異世界転生したけど眷属からの愛が重すぎる

秋山龍央

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神様

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「――という風に、おぬしは死んだわけだ。思い出したか?」
「あー……思い出しました」
「ふむ。では本題に入ろう」

おれの目の前にいる、真っ白な髪に真っ白な肌、白銀色の瞳、そしてこれまた真っ白な着物のような衣装を着た性別不明な長身のナニモノかはそう言うと、おれ達の眼の前に展開していた再現映像を手を振って終了させた。

「おぬしはこれから我の統べる世界へと転移してもらう」
「えっと、拒否権は?」
「拒否すればおぬしは死ぬ。今のおぬしの魂は我の力で留まっているが、あの世界でのおぬしの身体は、先ほど見てもらった通り死んだのだ。今頃は身体の方は火葬になっているだろう」
「なるほど……」

……女子大生を背後にかばったところで途切れたおれの記憶。
次に、目が覚めたおれがいたのは天地のない真っ白な空間だった。そこにあったのは、ぽつんと浮かぶパイプ椅子と、この何もかもが真っ白な人物たった一人。
この真っ白な人物に促されてパイプ椅子に座ったおれの目の前で、パワーポインターのごとく強制的に始まったムービーショー。
そこでおれは、自分が死んだ顛末を思い出し……今のこの状況になっているわけである。

「ふむ。おぬし、いやに冷静だな」
「いや、冷静というか、まだ色々と飲み込めていないだけだと思います」

小首を傾げる白い人物に、苦笑いをしながら答える。

「えっと……それで、貴方はおれが行く世界とやらの『神』なんですか?」
「今はそうだな。歴史が変わったりすると『悪魔』やら『精霊王』やら『神』と呼ばれることもあるが、今は基本は『神』という名で呼ばれている」
「……おれがその世界に転移することで、おれとあなた、それぞれにどういうメリットがあるんですか?」
「おぬしはこのまま死なんで済む。我のメリットは……世界に魔力を注ぐことだ」
「魔力?」
「なんと説明したものか……。我の世界では、地球にはない『魔法』が発達した世界なのだよ。だが、その魔法を使用するためには、世界に満ちる魔力を使用するか、その人間が持つ生体魔力が必要なのだ。というか、我がそのように世界を創ったのだ」
「おっ、創世神話! なんかすごい中二病心がくすぐられますね!」

いきなりハイテンションになったおれを、自称・神様が珍獣を見るような目つきで見てきた。
いや、あの、すみません。オタクって自分の好きな分野になると、唐突にテンションが変わる生き物なんです。

「それでな……我の持つ魔力は膨大すぎた。放っておくと、自分の持つ魔力でこの宇宙を大爆発させる危険性があるのだ」
「つまり、ガス抜きが必要みたいな感じですか?」
「そうだ! そこでかつて我が考えたのは、魔力を消費する世界を産み出すことだった。そのため、『魔力』を消費して生きる生命が生きる世界を産み出したのだ」
「えっと……その世界に神様の魔力を注ぎ込んで、その魔力をそこの世界の人たちに消費してもらうってことですかね?」
「そういうことであるな」
「でも、それとおれをその世界に転移させるのはどういう繋がりが?」
「おぬしがその世界に転生を果たすことにより、世界に魔力を注ぎ込むための通風孔の役割となるのだ。この役割は元々この世界に住まう人間では果たせない役割でな、他の世界から転移したものでなければ駄目なのだ。つまり、おぬしは我の魔力を注ぎ込むための世界の穿孔……というわけだな」
「『世界の穿孔』……! すごい中二病臭くて逆にいいですね、そのネーミング!」
「……時折、おぬしのノリが理解できない時があるな」

自称・神様がますます胡散臭いものを見るような顔になる。
おれはさすがに居住まいを正し、こほんと咳払いをした。

「お、お話は分かりました。あともう少し質問が」
「うむ」
「……おれがその『世界の穿孔』となることにより、なにか特別な能力が使えたり、ものすごい美形になったりすることはあるんですか?」
「……本当に、おぬしの言っていることが理解できないな。なぜ別世界に転移すると美形になると思うのだ?」

