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第22話
しおりを挟む――『God's Garden』を開始する前に、おれはゲームについて書かれた説明書を読んだ。
確かそこには『この世界から古き神々が統べる「God's Garden」へ魂のみで向かってもらう。そして、神の用意したアバターに貴方の魂が乗り移る』という旨が記載されていた。
あれは、本当のことだったのだろうか?
分からない。
分からないけれど――おれが今味わっている、痛いぐらいの快楽は本物だ。
「ひゃっ! ぁっ、ノイン、もうそこ、やめっ……!」
「んー? でも、カナトちゃんのココは嬉しそうに涎垂らしてるよ? それにホラ、カナトちゃんの乳首だってこんなに真っ赤に尖ってきたんだから、今やめちゃうのもったいなくない?」
そう言って、ノインは右手でおれの陰茎の先端を、人差し指の腹でぐりぐりと弄る。
尿道口に指を押し当てられて、そこを擦るように触れられると、おれの目の前に星が散るような快感が奔った。
しかも、ノインは同時に左手でおれの乳首を飽き足らず弄り続けているのだ。
彼の言う通り、そこは真っ赤に尖ってぷっくりと肥大している。
先ほど、ノインが媚薬を振りかけて弄りだした直後から、そこは触れられるだけで信じられないほどの快楽を発するようになっていた。
ノインが指の腹でもにゅもにゅと揉みしだくだけで、おれは全身をびくびくと振るわせて、ベッドの上でのたうち回るはめになった。
「うっ、あぁっ、くぅッ……!」
快楽で思考が流されそうになるのを、必死で耐える。
大丈夫、大丈夫だと、自分に必死で言い聞かせる。
こんな目にあっているのは、現実のおれじゃなくて、ゲームの中のアバターなんだから。
現実のおれがされているわけじゃないんだから、大丈夫……!
「カナトちゃん、そろそろこっちもほぐそうねぇ」
「……え……」
必死に歯を食いしばり、喘ぎ声を漏らすのを耐えていると、ノインがおれの片足をがばりと持ち上げた。
そのせいで、おれの勃起している陰茎や、そこから続く蟻の戸渡、そして――とにかく、あられもない部分がノインの前にさらけ出されてしまう。
「ッ……!」
顔にかっと血が上る。
恥ずかしくてたまらない。思わず視界に涙がじわりと滲む。
そんなおれを見下ろして、ノインは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「あれれ? カナトちゃん、もしかして泣いちゃったぁ?」
「……な、泣いてなんかない」
「またまたぁ、涙声で何言ってんの。ほら、顔、こっちに向けてよ」
「…………」
そうは言われても、こんな状況で真っ赤でみじめな泣き顔を、ノインに向けられるわけがない。
おれはそっぽを向いたまま、ノインと視線を合わさずに黙っていた。すると、突然、尻の狭間にぱしゃりと何かがかけられる感触がした。
ハッとして見れば、ノインが、取り出した小瓶をおれの尻に向けて傾けていた。
強力な媚薬が入っているというそれは、先ほど、おれの上半身に振りかけたものが最後ではなかったらしい。
そしてノインは、そのピンク色の液体を指に纏わりつかせ、それを後肛の縁でとぬるぬるとすりつけ始めた。
「ぁっ、ノ、ノインっ!? その薬はもう駄目だって……ひぁッ!?」
「だってー、カナトちゃんが俺をシカトするのが悪いんじゃーん。俺、カナトちゃんに無視されて、めちゃくちゃ傷ついちゃったなぁ」
ぬぷ、とノインの人差し指がおれのナカに入ってくる。
その逆流するような感覚に、二の腕に鳥肌が立つ。だが、ノインが指を動かし始めると、その気持ち悪さはすぐに快楽で押し流された。
「ぁっ、やっ、ノイン、だめっ……ぁあッ!」
ノインが指を抽送させると、媚薬がおれの中にどんどん入ってきてしまう。
抵抗しようにも、片足はノインに抱えられ、両手を縛られている状態ではろくに動けない。
ままならない内に、くちゅくちゅという水音と共に、ピンク色の液体はすっかりと中の肉壁に塗り込まれてしまった。途端、今まで以上に身体がかっと火照りだす。
「ぁっ、ああっ……んぁあっ!」
「うわぁ、カナトちゃんのナカ、今すっげー熱いよ。分かる?
