公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
133 / 172
フェインゼロス帝国篇

ある穏やかな日

しおりを挟む
大金を得たレオニードだったが、一部を屋敷の修繕費に当てた以外は温存しておくことにした。
「また冬将軍から逃避行は面倒だからな」


広すぎて暖が取りにくい居間を年内に改修したいと計画を立てた。
工務店へ見積依頼したところ、工期は2カ月で約金貨70枚と伝票が届く。

「意外と早く出来るんだな、工費はそれなりかぁ……」
薄汚れた居間の天井を見上げ仕方ないと覚悟する。


仲間を凍え死させるくらいなら安いものだとレオは思い、契約書にサインをした。
「よろしく頼むよ」
「毎度!さっそく来週から着工しますね、調度品はこちらで預かりますか?」

「いいや、空き部屋があるからそこに移動するよ。腕っぷしに自信ありのがいるし」

レオはチラリとバリラの方を見た、彼女は鼻歌を奏でながら相棒の剣を磨いている。
スタンピードで刃毀れした剣が先日鍛冶屋から戻って来たばかりなのだ。



「へへ、やっぱ私の相棒はお前だぜ!フォウルージュ!」
刃先を乱反射させてバリラはうっとりと剣を眺めていた。光の当たり加減で赤く光る剣は彼女の自慢だ。

工務店の営業マンが少し顔色を悪くして「で、では来週!」と言って帰っていった。
「やれやれ」


***


久しぶりに何もない穏やかな日。

ギルドの依頼も受けず、安息することにした一行は各々好き勝手に過ごした。
気を遣わずのんびり過ごすには良い日だった。



レオも知らずに溜まった疲労が噴き出たのか、碌に食事も摂らず惰眠を貪っている。
普段は食事の支度は暗黙の了解で彼が引き受けていたが、この日ばかりは余った食材でサンドイッチにしたり、外で済ませていた。


バリラとティリルは夕飯の買い出しついでに”木こりの家”で昼食を摂ることにした。
「久しぶり!」「お邪魔しますわ」


彼女らが気さくに声をかけて入店すれば、大熊コックグーズリーが厨房から出てきた。
「おおう!嬢ちゃん方!ひさしいじゃねーか、ゆっくりしてけよ!今日のデザートはイチゴゼリーだぞ」

「わぁ美味しそう!ぜったい頼もう」
「ふふ、そうですわね。じゃぁパンは控えめにしましょう」


ハンバーグセットと海老グラタンを注文して二人は他愛ない話をして談笑した。
去年の今頃はダンジョンに潜っていたねと、レオに出会った頃を懐かしそうに話す。


「ふりかえれば運命のようでしたわね、飢餓寸前の私達とレオの出会い」
「そっかー?大袈裟だよ。モグモグ……たしかに助けられたけど」


レモネードを一気飲みしてバリラが「ふぅ」と満足そうに息を吐いた。
「なんかもの足りないな。でもデザートがあるし……と、花摘みしてくる!」
「まぁ、仕方ない子ね。クスクス」


落ち着きのないバリラを見送ってティルは残りのグラタンを食べる。
プリプリとした海老の食感を楽しみ、コクのあるソースに満足そうに微笑む。


紙ナプキンで口を拭っていると、誰かと一瞬だけ目があった。
どこかで会ったような顔だとティルは思う、どこでだったか考えた。

知り合いだったら失礼になると必死に思い浮かべるが……。


「食事中失礼、お嬢さん。私の顔に覚えがあるようですね」
「え!?」


二つ奥に座っていたはずの客がいきなり目の前に現れて、テイルは吃驚して見上げた。
地味な色合いのフードを取った人物は青みがかった黒髪をパサリと掃う。


「あ、アナタひょっとして……」
ティリルがなにか話しかけたが会話はそこで途切れた。




「ごっめーんティル!デザートはきた……?あれ、どこ行ったんだよ」

トイレから戻ったバリラが店内を見回したが、他の客さえ見当たらない。
厨房へ挨拶へいったのかと、スタッフルームを訪ねたが来ていないと返事された。


「なんだよ、急用でもあったのかな?」
止む無くひとりで買い出しに行き帰宅したバリラであったが、ティリルが帰った様子はなかった。



それから数日経ってもティリルがルヴェフル侯爵邸に戻ることはなかった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

処理中です...