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失踪
しおりを挟む「え?彼女が消えた?それはどういう事でしょう、物理的に消えたので?」
呑気に寮内でランチを摂っていたルチアは呼び出しを受けたところだ。今日は休日だ、平穏を邪魔された彼女は機嫌が悪い。呼び出したのはバルトラン・オーバンである。
「物理的って……怖い事を言うな、まぁ良い。脱獄したと言えば分かり易いか。手引きしたのはパワドと思われる、覆面をした剣士が助けにきたらしい。だが、その剣士の使う剣にロックメント家の紋章がついていたと騎士が証言した。彼の行方は忽然と屋敷から消えたらしい」
「ああ、なるほどです?ふーん。それでどうして私に言うのでしょう」
彼女は嫌な予感に襲われてヒクヒクと歪んだ笑みを浮かべた。
「え、それはキミも当事者のようなものじゃないか。瘴気溜まりを解決したんだし」
「ええー……それだけでしょう?正直面倒臭いんですが」
休日を余計なことで邪魔をされたルチアは不機嫌さを剥き出しにしてソッポを向く。マリエラ・アマールがどうなろうが知った事ではない。
恋のクッキーを食べてしまったパワドはその影響を受けたようだ。花は三つほど咲いていたと認識する。
「キミは聖女としての自覚が無さ過ぎるぞ!さぁ、私と一緒に」
「嫌ですよ、聖女だなんてそんなもの自覚なんてありません。どうなろうが知った事じゃない」
「なんだと!?」
愕然とするバルトランは立ち上がってワナワナとしている、寮生用のカフェ内で騒ぎたてるものだから寮長が「えふん」と咳払いをした。王子は部外者なので立場が悪い。
どうしてもと言うので通したのだが、態度が悪ければ牽制されて当たり前だ。
「とにかくですね、たかが少女が一人脱獄したからなんだと言うんです。それは騎士達の落ち度で仕事のはずでしょう。どうしてその尻拭いを私が請け負うんですか?」
「い、いやだから……キミは聖女なんだから」
「違います!」
きっぱりすっぱり言ったルチアはカフェから飛び出してランチの続きをしようと食堂へ向かう。それを追おうとした王子は寮長に捕まり懇々と説教を食らっていた。
「はぁ、良い気味。まったくもう!モグモグ」
ランチを続行したルチアは苛立ち紛れに食欲を発揮して二人分ほど平らげた。ビュッフェ式だったことが災いしたようだ。
「さて、腹も満たされたことだし、昼寝でもするかぁ」
「そんな呑気なことで宜しいのですか?」
使い魔として侍っていたガスパルは苦言を呈するのだが「喧しい」と一蹴される。
「事が起きたら対処するさ、いまは眠い」
魔王ルチアは人間界に影響を与えるのは良くないことだと思い始めていた。彼女が動けば事は簡単だが、それは果たしてこの世界に良い影響を及ぼすのかと。
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