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不穏
しおりを挟む渋々の体で降りた魔王ルチアは「何用ですか」と当たり障りなく聞いた。
好感度は花三つに増えており光輝いていた、うんざりした彼女は嫌そうな顔をする。逆に王子はとても嬉しそうに高揚していた。
「先日はありがとう、その土壇場でろくに礼を言えなかったから」
「いいえ、お気になさらず」
彼女は素早く後ろに下がって「では、これで」と去ろうとした、関わり合いになりたくないのだ。
「あ、待ってくれ!」
「ちっ」
盛大な舌打ちをしたルチアだったが、それに気が付かない王子は彼女の元へ歩み寄った。淡い恋心を抱く花三つの王子は頬を染めている。
「うげぇ~マジかよコイツ……」
「え?何かいったかい?」
「別に、それより用件はなんでしょうか」
***
「はぁ?いまなんと言いました?」
「だから魔王が復活したと言った、これは間違いない情報だよ」
「ええぇ……」
魔王はルチアだ、それなのに余所で魔王が復活したと言われた。混乱する彼女はどこから突っ込めば良いのかと悩む。
「それで復活した魔王はいまどこに?」一応は聞いておこうとルチアは思った、嘘か真かは別にして情報は欲しい。
「うん、それなんだがどうやら王都に潜伏しているらしいのだ」
「はぁ……潜伏ねぇ」
魔王がいたとしてそんな地味に復活するものなのかと考えたが、己自身が学園に潜伏していることを思い出し「なるほど」と納得した。
彼が言うには占部の巫女がそう宣言したらしい、彼女はそういえばそんなキャラがいたなぁと思いだす。
「その魔王というのは具体的に目撃されたりしているのですか?」
「いいや、いまはなんとも……だが、復活したことは揺るぎがないのだ」
そして、一呼吸おいてから彼は言った。
「どうか共に戦ってくれないだろうか、聖女ルチアとして」
「な、なんですって?」
魔王が魔王を討伐する、可笑しなことになった。
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