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短い時間とはいえ、ずっと気を張っていた状況のせいか、家に帰宅するとドッと疲れがこみ上げてきた。
おれはロディの腕から下ろしてもらうと、寝室に行って人間の姿に変身する。すると、ロディも一緒に寝室についてきた。
その表情はロットワンダ商会を出てからずっと硬いままだ。
おれが人間の姿になるとロディはおれに服を手渡してきた。この服はロットワンダ商会で借りた服だったのだが、一度袖を通したものだし返さなくてもいいよとリアンさんが言ってくれたので、ありがたく頂いたというわけである。
……リアンさんがこんなにおれとロディによくしてくれるのは、恐らくおれの能力を利用したいんだろうから、本当はあまり借りを作らないほうがいいんだろうけどね!
ただより高いものはないって言葉があるけど、今後はマジで肝に銘じておこう……。
でも、貰ったものはせっかくだし有効活用しないのはもったいない。ということで、先ほどロットワンダ商会で着ていた下着と服を改めて着直すおれ。
ジャケットは……いいか、どうせ家の中だし。しかし、やっぱり着心地がいいなぁこの服。ロディを差し置いて、こんな上等っぽい服を着させてもらうのはちょっぴり罪悪感があるけど……。
「……クロ」
「うん? っ、ぅわっ!?」
シャツの最後のボタンを留め終わった時、タイミングを見計らっていたのかそれとも今まで我慢していたのか、そばにいたロディがおれを正面から抱きしめてきた。
正面から回された腕がおれの背中に回り、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。密着しているロディの顔はおれの肩口にあるので、どんな顔をしているのかは分からない。
「ちょっ……ロディ、苦しい。も、もうちょっと緩めて」
「心配したんだぞ、君が急にいなくなって」
ぎぶぎぶとロディの背中をタップするが、全然腕の力が緩まらない。
でも、それ以上は何も言えなかった。正面からおれを抱きしめるロディが、涙混じりの声だったからだ。
「あー……いや、その、おれもまさかこんなことになるとは思わなくて」
「……君が悪いわけではないのは分かってるんだ。でも……」
「いや、おれが悪かったよ。心配かけてごめんな、ロディ」
涙声のロディの頭に手を伸ばし、よしよしと撫でる。そうしていると、ようやくロディが腕の力を緩めてくれた。
腕の力が緩まった隙に、おれはロディの手を引いて寝室内の唯一のまともな家具であるベッドへ向かい、ロディをそこに座らせた。おれもロディの隣に座る。
あー……いや、それにしてもあの誘拐犯たちの馬車はひどかったな。このベッドの寝心地はあまりよろしくないけど、それでもあの馬車に比べたら雲泥の差だ。もっとこのベッドも大切にしないといけないな。
……あ。でも、ロットワンダ商会に勤めるようになったら、この家も出ていくことになるのか。
この家にもだんだんと愛着が湧いてきたところなのでちょっと寂しいな。この家も男二人が暮らすには手狭だったけど、その分、手を伸ばせばいつでも触れ合える距離は心地よかった。
そんなことを考えていると、ふと、おれの額を隣のロディが指で触れてきた。
ロディの指先が触れるたび、ぴりりとした痛みが奔る。
「どうかした、ロディ?」
「この怪我はあいつらにやられたのか?」
怪我? そんな所に怪我なんかしてたっけ……?
あっ! もしかしてあれか!?
確か、コリン君を脱出させようとした時、最後にコリン君が窓に飛び上がった時に、反動でコリン君の靴先がかすったよな……。その時の怪我か!
