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「ごきげんよう、バイヤール様。私のことを許して欲しいの」
「え?」
アリソン嬢は悲し気に瞳を潤ませてそう謝罪する、更には体を震えさせてオドオドとしていた。急激な柔軟さを見せる令嬢に対してロザリーは返って警戒する。騙されてはいけないと。
警鐘をならす己の心臓がとても煩い、誰もいないタイミングを見計らい近づいてきた女狐にジリジリと後退する。
「ねぇなんとかおっしゃって?私このままでは良心の呵責に押しつぶされそうなの」
「や……止めて、私は仲良くなんてしたくないです」
消え入りそうなか細い声で反発するロザリーに焦れたのか、アリソンは益々と彼女の方へ詰め寄る。どう見ても追い詰められているのはロザリーのほうだ。
「ほうら仲良くしましょう、私に敵意はないのよ?そうだわ、乾杯しましょう。二人の仲が潤滑にいくように」
「ひっ!」
給仕係を呼びシャンペングラスを二つ手に取ったアリソンは楽し気にそれを差し出してきた。受け取ることを拒絶した彼女はフルフルと顔を左右に振る。
「まあ、どうしてわかってくださらないの?私は悲しいわ」
「……なにを言われても私は変わらないわ」
対峙したまま睨み合う格好になった二人に周囲も異変に気が付く、嫌がるロザリーを気遣う夫人が「おやめなさい」と窘めてくれた。なんと彼女はオリオール公爵夫人だったのだ。
「そんなに威圧的な謝罪は見たことが無いわ。なにを企んでいるの?」
「え、いやですわ。そんなはしたない事をどうして私が?ホホホ……ごめんなさいねバイヤール様、出直すわ」
「……」
ワインをすれ違う度に浴びせていたことを知る夫人は「キッ」と睨みつけて「食えない人」と呟いた。彼女はそそくさと逃げて行き人垣の奥へと去っていった。
「ありがとうございます、オリオール様。助かりました」
「ふふ、これくらい良くってよ、でも貴女ももっと堂々としていないと舐められるわよ?」
「は、はい、そうですね。私は気が弱いところがあるので」
またいつか来るかもしれないと警戒する彼女は、安堵の溜息とともにもっと強くなければと猛省するのだった。
「え!アリソンに絡まれていただって!?平気だったのかい、ワインの染みは、足掛けは?踏みつけられなかった?」
オロオロするクレマンは心配して矢継ぎ早に質問してきた。それを擽具ったいと思うロザリーは苦笑する。
「平気でしたわ、少々しつこかったですけど、オリオール夫人が助けてくださったの」
「そうか、良かった!はぁ……済まない見知った者がいたからつい長話をしてしまったよ」
「お兄様、私はお子様ではないのよ?」
再び苦笑すると彼女は喉が酷く乾いていたことに気が付く。
「乾杯しましょう、今後のために私は強くならなければ」
「そうか、わかったよ。強くしたたかに成長してくれよ、社交界は魑魅魍魎が跋扈する世界だから」
「ええ、そうね!乾杯!」
「乾杯!」
その後に合流したセレスタンも加わり談笑が始まった。
一連の話を聞いた彼は酷く驚いて「護衛を付けるべきだ」と深刻そうに呟く。
「お気遣いありがとうございます、でもそこまでして下さらなくても」
「何を言うんだい、大切なキミを護れなくてどうする!あぁ、私が多忙でなかったら逐一ついて回るのに」
「まぁ、そんな」
大袈裟だと断ろうとするロザリーにセレスタンは言う。
「よからぬ企てをするものは後を絶たないんだ、事実、純潔を奪うために狙う輩は多いんだ。裏手にある休憩所を悪用するものもいるからね」
「ええ!それは怖いわ……」
「え?」
アリソン嬢は悲し気に瞳を潤ませてそう謝罪する、更には体を震えさせてオドオドとしていた。急激な柔軟さを見せる令嬢に対してロザリーは返って警戒する。騙されてはいけないと。
警鐘をならす己の心臓がとても煩い、誰もいないタイミングを見計らい近づいてきた女狐にジリジリと後退する。
「ねぇなんとかおっしゃって?私このままでは良心の呵責に押しつぶされそうなの」
「や……止めて、私は仲良くなんてしたくないです」
消え入りそうなか細い声で反発するロザリーに焦れたのか、アリソンは益々と彼女の方へ詰め寄る。どう見ても追い詰められているのはロザリーのほうだ。
「ほうら仲良くしましょう、私に敵意はないのよ?そうだわ、乾杯しましょう。二人の仲が潤滑にいくように」
「ひっ!」
給仕係を呼びシャンペングラスを二つ手に取ったアリソンは楽し気にそれを差し出してきた。受け取ることを拒絶した彼女はフルフルと顔を左右に振る。
「まあ、どうしてわかってくださらないの?私は悲しいわ」
「……なにを言われても私は変わらないわ」
対峙したまま睨み合う格好になった二人に周囲も異変に気が付く、嫌がるロザリーを気遣う夫人が「おやめなさい」と窘めてくれた。なんと彼女はオリオール公爵夫人だったのだ。
「そんなに威圧的な謝罪は見たことが無いわ。なにを企んでいるの?」
「え、いやですわ。そんなはしたない事をどうして私が?ホホホ……ごめんなさいねバイヤール様、出直すわ」
「……」
ワインをすれ違う度に浴びせていたことを知る夫人は「キッ」と睨みつけて「食えない人」と呟いた。彼女はそそくさと逃げて行き人垣の奥へと去っていった。
「ありがとうございます、オリオール様。助かりました」
「ふふ、これくらい良くってよ、でも貴女ももっと堂々としていないと舐められるわよ?」
「は、はい、そうですね。私は気が弱いところがあるので」
またいつか来るかもしれないと警戒する彼女は、安堵の溜息とともにもっと強くなければと猛省するのだった。
「え!アリソンに絡まれていただって!?平気だったのかい、ワインの染みは、足掛けは?踏みつけられなかった?」
オロオロするクレマンは心配して矢継ぎ早に質問してきた。それを擽具ったいと思うロザリーは苦笑する。
「平気でしたわ、少々しつこかったですけど、オリオール夫人が助けてくださったの」
「そうか、良かった!はぁ……済まない見知った者がいたからつい長話をしてしまったよ」
「お兄様、私はお子様ではないのよ?」
再び苦笑すると彼女は喉が酷く乾いていたことに気が付く。
「乾杯しましょう、今後のために私は強くならなければ」
「そうか、わかったよ。強くしたたかに成長してくれよ、社交界は魑魅魍魎が跋扈する世界だから」
「ええ、そうね!乾杯!」
「乾杯!」
その後に合流したセレスタンも加わり談笑が始まった。
一連の話を聞いた彼は酷く驚いて「護衛を付けるべきだ」と深刻そうに呟く。
「お気遣いありがとうございます、でもそこまでして下さらなくても」
「何を言うんだい、大切なキミを護れなくてどうする!あぁ、私が多忙でなかったら逐一ついて回るのに」
「まぁ、そんな」
大袈裟だと断ろうとするロザリーにセレスタンは言う。
「よからぬ企てをするものは後を絶たないんだ、事実、純潔を奪うために狙う輩は多いんだ。裏手にある休憩所を悪用するものもいるからね」
「ええ!それは怖いわ……」
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