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その後
しおりを挟む開店休業状態に陥ったザカリード商店はみるみるうちに衰退して行き、一か月と持たずに閉業に追い込まれた。それはそうだろうただの麦の固まりが売れるはずがない。
窮地に追い込まれたボニートはなんとかハンナレッタを連れ戻そうと躍起になったが時すでに遅しで、かつてあったハンナレッタ駄菓子店は引っ越した後だった。
「どうして!?どうしてこうなったのだ……全ては左団扇で上手く行っていたのに」
彼は青褪めた面持ちで弟が放った言葉を思い出す。
『そのうち酷い目に合うからね』
***
「兄さんの店は潰れたよ、まぁ領地があるから何とかするだろう。とても小さいけれどね」
「まあ、そうなんですか?お気の毒に」
ハンナレッタは苦笑してそう答える他ない、丸投げして無理矢理働かされたようなものだった。何れはこうなっていただろうと想像に難くない。
彼女はかつていた街を離れて新しく開店する駄菓子店の準備に追われて忙しくしている。下女だったスーヤとラベンも一緒に奮闘している。
「火力がいまいちですねぇ、もっと抑えめにしないと」
「しないとねぇ」
そんな彼女らを見つめて微笑むハンナレッタは「頼もしいことだわ」と呟くのだ。
「騎士団から近いから頻繁に通わせて貰うよ、皆はタコ焼きと今川焼に夢中なんだ」とアドリアノが言う。
「ふふ、嬉しいです。そうそう新作のお好み焼きを食べていきませんか?」
「ああ、是非食べさせてくれ!」
そうして談笑しながら豚玉を焼く彼女は「なんて幸せなんだろう」と言う。
今はまだ恋心は芽生えていない彼女と、ザカリード家を出たばかりのアドリアノはいつ告白しようか迷っている。
「恋心駄々漏れなのにねぇ、もっと強くでるべき!」
「出るべき!」
スーヤとラベンは一向に進展しない二人の恋のキューピッドになってあげようと相談している。
「いらっしゃいませ!ハンナレッタ駄菓子店にようこそ!」
完
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