異世界転生したけど眷属からの愛が重すぎる

秋山龍央

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プロローグ

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「いやー、今回はさぎょイプ付き合ってもらってありがとうございます!おかげさまで新刊落とさないで済みました」
『いえいえ。こちらこそユーキさんのおかげで原稿はかどりました!』

お互いビデオ画面はオフにしているため、スカイプの画面は真っ黒だ。
なぜお互いともビデオ画面をオフにしているのかというと、脱稿が終わって徹夜明けの醜い顔を相手に晒すのが申し訳ないからであった。
脱稿で徹夜明け、といっても、別におれも相手もプロの漫画家というわけではない。おれたちはただのアマチュア――趣味で漫画の創作をしている同人作家仲間であった。

『そういやユーキさん、新刊の原稿サンプル見たんですけど、今度は「エターナルラブ」の青野ちゃんなんですね! 青野ちゃんいいっすね!? 幼馴染系清純派美少女っていいですよね!
で、チャラい系モブ男に脅迫されてからの寝盗られ雌落ち! いいっすねー!』

スカイプの真っ黒な画面から楽しげな言葉が響いてくる。
もしかするとお世辞も入っているのかもしれないが、ストレートな褒め言葉はとても嬉しい。ただ、内容が内容だけに……というかおれの描いている同人が18禁エロというたけに、若干の恥ずかしさもあるが、まぁそれも今更だ。
なお、『ユーキさん』というのはおれのハンドルネームであり、作家名である。とは言っても、おれの本名が「裕貴」だからそれを文字っただけなのだが。

「いやー、もうおれの作風テンプレ化してますよね。たまにはシリシリコンさんみたく、主人公との甘々ラブラブ和姦とか描いてみたいんすけど、気づいたらいつの間にかモブ男が出張ってて」
『いやいや、やっぱユーキさんのチャラ男に寝取られモノがなきゃ俺の夏祭りは始まりませんから! あっ。そういや最近は催眠や洗脳系のエロは書かないんですか?』
「おっ、洗脳からのNTRですね! でも最近は普通のモブ男寝取られの方が意外と受けがよくって」
『そうっすか……オレ、ユーキさんのこと知ったの初期の同人のチャラ男による洗脳系寝取られだったんで、また読みたいんすよねー』
「じゃあシリシリコンさんが冬祭りのゲスト原稿やってくれません?」
『えっ、オレのゲスト原稿なんかでむしろいいんですか!』

原稿が終わったためか、シリシリコンさんはやけにハイテンションだ。だが、相手からしたらおれもそう思われているのかもしれない。
もう少し会話を続けていたかったが、原稿の終わった安心感のためか、だんだんと瞼が落ちてきた。おれはシリシリコンさんにその旨を告げて別れを言うと、スカイプを終了しパソコンをシャットダウンさせる。

さあ、いざ布団にダイビング。
原稿が終わりきった後にもぐるあたたかな毛布というものは、きっととても心地良いだろう。

しかし、いざシーツに潜り込もうとしたおれの耳に、金切り声のようなものが響いた。
おれは首を傾げつつ、アパートの部屋の窓から外を見下ろす。日曜日の朝の早い時間のためか、まだ道路に人通りはまったくない。
窓を見下ろしている最中、再び、あの金切り声のような音が聞こえた。ついで、男の怒声と思われるようなものも聞こえてくる。
どうやら、これはアパートの外ではなく、アパートから聞こえてくる声のようだ。
おれは寝ぼけ眼をこすりつつ、玄関に向かってみることにした。そして、徹夜明けのせいで判断力が鈍った頭で考えなしにドアを開けると、ばっちりと目が合ったのは明るい茶髪の女子大生。
怯えたような顔で涙目でおれを見てくる彼女は、確か、2つ隣の部屋にすむ女の子だ。
彼女はおれを見るなり、地獄で仏に遭遇したといわんばかりにこちらに駆け寄ってきた。

「た、助けて!」
「えっ、ちょっと待て、いったいなに……」
「アケミ、その男が浮気相手か!?」
「浮気も何も、アンタと付き合った覚えはないわよ! もう帰ってよ!」

こちらに逃げてきた女子大生の後ろには、ぼさぼさ頭の、目つきがうろんな男がいた。年頃は女子大生と同じくらいのようだが、身体が絶望的にひょろいため、悪い意味で若く見える。
おれは咄嗟にこれはやばいヤツと判断し、女子大生を背中にかばうようにして部屋に招き入れた。けれど、それは悪手だったのかもしれない。
おれは女子大生の方に気をとられて、男をよく見ていなかったのだ。

だから、男が片手に折りたたみナイフを持っていることに気づいていなかった。
そして男は、おれが女子大生を背中に庇って部屋に入れたのを見ると、ほとんど気の狂ったような怒声を上げて――、


――――暗転。
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