「可哀想に……あいつらにやられたのか?」
「えっ、あー、うん。そんなところ」
「瘡蓋になっているな。痛むか?」
「いや、大丈夫だよ。そんなにたいした怪我じゃないしな」
この怪我はコリン君につけられたものと説明したら、涙目のロディはどんな顔に変わるだろうか。
ちょっと見てみたい気もしたが、まぁ、コリン君だってやろうと思ってやったわけでもないから、これはおれだけの秘密にしておこう。
怪我とは言っても、傷口から出た血はもう固まっているので、すぐに治るだろう。しかし、それでもロディはまだ怪我が気になるようで、痛ましげな表情でじっとおれのことを見つめていた。
心なしか、隣に座る距離も近い。近いと言うか、もはや身体がほとんどぴったりと触れ合っている。
ベッドに移動したのは失敗だったかもしれなかった。場所が場所なだけに、やけにロディを意識してしまう。
「あと、その……ロットワンダ商会の人におれのことバレちゃったね」
「ああ、そうだな」
話題を変えたくて、そしてこの場の妙な雰囲気を変えたくて、ひとまず、今後のことについての話に方向を向ける。
「ごめんな、商会では勝手に話を進めちゃって。そもそもコリン君にも勝手にバラしちゃったし」
「いや……今回は状況が状況だったからな。仕方がないさ」
「でも、結構危ない綱渡りだったよな? リアンさんがおれのことを受け入れるか、それともギルドに報告して公のものにするかは確証がなかったしさ」
……正直なところ、もしもリアンさんがおれの存在をつまびらかにする方向性で行こうとしていたら、おれはロディと離れてこの街を出ていくつもりだった。
しかし、おれだって別に好きでロディの傍を離れたいわけではないし、そもそも今のロディの精神状態で、おれと離れても大丈夫なのかなという心配もあるし。
だから今回、リアンさんがおれを利益目的で取り込む方向性に持っていってくれたのは、おれとしてもありがたい話だったわけだ。それでも、一歩間違えばおれもロディも危ない状況になっていただろう。
「いいじゃないか。結果としては俺の問題も君の問題も解決できることになったんだから」
「そうかな……でも、やっぱりおれとしてはロディに申し訳なかったなと思っててさ」
おれがそう言うと、なぜかロディは「ふふふっ」とおかしそうに小さな笑いを零した。くすぐったそうに笑うロディに、おれはびっくりして彼の顔をまじまじと見つめる。
「ロディ?」
「ああ、いやすまない。ただ、いつもと逆だなと思ってな」
「逆って?」
「いつもは君が俺を励ましてくれるだろう? あまり考えすぎるなって言われるのは俺の方なのに、今日は逆だ」
頬をほころばせておかしそうにくすくす笑うロディを見ていたら、おれもなんだか肩の力が抜けて笑えてきた。
「あはは、そうだな。ロディがおれに似てきたのかもな、ペットと飼い主は似るっていうし」
「ふふっ……きっとそうだな」
ターコイズブルーの瞳を細めて笑うロディは、穏やかな表情でそう頷くと、頭を傾けておれの肩に預けてきた。
いつになくおれに触れてくるロディに驚いたものの、おれとしても悪い気分じゃない。
片手をロディの背中に回すと、ロディの片手がおれの太腿の上に乗せられた。
「……何にせよ、このままクロと一緒にいられるようになって良かった」
「うん?」
「今日、冒険者ギルドで君がいなくなっていた時……初めは、君に捨てられたのかと思った」
ロディの言葉に、ちょっとどきりとしてしまう。
おれとしてはロディを捨てるつもりはないし、離れがたい存在だと感じている。
ただ……その、おれはどうしたってロディの足枷にしかなっていなかった。だから、心の問題を除けば、おれと別れた方がロディは上手くやっていけるだろうとは思っていたし、彼の元を離れるための心構えはしていた。
「先日も、俺の不用意な言葉で君を誤解させてしまったみたいだっただろう? その後も、君は言葉にしなかったけれど、すごく思い悩んでいたのは分かった」
だが、そんなおれの思惑も、薄々ロディは察していたらしい。
気まずさに少し身じろぎすると、ロディが苦笑いを零す。
「だから、あの冒険者ギルドでクロがいなくなった時、もしかすると俺は捨てられたのかと思ったんだ。ただ、あまりにも状況が突然過ぎたからさすがにおかしいと思って聞き込みをしたら、事件のことが分かったんだ」
「……その、ロディ。おれは……」
「いいんだ、君をそんな風に思わせたのは俺が原因だ。今回、クロが無事に帰ってきてくれて本当に良かった。けれど、あの一瞬、おれはすごく後悔したんだ。もっと君に言葉を尽くして気持ちを伝えておけば良かったと思ったし、どんなにみっともなくても、君を引き止めておけば良かったと感じた」
