完結 愛人の子 それぞれの矜持

音爽(ネソウ)

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バイヤール伯爵邸には離れに棲む愛人の親子がいた、名はアリーヌとその娘はロザリーという。親子は慎ましく生きて贅沢などしたことはない。分を弁えて生活していた。
バイヤール卿はアリーヌを愛して足繁く通っていたが、子には関心がない。そんな卿に「どうかあの子にも慈悲を」と懇願する。
分かったと言って金銭を渡すがそれだけだ、ロザリーは父親の愛情を知らぬまま十三歳になっていた。なんと不幸なことか。

本邸にいる正妻マチルドはそんなアリーヌ親子に嫉妬していつも腹を立てていた。
貴族間の良くある政略結婚の犠牲になった彼女であったが、バイヤール卿を愛していた。それがこの結婚の事情だ。
正妻との間にも子を成し責務は果たしたと謂わんばかりにバイヤール卿は本邸に寄り付かなくなった。が始まった。


「お母様、ボクの御父様はいついらしてくれるの?約束したのに」
「まぁ、クレマン……そうね、今日中にはなんとか」
辛そうな物言いをする母にクレマンは「またか」と視線を落とす、なにもかもが愛人の親子が邪魔をすると苛立った。この日は彼の誕生日だった。

クレマンは離れに入り浸る父をコッソリ覗きに行った。
すると恐ろしく美しいアリーヌを目にして驚愕する、淡い金髪に赤茶の瞳はとても美しく彼を魅了した。彼とて十四歳だ年頃の男子だ、とても刺激的に映る。同時に苛立ちを覚えた。
「あの女が母上を不幸にしている元凶か……なんて腹立たしい」

歯噛みして睨みつけるが、愛人宅は出入りを厳禁にされていた。生活用品などの業者が出入りしているがそれだけだ。クレマンはどうにか入れないものかと観察したが一向に隙がない。
「そこで何をしている!クレマン」
「あ……えと、その」
言い訳を考えている最中にも彼の父親は近づいてきて情け容赦なく顔を殴られた。血の味がしてきて情けなくなる。

「良いかクレマン、私の事情に口を挟むな!これは契約なのだ」
「け、契約?」
「そうだ、お前の母との……バイヤール伯爵家とオドラン伯爵家のな!貴族間では婚姻は契約でなりったっている。我がバイヤール家は貴様らの家に融資しているのだ。見返りはその血だけだ」
「……血、そうですか。でも」
話の途中にも拘わらず、一方的に話は終わらせられた。締め出された重厚な扉は開くことはない。

「くそ……なんてことだ。母上はボクを生んだ瞬間から蔑ろにされてきたのだな」
少年クレマンは大人の黒い事情を思い知らされて愕然とした、父親はあくまでオドラン家の者としてしか自身を見ていないことに怒りが湧いた。

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