不明だ。

 おれに暗殺依頼が出ていたから、そのためにおれに近づいたのだろうか?
 それとも、自分の所属する組織とは関係ないところでおれの仲間になって、その後、おれへの暗殺依頼を請け負ったのか……?

 けれど、今はそんなことはどうでもいい。
 
今、おれが陥っている状況と比べたら――そんなことは些末なことに思えた。

「ぁっ、ハッ……ひぅっ!」

「あ、今の声すごくかわいかった。ねぇねぇ、もっと聞かせてよー」

 いつの間にか縛られていた手のせいで、ろくに抵抗も出来ずに服を脱がされた。

 甲冑や剣などの装備をインベントリにしまっていたのが裏目に出た。……いや、もしも身に着けていたとしても、やっぱりそれもすぐに剥ぎ取られてしまっていたかもしれない。

 ノインが盛ったという媚薬は、おれの身体を限界以上に昂らせていた。抵抗しようにも、縛られている手以外にも、身体の自由がきかないのだ。

 前にも、こういうことはあった。
 アシッドスライムの酸で攻撃を受けた時も、手のコントロールがうまくいかなくなった。どうやら、媚薬の効果も状態異常判定になるらしい。

「ひ、ぁっ、ノイン、そこ、やめっ……んんっ!」

「ここ弄られんの好き? ふふ、じゃあいっぱい触ってあげるね」

「ち、ちがっ……ん、あァッ!」

 ノインは、裸になったおれの身体に跨り、胸を執拗にいじってきた。
 普段、そんなところを触ってもなんともなかったのに。ノインの指先でくにくにとつまむように弄られると、じんじんと痺れるような快感が奔った。

「あははっ、この媚薬、すごいねー。ひと瓶飲めば、どんな処女でも娼婦以上に乱れるって話だったけれど、それ以上じゃん」

「っ……!」

 頭がクラクラする。
 やばい、このままじゃやばい。

 この世界が――『God's Garden』がただのゲームじゃないってことは、ようやく分かった。

 でも、今、考えるべきはそこじゃない。
 やらなければいけないのが、この状況からの脱出――ゲームを終了させることだ!

 おれは快感に耐えながら、必死にメニュー画面を起動させた。
 だが、あらわれたメニュー画面は、普段とは様相が違った。先ほどのエラーの影響が、すべてのメッセージが文字化けしており、意味不明な感じの羅列になっているのだ。

 必死に過去の記憶をたどり、必死にゲームの終了項目を探す。
 だが、その瞬間――痛いぐらいの快楽が胸に奔った。

「ひっ!?」

「カナトちゃん、今、なにか悪いコトしようと思ってたでしょー?」

 見れば、ノインが冷たい眼差しでおれを見下ろしながら、その爪先でぐにぐにと乳首を弄っていた。
 おれが首を横に振っても、その零度の視線が変わることはない。それどころか、乳首の先端をカリッと爪先で引っ掻く。

「っ、ぁあッ! ノイン、そこ、ぃやだって……んぅっ!」

「この期に及んで逃げようするなんて、ずいぶんと余裕あるじゃん? こりゃ、もっと媚薬追加しとかないと駄目かなぁ」

 ノインの言葉に、ぞっと身がすくんだ。

「ち、違う……逃げようとなんて、してない」

「あはは、カナトちゃんって嘘が下手だねー。うん、そういうところも可愛いよねぇ」

 っ、くそ……! ノインに与えられている快楽と、文字化けしているメニュー画面のせいで、終了操作がうまくできない。
 そうこうしている間に、おれが一定時間操作しなかったため、自動的にメニュー画面が消えてしまった。

 代わりに、無理やりにVR装置を外すか、パソコンを強制終了させようにも、おれの手が縛られているために自由がきかない。
 なんでだ!? 縛られているのはゲームの中のおれの身体なのに、リアルの方も動かない……!
 いや、リアルの身体が動かないというか、身体を動かそうとするとゲーム内の身体の方が動いてしまうから、リアルがどうなっているか分からないというか……どうすればいいんだ!?

 混乱するおれを見下ろし、ノインはにっこりと微笑む。
 そして、自身のズボンのポケットからガラス瓶を取り出した。人差し指ほどの大きさの瓶には、とろりとした鮮やかなピンク色の液体が入っている。

「……ぁ、ノイン……っ」

 目の前にノインの顔が迫る。おれの顔に、ノインの吐息がかかるほど近くに。
 にっこりと笑ったノインは、まるで見せつけるような仕草で、その液体をおれの胸の上へと垂らした。

「ふふ……この薬、一瓶でもかなりヤバイって言ってたけど……二個使ったらどうなっちゃうんだろうね。楽しみだね、カナトちゃん」

「っ……!」

 ……ああ、どうして今まで気づかなかったんだろう。

 彼の息遣いも、鼓動も、触れる指先の温度も――すべてが、生きている人間そのものじゃないか。
 それに、おれが見ている視界も、皮膚で感じている感触も、空気の臭いも――すべてが、まさしく本物だ。

 ――こんなことになる前に、もっと、早く気づくべきだった。

 『God's Garden』は、ただのゲームじゃない。
 いや、そもそもゲームではないのだ。

 『God's Garden』は――本物だ。
 本物の、もう一つの世界がここにある。

 おれはどうやら今、『God's Garden』を通して、まったく違う世界に存在しているらしい。
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