いつになく、ロディの言葉には力強さがあった。
こんなロディは出会ってから始めてかもしれない。
困惑するおれの肩口から身体を起こしたロディは、おれの左手をぎゅうっと両手で握りしめてきた。そして、おれの顔を真っ直ぐに見つめてくる。
「クロ、俺は君のことが好きだ。これからもずっと、俺の傍にいて欲しい」
澄んだ湖のようなターコイズブルーの瞳が射抜くように見つめてくる。
おれは、そんなロディの迫力に呑まれたのか、彼の告げた言葉の意味がすぐには飲み込むことができなかった。
「え、えーっと……ご主人様とペットとして、ってことだよな?」
それなら、いたって今まで通りの関係だ。何も変わりはない。
だが、ロディはおれの言葉に首を横に振った。
「違う。……その……恋人として、一人の対等な人間同士として、俺の傍にいてほしいんだ」
自分で言った恋人という単語に自分で恥ずかしくなったのか、言いながらちょっぴり頬を赤らめるロディ。
だが、そんな可愛いロディの表情を見ても、おれはいまだに言葉の意味が理解できていなかった。
「恋人って……おれなんかと? だっておれ、マトモな人間じゃないんだぜ。そんなの、ロディが誰よりもよく知ってるだろ?」
「ああ、クロのことなら俺が一番よく知ってる。だから、君を好きになったんだ」
「……っ」
ロディのストレート剛速球な言葉に、見事にノックダウンしかける。
ま、待て。そりゃ、ロディのことは大事で大好きな存在だけどさ、だからこそ、ここで簡単に頷いちゃ駄目だ。
「あのさ……ロディ。言ってなかったけど、おれが今までロディに対してやってきたことは、ロディに拾われて助けられた恩義を返すためにやったんだよ。だから、おれのやったことは返礼品みたいなもんなんだから、別にロディがおれに恩を感じる必要はないんだぞ?」
「理由は何にせよ、俺が一番最悪な状況の時に傍にいてくれたのは君だろう? 他には誰もいなかった」
ロディがおれの手を握りしめる力が強まる。
できるなら、その手を握り返してロディの言葉に応えたい気持ちがある。正直、喉元まで出かかっているぐらいだ。
でも、それでも応えられない。
「今回の仕事の件は上手くまとまったけどさ、このままロディの傍にいても、ずっとおれが足枷になるのは変わらないだろ?」
「足枷なんて思ったこともない。クロ、俺は……」
「むしろ、おれがこういう状態になったなら、商館に別々に雇ってもらえる方法だってあるだろう?」
幸いというか、リアンさんはおれに利用価値を見出してくれているみたいだし。
「ロディにはこんなモンスターもどきより、もっといいヤツがいるよ。おれで妥協することないって」
努めて、明るい声で軽く笑ってみせた。
そして話はここで終わりとばかりにベッドから立ち上がろうとする。
が、ロディはなおもおれの手を握りしめたままだった。そして、ロディのような逞しい冒険者に掴まれていて、低ランクモンスターのおれが拘束を解けるわけがない。
「……ロディ?」
おれはベッドに座り直して、もう一度ロディの顔を見る。
だが、今度はロディに方が顔を俯かせてしまっていたので、その表情は見れなかった。
「……クロ、そんなことを言わないでくれ。君だけは俺を突き放さないって言ってくれたじゃないか」
それを言ったのはロディであっておれではないが……ここでそれを言うのは野暮だと言うのは猫でも分かる。
「君は、俺に拾われた、助けられたと言うが……それだって逆なんだ」
「逆?」
おれが聞き返すと、ロディがゆっくりと顔を上げた。
先程泣き止んだにも関わらず、そのターコイズブルーの瞳はまたもや涙に濡れている。
「あの時、拾われたのも助けられたのも、俺の方だ。クロに見つけてもらえてなかったら、おれはあそこで死んでいたんだ」
「死って……」
ロディの言葉にぎょっとする。
しかし、その言葉は冗談でも何でもないらしく、ロディは自分を卑下するような自嘲を浮かべた。
「本当は、俺はあそこで死ぬ気だったんだ。だって、もう生きていてもしょうがないだろう? 仲間には裏切り者扱いで見放されて、第二の故郷としていた街は追い出されて、職もない」
語られる言葉の重さに、おれはただごくりと唾を飲み込むしか出来なかった。
どこか遠くを見つめるように語るロディの表情は、過去を懐かしむというにはあまりにも暗く、陰りのある表情だ。
「……いい加減、もう何も考えたくなかった。ただ、楽になりたかった。そうして、気がついたらあの森に一人でいたんだ」
ロディと始めて出会った時のことを思い出す。
あの時のロディに抱いた印象は……男前だな、とは思ったものの、それ以上に疲れてやつれているな、と思ったのだ。よく寝ていなかったせいか、年齢だって二十代後半に見えた。