「んぁっ、あッ、ぅあ……ひぁっ!」
「今、カナトちゃんのナカに挿れたらめちゃくちゃ気持ちいいだろうけど……でも、媚薬がカナトちゃんのナカに浸透しきるまで待たないと、俺が大変なことになっちゃうからなぁ。あー、早く突っ込みてー」
――なんだ、これ。
おれの身体じゃないはずなのに、おれの身体が、ぐちゃぐちゃになっていく。
陰茎は痛いぐらいに勃起して、ナカではノインの指が縦横無尽に蠢いて、次から次へと快楽が怒涛のように押し寄せる。
「っ、はっ、ぁッ……ぁ」
快楽で頭がぼうっとなる。涙が次から次へと溢れて止まらない。
「あ、やっとこっち向いた」
気が付けば、ノインがおれの顔を覗き込んでいた。
涙でぐしょぐしょになった顔はみっともないだけだろうに、ノインはとても嬉しそうな顔で、うっとりとオッドアイの瞳を細めた。
「カナトちゃんの泣き顔って貴重だね。殺す前に見れて良かったよ」
「っ……」
「それに……カナトちゃんの目って、こんな時でもきれいだね。きらきらしてて、透き通ってて……」
「んッ……!?」
ノインの顔がますます近づいたかと思うと、おれに唇を重ねてきた。
二度目のキスは、最初のキスよりも激しかった。まるで、貪られるようなキスだった。
「ん、ふっ……!」
口内に這入りこんだ舌が、歯列をなぞり、逃げようとしたおれの舌を捉える。
まるで蛇のように縦横無尽に動く舌は、それ自体が個別に生きているかのようであった。
あまりに激しいキスに、ますます頭がぼうっとなる。
だからだろうか――ノインが三度、おれの舌に自分の舌を絡ませた時、かすかではあるが、思わずその愛撫に応えてしまった。
「っ!」
ノインが驚いたように目を見開き、身体を硬直させる。
だが、それは一瞬のことだった。
「んくっ、ふ……ッ!」
ノインはますます口づけを深いものにした。しかも、それだけでは飽き足らず、片手で後肛への愛撫を再開させる。
「ひっ……ぁ! ノイン、だめだっ、そんなとこっ……ん、ぁあッ!?」
「悪いけどさ、もう我慢できない。俺、早くカナトちゃんに突っ込みたい。だって、あんなの反則じゃん?」
ノインの指が、ぐるぐると中で半回転する。
回るたびに、ノインのごつごつした指の節や、爪先が肉壁を抉る。その刺激に、おれの腰は勝手にビクンッと跳ねた。
「ひ、ぁっ、ああッ!」
そして、ノインの指がある一点を抉った時――下腹部に電流を流されたような快楽を感じた。
おれの陰茎も、いつの間にかすっかり頭をもたげて、その先から、ダラダラと先走りを溢している。透明な液体は、陰茎の幹を滴り、自分自身の股間をぐっしょりを濡らしていた。
「あ、ここがカナトちゃんの気持ちいい所かぁ。じゃあ、ここにたっぷり媚薬塗り込んであげるねー」
「っ、ぁあッ、ノイン、そこ本当にやめっ……ひあァっ!?」
まな板の上の鯉のごとく、シーツの上で身体をびくびくと震わせるしかできない。
だが、ノインは手加減をしてくれるということはなかった。
おれが涙目で首を横にいやいやと振るのを、ひどく愉しげな表情で見下ろすと、あまつさえ先ほどの敏感な一点をゴリゴリと指先で抉ってきた。
「ひっ、ぁっ、あ、ノインっ……ああッ!」
「ふふ、この媚薬ね、一定部分に塗り込めば、感度が上がる効果もあるんだよ? 特にこの前立腺って所に塗り込むとねぇ、次第に、前の快楽だけじゃ物足りなくなっちゃうんだって」
「っ……?」
快楽に湯だった頭の隅で、その言葉は奇妙に聞こえた。
いや、ノインの言葉はかなり恐ろしいものだったのだが――そうじゃなくて、
「ノイン、お前、何を言っているんだ……? ……そんな話、意味ないだろっ……ひぁあッ!」
「うん?」
ノインは愛撫の指を止めなかったが、こちらの声には耳を傾けてくれた。
おれは必死に喘ぎ声を抑えながら、なんとか必死に言葉を紡ぐ。
「だって、ノインはおれを殺すんだろう……? なら、これからの話なんて、意味がないじゃないか……」
「……あ、そうだった」
おれの言葉に、はたとノインが動きを止めた。
その顔から、すうっと表情が消える。同時に、愛撫の指先も動きを止める。おれの片足を掴んでいた手からも力がふっと抜けていった。
「なんで俺、そんなこと言ったんだろう……変なの。変だよね?」
「…………」
ノインがおれに向かって、首を傾げてみせる。どうやら、自分自身の言葉に戸惑いを覚えているらしい。
ノインはしばらくの間、茫洋とした視線でおれのことを見つめてた。おれも自然と、固唾を飲んで彼のことを見つめ返す。
そして、しばらくの間の後――
「……俺、やっぱり、カナトちゃんは殺したくないなぁ」
まるで迷子の子供のような声音で、そんなことを呟いたのだった。
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