完結 転生したら戦略結婚に巻き込まれた

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
5 / 6

約束の二年

しおりを挟む



今川焼やカルメ焼きで切り盛りするハンナレッタは二年後の今日、いろいろな感情を綯交ぜにする。珍しいもの好きな貴族達は挙って買いに来て軌道に乗った。

そして、この頃合いでのところで追い出すことにしたボニート・ザカリード伯爵は、不敵な笑みを浮かべて婚姻届けを破り捨てさっさと出て行けと言った。

彼は姑息な事に婚姻届けを出していなかったのだ。
それを知ったハンナレッタは少し悔しいと思いつつも「これで良かったのよ」と安堵の溜息を吐く。

そして、内情を聞いたスーヤとラベンは立腹して暇を貰うことにした。
「ああ、下女など要らん!さっさと出て行け!」
「……お世話にでした」
「でした!」



こうしてハンナレッタと下女を追い出したボニートは久しく見ていなかった店を見に行くことにした。店は小奇麗になっていて、不衛生だった場所とは思えない。

「はっはっは!思った通りだぞ、よしよし店内はどうか」
彼が入ると例の従業員たちが出迎えた、二人とも働いたこともないのに「お待ちしてました」と言う。

「うむ、繁盛していると聞いているぞ。その調子で頼むぞ!」
「はい、お任せを!」
「もちろんです」



ところが作ったこともない品を前に頭を捻る従業員たちだ。今川焼の再現を試みる。
「たぶんこんな感じよね?小麦と卵は入れてたはず」
「ああ、そうだよ。そんな感じて型に流すんだ」

四苦八苦して出来上がったものは斑焼けで粉っぽい、そして味がまったくしなかった。
「ええ、こんなものがあんなに売れていたの?」
「世間は味覚音痴なのか?」

とはいえ、注文が入れば作るしかない。見た目はそれっぽいが只の小麦の固まりだ、さっそくとクレームが付いた。
「なんだいこれは!クリームが入ってないし生地も不味い!金なんて払わないぞ」
「そ、そんな!一生懸命作ったのに」

一方でカルメ焼きのほうは更に悲惨で、真っ黒に焦げた砂糖を客に提供していた。
「ちょっと!どこがカルメ焼きなのよ!巫山戯ないでよ!」
「す、すいません!お、可笑しいな……ハハ」

砂糖を煮溶かしているのをチラ見した程度だったので、重曹が肝だという事がわからないのだ。怒ってしまった客達は「あの店は駄目だ」と一気に遠のいてしまった。

それから1週間後、売り上げにワクワクしてボニート・ザカリード伯爵はやってきた。
「どうだい売り上げの方は!以前よりも落ちてないだろうな」
「……それが」

帳簿を見たボニートは唖然とする、出費以外何も書かれていないからだ。
「お前達!これはどういうことだ?まさかネコババしたわけじゃあるまいな!」
「滅相もない……売り上げが無かっただけなのです」
「んなぁ!?売り上げがゼロだと言うのか!ならばこの出費はなんなのだ!小麦と卵を仕入れたのだろうが」

その詰問に渋々とレシピがないから作れないと彼らは言う。
「どういうことだ!お前達は手伝っていたはずだろう!?」
「そ、それは、その……」

従業員たちは裏でサボっていたなど言えやしない。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
夫と子供たちに、選ばれなかったイネス。 すべてを愛人に奪われ、彼女は限界を迎え、屋敷を去る。 だが、その先に待っていたのは、救いではなかった。 イネスを襲った、取り返しのつかない出来事。 変わり果てた現実を前に、 夫はようやく、自分が何を失ったのかを思い知る。 深い後悔と悲しみに苛まれながら、 失ったイネスの心を取り戻そうとする夫。 しかし、彼女の心はすでに、外の世界へと向かっていた。 贖罪を背負いながらもイネスを求め続ける夫。 そして、母の心を知っていく子供たち。 イネスが求める愛とは、 そして、幸せとは――。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。

灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。 曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。 婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。 前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

優しく微笑んでくれる婚約者を手放した後悔

しゃーりん
恋愛
エルネストは12歳の時、2歳年下のオリビアと婚約した。 彼女は大人しく、エルネストの話をニコニコと聞いて相槌をうってくれる優しい子だった。 そんな彼女との穏やかな時間が好きだった。 なのに、学園に入ってからの俺は周りに影響されてしまったり、令嬢と親しくなってしまった。 その令嬢と結婚するためにオリビアとの婚約を解消してしまったことを後悔する男のお話です。

愛を騙るな

篠月珪霞
恋愛
「王妃よ、そなた一体何が不満だというのだ」 「………」 「贅を尽くした食事、ドレス、宝石、アクセサリー、部屋の調度も最高品質のもの。王妃という地位も用意した。およそ世の女性が望むものすべてを手に入れているというのに、何が不満だというのだ!」 王妃は表情を変えない。何を言っても宥めてもすかしても脅しても変わらない王妃に、苛立った王は声を荒げる。 「何とか言わぬか! 不敬だぞ!」 「……でしたら、牢に入れるなり、処罰するなりお好きに」 「い、いや、それはできぬ」 「何故? 陛下の望むままなさればよろしい」 「余は、そなたを愛しているのだ。愛するものにそのような仕打ち、到底考えられぬ」 途端、王妃の嘲る笑い声が響く。 「畜生にも劣る陛下が、愛を騙るなどおこがましいですわね」

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...