それに、思い返せばそもそもあの場所にロディが一人でいたのもおかしな話だ。
だって冒険者のパーティーは三人以上じゃないと組めないんだ。仕事でない以上、モンスターの蔓延る危険な森に行く人間はいない。薬草採取の仕事なら一人でも受けられるけど、その仕事を受けだしたのはおれと出会ってからだ。
「あそこで一人で考えている内に、自分には何もないことにも気がついたよ。元々、農村の馴染み同士でパーティーを組んで、それ以外に親しい友人もいなかった。冒険者という生き方以外も知らなくて、趣味や技術だって何一つ持っていない。このまま消えたとしても……誰も何も悲しまない。それどころか、俺がいなくなったということにも誰も気が付かない。自分は、その程度の人間だったんだと知って、もういいかと思った。もうこれ以上、無駄に生き恥を晒すこともないと」
「そ、そんなことないぞ! ロディはおれにとって世界で一番大事な人なんだからな!」
慌ててロディの言葉を遮ってしまったが、言った後で、そういえばこれはロディの回想なんだったとはたと気がついた。は、恥ずかしい……!
だが、おれがセルフ羞恥プレイを披露したことで、良いこともあった。
ロディは先程までの陰りのある表情だったのだが、おれ言葉に気恥ずかしそうに、そして嬉しそうに微笑んでくれたのだ。
「……うん。あの時も君がそうやって現れてくれたな」
「……おれが……」
「あの時……最初に君に飯を分けたのは、どうせもう俺には必要ないものだったからだ。だからやった」
「おれの姿があまりにもみすぼらしかったからかと思ったよ」
肩をすくめてそう答えると、ロディがようやくおかしそうに笑ってくれたのでホッとする。
「ふふっ、それもあるな。……うん、俺よりもやせっぽっちで薄汚れてるクロが、それでも、誰かを信じて、生きようとしていた。そんな姿を見てたら、どうせ死ぬならこいつの面倒をもう少しぐらいみてやってもいいかと思ったんだ。だから君を連れ帰った」
「……そうだったんだ」
ああ、なるほどな……。
ロディの語った言葉に、おれは今まで抱いていた一つの疑問に答えが与えられたのが分かった。
おれがあの三途の川で手に入れた、この人間に変身するスキル。本来のルールでは、おれが善行を積むことによって功徳ポイントを貯めないと、このスキルは得られないという話だった。
それが、この世界に転生してすぐにスキルが得られたので、おかしいなとは思っていたのだ。
おれがこの人間に変身できるスキルを得られた理由。
つまり、一気に功徳ポイントが稼げたのは、自殺直前の人間を救うことができたのが理由だったのだ。
「……けれど、こうしてクロと一緒にいることが出来て、俺も欲が出来た」
ロディは再び、おれの手をぎゅうと両手で握りしめた。
その掌のぬくもりは温かく、なによりも心地良い。
「今の俺はもう死にたいとは思っていない。でも、クロが一緒じゃなきゃ意味がない、足枷なんかじゃないんだ。……だから、君が許してくれるなら、これからもずっと俺のそばにいて欲しい」
おれは――その言葉に、ロディの手を自分から握り返した。
ロディの暖かな掌の温度に、おれは、この世界で初めての決意をした瞬間を思い出していた。
あの時も、おれはロディと握手をしたんだっけ。
そして……ようやく久しぶりに触れた人の手に、そのかけがえのないぬくもりに、この人の助けになりたいという気持ちが心から湧いたんだ。
「じゃあ、助けたのも助けられたのも、拾ったのも拾われたのも、初めからお互い様だったってわけだ」
「……そういうことになるな」
まるで、おれの言葉を一句たりとも聞き逃さないように息を吐くことすら躊躇っているような、緊張しきった面持ちのロディ。
そんなガチガチのロディに、おれは自然と溢れる笑みを抑えながら、そっと顔を寄せた。
「そう考えるとお似合いかもな、おれ達」
「っ、クロ……!」
蕾が花開くような表情で、顔を一気に輝かせるロディ。
そんな可愛いらしいご主人様に「おれもロディが大好きだよ」と告げて、おれはその唇に噛み付くように口づけたのだった。
おれはロディの腕から下ろしてもらうと、寝室に行って人間の姿に変身する。すると、ロディも一緒に寝室についてきた。
その表情はロットワンダ商会を出てからずっと硬いままだ。
おれが人間の姿になるとロディはおれに服を手渡してきた。この服はロットワンダ商会で借りた服だったのだが、一度袖を通したものだし返さなくてもいいよとリアンさんが言ってくれたので、ありがたく頂いたというわけである。
……リアンさんがこんなにおれとロディによくしてくれるのは、恐らくおれの能力を利用したいんだろうから、本当はあまり借りを作らないほうがいいんだろうけどね!
