公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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反抗期篇

薬味探しと実食(マグロ丼?)

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逸る気持ちを抑え市場を目指す。
漁港街は交易の要なので活気があり食材は豊富なはずだ。

「刺身と言えば薬味は欠かせない!絶対探すぞ」
野菜売りを見つけては溜息を吐く、簡単にはみつからない。
「西洋ハーブばっかりだ・・・」

ぶっといネギは一応あった、香はあまりよろしくない。
西洋わさびはまぁ我慢しようか。実は練ワサビのほとんどは西洋ワサビらしいよ……。

市場の端でスパイスと乾物の店を見つけた、期待せずに入ってみた。
とうぜんだが乾燥させたハーブが多い、ゴマの大袋があったので確保する。
「おばさん、東国のスパイスはありますか?」
「おう?ぼっちゃん珍しいものを欲しがるね」

店主が壁棚を探す、小さめの引き出しが何段も重なり、まるで薬局のようだ。
「最近仕入れたのはこれくらいだね」
緑色の粉、折りたたまれた何か、黒みがかった粒。


「山葵の粉!昆布、山椒だ!」つい興奮して叫ぶ俺に店主が驚く。
「へえ?私より詳しそうじゃないか。こんぶってのも知ってるんだね」
感心したおばさんは木切れのような物と黒い紙を追加して並べた。



「板海苔と鰹節!」
「あらまあ、これも知ってるんだね?」
全部買い占める俺に「オマケだよ、今後ご贔屓にしとくれ」と余りモノだという袋をくれた。
欲しい物リストを店主にたくし、また来ると約束した。

「遠出したかいがあったな、西洋わさびはステーキで消費しよう」
ホクホク顔で再び辻馬車に揺れ家路を行く。


漬けにしようか、鉄火巻にしようか、嬉しい悩みを抱えニヤケが止まらなかった。



***

――公爵家厨房



火はほぼ使わないので俎板だけ拝借して休憩スペースで仕込むことにした。
珍妙な食材をずらり並べれば厨房内は再びはざわつく。
最初に薬味の準備にかかる、卓上コンロで板海苔を炙りハサミでジョキジョキ細切りに。


料理長が板海苔に食いつく、夕飯の仕込みはしないの?
「それ、食い物だったんですね・・・」
「うん、乾燥させた海藻みたいなもん」


出入りの業者が持ってきたことがあるが、使い道がわからず仕入れなかったそうだ。
「食べる?」一切れを差し出すが料理長は頭を振る。
俺はパリパリとそれを噛む、磯の風味が鼻に抜けた。


うぅ、腹減る匂いだなー。
おにぎり食べたい。

カサカサと袋に詰める、それからゴマをホイルに包みサラサラと振り軽く炙る。
それはパチパチと香ばしく弾けていく。
「・・・料理長は暇?ネギを洗ってくれる?できれば細かく刻んでおいて」
「は、はい」

料理長はそそくさと洗い場へかけて行った、鍋を抱えた料理人とぶつかり大騒ぎしてる。


「なにやってんだ・・・」
じっとり観察されて肩が凝った、ほんとやめて。
つぎに半身の角笛魚を捌く、テーブルいっぱいにドーンと置けばなかなかの迫力。
背と尻尾のトゲと皮を剥ぐ、これが思いのほか手間だった。


狩り用の大包丁でガリガリと背骨に沿って身を剥がすのがこれまた難しい。
それから血合いとカマ、と切り分けた。

大ぶりの四角い塊が5柵ほど取れた、骨に残る身をスプーンでホジホジ。
中落ちをちょっとつまむ、んまーい!


「ほんとマグロっぽい。色味はビン長に似てるかな」
刺身包丁なんてないから、小型ナイフで切った身はいまいち綺麗じゃないけどなんとかなった。


魔法バッグに保存しといたご飯を出し刻みのりとゴマを散らす。
「やっぱ丼が欲しいな」平皿を恨みがましく見つつ盛っていく。
切り身を放射状に乗せ真ん中を薔薇盛してみた、大葉がないのが寂しい。


小皿に醤油、そしてショットグラスで粉山葵を練る。
練ったらしばし逆さにして辛味が増すのを待った。


準備万端、腹の虫がグギューっと強請る。

「レオニード様、ネギはこれで良いでしょうか?」
「え?う、うん。ありがとう」
山盛のネギに驚きつつ受け取る、量を教えてなかった・・・・。

切り身の上にネギを少量散らした、山葵も良い頃合いだろう。
先ずは刺身として・・・。
「いただきます」切り身に山葵をちょいのせて醤油をつける。

もしゃもしゃ・・・うん、程よい油と旨味が舌に広がる、山葵の刺激と相まって口中が幸せだ。
「あああ!美味いー!日本人はやっぱこれ!」
すぐさま溶いた山葵醤油を鉄火丼もどきに掛けて掻っ込んだ。


・・・

・・

んまー・・・・あああ生きてて良かった!
半分ほど食べ少量の林檎ビネガーを垂らしてみた、これも美味いフルーツ臭さはあまりなかったのが幸い。
だが次はちゃんと酢飯作って食べよう。


完食してから気づいたが生魚を食べてるの引いたかな?
料理長に聞けば
「米飯はともかく、カルパッチョを食べますから特に」
「そっかあ、忘れてた。サーモンマリネも食べるもんね」


我に返り見渡せば、仕込みを素早く終えたらしい厨房の面々が俺の魚を狙っていた。
1柵くらいなら分けてやらなくもない。


足りないと思うけど、知らん。
「ごちそうさまでした」
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