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そこは厳かな雰囲気のチャペルで整然と客達が席に並ぶ、幼馴染の結婚だというのに知り合いがひとりも見当たらないことに疑問を抱く。どうしてなのかキョロキョロと辺りを見回すが答えはそこにはない。
「急なことだったものね、きっと彼女のいつもの我儘で来られないのかも」
マルガネット・シュナイザ伯爵令嬢はふうと溜息を漏らし、僅か一月前にきた招待状を開いた。そして怪訝な顔をする、何故か新郎の名前が黒く塗りつぶされているからだ。
『サプライズだから当日まで秘密よ』
いつもの悪戯な笑みを浮かべて一月前に彼女テルミナ・バルドラッドはそう言った。度肝を抜く悪戯を仕掛けてはマルガネットを翻弄してきた彼女の事を見て「仕方ないわね」と肩を竦め招待状を受け取った。
『そういえばいつだったかしら……彼女が柵に足を取られたと泣いた時があったわね。結局は嘘だったのだけど』
抜けないと藻掻いて泣いているテルミナを見て大慌てで駆け寄ったマルガネットだったが『嘘よ~アハハッ!良い顔』と言って笑い物にしたのだ。その時マルガネットは慌てた拍子に転び、着ていたドレスが柵に引っ掛かり無惨にも引き裂かれた。
今度はマルガネットが泣く番である、しかし、テルミナは『彼女が勝手に柵に引っ掛けた』と大人達に伝えたのである。これには吃驚した彼女は信じられない嘘つきだと涙が引っ込んだ。それは10歳の頃の悪戯だ。
『そう、彼女はそんな風に私を揶揄ってきたのだわ。結婚して大人しくなれば良いけれど』
虚しい気持ちで天井を見上げるマルガネットは周囲がザワつき始めた事に気が付いた。彼女は新郎が到着したのだと理解してそちらを向く、しかしながら上背がある客によって阻まれ顔は拝めなかった。だが、その背中は見覚えがあった。
「あっ、あの人は」そう言おうとした瞬間割れんばかりの拍手が轟き遮られる。
厳かな雰囲気の中で少々不躾じゃないかと彼女は思う、若干雰囲気をぶち壊し不似合いだと彼女は眉間に皺を寄せたのだ。
だが今はそれどころではない。
「ブレンドン!」
彼女は声高に新郎を呼び止めた、招待状を片手に信じられないと震えるマルガネットである。
「な、なんでキミがここにいる!?お、おい誰か……」
狼狽える新郎ブレンドンはドシンと尻もちを着いてアワアワしている、違う意味で又もザワ着いた会場の客達は情けない花婿の姿を凝視する。
「どうしてですって?聞きたいのはこちらだわ!貴方は私の夫よね、どうして挙式を上げているのかしら?」
「急なことだったものね、きっと彼女のいつもの我儘で来られないのかも」
マルガネット・シュナイザ伯爵令嬢はふうと溜息を漏らし、僅か一月前にきた招待状を開いた。そして怪訝な顔をする、何故か新郎の名前が黒く塗りつぶされているからだ。
『サプライズだから当日まで秘密よ』
いつもの悪戯な笑みを浮かべて一月前に彼女テルミナ・バルドラッドはそう言った。度肝を抜く悪戯を仕掛けてはマルガネットを翻弄してきた彼女の事を見て「仕方ないわね」と肩を竦め招待状を受け取った。
『そういえばいつだったかしら……彼女が柵に足を取られたと泣いた時があったわね。結局は嘘だったのだけど』
抜けないと藻掻いて泣いているテルミナを見て大慌てで駆け寄ったマルガネットだったが『嘘よ~アハハッ!良い顔』と言って笑い物にしたのだ。その時マルガネットは慌てた拍子に転び、着ていたドレスが柵に引っ掛かり無惨にも引き裂かれた。
今度はマルガネットが泣く番である、しかし、テルミナは『彼女が勝手に柵に引っ掛けた』と大人達に伝えたのである。これには吃驚した彼女は信じられない嘘つきだと涙が引っ込んだ。それは10歳の頃の悪戯だ。
『そう、彼女はそんな風に私を揶揄ってきたのだわ。結婚して大人しくなれば良いけれど』
虚しい気持ちで天井を見上げるマルガネットは周囲がザワつき始めた事に気が付いた。彼女は新郎が到着したのだと理解してそちらを向く、しかしながら上背がある客によって阻まれ顔は拝めなかった。だが、その背中は見覚えがあった。
「あっ、あの人は」そう言おうとした瞬間割れんばかりの拍手が轟き遮られる。
厳かな雰囲気の中で少々不躾じゃないかと彼女は思う、若干雰囲気をぶち壊し不似合いだと彼女は眉間に皺を寄せたのだ。
だが今はそれどころではない。
「ブレンドン!」
彼女は声高に新郎を呼び止めた、招待状を片手に信じられないと震えるマルガネットである。
「な、なんでキミがここにいる!?お、おい誰か……」
狼狽える新郎ブレンドンはドシンと尻もちを着いてアワアワしている、違う意味で又もザワ着いた会場の客達は情けない花婿の姿を凝視する。
「どうしてですって?聞きたいのはこちらだわ!貴方は私の夫よね、どうして挙式を上げているのかしら?」
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