ただより高いものはないって言葉があるけど、今後はマジで肝に銘じておこう……。
でも、貰ったものはせっかくだし有効活用しないのはもったいない。ということで、先ほどロットワンダ商会で着ていた下着と服を改めて着直すおれ。
ジャケットは……いいか、どうせ家の中だし。しかし、やっぱり着心地がいいなぁこの服。ロディを差し置いて、こんな上等っぽい服を着させてもらうのはちょっぴり罪悪感があるけど……。
「……クロ」
「うん? っ、ぅわっ!?」
シャツの最後のボタンを留め終わった時、タイミングを見計らっていたのかそれとも今まで我慢していたのか、そばにいたロディがおれを正面から抱きしめてきた。
正面から回された腕がおれの背中に回り、ぎゅうぎゅうと締め付けてくる。密着しているロディの顔はおれの肩口にあるので、どんな顔をしているのかは分からない。
「ちょっ……ロディ、苦しい。も、もうちょっと緩めて」
「心配したんだぞ、君が急にいなくなって」
ぎぶぎぶとロディの背中をタップするが、全然腕の力が緩まらない。
でも、それ以上は何も言えなかった。正面からおれを抱きしめるロディが、涙混じりの声だったからだ。
「あー……いや、その、おれもまさかこんなことになるとは思わなくて」
「……君が悪いわけではないのは分かってるんだ。でも……」
「いや、おれが悪かったよ。心配かけてごめんな、ロディ」
涙声のロディの頭に手を伸ばし、よしよしと撫でる。そうしていると、ようやくロディが腕の力を緩めてくれた。
腕の力が緩まった隙に、おれはロディの手を引いて寝室内の唯一のまともな家具であるベッドへ向かい、ロディをそこに座らせた。おれもロディの隣に座る。
あー……いや、それにしてもあの誘拐犯たちの馬車はひどかったな。このベッドの寝心地はあまりよろしくないけど、それでもあの馬車に比べたら雲泥の差だ。もっとこのベッドも大切にしないといけないな。
……あ。でも、ロットワンダ商会に勤めるようになったら、この家も出ていくことになるのか。
この家にもだんだんと愛着が湧いてきたところなのでちょっと寂しいな。この家も男二人が暮らすには手狭だったけど、その分、手を伸ばせばいつでも触れ合える距離は心地よかった。
そんなことを考えていると、ふと、おれの額を隣のロディが指で触れてきた。
ロディの指先が触れるたび、ぴりりとした痛みが奔る。
「どうかした、ロディ?」
「この怪我はあいつらにやられたのか?」
怪我? そんな所に怪我なんかしてたっけ……?
あっ! もしかしてあれか!?
確か、コリン君を脱出させようとした時、最後にコリン君が窓に飛び上がった時に、反動でコリン君の靴先がかすったよな……。その時の怪我か!
