今更「謝るから」と言われましても

音爽(ネソウ)

文字の大きさ
16 / 18

16

しおりを挟む
真っ白なカーテンを少し開いて、薄曇りの空を残念そうに眺める婦人。
鈍色のソレはいまにも泣きそうに見えた。


「きょうの良き日に晴れないなんて」夫人は辛そうに溜息を吐いた。
その声を拾うのはベールを被った、美女。


「そんなことはありません、私達が仲良くなった切っ掛けは雨季で土砂降りの雨の日でしたわ」
少し遠い目をして、あの日のことを思い浮かべる女。


”あの人は覚えているかしら、雨に打たれた子犬みたいに震えてた癖に太陽みたいな笑顔を私に見せたのよ”


「ふふっ」
「どうかしたの?」

なんでも、と返事をして念入りに施したメイクの出来栄えをチェックする。
頬は幸せに紅潮していてチークがいらないほど、無意識に微笑んでしまう己に吃驚している。
無意識にあの人を愛していたのね、と彼女はいまさら気が付いて顔を赤くした。



「私の可愛い娘になるアナタ、世界一幸せになるのよ?」
「大袈裟ですわ、お義母様。でも私はすでに幸せすぎて飛べるくらいにフワフワしてます、羽化登仙の境地です、うふふ」

でもねぇと婦人は少し憂いた表情だ。

「あの子は女性の機微に疎いから心配なのよ、うっかり貴女を傷つけやしないかとハラハラよ」
「クスクス……大丈夫ですわ。不測の事態が発生したらお義母様を頼りますし、彼が気が付かない時は遠慮なく蹴飛ばしますわ」


それを聞いた婦人は「頼もしいわ!」と満面の笑みを零す。

羽化登仙の極みと言っていたその時。
不躾な音と共に大柄な男が乱入してきて、ふたりを驚かせる。


「んまぁ!なんですか貴方は!花嫁を見に来るなんて!」
愚息を叱りつける婦人は仁王像のように顔を歪めて怒り、花嫁を庇うように立ちはだかった。


「すみません!マナー違反は重々承知しております!でもどうか一目だけでも!」
上背が誰より高いはずの男は、身を縮こませて請う。


「なりません!恥知らずが!」
「は、母上ぇ~」


***


新婦には親がいない為、代って新郎の父が代役を担う。

「はぁ、こんなに美しい娘を娶るなど愚息はやりおるな!」
「嫌だわ、お義父様ったら!」


可愛い義娘にすでに骨抜き状態の義父はデレデレの顔を隠しもせずに、バージンロードをエスコートする。
そのゆったりとした歩みの先に、愛してやまない男が佇んでいた。




「やっと来たかい、俺のシュガーマフィン」
「ふふ、馬鹿ね。貴方が嫌がってもずっと傍にいるわよ」

嫌がるはずがないと、新郎は真っ赤な顔で新婦をみつめた。


神父が誓いの言葉を言う前に、熱い口づけを交わす二人に困惑する。
最早ふたりには儀式など不要だったのだ。




ライスシャワーと花弁がふたりの周囲に撒かれていく、花嫁が微笑むと同時に鈍色の空から祝福の陽射しが降り注いだ。


神すらも二人を祝福していると、参列者たちは感動して惜しみない拍手を彼らに送った。


平民アネリは身分差を超えて、元侯爵家令息であるディーンと結ばれた。
独身だった叔父より受け継ぎ伯爵となったディーンは、永遠の愛を誓い合った。












*酔った状態で書きました、支離滅裂かもしれません。
昼飲みが好きな作者より。


しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

誤解されて1年間妻と会うことを禁止された。

しゃーりん
恋愛
3か月前、ようやく愛する人アイリーンと結婚できたジョルジュ。 幸せ真っただ中だったが、ある理由により友人に唆されて高級娼館に行くことになる。 その現場を妻アイリーンに見られていることを知らずに。 実家に帰ったまま戻ってこない妻を迎えに行くと、会わせてもらえない。 やがて、娼館に行ったことがアイリーンにバレていることを知った。 妻の家族には娼館に行った経緯と理由を纏めてこいと言われ、それを見てアイリーンがどう判断するかは1年後に決まると言われた。つまり1年間会えないということ。 絶望しながらも思い出しながら経緯を書き記すと疑問点が浮かぶ。 なんでこんなことになったのかと原因を調べていくうちに自分たち夫婦に対する嫌がらせと離婚させることが目的だったとわかるお話です。

《完結》悪女と噂されたわたくしのざまぁ

ヴァンドール
恋愛
悪女と噂のわたくしとの結婚なら、どれほど軽んじても問題はないと思っていた旦那様。 ところが……。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

両親のような契約結婚がしたい!

しゃーりん
恋愛
仲の良い両親が恋愛結婚ではなく契約結婚であったことを知ったルチェリアは、驚いて兄レンフォードに言いに行った。兄の部屋には友人エドガーがおり、ルチェリアの話を聞いた2人は両親のような幸せな契約結婚をするためにはどういう条件がいいかを考えるルチェリアに協力する。 しかし、ルチェリアが思いつくのは誰もが結婚に望むようなことばかり。 なのに、契約を破棄した時の条件が厳しいことによって同意してくれる相手が見つからない。 ちゃんと結婚相手を探そうとしたが見つからなかったルチェリアが結局は思い人と恋愛結婚するというお話です。

地獄の業火に焚べるのは……

緑谷めい
恋愛
 伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。  やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。  ※ 全5話完結予定  

禁断の関係かもしれないが、それが?

しゃーりん
恋愛
王太子カインロットにはラフィティという婚約者がいる。 公爵令嬢であるラフィティは可愛くて人気もあるのだが少し頭が悪く、カインロットはこのままラフィティと結婚していいものか、悩んでいた。 そんな時、ラフィティが自分の代わりに王太子妃の仕事をしてくれる人として連れて来たのが伯爵令嬢マリージュ。 カインロットはマリージュが自分の異母妹かもしれない令嬢だということを思い出す。 しかも初恋の女の子でもあり、マリージュを手に入れたいと思ったカインロットは自分の欲望のためにラフィティの頼みを受け入れる。 兄妹かもしれないが子供を生ませなければ問題ないだろう?というお話です。

処理中です...