公爵家長男はゴミスキルだったので廃嫡後冒険者になる(美味しいモノが狩れるなら文句はない)

音爽(ネソウ)

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戦火の先に(覚醒)篇

仲間同士の戦い

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獣の咆哮のような風が幾度も鳴いている、どこかの大木がなぎ倒されて轟音を立てた。大嵐に見舞われた帝国全土が怯えているようだった。大破した医務室に雨が吹き込み水溜りを作り出していた。
救護の要であるべきその周辺が襲われたものだから、兵も侍女たちも困惑してうまく動けずにいた。増援を頼もうにもこの嵐の最中、呼びに向かうのも骨である。

「あぁ……レオ、目を覚まして、キミらしくないよぉ」
惨事後に駆け付けたフラウットが、未だに気絶して動かない彼を介護しながら半べそを掻いた。背中を強打したらしいので、その影響が怖いと震えていた。
「落ち着けよフラ、私達は優秀な治癒師を知ってるだろ?……まぁあっちも大変なことになってるけど」
「うん、そうだよね。いま出来ることをこなさないと」
落ちかけた涙を拭い、小柄なフラウットが杖を掴んで立ち上がった。城内はパニックに陥ったまま騒がしい、救護に回っていた彼女達だったが交戦中だと思われるティリルの元へ向かうことにした。

「ジェイラを操っているヤツぜっ殺だぜ!」
「うん、炙り出したら容赦しないもん!」
帝国城の中央にある政務棟へ急ぐ彼女達の目には怒りの光が宿っていた。

***

「無駄な抵抗……ふふ、窮鼠猫を噛むというが正にそれだ。足掻いて足掻いてその先にあるのは死だけだ。ぞんぶんに醜い様を私に見せておくれ」
嗜虐趣味を持つベングド・アルメルが、遠く離れた地バヴリガ共和国の居城で厭らしい笑みを浮かべている。追い詰められた人間を嬲るのが好きな彼は夢中になって魔導鏡を見つめジェイラを動かしていた。
精神を完全に支配されているジェイラは戦う傀儡と化していて、肌に傷が付こうと手足の骨に罅が走ろうと暴走を止めようとはしない。血濡れ人形は笑いながら彼らを攻撃している。

「ジェイラ!お願い目を覚まして頂戴、これ以上戦っては貴女の身体が持たないわ!」
悲鳴に近い声でティリルは問いかけるのだが、反応することはない。結界を張って応戦せざるを得ない彼女は心が疲弊していった。
女帝側が魔法攻撃を受ければ結界が跳ね返し、それがジェイラにダメージを与えてしまうのだ。臣下を護るほど傷つく友人の現状に苦悩するティリルは精神がおかしくなりそうだった。

彼女が一人奮闘していると、聞き慣れた声が執務室へ届いた。
「ティル!無事か!?」
「ティル!応援にきたよ!」
バリラとフラウットの姿を確認した彼女は安堵の表情を浮かべたが、容赦ない攻撃は続き反動でジェイラが血飛沫をあげる。あまりに悲惨な戦いを目の当たりにした仲間は愕然とした。

「ばっか野郎が!ジェイラが死んじゃうだろ!解放しやがれ!」
バリラは見えない敵に向かって咆えたが、届くはずもなく惨劇の騒音に消されてしまう。魔法使いのフラウットはジェエラが攻撃できないように風魔法を駆使して抑え込んだ。
しかし、元から風魔法に特化しているジェイラと、遠隔操作するベングド公爵は風魔法が得意なため反撃を食らう羽目になった。
「ぎゃんっ!」
風魔法を跳ね返されたフラウットは宙に巻き上げられて天井に叩きつけられた。そして、落下してきた彼女は螺旋状に傷を負っていた。そして苦し気な声で「レオ……ジェイラをとめて」と呟いた。

床に伏したままのレオニードを彼女は無意識に呼んでしまったのだ。護るための戦いは想像以上に難しい、ただの敵であったなら手を抜くことなく焼き払っていたことだろう。
傷を負ったフラウットを見たバリラは怒り狂いスキルのベルセルクを発動させて空に浮かぶ魔女に反撃していた。
「うりゃぁー!死にさらせぇぇ!」
赤いルビーの瞳が赫怒に燃え怪しく輝いた、容赦のない斬撃が幾度もジェイラの身体を襲う。電撃の結界がとうとう破られて宙に舞っていた魔女が床に頽れた。

「バリラ、手加減をしなさい!敵は別のところよ」
「あ、ごめん……やり過ぎた」
床に倒れたジェイラは伸びたまま動かなくなった、ティリルは結界を消して彼女に駆け寄るとすぐさま治癒を始める。酷い傷は瞬く間に癒えていくが完治したわけではない、傷は消えても流れた血が多すぎて瀕死なのは変わらないのだ。
「すぐに救護を呼びましょう、お願いできる?」
「ああ、フラウットもやばいぞ」
一番元気なバリラが医者を呼ぶ為に奔走し、攻撃がやっとおさまり参戦していた宰相たちも力が抜けて床にへたりこんだ。本来は知力が武器の彼らには過酷過ぎたようだ。
「皆様、ケガはありませんか?よくぞ戦ってくれました」女帝は彼らに労いの言葉をかけたが「畏れ多い」と全員平伏す。



「おやおや、魔力が切れてしまったのか」
魔導鏡を覗いていたベングドは舌打ちして「仕方ない、残った体力を魔力に転換させよう」と言い再びジェイラを動かした。限界に近い彼女の身体を更に鞭打つ気でいるようだ。
「動きなさいジェイラ、その命の火が消えるまで死と言う安息はないのだよ」サディストの彼は最後まで捨て駒に容赦ないのだ。

一方で、介護していたティリルは彼女が再び活動を始めたことに驚いた。
「気が付いたのジェイラ?それにしては急すぎるわ、無理しては駄目よ」
上半身だけ起き上がった彼女は、周囲を見渡すと標的が目の前にいたことを喜んだ。





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