「可哀想に……あいつらにやられたのか?」
「えっ、あー、うん。そんなところ」
「瘡蓋になっているな。痛むか?」
「いや、大丈夫だよ。そんなにたいした怪我じゃないしな」
この怪我はコリン君につけられたものと説明したら、涙目のロディはどんな顔に変わるだろうか。
ちょっと見てみたい気もしたが、まぁ、コリン君だってやろうと思ってやったわけでもないから、これはおれだけの秘密にしておこう。
怪我とは言っても、傷口から出た血はもう固まっているので、すぐに治るだろう。しかし、それでもロディはまだ怪我が気になるようで、痛ましげな表情でじっとおれのことを見つめていた。
心なしか、隣に座る距離も近い。近いと言うか、もはや身体がほとんどぴったりと触れ合っている。
ベッドに移動したのは失敗だったかもしれなかった。場所が場所なだけに、やけにロディを意識してしまう。
「あと、その……ロットワンダ商会の人におれのことバレちゃったね」
「ああ、そうだな」
話題を変えたくて、そしてこの場の妙な雰囲気を変えたくて、ひとまず、今後のことについての話に方向を向ける。
「ごめんな、商会では勝手に話を進めちゃって。そもそもコリン君にも勝手にバラしちゃったし」
「いや……今回は状況が状況だったからな。仕方がないさ」
「でも、結構危ない綱渡りだったよな? リアンさんがおれのことを受け入れるか、それともギルドに報告して公のものにするかは確証がなかったしさ」
……正直なところ、もしもリアンさんがおれの存在をつまびらかにする方向性で行こうとしていたら、おれはロディと離れてこの街を出ていくつもりだった。
しかし、おれだって別に好きでロディの傍を離れたいわけではないし、そもそも今のロディの精神状態で、おれと離れても大丈夫なのかなという心配もあるし。
だから今回、リアンさんがおれを利益目的で取り込む方向性に持っていってくれたのは、おれとしてもありがたい話だったわけだ。それでも、一歩間違えばおれもロディも危ない状況になっていただろう。
「いいじゃないか。結果としては俺の問題も君の問題も解決できることになったんだから」
「そうかな……でも、やっぱりおれとしてはロディに申し訳なかったなと思っててさ」
おれがそう言うと、なぜかロディは「ふふふっ」とおかしそうに小さな笑いを零した。くすぐったそうに笑うロディに、おれはびっくりして彼の顔をまじまじと見つめる。
「ロディ?」
「ああ、いやすまない。ただ、いつもと逆だなと思ってな」
「逆って?」
「いつもは君が俺を励ましてくれるだろう? あまり考えすぎるなって言われるのは俺の方なのに、今日は逆だ」
頬をほころばせておかしそうにくすくす笑うロディを見ていたら、おれもなんだか肩の力が抜けて笑えてきた。
「あはは、そうだな。ロディがおれに似てきたのかもな、ペットと飼い主は似るっていうし」
「ふふっ……きっとそうだな」
ターコイズブルーの瞳を細めて笑うロディは、穏やかな表情でそう頷くと、頭を傾けておれの肩に預けてきた。
いつになくおれに触れてくるロディに驚いたものの、おれとしても悪い気分じゃない。
片手をロディの背中に回すと、ロディの片手がおれの太腿の上に乗せられた。
「……何にせよ、このままクロと一緒にいられるようになって良かった」
「うん?」
「今日、冒険者ギルドで君がいなくなっていた時……初めは、君に捨てられたのかと思った」
ロディの言葉に、ちょっとどきりとしてしまう。
おれとしてはロディを捨てるつもりはないし、離れがたい存在だと感じている。
ただ……その、おれはどうしたってロディの足枷にしかなっていなかった。だから、心の問題を除けば、おれと別れた方がロディは上手くやっていけるだろうとは思っていたし、彼の元を離れるための心構えはしていた。
「先日も、俺の不用意な言葉で君を誤解させてしまったみたいだっただろう? その後も、君は言葉にしなかったけれど、すごく思い悩んでいたのは分かった」
だが、そんなおれの思惑も、薄々ロディは察していたらしい。
気まずさに少し身じろぎすると、ロディが苦笑いを零す。
「だから、あの冒険者ギルドでクロがいなくなった時、もしかすると俺は捨てられたのかと思ったんだ。ただ、あまりにも状況が突然過ぎたからさすがにおかしいと思って聞き込みをしたら、事件のことが分かったんだ」
「……その、ロディ。おれは……」
「いいんだ、君をそんな風に思わせたのは俺が原因だ。今回、クロが無事に帰ってきてくれて本当に良かった。けれど、あの一瞬、おれはすごく後悔したんだ。もっと君に言葉を尽くして気持ちを伝えておけば良かったと思ったし、どんなにみっともなくても、君を引き止めておけば良かったと感じた」
いつになく、ロディの言葉には力強さがあった。
こんなロディは出会ってから始めてかもしれない。
困惑するおれの肩口から身体を起こしたロディは、おれの左手をぎゅうっと両手で握りしめてきた。そして、おれの顔を真っ直ぐに見つめてくる。
「クロ、俺は君のことが好きだ。これからもずっと、俺の傍にいて欲しい」
澄んだ湖のようなターコイズブルーの瞳が射抜くように見つめてくる。
おれは、そんなロディの迫力に呑まれたのか、彼の告げた言葉の意味がすぐには飲み込むことができなかった。