心底不思議そうな顔で、自称・神様がおれを見つめてくる。
いや、まぁ、せっかくの異世界なんだし。おれもこの平凡な黒髪黒瞳の容姿から、よくある異世界転生モノみたいにオッドアイの銀髪美形とかになったりしないかなーと淡い期待を抱いたんですよ。
でも、残念ながらおれのこの容姿はこのままらしい。

「そして、ふむ……特別な能力か……。まぁ、おぬしには世界の穿孔という大切な役割があるからな。特別に我の加護として、病を退け、現地の言葉を理解する能力は付与してやろう。だが、それだけだ。我の加護としてあまり強い加護を人間に付与すると、力の膨大さに耐えきれず魂がヒビ割れてしまうからな」
「そ、そうですか……」
「それでも良いなら付与するが?」
「いえ、けっこうです! ありがとうございます!」

うーん。異世界ときたらチート的な能力を貰えるということに憧れがあったのだが……。
でも、仕方がないか。それに、病気にならない加護と言語理解の能力だけでも、考え方によっては充分なチートだしな。

「……ふむ、それではまだ少し心許ないか。よし、それでは護衛役として一名、眷属をつけてやろうではないか」
「眷属?」
「おぬしは『地球』という世界で、漫画なるものを書いていただろう?」
「は、はい」
「その漫画でおぬしが描いていた登場人物の中から、一番心血を注いで描いていたものに命と力を与え、おぬしの眷属としてやろう」
「えっ!」

思いもかけない提案に、思わずパイプ椅子から立ち上がりそうになる。

「い、いいんですか!?」
「うむ。おぬしが心血を注いで産み出した創作物から生まれいづる者であれば、おぬしへの忠誠心や信仰心が元より備わっているだろう。おぬしに特殊な能力を与えることはできぬが、我が手づから命と身体を与えた眷属であれば、魔力の膨大さに壊れることもない。この眷属にある程度の能力を与え、おぬしの護衛としてつかわそう」
「あ、ありがとうございます!」

やった、言ってみるもんだ!
それに……おれの創作物から生まれた登場人物を眷属にしてくれる、だって!?
どのキャラクターがおれの眷属になってくれるかは分からないが……ふふふ、これはつまり、おれの描いてきた同人誌の登場人物が、おれの眷属になってくれるということだろ!?

つまり、『エターナルラブ』の青野ちゃんとか、『サクセスライフ!』のリンリンちゃんとか! あとは『エイジ・オブ・バンパイヤ』のリリア様とか……!
どの子がおれの眷属になってくれるのかはまだ分からないが、今まで描いてきたヒロインの内、誰か一名がおれの護衛になってくれるということ……! こんなに嬉しいことはない!

「行きます、異世界! ぜひ行かせて下さい!」
「そうか、そう言ってくれるか。……だが、心しておけよ。眷属もおぬしと同じ人間である。おぬしへの忠誠心が元から備わっているとはいえ、おぬしの振る舞い如何によってはおぬしを見限り、裏切ることもあるだろう」
「は、はい……」

浮かれきったおれの頭に水を差すように、神様の重々しい言葉が告げられる。

そ、そうだよな……。
こんな平々凡々なおれに美少女なヒロインがただで付き従ってくれるとは思わない方がいいだろう。むしろおれが平身低頭で付き従わなければいけないかもしれない。

うん、そうだよ。どんな女の子が眷属として来てくれるかは分からないが……せっかく、異世界で一緒にやっていく仲間なんだ。どんな子が来ても、相手を尊重する気持ちは忘れないようにしないとな。

「……ふむ、覚悟は決まったようだな。では、よい旅立ちを。よく励み、そして良く生きるのだぞ」

そして、真っ白な神様が再び手を振る。
それを期に、おれの視界はまたしても暗転したのであった。
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