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【三人目】ディード・レリシュ(狐獣人、24歳男) ②
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「静くん、お疲れさま! 昨日は二号店のヘルプありがとう、おかげで助かったわぁ」
「メイナ社長、お疲れ様です」
アルファ都市にある株式会社スリーピングフォレストの本社に出社して早々、メイナ社長から声をかけられた。どうやら彼女はおれを待ち構えていたらしい。
「ふふ、すごいわよ~。静くんの指名状況さっそく見てみてちょうだいな」
「なにかあったんですか? えーっと……」
今日デスクに供えられているタブレットを操作し、予約状況を確認する。
おれは驚いた。なにせ今日から二週間先までのスケジュールがびっしりと予約で埋まっていたからだ。
しかも、予約されているお客様の名前や顔には、なんとなく見覚えがある。
確かこれは……
「この人たちって昨日、二号店に来店されていたお客様じゃありませんか?」
「そうなのよ! 静くん、よく覚えてるわね!」
メイナ社長は機嫌のよさそうな笑顔で続けた。
「昨日、臨時で二号店の受付をしてもらったでしょう? それで静くんを見て、気になったお客様がたくさんいらっしゃったみたい。昨日から今日にかけてメールフォームからお問い合わせがたくさん来ているわ」
「……メイナ社長。もしかして、おれを二号店のフォローにいかせたのってわざとですか?」
おれの質問に、メイナ社長はいたずらっぽく笑った。
「あら、バレちゃった? だって静くん、ホームページに顔写真のせてくれないんだもの。やっぱり写真がないと、お客様は指名しにくいし……でも昨日の二号店が人手不足だったのは本当よ?」
「別にそこは疑っていませんよ」
「だって、もったいないと思って! 静くんなら一千万……いいえ、一億は稼げるポテンシャルがあるわ! 人間が珍しいというのに加えて、静くんは人を甘えさせるのも上手だし! 今はまだ指名率は少ないけれどリピーター率は最高だもの!」
「うーん……そう言っていただけるのは嬉しいですが、メイナ社長の買いかぶりじゃないかなぁと思いますけどねぇ」
メイナ社長の勢いに、おれは苦笑いをこぼした。
彼女の言う通り、おれは店のホームページに顔写真を載せておらず、簡素なプロフィールしか載せていない。そのため他のキャストと比べると指名率は少ない。
とはいえ、おれは稼ぎを求めてこの会社に就職したわけじゃない。自分が一人で食べていくのに困らない分さえあればいい。
いろんな獣人さんとモフモフ添い寝できてお金がもらえるのだから最高だ。
「でも、昨日の受付業務はけっこう面白かったですから、臨時で手伝いが必要ならまた気軽に言ってください。アルファ都市にある本店とはお客様の雰囲気も違うし、すごく勉強になりました」
「うんうん。そういう素直なところ、ほんと静くんのかわいい所よねぇ。やっぱり静くんなら、この調子で頑張ってくれれば一千万超えは夢じゃないと思うわ」
上機嫌なメイナ社長と会話を続けながら、おれはタブレットを操作して今夜のスケジュールを確認した。見れば、アルファ都市で15時から1件、そしてベータ都市で19時から一件、それぞれ二時間コースで予約が入っている。
「……あれっ?」
「どうかした、静くん?」
「いえ、ちょっと驚いて……まさかこの人がおれを指名してくるとは」
しかし、何度見ても予約内容に間違えはなさそうだ。
ベータ都市で19時からおれを指名してきたお客様――それは、昨日二号店で出会った狐獣人のディードさんだった。
「メイナ社長、お疲れ様です」
アルファ都市にある株式会社スリーピングフォレストの本社に出社して早々、メイナ社長から声をかけられた。どうやら彼女はおれを待ち構えていたらしい。
「ふふ、すごいわよ~。静くんの指名状況さっそく見てみてちょうだいな」
「なにかあったんですか? えーっと……」
今日デスクに供えられているタブレットを操作し、予約状況を確認する。
おれは驚いた。なにせ今日から二週間先までのスケジュールがびっしりと予約で埋まっていたからだ。
しかも、予約されているお客様の名前や顔には、なんとなく見覚えがある。
確かこれは……
「この人たちって昨日、二号店に来店されていたお客様じゃありませんか?」
「そうなのよ! 静くん、よく覚えてるわね!」
メイナ社長は機嫌のよさそうな笑顔で続けた。
「昨日、臨時で二号店の受付をしてもらったでしょう? それで静くんを見て、気になったお客様がたくさんいらっしゃったみたい。昨日から今日にかけてメールフォームからお問い合わせがたくさん来ているわ」
「……メイナ社長。もしかして、おれを二号店のフォローにいかせたのってわざとですか?」
おれの質問に、メイナ社長はいたずらっぽく笑った。
「あら、バレちゃった? だって静くん、ホームページに顔写真のせてくれないんだもの。やっぱり写真がないと、お客様は指名しにくいし……でも昨日の二号店が人手不足だったのは本当よ?」
「別にそこは疑っていませんよ」
「だって、もったいないと思って! 静くんなら一千万……いいえ、一億は稼げるポテンシャルがあるわ! 人間が珍しいというのに加えて、静くんは人を甘えさせるのも上手だし! 今はまだ指名率は少ないけれどリピーター率は最高だもの!」
「うーん……そう言っていただけるのは嬉しいですが、メイナ社長の買いかぶりじゃないかなぁと思いますけどねぇ」
メイナ社長の勢いに、おれは苦笑いをこぼした。
彼女の言う通り、おれは店のホームページに顔写真を載せておらず、簡素なプロフィールしか載せていない。そのため他のキャストと比べると指名率は少ない。
とはいえ、おれは稼ぎを求めてこの会社に就職したわけじゃない。自分が一人で食べていくのに困らない分さえあればいい。
いろんな獣人さんとモフモフ添い寝できてお金がもらえるのだから最高だ。
「でも、昨日の受付業務はけっこう面白かったですから、臨時で手伝いが必要ならまた気軽に言ってください。アルファ都市にある本店とはお客様の雰囲気も違うし、すごく勉強になりました」
「うんうん。そういう素直なところ、ほんと静くんのかわいい所よねぇ。やっぱり静くんなら、この調子で頑張ってくれれば一千万超えは夢じゃないと思うわ」
上機嫌なメイナ社長と会話を続けながら、おれはタブレットを操作して今夜のスケジュールを確認した。見れば、アルファ都市で15時から1件、そしてベータ都市で19時から一件、それぞれ二時間コースで予約が入っている。
「……あれっ?」
「どうかした、静くん?」
「いえ、ちょっと驚いて……まさかこの人がおれを指名してくるとは」
しかし、何度見ても予約内容に間違えはなさそうだ。
ベータ都市で19時からおれを指名してきたお客様――それは、昨日二号店で出会った狐獣人のディードさんだった。
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