「え、えーっと……ご主人様とペットとして、ってことだよな?」
それなら、いたって今まで通りの関係だ。何も変わりはない。
だが、ロディはおれの言葉に首を横に振った。
「違う。……その……恋人として、一人の対等な人間同士として、俺の傍にいてほしいんだ」
自分で言った恋人という単語に自分で恥ずかしくなったのか、言いながらちょっぴり頬を赤らめるロディ。
だが、そんな可愛いロディの表情を見ても、おれはいまだに言葉の意味が理解できていなかった。
「恋人って……おれなんかと? だっておれ、マトモな人間じゃないんだぜ。そんなの、ロディが誰よりもよく知ってるだろ?」
「ああ、クロのことなら俺が一番よく知ってる。だから、君を好きになったんだ」
「……っ」
ロディのストレート剛速球な言葉に、見事にノックダウンしかける。
ま、待て。そりゃ、ロディのことは大事で大好きな存在だけどさ、だからこそ、ここで簡単に頷いちゃ駄目だ。
「あのさ……ロディ。言ってなかったけど、おれが今までロディに対してやってきたことは、ロディに拾われて助けられた恩義を返すためにやったんだよ。だから、おれのやったことは返礼品みたいなもんなんだから、別にロディがおれに恩を感じる必要はないんだぞ?」
「理由は何にせよ、俺が一番最悪な状況の時に傍にいてくれたのは君だろう? 他には誰もいなかった」
ロディがおれの手を握りしめる力が強まる。
できるなら、その手を握り返してロディの言葉に応えたい気持ちがある。正直、喉元まで出かかっているぐらいだ。
でも、それでも応えられない。
「今回の仕事の件は上手くまとまったけどさ、このままロディの傍にいても、ずっとおれが足枷になるのは変わらないだろ?」
「足枷なんて思ったこともない。クロ、俺は……」
「むしろ、おれがこういう状態になったなら、商館に別々に雇ってもらえる方法だってあるだろう?」
幸いというか、リアンさんはおれに利用価値を見出してくれているみたいだし。
「ロディにはこんなモンスターもどきより、もっといいヤツがいるよ。おれで妥協することないって」
努めて、明るい声で軽く笑ってみせた。
そして話はここで終わりとばかりにベッドから立ち上がろうとする。
が、ロディはなおもおれの手を握りしめたままだった。そして、ロディのような逞しい冒険者に掴まれていて、低ランクモンスターのおれが拘束を解けるわけがない。
「……ロディ?」
おれはベッドに座り直して、もう一度ロディの顔を見る。
だが、今度はロディに方が顔を俯かせてしまっていたので、その表情は見れなかった。
「……クロ、そんなことを言わないでくれ。君だけは俺を突き放さないって言ってくれたじゃないか」
それを言ったのはロディであっておれではないが……ここでそれを言うのは野暮だと言うのは猫でも分かる。
「君は、俺に拾われた、助けられたと言うが……それだって逆なんだ」
「逆?」
おれが聞き返すと、ロディがゆっくりと顔を上げた。
先程泣き止んだにも関わらず、そのターコイズブルーの瞳はまたもや涙に濡れている。
「あの時、拾われたのも助けられたのも、俺の方だ。クロに見つけてもらえてなかったら、おれはあそこで死んでいたんだ」
「死って……」
ロディの言葉にぎょっとする。
しかし、その言葉は冗談でも何でもないらしく、ロディは自分を卑下するような自嘲を浮かべた。
「本当は、俺はあそこで死ぬ気だったんだ。だって、もう生きていてもしょうがないだろう? 仲間には裏切り者扱いで見放されて、第二の故郷としていた街は追い出されて、職もない」
語られる言葉の重さに、おれはただごくりと唾を飲み込むしか出来なかった。
どこか遠くを見つめるように語るロディの表情は、過去を懐かしむというにはあまりにも暗く、陰りのある表情だ。
「……いい加減、もう何も考えたくなかった。ただ、楽になりたかった。そうして、気がついたらあの森に一人でいたんだ」
ロディと始めて出会った時のことを思い出す。
あの時のロディに抱いた印象は……男前だな、とは思ったものの、それ以上に疲れてやつれているな、と思ったのだ。よく寝ていなかったせいか、年齢だって二十代後半に見えた。
それに、思い返せばそもそもあの場所にロディが一人でいたのもおかしな話だ。
だって冒険者のパーティーは三人以上じゃないと組めないんだ。仕事でない以上、モンスターの蔓延る危険な森に行く人間はいない。薬草採取の仕事なら一人でも受けられるけど、その仕事を受けだしたのはおれと出会ってからだ。
「あそこで一人で考えている内に、自分には何もないことにも気がついたよ。元々、農村の馴染み同士でパーティーを組んで、それ以外に親しい友人もいなかった。冒険者という生き方以外も知らなくて、趣味や技術だって何一つ持っていない。このまま消えたとしても……誰も何も悲しまない。それどころか、俺がいなくなったということにも誰も気が付かない。自分は、その程度の人間だったんだと知って、もういいかと思った。もうこれ以上、無駄に生き恥を晒すこともないと」
「そ、そんなことないぞ! ロディはおれにとって世界で一番大事な人なんだからな!」
慌ててロディの言葉を遮ってしまったが、言った後で、そういえばこれはロディの回想なんだったとはたと気がついた。は、恥ずかしい……!
