今更「謝るから」と言われましても

音爽(ネソウ)

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ガイ視点


酒屋で手に入れたワゴンの激安ワインを一本買って、俺は上機嫌で借家へ向かった。
きっと泣き疲れた顔でアネリは出迎え、熱烈に抱きついてくるはず。


再会の祝宴をする前に抱いてやってもいいな、家出する前からご無沙汰だったし喜ぶに違いない。
俺はニヤけながら家路を急ぐ。

途中で近所の顔見知りに声をかけたが、訝しい顔をされて逃げられた。なぜだ?失礼なヤツだ!
その後も知った顔を幾度かみつけたが、なんだか避けれている気がする。



少し苛立ちを覚えつつ借家へ着いた、キッチンの煙突から煙が上っている。
牛肉を焼く香ばしい匂いがした、なんだ一人で贅沢しやがって!ここは叱ってやらなければ!


俺は早速乱暴にドアを叩いた、だが反応がいまいち悪い。気配はするが出て来ない。
彼女ならバタバタと駆け寄ってきてすぐ出迎えるはずなのだが、警戒でもしてるのか?

まぁ、仕方ない。
約一か月間も留守にしていたからな、やむなくもう一度ドアを叩き「俺だ!帰ってきてやったぞ!」と尊大に怒鳴ってやった。


すぐに開かないドアをイライラしながら待つ。
すると初老の女が顔だけ出して「煩いわね誰よ?」と俺を睨んだ。

「え?あんたこそ誰だよ!アネリはどこだ?」
「はぁ?うちにはそんな名前の家族はいないよ。家を間違えてんじゃないか?酔っ払いめ!」

俺がワイン瓶を剥き出しで持っていたから、ヘベレケの飲んだくれと間違えたようだ。
そして、女が目の前でドアをバチンと激しく閉じたもんだから吃驚して尻もちをついてしまった。


「な、なんだ家を間違えたのか……借家は似ているからな」
気を取り直して我が家を探す、……がさっきの家で間違いはない!

どういうことだ?


嫌な気分が俺を襲う。
躊躇ったが再び先ほどの家を訪問した、確かめなければならないからだ。


すると今度は熊のような大男が出てきた。
まずいぞ、さっきのババァなら恫喝してアネリのことを聞き出せたが俺より強そうだ。殴り合いになれば敵わないだろう。


「夜分になんようだ!押し売りか?まさか物乞いじゃないだろうな!」
2m近い男に見下ろされて竦みあがった。

「ひぃい!すみません!家を間違えただけです!すみません!」
俺はそう言って脱兎の如く逃げ去った。




必死で走り近くの公園へ逃げ込んだ、心臓がバクバクして冷や汗でぐっしょりになる。
「ど、どういうことだ……アネリはいったいどこへ行ったんだ?」


怖さと怒りで震えながら騎士寮へ戻った。

取り合えず落ち着こうと思い、買ったばかりのワインを開けて飲んだ。
「ぶっっほ!?なんだこれは!ゲッホゲッホ……す、酸っぱい。それにかび臭いぞ」


たたき売りされていたワインは劣化した粗悪品だったのだ。
管理が悪かったり、コルク栓が緩んだりするとこうなるんだ。
通りで安いわけだ……、チクショー!


酔って気分を紛らわせたかったが仕方ない、やや落ち着いた俺は給与袋を開けてワインを買い直すか考えようと思った。無性に酒が飲みたいんだ。


黄色い封筒を開けて俺は絶句した、明らかに少ないからだ。
同封された明細を震える手で開く。

寮費2万、食費5万、光熱費雑費2万と書かれていた。

「嘘だろ……無料じゃなかったのか?なんだよ食費5万て高すぎだろ!……そういえば朝晩の食事代は別途って説明があったな……ご飯てこんなに金がかかるのか」


寮の日替わり定食は2種類あって、ひとつは貧相な飯とメインが選べる贅沢な定食があったことを思い出した。
俺は只だと思ってたからいつも豪華な方を選んでいた。

諸々引かれて給与は2万弱しか残っていなかった。
寮生活だから急には困らないが、外で遊ぶ余裕はない、俺は愕然とする。

同棲生活していた時は家賃を引いても8~9万は手元に残っていたんだ。
これはかなり痛い。


アネリを探さなければ!
こんな惨めな生活はやってられない!

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