完結 報復を受ける覚悟の上での事でしょう?

音爽(ネソウ)

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寝耳に水

久しぶりの休日を堪能していたアメンティーナは、午後のひと時を過ごしていた。ランチを軽く食べて冷たい紅茶で喉を潤し、うつらうつらと幸せな顔で微睡んでいる。

カクンと顎を落としたタイミングで転寝から目を覚ました彼女は涎が零れ落ちそうになっていた。慌てて拭い去り「いけない、油断し過ぎね」と自嘲する。幸いにもお付のメイドも壁に背を預け転寝していた。良くない事とはいえ、自分もうっかり惰眠を貪っていたこともあり見ない振りをする。

「はぁ、それにしてもこんなにゆったりとした時間は久しぶりだわ。私の環境は常に騒々しいんだもの」
つい先日の出来事を思い返して首を横に振る、『再婚約してやろう』と言って来たロドリゲスのどや顔を思い出しクスリと笑う。

「どこまでも愚かで面白い男……ふふっ、でももう関係ないのだわ。さよならロドリゲス」
カランと小さく鳴るグラスを思い出して冷たい紅茶を飲み込んだ、セイロンの爽やかな香気に目を細める。そこにコンコンと戸を叩く音に我に返った。
どうやら侍女がボゼスハイム公爵からのメッセージカードを預かってきたらしい。珍しい事だと頭を傾いで早速と父親からの伝言を開く。

「あら、お父様から明日の午後の茶を共にと……どうしたというのかしら?」
頭の上に疑問符を浮かべてアメンティーナは彼の意図を探るのだが、如何せん今の彼女にとっては”良く知らないオジサン”には変わりない。寡黙で厳しい顔をした人物であるという印象だけでなにも浮かばない。

考える事を放棄して明日に備えようと返信用のカードを認める。




***


参りました、お茶の招待嬉しく存じます」
恭しくお辞儀をする娘を迎えて「良く来た」と彼なりに歓迎をする、とてもわかり難いが犬が尻尾をブンブン振る程には喜んでいるのだ。
それを知ってか知らずか、薄っすらと微笑みを称えて、椅子に座る礼を取るアメンティーナは美しかった。

「ゴホン、先ずは紅茶を飲みなさい。アップルティーは好きかね?」
「はい、もちろんです。頂きますね」
トポトポと器に注がれる赤い液体をちらりと見てから、卿の心情を見た。だが、やはり彼女には全くわからない。どうしたものだろうと静かに息を吐く。

学園は面白いかとか、不都合はないかと聞かれたが当たり障りない答えしか彼女は持ち合わせていない。まさか、他の生徒に遠巻きにされているとは流石に言えやしない。学園の話題を苦笑いであしらう彼女は内心冷や汗を掻く。

「エフン、時にトバイアス殿下とは交流されているか?彼は中々な好青年であると認識している」
「はぁ……トバイアス殿下ですか、学園では特にないですね。手紙のやり取りは頻繁ですが」
彼の相貌を思い浮かべながら淡々と話すアメンティーナである、そう言えばどんな目の色をしていたかしらと思い浮かべるのだが全くわからない。

「ウホン、お前さえ良ければだが……その」
「はい?」
「う、その……トバイアス殿下と!こ、婚約して貰えないだろうか!」
「ま!まぁぁ!なんてことを!ええええぇえ!」
寝耳に水なことを言われたアメンティーナは吃驚して飲みかけの茶を盛大に零してしまう。悲鳴に近い言語を口から発していると後方の扉が開かれトバイアスその人が現れた。

「アメンティーナ!どうかこの私と、私の伴侶になってくれないだろうか!」
「で、殿下ァ!?」









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