だが、おれがセルフ羞恥プレイを披露したことで、良いこともあった。
ロディは先程までの陰りのある表情だったのだが、おれ言葉に気恥ずかしそうに、そして嬉しそうに微笑んでくれたのだ。
「……うん。あの時も君がそうやって現れてくれたな」
「……おれが……」
「あの時……最初に君に飯を分けたのは、どうせもう俺には必要ないものだったからだ。だからやった」
「おれの姿があまりにもみすぼらしかったからかと思ったよ」
肩をすくめてそう答えると、ロディがようやくおかしそうに笑ってくれたのでホッとする。
「ふふっ、それもあるな。……うん、俺よりもやせっぽっちで薄汚れてるクロが、それでも、誰かを信じて、生きようとしていた。そんな姿を見てたら、どうせ死ぬならこいつの面倒をもう少しぐらいみてやってもいいかと思ったんだ。だから君を連れ帰った」
「……そうだったんだ」
ああ、なるほどな……。
ロディの語った言葉に、おれは今まで抱いていた一つの疑問に答えが与えられたのが分かった。
おれがあの三途の川で手に入れた、この人間に変身するスキル。本来のルールでは、おれが善行を積むことによって功徳ポイントを貯めないと、このスキルは得られないという話だった。
それが、この世界に転生してすぐにスキルが得られたので、おかしいなとは思っていたのだ。
おれがこの人間に変身できるスキルを得られた理由。
つまり、一気に功徳ポイントが稼げたのは、自殺直前の人間を救うことができたのが理由だったのだ。
「……けれど、こうしてクロと一緒にいることが出来て、俺も欲が出来た」
ロディは再び、おれの手をぎゅうと両手で握りしめた。
その掌のぬくもりは温かく、なによりも心地良い。
「今の俺はもう死にたいとは思っていない。でも、クロが一緒じゃなきゃ意味がない、足枷なんかじゃないんだ。……だから、君が許してくれるなら、これからもずっと俺のそばにいて欲しい」
おれは――その言葉に、ロディの手を自分から握り返した。
ロディの暖かな掌の温度に、おれは、この世界で初めての決意をした瞬間を思い出していた。
あの時も、おれはロディと握手をしたんだっけ。
そして……ようやく久しぶりに触れた人の手に、そのかけがえのないぬくもりに、この人の助けになりたいという気持ちが心から湧いたんだ。
「じゃあ、助けたのも助けられたのも、拾ったのも拾われたのも、初めからお互い様だったってわけだ」
「……そういうことになるな」
まるで、おれの言葉を一句たりとも聞き逃さないように息を吐くことすら躊躇っているような、緊張しきった面持ちのロディ。
そんなガチガチのロディに、おれは自然と溢れる笑みを抑えながら、そっと顔を寄せた。
「そう考えるとお似合いかもな、おれ達」
「っ、クロ……!」
蕾が花開くような表情で、顔を一気に輝かせるロディ。
そんな可愛いらしいご主人様に「おれもロディが大好きだよ」と告げて、おれはその唇に噛み付くように口づけたのだった。
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